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のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

2月の読書

2011年03月08日 22時52分15秒 | 読書歴
10.まほろ駅前多田便利軒/三浦しおん
■ストーリ
 東京のはずれに位置するまほろ市の駅前にある便利屋「多田便利軒」に舞いこむ
 依頼はどこかきな臭い。今日の依頼人は何をもちこんでくるのか。痛快無比な
 便利屋物語。
■感想 ☆☆☆
 読書友達から「面白いよー」と薦められていた三浦さんにようやく出会えました。
 読書ライフの9割を図書館に頼っているため、なかなか「読みたい」と思った
 作品に出会えません。で、三浦作品。お奨めどおりさくさくと気軽に読み進め
 られました。主人公コンビ、多田と行天の優しすぎるだめんず二人組がいとおしく
 微笑ましく。ただ男性二人の友情にしてはお互いに頼りすぎているような、
 こういった友情が「今」という時代にあっているのかも、と思わないでも
 ないような。瑛太さんと松田龍平さんで映画化決定だそうです。
 ・・・うーん。ふたりとも私のイメージとは違うなぁ。

11.ひとりぐらし/谷川俊太郎
■内容
 詩人、谷川俊太郎さんによる随筆集。
■感想 ☆☆☆☆
 感想はコチラにまとめました。

12.「モモ」を読む―シュタイナーの世界観を地下水として/子安美智子
■内容
 読者とともに名作『モモ』を読みながら、エンデとシュタイナーが紡ぎだす
 雄大な思想的宇宙へと、私たちをいざなうシュタイナー教育入門書。
■感想 ☆☆☆
 子安さんの「ミュンヘンの中学生」でシュタイナー教育について知り、
 そのおおらかな思想による「考える」教育のすばらしさに憧れました。
 その「シュタイナー教育」の世界観を通して読む児童書「モモ」の解説。
 ただ、「シュタイナー」の思想の根本が説明されていないため、初めて
 シュタイナーについて知る人にはとっつきにくいのではないかと感じました。
 私も若干、混乱中。「シュタイナー」は思想であって宗教ではないと
 認識していたのですが、この作品を読んでいると若干、宗教っぽいというか
 神秘的思想のような印象を受けました。改めてシュタイナー関連の本を
 読み返したいかな。

13.阿川佐和子のガハハのハ
■内容
 小学生の頃、家族で毎週末テント生活をしていた本上まなみ、高橋尚子の
 名前に惚れて指導を始めたという小出監督、亡き勝新太郎との生活を振り返る
 中村玉緒。「週刊文春」好評対談から選りすぐったベスト版第3弾。
■感想 ☆☆☆☆
 阿川さんの明るい人柄による楽しい対談集。何度読んでも大好きです。
 彼女の人とのコミュニケーションを見ているだけで、私も元気が出てきます。
 笑顔や明るさって大切なんだな、としみじみ思わされる1冊。

14.つくも神貸します/畠中恵
■ストーリ
 お江戸の片隅でお紅と清次の姉弟ふたりが切り盛りする損料屋「出雲屋」。
 鍋、釜、布団と何でも貸し出す店だが、なぜかこの店の蔵に仕舞われっぱなしで
 退屈しているのは、それらの道具についている妖たち。気位高く、噂大好きで
 おせっかいな彼らは貸し出された先で騒動まで拾ってきて・・・。
■感想 ☆☆☆☆*
 義理の姉弟ふたりがお互いを思いやったり、お互いを思いやり過ぎてすれ違ったり
 そのやりとりに心があったまる。まさに「畠中テイスト」の作品。きっと、心が
 疲れた時、やさぐれたときにきっとまた読み返したくなると思う。

15.まんまこと/畠中恵
■ストーリ
 江戸は神田の古名主の玄関先に持ち込まれる町内の騒動を解決しようと奮闘する
 やや頼りない跡とり息子、麻之助と彼の悪友、男前で女遊びが激しい清十郎、
 堅物の吉五郎の3人。彼らが携わった事件は・・・?
■感想 ☆☆☆
 昼行燈的主人公、麻之助が携わる色々な事件を縦糸に、彼の初恋を横糸に
 切なくしっとりと描き上げる。優等生だった彼がいきなり「遊び人」になった
 きっかけ、伝わらない、伝えられない想いとの決別の仕方。ラストで彼らが
 選択した未来は、周囲の人たちを誰一人傷つけることない暖かい選択で
 だからこそ、読み終えた後に切なく寂しい気持ちとなった。

16.ころころろ/畠中恵
■ストーリ
 摩訶不思議な妖怪たちに守られながら、今日も元気に寝込んでいる江戸有数の
 大店の若だんな、一太郎。ある朝起きると、目から光りが奪われていた。
 その理由は空前絶後のとばっちり?早くみんなで取り戻さないと!
 でも、一体誰が盗んじゃったの?「しゃばけ」シリーズ第8弾。
■感想 ☆☆☆*
 ある日いきなり目が見えなくなった若だんなに光を取り戻すまでの妖たちの
 活躍を描く連作短編集。今までですら、自分の将来に、自分の存在価値に
 不安を抱いていた若だんなは光を奪われたために、より一層、大きな不安に
 包まれる。そんな若だんなを助けようと奮闘する妖たち。かれらとの交流、
 信頼関係は、きっと日本人が古来から持ち続けた「見えないものとの共存」
 「見えなくてもいると信じていたものたちとの信頼関係」で、だから私は
 このシリーズを読むたびに懐かしい気持ちを味わうのだと思う。

17.トリックスターから、空へ/大田光
■内容
 オピニオンリーダーとしても注目を集める太田光が、戦争、憲法、教育、
 そして日本という国そのものに真っ向から挑む。
 「憲法九条を世界遺産に」の論点を広げ、さらに掘り下げた意欲作。
■感想 ☆☆☆☆
 普段、ニュースや新聞によるマスコミ報道を見て感じていた違和感を
 見事に言葉にしてくれて読みながら「そうそう!私が感じていた違和感も
 これに近いんだよ!」と手を取り合いたくなりました。現代日本は多くの
 課題、問題を抱えていて、日々、政治家の方々が責められているけれど
 マスコミがどれだけ今の日本が抱える問題に加担してきたか、問われるべき
 責任があるのではないか、そういったことを考えさせられる作品でした。
 
18.薔薇を拒む/近藤史恵
■ストーリ
 施設で育った内気な少年、博人は進学への援助を得るため、同い年の樋野と
 陸の孤島にある屋敷で働き始めた。整った容姿の樋野には壮絶な過去があり、
 博人も過去のある事件で心に傷を負っていた。ふたりは令嬢、小夜に恋心を
 抱くが、陰惨な事件で穏やかだった生活は一変する。それは悪意が渦巻く
 屋敷で始まる、悲劇の序章に過ぎなかった。
■感想 ☆☆*
 とても読みやすい文章でさくさくと読めた。が、「現在の日本」を舞台に
 陸の孤島やお屋敷での生活、というのはリアリティがなく、作り物っぽさ
 が強すぎて作品世界にいまひとつ入り込むことができなかった。
 小説、というよりはどこかゲームのあらすじのようなイメージ。
 それでも主人公たち3人の関係がどういった結末を迎えるのか気になって
 最後まで一気に読み終えた。
 
19.植物図鑑/有川浩
■ストーリ
 ある日、道ばたに落ちていた好みの男子。
 「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか?咬みません。
  躾のできたよい子です」「―あらやだ。けっこういい男」
 「名前は樹。樹木の樹って書いてイツキと読みます」
 楽しくて美味しい道草がやがて二人の恋になる。野に育つ草花に託して
 語られる恋愛小説。
■感想 ☆☆☆☆☆
 「植物図鑑読んで!すごいよー!」と興奮気味で教えられたこの作品。
 「なるほどね!本当にすんごいわ!!」と大興奮で読み終えました。
 読み終えた瞬間、道に落ちているオトコノコを拾いに夜の住宅街へ飛び出し
 たくなりました。少女漫画が大好きだったかつての乙女たちにはぜひとも
 手にとってもらいたい作品です。作者の有川さんによる「男の子に美少女が
 落ちてくるなら女の子にもイケメンが落ちてきて何が悪い!」という
 スタンスに心から共感し、一緒に叫びたい。その一方で、女性もここまで
 強くなったんだな、そして疲れている(癒しを求める?)女性が本当に
 多いんだな、と心の片隅でしみじみと思いました。
 「こんなことあるわけない」と思いつつ「こんなことがあっても
 いいんじゃない?いや、むしろあってほしい!二人には幸せになって
 ほしい!」と心から願いたくなる小説。
 
20.アンダーグラウンド/村上春樹
■内容
 1995年3月20日の朝、東京の地下で何が起こったのか。同年1月の
 阪神大震災につづいて日本中を震撼させたオウム真理教団による地下鉄
 サリン事件。この事件を境に日本人はどこへ行こうとしているのか、
 62人の関係者にインタビューを重ねたノンフィクション。
■感想 ☆☆☆☆
 今もまだオウム真理教を巡る一連の事件については、分からないことが
 多い。「事実」として分かってはいても「理解できない」ことが多い。
 けれど、被害にあった方々の話を聞いて改めてこの事件は「理解できる」
 「できない」ではない、「やってはいけないこと」「許されてはいけない」
 ことなのだという思いを新たにした。当時、マスコミのあまりの騒ぎ具合に
 食傷気味で事実すらきちんと追っていなかったため、初めて知る事実も
 多く、冷静にまとめてくれた村上さんに感謝しながら読み終えた。

1月の読書

2011年03月07日 22時35分33秒 | 読書歴
昨年末から落ちている「読書」速度。特に小説からは遠ざかりがちです。
疲れてるのかな?キャパシティオーバー?

1.骸の爪
■ストーリ
 ホラー作家の道尾は、取材のために訪れた瑞祥房で口を開けて笑う千手観音と
 頭から血を流す仏像を見た。話を聞いた真備は、早速瑞祥房へ向かう。20年の
 時を超え彷徨う死者の怨念に真備が挑むシリーズ第2弾。
■感想 ☆☆*
 フィールドワークもの、うんちくものが割に好きなのにどうしてもこの世界観に
 入りきれません。やはりどうしても道尾さんが苦手な模様。もっとも年末から
 読書に対しての拒否反応が強いのでその(私のコンディションの悪さの)せいか
 とも思ったり。時間を置いてまた読み返したいと思います。


2.阿川佐和子の会えば道連れ(この人に会いたい5)
■内容
 「私、こんな正直に答えていいんでしょうか?」
 江國香織、カルロス・ゴーン、浜口京子、斎藤茂太、木佐彩子、岩城宏之、
 岸部一徳、平野レミ、野中広務、小倉昌男たち18名がアガワの舌に乗せられて
 爆笑・感涙の秘蔵エピソードを次々開陳していく。「週刊文春」連載対談の
 ベストセレクション第5弾。
■感想 ☆☆☆☆☆
 いつもながらその道の専門家と読者の間を分かりやすい言葉でにとっても楽しそうに
 とりもってくださる阿川さん。既に読んだことがあるにも関わらず
 また手に取りたくなるのは、ジャンルを選ばない多彩な顔ぶれのゲストの方々に
 対して気負うことなく自然体で接する彼女をまた見たくなるからだと思う。
 素直な言葉で自分の疑問をぶつける彼女を見ていると、円滑なコミュニケーションに
 「相手への好奇心」は必要不可欠なのだと納得させられる。
 阿川さんの持つ好奇心と親しみやすさを感じさせる語り口のおかげで
 テレビでよく拝見する方の新しい一面を知ることができ、そして今までまったく
 知らなかった経済界や政界の大物の功績をきちんと理解することができた。


3.姑獲鳥の夏/京極夏彦
■ストーリ
 二十箇月もの間、子供を身籠り続ける妊婦、彼女の夫は行方不明、同時期に
 発生した連続嬰児死亡事件、久遠寺家に代々伝わる「憑物筋の呪い」など、
 久遠寺家にまつわる事件に巻き込まれた小説家、関口。人の記憶を視ることが
 できる超能力探偵・榎木津礼二郎や警視庁の刑事・木場修太郎らも巻き込んだ
 この謎を解くべく、関口は「憑物落とし」の京極堂に助けを求める。
■感想 ☆☆☆☆
 年末から久々に京極シリーズを読み返し始めました。・・・トイレで。
 トイレで読み返すにはあまりに長大。シリーズ中最も短いこの作品ですら
 読み終えるまでに1ヶ月半かかりました。久々の京極堂は相も変わらず
 知的で冗長で不親切。でもこの寄り道の多さ、蘊蓄の多さがとてもいとおしい。
 主人公、関口君はまだまだまっとうです。まっとうな状態の1作目ですら
 読みながら「どう考えても彼を演じるのは永瀬さん(映画化の際に関口さんを
 演じた俳優さん)ではないよね。」としみじみ思いました。


4.いっちばん/畠中恵
■ストーリ
 兄の松之助が長崎屋を出て所帯を持ち、親友の栄吉は菓子作りの修業へ。
 病弱な若だんなは周囲の人たちの新たな出発に寂しそう。妖たちは若だんなを
 慰めようと、競って贈り物探しに出かけるが。長崎屋と商売がたきの品比べに、
 お雛をめぐる恋の鞘当て、果ては若だんなと大天狗の知恵比べ。
 さて勝負の行方は?「しゃばけ」シリーズ第7弾。
■感想 ☆☆☆*
 シリーズ第7弾は若だんなよりも若だんな周辺の人々に重点が置かれているため、
 若だんなの活躍は若干少なめ。それでも、体が弱いなりに自分にできることを
 諦めずに探し続ける若だんなが実に爽やか。脇役を主役に据えられるのは、
 シリーズものならではの安定感があってこそ。けれど、その安定した面白さが
 マンネリにつながらないところが畠中作品が愛されている理由だと思う。
 個人的には自分に自信が持てず厚化粧を施していたお雛さんが厚化粧から脱却し
 幸せを自分の手で掴めて心の底から安心した。

5.ゆめつげ/畠中恵
■ストーリ
 夢の中では見えざるものが見えるはず。小さな神社の神官兄弟、弓月と信行。
 しっかり者の弟に叱られてばかりの弓月には「夢告」の能力があった。
 しかしそれは全く役に立たないしろもの。ある日、ふたりは迷子捜しの依頼を
 礼金ほしさについ引き受けたが・・・。
■感想 ☆☆☆
 幕末の江戸が舞台。「倒幕」だの「尊王攘夷」だの色々な主義主張が横行し
 彼らの言い分のどれが正しいのか、日本はこれからどちらに向かうべきなのか
 まったく先が見えない不安定な時代の日本。「ゆめつげ」という特殊能力が
 あっても未来はわからない。何が正しいのかもわからない。結局は自分たちが
 信じる道を自分たちが信じるままに進むしかない。そう思わせられるラスト。
 主人公ふたりは「しゃばけ」シリーズを彷彿させるのほほん兄弟なのに
 不安な時代背景、政情が背景にあるため、「しゃばけ」シリーズとは異なる
 読後感が面白い。


6.約束された場所で/村上春樹
■内容
 癒しを求めた彼らはなぜ無差別殺人に行き着いたのか?
 オウム信者へのインタビューと河合隼雄氏との対話によって現代の闇に迫る。
■感想 ☆☆☆☆
 オウム真理教の信者によって引き起こされた地下鉄サリン事件。
 私は彼ら末端信者と自分との境界線を見つけられず、読みながら胸が苦しくなった。
 出会う順番が違っていたら、私がこの作品に登場していたかもしれない。
 そういった想いがどうしてもぬぐい去れない。地下鉄サリン事件は起こっては
 いけない事件だった。許されてはならない事件だし、何が起こったのか、
 なぜああいった事件が起きてしまったのかを丁寧に追う必要がある事件だとも思う。
 けれど、それとは異なるところで、この世の中に生きにくさを感じ、まじめに真理を
 追求し、何かを信じたいと願っていただけの信者たちが彼らの追求していたものと
 現実に引き起こされた事件の間に起きた乖離を理解できずに苦しむ姿に共感して
 しまう自分もいる。その一方で、彼らの言葉、生き方に対する違和感もやっぱり
 あって、それなのにこのもやもやを未だにきちんと言葉にできない。

7.ちんぷんかんぷん/畠中恵
■ストーリ
 江戸有数の大店の若だんな、一太郎は摩訶不思議な妖怪に守られながら、
 今日も元気に寝込む日々。しかし、日本橋を焼き尽くす大火に巻かれ、
 とうとう三途の川縁を彷徨う羽目に。「しゃばけ」シリーズ第6弾。

■感想 ☆☆☆☆
 シリーズものならではの醍醐味で、登場するキャラクターみんなに愛着があって
 みんなの幸せを願わずにはいられない幸せな物語。
 若だんなの三途の川縁冒険譚は大好きな鳴り家の登場頻度が高めで大満足。
 「はるがいくよ」はシリーズ中少し異色の切なさメインの話です。
 「生きるものは必ず死ぬ」という当たり前のことを当たり前に受け入れるのは
 死んでいくものではなく残されるものなのだ、と気付かされました。

8.ラッシュライフ/伊坂幸太郎
■ストーリ
 泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。
 女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は
 野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場。並走する四つの物語、交錯する
 十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の
 幕が、今あがる。
■感想 ☆☆☆☆*
 久々に読み返して、「こんなにおもしろかったっけ?」と興奮しました。
 おそらく1回目に読んだときの私はこの小説の面白さをまったく理解できて
 いなかったと思われます。ラストに向けて張り巡らされた伏線に大きな
 カタルシスを覚えました。


9.鷺と雪/北村薫
■ストーリ
 帝都に忍び寄る不穏な足音。ルンペン、ブッポウソウ、ドッペルゲンガー。
 良家の令嬢・英子の目に、時代はどう映るのか。昭和11年2月、雪の朝。
 運命の響きが耳を撃つ。花村英子とそのおかかえ運転手ベッキーさんの
 ミステリー・シリーズ第三弾。
■感想 ☆☆☆☆
 一編一編は、いわゆる「日常の謎」。しかし、シリーズを貫く大きなテーマは
 昭和初期のあの時代、日本を、日本の小市民を飲み込んだ大きな時代の力は
 一体なんだったのか。不穏な時代の動きに気付きながらもいかんともしがたい
 無力な市井の人々。それでも「わたくしは、人間の善き知恵を信じます」と
 力強く語るヒロインがまぶしい。

12月の読書

2010年12月31日 01時09分36秒 | 読書歴
2010年も通勤時間にたくさんの本と出会えました。
私の通勤時間を華やかに彩ってくれた本たちにただただ感謝です。
来年もたくさんの本と出会えますように。

159.夢を食った男たち/阿久悠
■感想 ☆☆☆
 サブタイトルは『「スター誕生」と歌謡曲黄金の70年代』。
 言わずと知れた名作詞家、阿久さんによる昭和の歌謡曲史です。
 読みながら、「昭和」は本当に元気な時代だったのだ、としみじみ
 感じ入りました。まさに「黄金」時代です。
 あとがきで阿久さんが昭和をあみだくじに、平成を巨大迷路に
 例えられていました。あみだくじはゴールまでの道のりが
 スタート地点でも、その途中でもなんとなく見えているし、
 ゴールまでの時間も短い。実に単純な構造だし、「それぞれが
 1本棒を書き足してよい」というような「支援」ができる。
 何よりどのスタートにも何らかの「ゴール」が存在する。
 それに対して、巨大迷路はゴールがひとつしかないうえに、
 そのゴールまでの道のりが実に複雑で、迷路の中にいる人は
 アドバイスのしようがない。迷路の外にいる人もアドバイスは難しいし
 何より、中にいる人にその声が届かない。中で迷っている人は
 ゴールも見えず、外にいる人の姿や声を確認する術もない。

 なるほどなぁ、と思わされました。昔ばかりがよかったわけではないし、
 昔がよかったからといって、もう昔に戻ることはできないけれど。
 私たちが何を失ったのか、今の私たちに何が必要なのか、そのあたりは
 きちんと自分自身で認識しておく必要があるかもしれない、と
 思いました。

160.RDG(1)(2)/荻原規子
■感想 ☆☆☆☆☆
 荻原さんの新シリーズ。面白さのあまり、先へ先へと急いで
 読み進めましたが、現在3巻まで刊行されて、そこで止まっているようです。
 年1冊のペースっぽいので来年の夏ごろに4巻が刊行。
 待ちきれません・・・。

161.シャドウ/道尾秀介
162.背の眼/道尾秀介
163.片眼の猿/道尾秀介
164.ソロモンの犬/道尾秀介
■感想 ☆☆☆
 職場の先輩から「道尾さん面白いよー。人間が描かれているよ。」
 というお勧めを受けて、手を出してみました。
 確かに面白いような。
 でも、のめりこむほどではないような。
 4作品読んでまだ自分の好みなのか、そうではないのかを
 掴み取れていません。しばらくは作品を手に取ってみようと思います。

165.光待つ場所へ/辻村深月
■感想 ☆☆☆☆☆
 久々のホワイト辻村です!辻村さんの青春小説群が大好きな人だったら
 小躍りして喜ぶであろう「あの人たちのその後」です。
 そのため、「冷たい校舎の時は止まる」「凍りのくじら」
 「ぼくのメジャースプーン」「スロウハイツの神様」「名前探しの放課後」
 などを既に読み終えている方のほうがより一層楽しめること間違いなし。
 私はやはり辻村さんといえば青春小説!と思っていますし、
 彼らに対する作者の優しく温かい視線が大好きです。

166.アコギなのかリッパなのか/畠中恵
■感想 ☆☆☆
 畠中さんの現代小説の中ではもっとも好きな作品となりました。
 代議士のセンセイ方を巡るちょっとした謎を解いていく日常ミステリ。
 ミステリ部分よりも代議士センセイ方の日常のほうが色々と
 興味深く面白いです。

167.ひとかげ/よしもとばなな
■感想 ☆☆☆☆
 過去のつらい体験にとらわれ、心に傷を抱えながら愛しあう二人。
 深い闇で起きたたくましい生命の復活を描く「祈り」の物語。

 という物語「とかげ」を14年ぶりに作者自身がリメイクしたものが
 「ひとかげ」です。1冊の中に「ひとかげ」「とかげ」という順で
 入っていて、どんなふうにリメイクしたのかを読み比べることが
 できるつくりです。
 ただただ感嘆しながら読み終えました。確かにストーリー展開は
 同じ。大まかな設定も細かい設定も多くは同じ。けれど選ぶ言葉と
 描き方が異なるだけでこんなにもテイストが異なる作品になるのか、と。
 「ひとかげ」は14年分大人になった作者による「大人の作品」です。
 人との関わり方も、仕事へのスタンスも、恋人との「明日の迎え方」も
 どれも今のばななさんだからこそ、の変化で、年を重ねるってことは
 悪いことばかりじゃないな、と思いました。
 リメイク前、リメイク後、どちらの作品のほうが好みなのか
 ぜひぜひ読み比べてみてほしいです。

168.阿川佐和子の会えばなるほど/阿川佐和子
■感想 ☆☆☆☆☆
 阿川さんホストの対談集です。対談相手へのニュートラルな立ち位置、
 素直な質問が対談相手の心をほぐし、実に気持ちよく色々なことを
 しゃべっていただいています。阿川さんの人との接し方、相手の懐への
 飛び込み具合が大好きで、改めてこんな女性になりたい!と憧れの
 想いを強めました。
 この対談集のおかげであまり知りもせずに苦手だと思っていた
 (苦手だからこそ、彼に関する記事はほとんど追いかけていませんでした。)
 政治家さんのことを「悪い人じゃないのかも。」と思えるようになりました。
 というか苦手だ、苦手だと思っていたけれど、読む限り、大筋の意見に
 賛成できてしまいました。苦手だと思う前に相手のことを知ろうと
 努力することって大切だな、と思いました。

11月の読書

2010年12月31日 00時31分43秒 | 読書歴
11月、12月は読了数がいきなりがくんと落ちました。
年に数回、こんな時期があって、今現在も絶賛、
「文字とあまり仲良くできていないですよ」キャンペーンです。
このまま今年は文字と仲直りできないまま終わりを迎えそうです。

148.愚者のエンドロール/米澤穂信
■感想 ☆☆☆*
 再読。無気力少年ホータローのモットー
 「やらなくていいことはやらない。
  やらなければいけないことなら手短かに」に激しく共感しながら
 読み終えました。私の目指す仕事の取り組み姿勢はまさにこれなのですが
 (じつにサイテー)いかんせん、ワタクシは仕事ができないので
 「できることは何でもします。できないことが多すぎますから。」
 というなんとも情けない(上に、下心見え見えで実に卑劣な)スタンスで
 仕事に取り組んでいて。だからこそ、ホータローの不言実行な生き様を
 憧れの目で見つめていました。
 現実世界でもフィクションの世界でも低音動物に弱いのよねぇ。
 と自分の好みの殿方を再確認しました。

149.海辺のカフカ(上)(下)/村上春樹
■感想 ☆☆☆☆☆
 世間はもうすっかり「村上春樹と言えばIQ84」になっている中
 私は数年前のベストセラーにようやく巡り会えました。図書館では
 村上作品になかなか遭遇できないのです。
 それにしても面白かった。分かりやすかった。今までの村上作品とは
 かなり異なるテイストで、なんだか一気に読みやすく分かりやすく
 なった気がします。古くからの村上ファンがこの作品に拒絶反応を
 抱いていた気持ちがなんとなく理解できました。
 もっとも私は読書にも割りに「分かりやすさ」を求めるタイプなので
 この変化を喜んで受け入れられました。また、分かりやすいように
 見えて分かりにくいというか、声高には語られていないあれこれが
 行間に隠れている様子は伝わってきて。
 分かりやすいストーリー展開にも関わらず、結局のところは
 いつもと同じように考え悩みながら読み終えました。

151.ねこのばば/畠中恵
152.おまけのこ/畠中恵
153.うそうそ/畠中恵
■感想 ☆☆☆☆☆
 このシリーズ、作品を読み進めるにつれて、どんどん登場人物たちに
 愛着が沸いてきます。私のお気に入りは、勿論若旦那なのですが
 最近は若旦那になついてまとわり付いている鳴家がかわいくてかわいくて。
 こんなペットがほしい!!と心底願いながら読み終えました。

154.はじめてのことがいっぱい/よしもとばなな
155.ついてない日々の面白み/よしもとばなな
■感想 ☆☆☆
 相変わらずのよしもと節炸裂。かっこよく年を重ねているなー、
 と勝手によしもとさんに親近感を抱きながら読み終えました。
 個人的には、よしもとさんのエッセイを読むようになってから
 ようやくのこと「作家」という職業がいかに大変なのか、に
 想いを馳せることができるようになり、それが私にとって
 大きな収穫でした。

156.窓際OLのトホホな朝ウフフの夜/斎藤由香
■感想 ☆☆☆
 「作家の娘」という境遇が同じだからでしょうか。
 読むたびに(と言っても今回が2冊目。)阿川さんを思い出します。
 気さくな感じとか、自分を落としてエッセイをしめる感じとか。
 とはいえ、斎藤さんのほうがちょっぴりオトナテイスト。
 夜の噂話などはうちの会社ではありえない(と思っています。
 信じています。)お話満載で楽しく読みました。

157.別冊図書館戦争1/有川浩
158.別冊図書館戦争2/有川浩
■感想 ☆☆☆☆☆
 ・・・すごい。すごすぎる。
 久々に読んだ図書館戦争シリーズ。「図書館戦争」シリーズから
 しばらく遠ざかっていたために、このシリーズのこのベタ甘な展開を
 思い出すのに時間がかかりました。
 「そうだった!そうだった!!この人たちはこんな感じだった!!」
 と納得するまでに、照れ臭さのあまりに何十回となく読みかけの本を
 膝の上に置いてきゃーきゃー言っておりました。(客観的に見て
 なんとも痛々しい構図だなー。)
 結論。やはり私は「図書館戦争」シリーズが大好きです。
 このベタ過ぎるぐらいベタな展開も、甘い甘いストーリー展開も
 どれもこれも癖になります。

とっても不幸な幸運/畠中恵

2010年11月12日 21時29分29秒 | 読書歴
147.とっても不幸な幸運/畠中恵
■ストーリ
ちょっとひねくれているけれど、料理自慢で世話好きの店長がいる酒場。
クセモノの常連客たちが、新宿の酒場に持ち込んだ「とっても不幸な幸運」
という名前の缶。中から現れた不思議な物が常連客たちにもたらしたものは、
幸せなのか、それとも・・・。

■感想 ☆☆☆
畠山作品については、評判となっていた「しゃばけ」シリーズより
現代ものに先に出会っていましたが、あまり好みではないなぁ、というのが
正直な感想でした。
今回、改めて現代物の作品にチャレンジしてみて苦手意識は消えましたが、
畠山作品では現代ものよりも時代もののほうが登場人物たちが作品世界に
馴染んでいるな、と感じました。
同じように魅力的なキャラクターなのに、時代物のほうが生き生きと
楽しそうに動いているように見えました。それは「時代物」で
「ファンタジー」という制約があるけれど、その制約を超越できる
設定を有している「しゃばけ」シリーズならでは、かもしれませんが。

ミステリーとしては大好きな「日常の謎」カテゴリ枠。
そしてほんのりファンタジー風味。疲れず楽しく読み進められます。
こんなお店があったらぜひ通いたい。
私も缶詰を手に入れて缶詰が見せてくれる幻を楽しみたい。
(登場人物たちは楽しんでいませんでしたが。)
何より美味しそうな温かい食事の数々を楽しみたい!
と切に思いました。読んでいるだけでおなかが空いてきます。
解説に「ドラマ化に向いている作品なのでは。」と書かれて
いましたが、確かに!「インディゴの夜」みたいにぜひ昼帯で。
ライトコメディで映像化してほしいなー。
その際、主役のマスターはぜひ遠藤憲一さんでお願いします。
武骨で腕っ節が強くて、人情味があるマスターにぴったりだと
思うのです。でもって、マスターの娘さんには大後寿々花ちゃん。
バイト君は佐藤健さんか亀梨君かなー。
・・・もはや昼ドラではありえないキャスティング。

幸せ最高ありがとうまじで/本谷有希子

2010年11月09日 21時48分24秒 | 読書歴
144.幸せ最高ありがとうまじで/本谷有希子

■ストーリ
ある新聞販売店を訪ねて来たひとりの女性。
彼女は販売店の店主と7年間も愛人関係にあると告白する。
彼女の出現で怒涛の如く吹き荒れる一家の本音と確執。

■感想 ☆☆☆*
約2時間の舞台作品の書籍化とあって、同じぐらいの時間でさくさくと
読み進められます。さくさくと読み進められるけれど、
テーマはいつもの本谷作品らしい「悪意」と「嫉妬」、
「エゴ」と「自意識」を抱えた人間たちのぶつかりあいで
読み終えた後、体内に膿がどっしりと蓄積される感じ。
「分かる」とか「共感した」とか、そういったありきたりの感想を
一切、受け付けない本谷ワールドです。
その毒気にあてられながらも、突き抜けた世界観に爽快さを感じて
読み終えました。

ヒロインの奇天烈キャラは見事。
ありがちな「トラウマ」や「心の傷」を一笑し、「それがなんなの?」
「免罪符になるの?トラウマさえあれば許されるの?」とわめき暴れる。
共感を一切必要としない、そういったキャラ設定をしているにも関わらず
彼女が抱える虚無がどこかで理解できてしまうのは、
彼女が「現代を生きる私たちの焦燥感」をデフォルメして抱えているからだろう。
「何物かでありたい。」
「世界にひとりだけの特別な存在でいたい。」
「私にしかできないことがあるはず。」
そういった価値観、願いをもっていて、
だからこそ「何もない。」ことが怖い彼女。
彼女にとっては、「何もなく生きているぐらいならば、
いっそ、辛いことや死にたくなるような出来事、
トラウマがあるほうがまだまし。」なのだ。
彼女の抱える虚無感は果てしなく、けれどどこか底が浅い。
その底の浅さこそが「痛々しさ」につながっていて、
この物語を「私たちの物語」にしている気がしてならない。

舞台化された時はヒロインを永作さんが演じられたそうです。
あー。なんかぴったり。
きっと、迫力あふれる演技で、見事にこのヒロインの狂気を
魅せたんだろうな。見たかったなー。と思いましたが、
どうやらこの舞台。チケットは即日完売だった模様。
そりゃそうだよねー。と納得しました。

あるキング/伊坂幸太郎

2010年11月08日 23時40分24秒 | 読書歴
141.あるキング/伊坂幸太郎

■ストーリ
弱小地方球団・仙醍キングスの熱烈なファンである両親のもとに生まれた
山田王求(やまだ おうく)。「王が求め、王に求められる」ようにと
名づけられた王求は、仙醍キングスに入団してチームを優勝に導く運命を
背負い、野球選手になるべく育てられる。
期待以上に王求の才能が飛び抜けていると知った両親は、さらに異常とも
いえる情熱を彼にそそぐ。天才が同時代、同空間に存在するとき、
その天才は周りの人間に何をもたらすのか? 

■感想 ☆☆☆
シェークスピアをまったく読んだことのない人はこの作品を、
折に触れ、登場する印象的な3人の魔女を、どのように読み解くのだろう。
マクベスのストーリすら知らない人もまたしかり。
そういった意味で読者を置いてけぼりにしているようにも感じられました。
また、今までの伊坂作品に多く見られた「ラストに向かって行われる
爽快な伏線の回収」はまったく登場せず、そこはとても残念というか
伊坂さんの今までの作品のようなカタルシスを求めて読むと
肩透かしをくらっただろうなー、とは思いました。
そういった意味で、賛否両論色々と物議をかもしていた状況を
知った上で読めた私は「今までと違うぞー。」という心積もりをして
読めて幸せだったな、と。おそらく何も知らずに読んでいたら
「え?!え?!」と戸惑って読み進められなかったんじゃないかな。
それぐらい今までの伊坂作品とテイストが異なります。

ただ、「今までの伊坂作品らしくない」ものの、
この作品でも伏線はいたるところに張り巡らされています。
始めからラストの1文に向かって、物語は語られ続けます。
読後感はまったく爽快な終わり方ではないものの、
この話は「救い」について描かれているのだと思いました。

重い運命を背負って生きる天才野球選手。
天才にも関わらず、むしろ天才であるが故に、運命はどんどん過酷な
課題を主人公に与え、主人公はそれを静かに受け入れます。
「救い」は彼には与えられません。
けれど、彼らと関わった人たちにとっては、やはり彼の存在や
彼の生きる姿勢、野球に向かう真摯な生き様は「奇跡」であり、
「救い」なのだろうと思いました。
そして、彼がラストに放つ(はずの)ホームランこそ、
多くの人の思いと願いが込められた「奇跡」で「救い」なんだろうな
とラストの場面を読みながら、胸が熱くなりました。
読み終えた後、王求の人生をしみじみと振り返りました。
それぐらい余韻が残る作品でした。

子どもたちは夜と遊ぶ(上)(下)/辻村深月

2010年11月07日 17時28分43秒 | 読書歴
139.子供たちは夜と遊ぶ(上)(下)/辻村深月

■ストーリ
優しく触れようとしても壊してしまう、大人になりきれない子どもたちは、
暗い恋の闇路へと迷い込んでしまう。同じ大学に通う浅葱(あさぎ)と
狐塚(こづか)、月子と恭司。彼らを取り巻く一方通行の片想いの歯車は、
思わぬ連続殺人事件と絡まり、悲しくも残酷な方向へと狂い始める。
掛け違えた恋のボタンと、絶望の淵に蹲る殺人鬼の影には、どんな結末が
待っているのか。

■感想 ☆☆☆☆☆
何度読み返したか分からないこの作品。
最近、「読書したい!」熱が高まっている母上に勧めたところ、
見事にはまってくれました。で、母上が夢中で読んでいるのを見て
私もつられてしまい、またもや再読。

相も変わらず、読み返すたびに辛く切ない気持ちになります。
しかし、今回初めて「あぁ、この作品はアンハッピーエンドというわけじゃ
なかったんだな。」と思えました。そう思いつつも胸がはりさけそうな想いは
消えないままでしたが、それでも今まで読み返すたびに抱いていた
「なんでこの結末にたどりついちゃったんだろう。
 どこでどの選択肢を間違えたんだろう。」
という後悔のような感情はようやく解消できました。

「彼」にとっては、私がこんなにもやりきれない感情を抱くこの状況ですら、
「ようやく手に入れた幸せ」だったのだと受け入れることができました。
この状況を「幸せ」と感じてしまう彼の状況は、やはりどう考えても
悲惨で切ないけれど、ラストで彼がヒロインに伝えた
「君は彼について色々と聞くかもしれない。
 けれど覚えておいて。彼は本当に幸せだった。
 彼は決してかわいそうなやつなんかじゃなかったんだ。」
という言葉は大きな救いでした。

「彼」に「その後」があることが嬉しいし、幸せと感じられるようになった
彼ならば、「その後」に広がる未来で、きっと幸せをつかみ取っただろうと
思いました。

ところで、今月(10月)の「今夜も生でさだまさし」(通称ナマサダ)では
この作品でインパクトあるアイテムとして登場している蝶「アサギマダラ」の
写真が紹介されました。予想通りの美しさに納得。
うん。
アサギは(アサギマダラも)華やかで華奢で美しい生き物だと思ってました。
そして「美しい」は「悲しい」にとても似合うな、とも思いました。

ちなみに、珍しく作品世界に入り込んでしまった母上。
上巻を読み終えた後、下巻は1日で読破しておりました。
これ、母上にとっては画期的な出来事なのです。すごいことなのです。
「本」って合う、合わないが本当にあるんだなー、好みの本に出合えたら
読むという行為はまったく苦痛ではなくなるんだな、としみじみ思いました。

さようなら、らぶ子 その他/よしもとばなな

2010年11月05日 00時02分04秒 | 読書歴
132.さようなら、ラブ子―yoshimotobanana.com(6)/よしもとばなな
133.大人の水ぼうそう―yoshimotobanana.com 2009 /よしもとばなな
134.なにもかも二倍―yoshimotobanana.com 2007 /よしもとばなな

■内容
⇒さようなら、ラブ子
わが子、通称「チビラ」は1歳になりました。そして12年連れ添った
ゴールデンレトリバー「ラブ子」との別れが近づいてきて。
家族との最後の日々。忘れることは一生ないと思う2004年の記録。
⇒大人の水ぼうそう
チビからもらって、初めてかかった水ぼうそう。
カラフルでしましまな2009年の毎日を1年分。
⇒なにもかも二倍
ハワイで奇跡のような夕陽に照らされ、ローマで憧れのダリオ監督に出会う。
旅と大切な人との出会いを重ねながら、新作小説の完成を目指した
2007年の1年間。よいことも悪いこともどかんときた出来事の数々。

■感想 ☆☆☆☆
よしもとばななさんがWEB上で公開している日記を1年分まとめて
文庫化したもの。あまりの表紙のかわいらしさに思わず全てまとめて
借りたくなりましたが、たくさんあり過ぎて断念。
「公開するもの」と割り切って、話題は取捨選択していると思うのですが、
それでも書くことを選んだ話題に関しては飾ることなく、
自分の思いを言葉にしていて、その潔さに圧倒されました。
スピリチュアルなことに関する部分など、内容すべてに共感している
わけではありませんが、意見の違いは違いとして受け入れつつ、
感銘を受けながら読むことができました。
日記から垣間見える彼女は、作品世界から受ける印象よりもう少し情熱的。
好きなもの、嫌いなものがしっかり確立していて、
嫌いなものは嫌いとはっきり言う。その嘘をつかない正直な感じが
読んでいて感じる心地よさにつながっているのかな、と思いました。

「なにもかも二倍」のあとがきに書かれていた文章が印象的で
非常に心に残りました。


「自分には関係ない、どうでもいいかもしれないと思うことを
気を抜いてだらだらと読んでいると、中に自分にとってとんでもない
大事なことが入っていた、宝探しみたい」というふうに書こうと
意図しています。がらくたが多すぎるときもありますが、
いいことばかり抜粋した教訓っぽい本っていうのが
たいていあんまり面白くないと思うので、たぶんがらくたが
好きなんでしょう。


うん。私もそういった気持ちでばななさんの本を手にとっています。
エッセイ、小説、ジャンルにこだわらず、ばななさんの作品を
読んでいると、どこかで「あ、この言葉好きだな。」と思える
言葉に出会える。その瞬間が大好きです。

10月の読書

2010年11月03日 01時53分29秒 | 読書歴
今月はエッセイ多め。読書傾向に偏りがあるなー。

131.うずまき猫の探し方/村上春樹
■内容
アメリカのケンブリッジに住んだ93年から95年にかけての滞在記。
ボストン・マラソンに向けて昴揚していく街の表情、「猫の喜ぶビデオ」の
驚くべき効果、年末に車が盗まれて困り果てた話。毎度おなじみ水丸画伯と
愛妻、陽子夫人が絵と写真で参加した絵日記風エッセイ集。

■感想 ☆☆☆
「やがて哀しき日本語」の後日譚にあたるエッセイ集。と書かれていましたが
「やがて~」よりかなりくだけた感じで読みやすくなっています。
耀子夫人の写真も瑞々しくて印象的。夫婦の仲の良さが写真からも
文章からも伝わってきました。

132.さようならラブ子/よしもとばなな
133.おとなの水ぼうそう/よしもとばなな
134.なにもかも2倍/よしもとばなな

■感想 ☆☆☆*
 感想が長くなったため、コチラにアップしました。

135.天野祐吉のことばの原っぱ/天野祐吉
■内容
近ごろ、ことばは元気がない。正しい日本語よりも、美しい日本語よりも、
いきいきとした日本語がいい。ことばをめぐる58編のエッセイ。

■感想 ☆☆☆
朝日新聞でテレビCMに関するコラムを長期連載している著者。
コラムがとても面白いため、エッセイにも手を出してみました。
まとめて読んでみて、私は彼の軽やかな考え方、地に足つけて
生きようとする姿勢が大好きなんだな、と実感しました。
楽しく読み進めていると、随所に共感できる言葉があって
読み終えた後、なんとなくすっきりしました。

136.窓際OL会社はいつもてんやわんや/斉藤由香
■内容
お台場某社より実況中継する赤裸々爆裂エッセイ。
年末年始に強行された社屋のドタバタ引越、精力剤「マカ」をめぐる
珍妙な出来事、あっと驚くOL夜のナイショ話、フジテレビをはじめと
するマスコミの実態。ニッポンの会社ってどこもこうなの?!
会社や仕事に悩んだ時、ビジネス書を読む前に手にとってほしい1冊。

■感想 ☆☆☆☆
著者は作家、北杜夫さんの一人娘。父親を見て育った娘は「絶対に
作家にだけはなるまい」と決意し、サントリーへ入社。会社員生活を
送っていますが、サントリーさんが大変自由な社風のようで、
こういったエッセイ連載もOK、エッセイでの赤裸々な会社暴露話も
OK、となんでもありの模様。そんな自由な社風の中でのびのび
楽しく会社員生活を送っている由香さんが素敵でした。
窓際OLと謙遜しているものの、エッセイを読む限り、
かなりの愛社精神、かなりの働き者っぷり。歩く広告塔として、
恐れを知らない広告塔としていろんなところに顔を出し、
顔を出した先々でVIPに、有名人に、無名人に、
多くの方々へ精力的に自社製品を宣伝されています。
ぜひ他のエッセイも読んでみたい!

137.しあわせ/レイフ・クリスチャンソン
■内容
「しあわせ」ってどんなもの?
欲しい物を手に入れること?欲しい物を探し求められること?

■感想 ☆☆☆
シンプルな言葉で綴られた絵本。
白黒の朴訥としたラインで描かれている挿絵もシンプル。
大人のための絵本の「いいこと言うよー」という雰囲気が
とても苦手なのですが、この作品はそういった雰囲気なく
言葉にも余計な修飾なく、落ち着いた気持ちで読めました。

138.しあわせな葉っぱ/おーなり由子
■ストーリ
ある朝、目がさめると、頭のてっぺんに芽が出ていました。
葉っぱは、あっという間に大きくなり、プチンと抜いても、
すぐに生えてきます。いつもより喉も渇きます。
だけど、誰も気づいてくれません。
隠そうとすればするほど、勢いよく生いしげる葉っぱ。
他人には見えない葉っぱと暮らすひとりの女の子の切ない恋の絵物語。

■感想 ☆☆☆☆
作品1ページ目に記載されている文章
「かみさま どうかどうかハッピーエンドにしてください」。
読み終えた後、私も心から願いました。
どうか彼女がこれからも笑顔で過ごせますように。
どうか彼女が出会った大切な人同じ思いを共有できますように。
おーなりさんのあたたかいイラストがこの作品の雰囲気を
そのまま表現してくれています。
寒い冬に暖かい飲み物を飲みながら読み返したくなる作品。
読み返すたびにこの作品を好きだと思う気持ちが強くなります。

139.子どもたちは夜と遊ぶ(上)(下)
■感想 ☆☆☆☆☆
感想長くなったため、コチラにアップしました。

141.あるキング/伊坂幸太郎
■感想 ☆☆☆*
感想長くなったため、コチラにアップしました。

142.みずうみ/よしもとばなな
■ストーリ
いつの間にか私の家に住むようになった中島くん。みずうみの近くに
住む彼の昔の友だちを訪ねたのをきっかけに、彼の過去が明らかになる。
壮絶で悲しく、すべてを包み込む澄みきった優しさにあふれた小説。

■感想 ☆☆*
カバーの美しさに心ひかれ、借りた作品。深く静かな海の底のような
群青色に広がる無数の星。その星がカバーをより深みのある群青色にし、
じっと見つめたくなるカバー。
物語自体も、このカバーとよく合った深く静かな物語です。
弱弱しく細く生きていくのに精いっぱいの中島君と親を失ったばかりで
傷ついてはいるものの、基本的に生きる力に満ち溢れていてしっかり
しているちひろが出会って、徐々に距離を縮めていく日々を淡々と
描いています。中盤以降、やはり淡々と語られる中島君の過去は、
かなり悲惨ですが、その語り口が悲惨さを感じさせません。
けれど、大きな闇をまざまざと感じ、作者が世の中には残酷さや
悲惨さがごくごく日常的に存在すると思っていること、その中で
生きていかなければならないと思っていること、
そういった決意のようなものを感じさせました。

143.ぬしさまへ/畠中恵
■ストーリ
今日も元気に寝込んでいる大店長崎屋の若だんな、一太郎。彼の周囲には
なぜか妖怪がいっぱい。おまけに難事件もめいっぱい。幼なじみの栄吉が
作った饅頭を食べたご隠居が死んでしまったり、新品の布団から泣き声が
聞こえたり。でも、こんなときこそ若だんなの名推理が冴えわたる。
ちょっとトボケた妖怪たちも手下となって大活躍。シリーズ第2弾。

■感想 ☆☆☆*
前作同様、かわいらしいキャラクターがたくさん。彼らが生き生きと
ぼっちゃんの周りを駆け巡っていて、その様子を見て(?)いるだけで
心があったかくなります。
ぼっちゃんがねー、とにかくかわいらしい。
前作では甘やかされてかわいがられて、でもまっとうに生きている
ぼっちゃんを描いていましたが、今作では、まっとうに生きているどころか、
ちゃんと周囲が見えていて、自分の境遇も分かっていて、その中で
自分の存在意義を考えている大人のぼっちゃんが描かれていて、
本当にいい子なんだなぁ、としみじみ思いました。

144.幸せ最高ありがとうマジで!/本谷有希子
■感想 ☆☆☆☆
感想長くなりました。別途、アップします。

145.差別を超えて/臼井敏男
■感想 ☆☆☆
新書サイズの入門編。「」という言葉は知っているものの、
現状やその歴史的変遷についてほとんど知識がないため、
手にとりました。読んでよかった。
福岡県は全国でも「」が多い地域です。「」を普段、
意識することがないのは、「差別」がなくなっているから
ではなく、この問題が「触れてはいけないこと」として
目をそらされていることだから、という本書内の文章を読んで
自分自身を振り返り、納得しました。

146.あさひやま動物園
■感想 ☆☆☆☆☆
旭山動物園で自分へのお土産用に購入したフォトエッセイ集。
どの子も非常にかわいらしく撮れていて、また動物園に
行きたくなりました。何度も見返していますが、何度見ても
やはりカバが一番好き!あのもったりとしたお尻がたまりません。

147.とっても不幸な幸運/畠中恵
■感想 ☆☆☆
感想長くなりました。別途、アップします。