のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

梅原猛の授業 仏教

2008年05月25日 23時18分11秒 | 読書歴
41.梅原猛の授業 仏教
■内容
 凶悪な少年犯罪が最近の日本で相次いでいるのは、道徳を
 教えられていないからだ。小・中学生に宗教教育に基づいた
 道徳教育を行いたい。願いは中学校で一学期間教壇に立つ
 という形で叶った。そこで行われた授業は、やさしい言葉で
 教える仏教の「いちばん大切なこと」。

■感想 ☆☆☆☆
 優しい言葉で語りかけられた仏教の歴史とその教えについて
 京都の洛南中学で行った授業を本に起こしたものである。
 語り掛け口調で綴られた文書は平易な言葉を使っていて
 とても読みやすい。
 また、仏教の授業で仏教の歴史についての話が中心となっては
 いるけれど、「仏教」オンリーになってはおらず、様々な
 宗教と比較して話を進め、「仏教の必要性」というよりは
 「宗教の必要性」を中心に据えた語りとなっている。

 教育の中から宗教が消えてしまったことと現在の日本が何かを
 失ってしまったことは密接に関わりあっていること、ひとつの
 宗教にこだわらなくてもいいから、とにかく宗教を生活の中に
 根付かせるような動きが今の日本には必要だと言うことを
 梅原氏は繰り返し述べている。その考えは、まさに私が普段
 考えていること、そのままで強く共感した。

 本書を読んで、改めて宗教が伝えようとしていることは
 枝葉の部分を除いて、根幹だけにすると、どの宗教も
 ほぼ同じなのだと実感した。その中で仏教が他の宗教よりも多く
 日本に根付くことができたのは、仏教がキリスト教のように
 聖書や唯一の神にこだわることなく、その時代時代にあった経典や
 教え、スタイルを新しく創設してきたからなのだと知った。
 時代にあったスタイルに変遷し、新興宗教のような形で
 どんどん日本に広がっていた仏教は、まさに日本人の「何でも
 受け入れる」ライフスタイルによくあった宗教だったのだろう。

 特に共感した箇所がいくつかある。
 ・知られざる神々という言葉があります。私はひとつの神を
  信じていませんが、この知られざる神を信じているのです。
  人間の知っていることは、世界のごく一部なんだと私は思うのです。
  世界に知られないことはいっぱいある。そういう知られない、
  なにか大きなものに対する尊敬の心を失ったら人間は傲慢になって
  色々悪いことが起こってくるんではないかと思うんです。

 ・かつてわれらの師父たちは貧しいながら可成楽しく生きていた
  そこには芸術も宗教もあった
  いまわれらにはただ労働が生存があるばかりである
  宗教は疲れ近代科学に置換され然も科学は冷たく暗い
                 -宮沢賢治-

 ・世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はありえない
                 -宮沢賢治-             

トワイライト/重松清

2008年05月25日 22時06分35秒 | 読書歴
40.トワイライト/重松清
■ストーリ
 26年ぶりに再会した同級生達。校庭に埋めたタイムカプセルとともに
 それぞれの胸の思いも封印を解かれる。あの頃の未来に追いついた今、
 21世紀とはどんな日々なのか。

■感想 ☆*
 私の中で、かっこ悪い大人が出てくる作品と言えば、重松さん、
 荻原さんだ。どちらも理想に追いつかずに泥臭くもがいている
 主人公をよく描く。この作品も同様に、小学校のときに思い描いていた
 自分の未来と異なる現在を歩み、もがいている5人が中心だ。
 登場人物たちをドラえもんの登場人物、ジャイアンやしずかちゃん
 のび太に重ね合わせて、「生き生きと過ごしていた少年時代」と
 「今」を対比している。

 面白くなかったわけではない。けれど登場人物たちがあまりに弱く
 その人間としての弱さやずるさをどうしても好きになれないまま、
 読み終えた。理想に追いつかずにもがいている姿は哀れだが、
 のび太以外は自業自得でしかないように思えて仕方がなく、
 共感することができなかった。

 東京オリンピックや大阪万博を少年時代に経験してきた年代にとって、
 未来はバラ色でしかなく、将来の可能性は無限で、「信じる」ことが
 簡単にできた時代だったのだろうと思う。だからこそ、今の日本の
 閉塞感は耐えがたいものなんだろうということだけは、なんとなく
 理解できるような気がした。

ありがとう/川上弘美

2008年05月25日 22時05分39秒 | 読書歴
39.ありがとう/川上弘美

■ストーリ
 小田原の小さな飲み屋で、あいしてる、と言うあたしを尻目に
 生蛸をむつむつと噛むタマヨさん。
 「このたびは、あんまり愛してて、困っちゃったわよ」と
 こちらが困るような率直さで言うショウコさん。
 百五十年生きることにした、そのくらい生きてればさ、
 あなたといつも一緒にいられる機会もくるだろうし、
 と突然言うトキタさん。ぽっかり明るく深々しみる、
 よるべない恋の十二景。

■感想 ☆☆☆
 私の苦手な短編集。案の定、前半は川上ワールドに入ることが
 できずに疎外感を味わいながら読み続けた。1編1編が短く
 詩のような表現で、感情移入を妨げられているような気がしていた。
 けれども、読み終えるときには、12編で作り上げられている
 恋の世界にどっぷりと入り込み、言葉ではうまく表現できない
 寂しさとかやるせなさに押しつぶされそうになっていた。

 ミカミさん、タマヨさん、というふうに人の名前はカタカナで
 表され、「個人」として特定されているのではなく、記号のように
 扱われている。誰なのか分からないと伝え辛いから、とりあえず
 こう呼ぶよ、というような投げやりな感じ。きっと作者は
 名前や登場人物それぞれの特性に対しては思い入れがないのだと思う。
 作者が伝えたいと願っているのは、愛が始まるとき、愛が
 続いているとき、愛が終わりそうなとき、愛が終わった後、など
 そのときどきにある人の感情なのだと思う。どんなに人を愛しても
 人は孤独からは解放されない。なぜなら、幸せな一瞬は永遠ではないから。
 そういったことを思い知らされる一冊だった。
 人は誰かを好きになればなるほど、
 自分の孤独を思い知らされるのかもしれない。
 そんな寂しい気持で本を閉じた。

空色勾玉/荻原規子

2008年05月25日 22時04分24秒 | 読書歴
38.空色勾玉/荻原規子
■ストーリ
 神々がまだ地上を歩いていた古代日本を舞台としたファンタジー。
国家統一を計る輝の大御神とそれに抵抗する闇の一族との戦いが
 繰り広げられている古代日本の「豊葦原」。ある日突然自分が
 闇の一族の巫女「水の乙女」であることを告げられた村娘の狭也は、
 あこがれの輝の宮へ救いを求める。しかしそこで出会ったのは、
 閉じ込められて夢を見ていた輝の大御神の末子、稚羽矢。
 ふたりは不思議な運命に導かれる。

■感想 ☆☆☆*
 高校時代に読んだこの作品を図書館で見かけるたびに、
 読み返したいと思っていたが、ようやく実現。
 日本の神話を中心に話が繰り広げられており、
 今、読み返してもやはり面白い。むしろ、年を重ねたからこそ
 昔とは異なる視点で作品を読むことができ、更におもしろさを
 味わえた気がする。

 本の帯のキャッチコピーは
 「ひとりは「闇」の血筋に生まれ、輝く不死の「光」にこがれた。
  ひとりは「光」の宮の奥、縛められて「闇」を夢見た。」

 日本人は西洋人よりも闇に対して寛容だし、闇に美学を見出し、
 闇とうまく付き合おうとする。西洋のように一神教ではなく、
 「すべてとうまくつきあおう」という思想が根付いている。
 そういった思想が色濃く反映されている作品だった。光に憧れ続ける
 ヒロインは、「戦い」を拒む。しかし、手をこまねいて入れば
 闇は排斥されてしまう。葛藤の中で、戦わずに共存していくことを
 選ぼうとするヒロインが愛しい。こういった世界観があることを
 私たち日本人はもっともっと世界に向けて発信していかなければ
 いけないのでは、と思った。

この胸のときめき/2000年アメリカ

2008年05月25日 22時02分43秒 | 映画鑑賞
19.この胸のときめき/2000年アメリカ

■出演
 デイビッド・ドゥカブニー、ミニー・ドライバー、キャロル・オコナー
■監督・脚本
 ボニー・ハント
■ストーリ
 シカゴ郊外に妻と暮らす建築家ボブ。彼はある夜、交通事故に遭い
 最愛の妻を失ってしまう。ちょうどその頃、病院では重い心臓病に
 苦しむグレースが、妻の心臓の移植手術を受けていた。それから1年。
 偶然、出会った二人は、なぜか古くからの知り合いのような
 不思議な胸のときめきを感じる。

■感想 ☆☆
 「X-File」主演のデビッド・デゥカブニーを久々に見て
 嬉しくなりました。ワタクシ、彼の顔が大好きなのです。
 どうも、ワタクシ、徹底的に「和」モノが好みらしく、洋画を見ても
 「かっこいい!」とか「かわいい!」とうきうきする顔は
 男女関係なくあまりないのですが、彼だけは別です。
 あの優しそうな表情が大好きなのです。
 また、あの優しそうな表情によく似合った優しく朴訥とした
 男性の役で、ワタクシのドゥカブニー好きに拍車がかかった
 映画となりました。あんなにかっこいいのに、恋愛に疎くて
 好きになった人に一途だなんて素敵過ぎる、とうっとり。

 とは言え、映画としてはいま一つ。
 上記のストーリを読んで想像がつくベタな結末に向かって、
 ひねりもなく話が進みます。加えて、ヒロインのミニー・ドライバーの
 顔がワタクシの好みではなく、なんとなく心からの応援できないまま
 結末に向かってしまったような。「顔で選んだわけではない。」ことを
 伝えたくて、彼女をこの役に選んだんだろうな、とは思うのですが
 でも!でも!とつい思ってしまうワタクシは心の狭い人間です。