表情

2012年05月08日 | 日記
昨日は福祉サービス事業所のヴォイトレでした。障がいをお持ちの方は生活のリズムが崩れると体調を崩しやすいそうで、連休明けの昨日はいつもより少ない参加者でした。小人数のメリットを生かそうと、寝転んで横隔膜を鍛える体操をしたり、部分的にお一人ずつの声を聴いたり、普段はなかなかできないことをしてみました。
このグループには、比較的ニューフェイスながら毎回欠かさず参加される男性がお二人いらっしゃいます。このお二人、表情筋の動きがあまり活発でなく、一見全くの無表情に見えます。しかし、私の言うことはよく理解されているようで、たとえば「奥歯を開けて下さい」とか「口の奥を後ろへ引いて下さい」などという指示を出すと、わずかながら口の開き方が変わり、顔の表情にもほんのわずかの変化が表れます。一見してはほとんどわからないほどわずかな動きですが、私には、一見無表情な彼らが精一杯エネルギーを振り絞って私の指示に応じようとしているのがわかります。しかし、精神に障がいを持つ方ですから、月2回とは言えそんなに一生懸命に取り組んで、後に疲れが出ないかどうか気になっていました。そこで昨日、練習の後で副施設長に「あのお二人は、ヴォイトレの後で疲れたり気分が不安定になったりされませんか?」とお尋ねしてみました。すると、「そんなことはないようですよ。二人とも楽しみに参加しているようです」とおっしゃいます。そして、「見ていると、だんだん表情が出てきたように思います。ヴォイトレの成果ではないでしょうか」と言われました。ああ、彼らは彼らなりに楽しんでいて、それなりに変化しているんだ、と思うととても嬉しく、声を出すということは生物にとって根本的な能力の一つなのだと改めて思いました。声を出すなんてごく当たり前のことのようですが、人によってはとても努力の要ることなのです。しかしそういう人ほど、それが自分自身の生命力のアップにつながることを本能的に知っているようです。息をするから生き生きする。「歌う」は語源的には「訴える」から来ている、という説がありますが、つまり、歌うとは内にあるものを外に出すこと。何度も繰り返し確認していることですが、彼らがいつも実地にそれを体現してみせてくれます。この事業所の今月の歌は「夏の思い出」。水芭蕉、シャクナゲ色、といった美しいイメージを一生懸命心に描きながら歌って下さいました。どんどん良い声が出てきて、気持ちよく練習を終えました。

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2 コメント

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プラス思考? (ドレミファそら豆)
2012-05-09 11:10:31
若い時には思いもしませんでしたが・・・歌うこと(声を出すこと)は生命維持(?)にとてつもなくいいことだと、今この年になって痛感します。
歳を取るのもいい事ですね。  (^u^)
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Unknown (吉田)
2012-05-09 20:12:04
本当にそうですね。子どもがあんなに歌うのが好きなのは、はちきれんばかりの生命力の発露なのでしょう。人間にとって歌うこと、踊ること、造形することは本能的な欲求なのだとか。子どもを見ていると納得しますね。
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