のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

客観的評価

2008年02月03日 20時36分06秒 | 日常生活
本日は文章能力検定受験の日。
試験会場に向かい、日本語に翻弄され、得意分野のはずの試験に
撃沈してきました。得意分野での撃沈だけにダメージがでかく
むむむー、とうなりながら、同じ試験を受験した会社の先輩方と合流し、
一緒に帰宅しました。

みな、そこそこできたらしく、撃沈はのりぞうひとり。
この事実が更にダメージを大きくします。
くすん。仲間がひとりもいない。
と、落ち込むのりぞうを包み込むように、
日曜の暮れ行く日の光が車内に差し込んできます。
くすん。日曜日ももう終わり。
できなかった試験で費やされた数時間が恨めしい・・・。
とぐじぐじ拗ねていると、上司が
「週末もあっという間に終わりやねぇ。
 のりぞうくんの今週は長いよー。」
と、追い討ちをかけてきました。

え?今週が長い?なにゆえに?
ワタクシ、何か仕事をため込んでましたっけ?
いえ、ため込んでますけど、それを上司に伝えましたっけ?
まだ隠しこんでいるはずなんですが・・・。
と、いぶかしげに上司を見つめるのりぞう。

「ほら、土曜も日曜も研修運営の当番で出社するやろ?
 来週の月曜日まで休みなしやけんね。」

おぅっ!のぉっ!!
そうでした!仕事が多いとか少ないとかではなく
物理的に、現実問題として、のりぞうは今週ずっと出社なんでした。
しかも土曜の午後は部門内研修もあるんでした。
心の中でさめざめと涙を流しながら、
上司には精一杯虚勢を張って、明るく

「そうでした!でも、のりぞうのことですから忘れて
 ごく普通に休んじゃうかも。出社することを忘れてしまう可能性
 高いですよー。前日に「あした出社やけんね」と念押してくださいね。」

と伝えたところ、その場にいたふたりの先輩が納得し
上司は静香に「心配しなさんな。絶対に逃がさんよ。」とおっしゃいました。

・・・ふたりの先輩が納得していることよりも
上司の「逃さんよ」という言葉の本気具合に
のりぞうの評価が垣間見えた日曜の夕方。
一週間は始まったばかりです。

神様のボート/ 江國 香織

2008年02月03日 19時52分42秒 | 読書歴
13.神様のボート/江國 香織
■ストーリ
 昔、ママは、骨ごと溶けるような恋をし、その結果あたしが生まれた。
 「私の宝物は三つ。ピアノ。あのひと。そしてあなたよ、草子。」
 必ず戻るといって消えたパパを待って、ママとあたしは引越しを繰り返す。
 「私はあのひとのいない場所にはなじむわけにいかないの」
 「神様のボートにのってしまったから」
 恋愛の静かな狂気に囚われた母葉子と、その傍らで成長していく娘草子の
 旅の物語。

■感想 ☆☆☆☆
 人を好きになることはこわい。
 自分で自分をコントロールできなくなるから。
 頭で分かっていても、感情がついていかない状態に
 こんな感情なくなってしまえばいいのに、といつも思う。
 人を好きになると、正気を保てなくなる。
 だから、私は恋愛が苦手だ。

 けれど。思うのだ。
 そんな怖さを感じなくなるほど、人を愛してみたい、と。
 自分で自分をコントロールできているかどうかすら分からなくなるほど
 我を忘れてみたい。そんな恋愛に出会ってみたい。
 そう願う気持ちがどこかにある。人を好きになることが怖いんじゃない。
 人を好きになっても、どこかで「打算」や「冷静さ」を失わない
 自分が苦手なのだと思う。

 だから、「神様のボート」に乗ってしまった葉子が羨ましくて
 でも、自分が到達したことのない境地にいる彼女が怖くて
 この狂気じみた恋愛がどこにたどりつくのかが知りたくて
 焦りにも似た気持ちでページをめくった。
 生涯でひとりの人と出会ってしまった人生は幸せで残酷だ。
 ヒロインは愛した人との思い出の中に生き、現実を「別世界」と
 捉える。いつか必ず見つけ出す、という彼との約束だけが
 唯一絶対の「未来」で、そこに到達するまでの「現在」は
 仮の時間。彼女を現実につなぎとめているのは、
 彼との間に授かった子ども、草子だけ。
 愛した人との思い出を反芻して生きていく葉子と
 母親の世界で育ち、成長と共に母親の世界を抜け、
 自分自身の人生を歩み始める娘、草子。
 彼女達はどちらも、幸福なのに不幸せ、不幸せなのに幸せだ。
 葉子は愛した人を、草子は母親を求める。でも、求めても求めても
 自分の力だけでは手に入れられない。
 それでも、思わずにはいられない人と出会えたことは
 やはり幸せなのか。できれば、幸せと思える人になりたい。
 幸せと不幸せが混在して、絶妙なバランスを保っている。
 その不安定さに胸が苦しくなる作品だった。

ハミザベス/栗田有起

2008年02月03日 19時47分50秒 | 読書歴
12.ハミザベス/栗田有起
■ストーリ
 母親と二人暮らしをしていた「まちる」ははたちの誕生日直前、
 死んだと思っていた父からマンションを相続する。元恋人の幼なじみや
 父の同居人だった女性との奇妙な友情。新しい部屋で重ねる日常。
 少しずつ自立していく、まちるはある決断をする。

■感想 ☆☆☆
 さらりとした文章で描かれる淡々とした日常。
 あまりにも淡々とした文章のために、日常として受け入れそうになるが
 その日常は「非日常」の塊だ。しかし、主人公は非日常をさらりと
 受け止め、さらりと流す。さらりと流しているようで、その中から
 逃してはいけないことをしっかりと選び取り、それはきちんと
 受け止める。その潔さとかっこよさが栗田作品の特徴だと思う。

 そういった意味で、栗田作品らしさが顕著で魅力的なのは、
 表題作よりも「豆姉妹」のほうだと思った。
 ある日突然アフロヘアにした妹と、アフロヘア前の妹とそっくりだった
 姉。姉は肛門科の看護士をしていたが、「今やっていることと大差ない
 プレイで給料が三倍だから。」という理由でSM嬢に転職する。
 そんな姉妹の下に、ある日、突然おねえ言葉で話さずにはいられなく
 なった従兄弟の少年が居候として飛び込んでくるお話だ。
 あらすじだけを聞いているととても奇抜な設定だが
 奇をてらった話ではない。どこまでもマジメな青春小説だった。
 アフロヘアにした妹は、姉と寄り添い、支えあって生きてきたが故に
 アイデンティティについて考え、悩む。
 自分って何?生きるって何?自分にしか出来ないことって何?
 青春小説で語られる普遍的なテーマが少し奇抜な姉妹の話と絡んで
 さらりと語られる。悩んでぶつかって色々考えて生きているふたりが
 さらりと語られるこの違和感がとても魅力的だ。

 人生に悩み、悶々とした気持ちをアフロに託した妹が
 潔くかっこよく、全校生徒の前で自分がアフロヘアにした理由を
 語る場面が好きだ。SM女王として働き始めた姉が病院にいた頃よりも
 お客様を一人一人認識して、自分の仕事とお客様(の一部分)について
 熱く、そして幸せそうに自分の仕事について語る場面が好きだ。
 お客様を「変態だけど愛しい」と言ってのける場面が好きだ。
 悩んでいた妹が唐突に、何の脈絡もなく、自分にできること
 自分がしたいことを見つける場面が好きだ。
 さらりと軽い。でも、妙に気になる。心に残る。
 奇妙で愛しい物語だった。

筋肉鍛えました

2008年02月03日 01時16分02秒 | 日常生活
恩師が料理長をすることになったお店が開店したため
高校時代の同級生たちと開店祝いに行きました。
飲んで食べて2000円。
開店記念の大出血サービスです。
大喜びで食べて飲んで食べて飲んでを繰り返していましたが
あまりに食べ過ぎて、途中から申し訳ない気持ちに襲われてしまい
通常料金の日に改めて訪問することを決めてきました。

・・・食べ過ぎただけならばまだしも、その上、騒いじゃったしね。
「女三人で姦しい」という言葉を力技で納得させるような
騒ぎっぷり、笑いっぷりの夜でした。

店内が恩師の人柄を反映して、大変居心地良く
どれだけ騒いでもいいのではないか、
というような錯覚を起こさせたのが最大の敗因です。
そもそも「高校時代の」同級生と再会するといつも
脳内が高校生に逆戻りし、箸が転げてもおかしい年頃になってしまうのです。
かくして、18時から始まった宴が23時に終わるまでの間
それぞれが発する言葉のひとつひとつに、
ひいひい笑いながら相槌をうちました。あまりに笑いすぎて、
「お腹がいたいーーーーーーーー。ほっぺも痛い!」
と苦しむ始末。

「もう!なんでこんなに面白い人ばっかりあつまっとると?!」
と、感心しながら呟くと、友人が驚き顔で言いました。

「なん言いよると?!
 のりぞうも十分、面白いやん!ていうか、勝ってるよ?!
 だって、のりぞうとたまたま会ったと思ったら
 高校時代の先生まで引き寄せたとよ?
 あたし、久しぶりに先生に会ったよ。」


・・・もしもーし?
それは、「のりぞうが」面白いのではなく
「のりぞうが遭遇する出来事が」面白いだけですから。

ハッピーバースデー/青木和雄

2008年02月01日 23時19分44秒 | 読書歴
11.ハッピーバースデー/青木和雄
■ストーリ
 「あすかなんて、本当に生まなきゃよかった。」
 自分の思い通りに成長した長男に比べ、できの悪い娘あすかに
 容赦ない言葉を浴びせる母、静代。実の母親に愛してもらえず、
 誕生日さえ忘れられてしまった11歳の少女・あすかは、その日を境に
 声を失ってしまう。しかし、優しい祖父母の元で自然の営みに触れ、
 「いのち」の意味を学び、生まれかわったあすか。彼女の行動が
 学校や家族を変えていく。

■感想 ☆☆☆
 スクールカウンセラーの方が児童を取り巻く環境や児童が抱えている
 問題と現状を知ってほしいと願い、自分達の経験を元に書かれた小説。
 元は児童書だ。
 児童虐待にいじめ、障害者学級に学級崩壊、モンスターペアレンツに
 教師自体の質の低下、と様々な問題が取り上げられている。これらの
 問題を一冊におさめているため、それぞれの問題があまりにも簡単に
 解決され過ぎているような印象は否めない。
 けれども、この物語は「リアルに書くこと」を目的としているわけでは
 なく、「現代の教育現場が抱えている問題の多さと根深さを伝えること」
 を目的としているのだと思う。
 教育現場で起きている問題の種類、多くの問題と向き合っていかなければ
 ならない教師の大変さ、何より問題と向き合わなければならないはずの
 教師や親自体が、問題をきちんと認識できないでいる現状。
 これらを子ども達へ、そして親たちに伝えようとしているのが
 この作品なのだと思う。

 この作品を読んで、改めて親になることの責任を実感した。
 いや、違う。責任を感じなければいけないのは、親だけではないのだと
 強く思った。こういった教育現場になっているのは親や教師だけの
 問題ではない。教育現場には今の世の中が確実に反映される。だから
 社会の一員として、これからを生きていく人間として、もっと多くの
 人たちが教育現場の現状を知るべきなのだと思うし、問題の解決に
 ついて考えなければいけないのだと思った。

 また、読んでいて、小学校にあった特殊学級を思い出した。
 校舎内にあったのに、ほとんど交流がなく、その頃から
 自分のクラス以外に出かけることなどない出不精だった私は
 教室に入ったこともなかった。勿論、特定の生徒以外とは、
 話したこともなかった。あの頃の私は、あのクラスがなぜあるのかも
 考えたことがなかった。すぐ傍にあったのに、触れることがなかった
 クラスの存在を今の私は悔しく思う。あのとき、もっともっと
 あのクラスに興味を持ていれば。もっと積極的にいろんな人と
 関わっておけば。好奇心や積極的な関心は人生に広がりをもたらす。
 そんなことを今更ながらに感じさせられた本だった。

ひまわり探偵局/濱岡稔

2008年02月01日 22時40分59秒 | 読書歴
10.ひまわり探偵局/濱岡稔
■ストーリ
 なんか丸い名探偵と、寝ぐせ頭のワトスン。見つけるのは心の鍵、
 届けるのは人の想い。快刀乱麻、軽妙洒脱、アットホームで
 マニアック、それでいて、心がほっとするティーブレイク・ミステリィ。

■感想 ☆☆☆*
 表紙を開けたとこに書いてあった
 「おとなのふりが苦手な子どもたちに」という一文に一目ぼれして
 図書館で借りてきた本。
 登場するのはまさに「おとなのふりが苦手が子どもたち」。
 変に分別がついてしまうオトナになりたくないと肩肘張っている
 素直じゃないところがかわいらしい探偵助手の三吉さん。
 大人だけが持っている懐の深い優しさで事件を見つめ、
 子ども特有の好奇心と探究心で真相を見つける名探偵。

 そして、彼らに解決を依頼するために訪れる人たちも、
 「おとなのふりが苦手な子どもたち」だ。
 簡単に素直にはなれず、天邪鬼。
 どこか不器用でぶっきらぼう。でもって、にぶちん。
 彼らが名探偵の暖かい推理によって、暖かい結末を手に入れられるお話。
 登場人物みんなが微笑ましく、愛しい。

 微笑ましく愛しい、といえば、作品の随所から垣間見える
 作者の好きなものに対するこだわりや愛情も微笑ましい。
 特に第一話で見せるヴァン・ダインに対する愛情は見事。
 その愛情が伝わってくる文章に、推理小説ファンは、
 例え、ヴァン・ダインの作品を読んだことがない人でも
 思う存分、楽しめると思うし、共感する部分があると思う。