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のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

2011年12月の読書

2012年02月12日 22時00分02秒 | 読書歴
2011年も豊かな読書生活を送れました。
・・・って、今頃振り返ってるあたりからも
2012年のずんだれた生活ぶりが如実に伺えるわけですが。
2011年に読んだ本は134冊。昨年よりだいぶ減りました。
でも、充実していた・・・かな?ま、いつも通りかな。
例年通りの楽しい読書生活でした。
今年も通勤時間が充実しますように。と願っている割に
今年に入ってからの私は冬眠モードで
通勤時間をひたすら睡眠時間にあてています。

121.みんなのふこう/若竹七海
■ストーリ
田舎町のラジオ局・葉崎FM、毎週土曜夜に放送される読者参加型番組「みんなの不幸」は、リスナーの赤裸々な不幸自慢が評判の人気コーナーに。そこに届いた一通の投書。
「聞いてください。わたしの友だち、こんなにも不幸なんです・・・。」
海辺の町・葉崎を舞台に、疫病神がついていると噂されながら、いつでも前向きな17歳のココロちゃんと、彼女を見守る同い年の女子高生ペンペン草ちゃんがくりひろげる楽しくて苦い青春物語。

■感想 ☆☆*
軽い軽いコージーミステリー。難しいこと考えずに気楽に楽しみました。ただ、ココロちゃんの境遇があまりに不幸で、途中、単純に楽しめなくなってしまいました。ココロちゃんはちっとも悪くはないのに、ひたすらに不幸がふりかかってくる様子は三谷映画を彷彿。根がへたれなので、不幸が重なる様子を見るのは、フィクションでも苦手なのです。

122.ナンシー関のボン研究所
■内容
ナンシー自ら「みなさん(読者)と私をつなぐ架け橋」と明言していた公式ホームページ「ボン研究所」の魅力を一冊に収録。松本人志に対する志村けんの影響力を分析し、UFJ銀行の不条理に憤ってみたかと思えば、「私にはホームページを維持するなんて無理かも」と嘆いてみる。「ナンシー自身による作品解説」「いとうせいこうからの50の質問」などの企画ものも完全収録。

■感想 ☆☆☆
ふと、ナンシーさんが懐かしくなって、図書館から探し出しました。読みながら、ナンシーさんが今も生きてたら、今のテレビをどんなふうに見ていたかな、とかマツコ・デラックスさんとの対談とかぜひとも見たかったなー、などとせん無いことを何度も思いました。この人の歯に衣着せぬようでいて、周囲に繊細に気を配っていることが偲ばれる文章が大好きでした。

123.天狗風/宮部みゆき
■ストーリ
一陣の風が吹いたとき、嫁入り前の娘が次々と神隠しに。不思議な力をもつお初は、算学の道場に通う右京之介とともに、忽然と姿を消した娘たちの行方を追うことになった。ところが闇に響く謎の声や観音様の姿を借りたもののけに翻弄され、調べは難航する。

■感想 ☆☆☆*
『震える岩』につづく「霊験お初捕物控」第2弾。第1弾も第2弾も読んだことはちゃんと覚えているのに、内容をさっぱり思い出せません・・・。
というわけで、新鮮な気持ちで読めました。宮部さんの時代物は市井の人々がまっとうに誠実に生きていて、そして、そこかしこに情緒ある仕草や科白など「今は懐かしい」ものがたくさん残っているのに、人の行動や考えは現代と変わらず、そのバランスが好きでした。

124.リリー&ナンシーの小さなスナック
■内容
「福田和子はなぜモテるのか」「『ポジティブ』全盛の世は妄想しつつ諦めていこう」「タキシードとVシネマ。それは男の身だしなみ」などなど、ナンシーとリリーが送る最初で最後の対談集。

■感想 ☆☆☆*
リリーさんとナンシーさんのお互いへの信頼溢れるやり取りが面白く温かい対談集でした。テーマに沿って繰り広げられる会話がいつの間にか思いもかけない小道に入り込んでいく様子がいかにもふたりっぽい。ゆるーい雰囲気で繰り広げられる対談集は思いがけず、ナンシーさんの急逝で幕を閉じます。最後の文章はリリーさんひとりで書かれたもので胸が締め付けられました。

125.今なんつった?/宮藤官九郎
■内容
思わず振り向いてしまうような名セリフをエッセイに。宮藤官九郎がテレビ、舞台、映画、音楽、日常で耳にした名セリフ、そして迷セリフ111個を紹介する。

■感想 ☆☆☆
あー!もう!!お友達になりたいっ!と思わず身もだえしそうになったエッセイ集でした。奥様が羨ましい・・・。

126.銀の戦士と魔法の乙女/ジェン・ホリング
■ストーリ
マクドネル氏族長の末娘ローズは幼なじみとの結婚を控えていたが、父親の容態が急変する。ローズは父を治癒しようと決意し婚礼を延期すると、「北の魔法使い」と呼ばれるウイリアム・マッケイをみずから迎えに向かった。だが、卓越した治癒能力を持つウイリアムもまた魔女狩りの嵐が吹き荒れるなか、苦境にあった。天賦の才を思うように人助けに活用できない苦しみを持つウイリアム。その心の痛みをローズは瞬時に理解する。互いのなかに同じ思いを見出したふたりはいつしか恋に落ちるが、死の床にいる父の病はますます悪くなり・・・。

■感想 ☆☆☆☆
「ハイランダーと魔法の乙女」の続編です。正確には続編の続編。三部作の中の最終作、ヒロインは三女、ローズです。父親にかけられている邪悪な呪いにまつわる謎がようやく解決しました。今まで張り巡らされていた伏線と謎が一気に回収され、めでたしめでたしの大円団。三姉妹も三姉妹の父親も、彼女たちの愛する人たちも、みんなみんなで迎えるハッピーエンドに「あー!これでこそラブロマンス!」と爽快な満足感を味わえました。
でも、あとがきによると作品人気は二作目が一番高いんだとか。楽しみです。

127.マイラストソング/久世光彦
128.マイラストソング最終章/久世光彦
■内容
もし最期の刻に一曲だけ聴くことができるとしたら、どんな歌を選ぶだろうか。上村一夫と「港が見える丘」、若山富三郎と「時の過ぎゆくままに」、美空ひばりと「さくらの唄」、戦時中に流れた「ハイケンスのセレナーデ」から「何日君再来」、讃美歌まで、忘れえぬ歌と人にまつわる思い出を名文で綴ったエッセイ集。

■感想 ☆☆☆*
昭和の懐かしい歌と歌い手にまつわる思い出がたくさんたくさん語られていて、この時代の人たちは、「世代を超えた共通の流行歌」を持っている人たちなんだな、歌にまつわる思い出をたくさん持てるぐらいに歌との関わりが濃密な人たちなんだな、と思いました。
今も「時代を彩る歌」はたくさん世に出ているけれど、今、みんなで「あの歌ってさー!」と盛り上がれる歌ってどのくらいあるんだろう、とそんなことを思いながら読み終えました。

129.バレエダンサー(上)(下)/ルーマ・ゴッデン
■ストーリ
姉クリスタルのバレエのレッスンについていったことからバレエのとりこになっていく少年デューン。しかし、家族の応援を得られずに、バレエダンサーをめざすのは、並み大抵のことではなかった。ロンドンを舞台に、舞踏に対して天性の才能を持つ少年が、幾多の困難をのりこえ、才能を開花させていく。

■感想 ☆☆☆☆☆
久々に、会社に着いてからも家に帰ってからも本を置くことができなかった作品。主人公と主人公の姉の成長を固唾を呑んで見守りました。バレリーナを目指す人たちの物語が面白いのは、バレエというのが人生を占める割合がとてつもなく大きくて、バレエにかける情熱が生半可なものでは決して大成できないものだからだと思うのです。本気で何かを目指す人たちの姿は清清しくて美しい。
この作品、上巻を読み終えた時点では、主人公はデューンで、デューンの成長物語だと思っていたのですが、下巻に入ってからようやく、この物語の主人公はデューンとデューンの姉で、このふたりの成長物語なのだと気付くことができました。それぐらいデューンの姉はヒロインとしては異色です。異色だけれど、非常に共感しやすい人間らしいヒロインでした。「天性の人」と「努力の人」という構図は、ほんの少し「ガラスの仮面」を髣髴とさせるものがあります。もっとも姫島亜弓のほうがデューンの姉の1000倍ぐらい人間として、女性としてまっとうで優しい人だとは思いますが。
この作品、おそらく本屋さんで見つけたら買ってしまうだろうなー。

131.ころころろ/畠中恵
■ストーリ
摩訶不思議な妖怪たちに守られながら、今日も元気に寝込んでいる江戸有数の大店の若だんな・一太郎。ある朝起きると、目から光が奪われていた!その理由は、空前絶後のとばっちり?長崎屋絶体絶命の危機に若だんなは名推理を疲労するが、光の奪還には、暗雲が垂れこめていて・・・。

■感想 ☆☆☆☆
「しゃばけ」シリーズのどこまで読んだかよく分からなくなって借りてしまいましたが、まんまと読んだことのある作品でした。この作品が8作品目。次は9作目を借りてみなくては。へたれで甘いもの大好きであほちんな家鳴りが非常にかわいらしいです。読むたびにこんな子達が我が家にもいればいいのにな、と思います。我が家には甘いものもたくさんあるのになー。

132.ペンギン・ハイウェイ/森見登美彦
■ストーリ
小学四年生のぼくが住む郊外の町に突然ペンギンたちが現れた。この事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、その謎を研究することにした。未知と出会うことの驚きに満ちた長編小説。

■感想 ☆☆☆☆
小学四年生の「ぼく」が主人公。いつもとちょっぴりテイストが異なるけれど、ああ、この「ぼく」がまっとうに大きくなると、ああいうへたれ京大生になってしまうのね・・・と納得してしまう「ぼく」でした。賢いし、努力大好きなんだけど、方向がずれているあたりとか、男女間の「好き」とかに疎いあたりとか。
作品として「好き」なのに、どこが好きなの?と説明を求められると困る作品ではあります。魅力を言葉で伝えにくい。とらえどころのない魅力です。

133.雑文集/村上春樹
■内容
インタビュー、受賞の挨拶、海外版への序文、音楽論、書評、人物論、結婚式の祝電――。初収録エッセイから未発表超短編小説まで1979年から2010年までの「未収録作品、未発表の文章」を村上春樹がセレクトした69篇。

■感想 ☆☆☆☆
やっぱり好きです。村上さんの人となりが伝わってくる文章が。小説も好きだけれど、エッセイ(とかインタビュー記事とか挨拶とか)は小説の100倍好きです。

134.さらば友よ/三谷幸喜
■内容
朝日新聞夕刊連載の好評エッセイシリーズ第9弾。ニューヨーク・ブロードウェーで行われた初公演「トーク・ライク・シンギング」の話題を中心に、愛猫オシマンベとの最期、大量の枝豆との格闘など、人気脚本家の日々の出来事を独特の感性で描く。

■感想 ☆☆☆☆
あぁ、こんなに仲良くオシマンベたちと暮らしていたのに・・・と読みながら哀しくなりました。三谷夫妻とゆかいな仲間たちの様子をこのエッセイで読むのがとても好きだったのに。三谷夫妻は私にとって理想の、そして憧れの夫妻だったのに。
三谷さんにとって、この連載はもはや日記のようなものだろうな、と思いました。この連載を読み返すだけで、いろんな思い出が蘇ってくるだろうな。私も「トーク・ライク・シンギング」のことを懐かしく思い出しました。そうだった、そうだった!(香取)慎吾さんがミュージカルだって?!とめちゃんこ驚いたものでした。でも、このミュージカルがあったからこそ、今の慎吾さんなんだろうなー。

2011年11月の読書

2011年12月31日 00時12分47秒 | 読書歴
「外国小説」が読めるようになったので、ちょっとしたブームになりました。
引き続き、「海外文学」コーナーチェックに勤しんでいます。

111.美女と竹林/森見登美彦
■ストーリ
美女と竹林。それは、森見氏がやみくもに好きなものである。妄想と執筆に明け暮れ、多忙にして過酷な日々を送っていた森見氏を支えてくれたのは、竹林であった。美女ではないのが、どうにも遺憾である。竹林の拝借に成功した作家は、将来の多角的経営を夢見る。虚実いりまぜて、タケノコと一緒に煮込んだ、人気文士の随筆集。

■感想 ☆☆☆☆
随筆コーナーに並べられていたこの作品。内容紹介にも「人気文士の随筆集」と紹介されていましたが、声を大にして言いたいっ。「いやいやいや!!」随筆じゃあないんじゃない?虚実いりまぜて、って言うか、どこをどう切っても「虚」だらけじゃない?
と、ひたすらに脱力しながら読んでいましたが、文句を言いつつも相当に!ものすごーーーーーーーーーく好きでした。もう!虚実の入り混ぜ方が清清しいったら!こういう茶目っ気、大好き!

112.ハイランダーと魔法の乙女/ジェン・ホリング
■ストーリ
16世紀末、スコットランドに魔女狩りの嵐が吹き荒れていた頃、族長の娘で母親ゆずりの不思議な力を持つイソベルは、母の不幸な死をきっかけに、イングランドの貴族に預けられていた。ある日、彼女の元に父親が差し向けた美しく逞しいハイランダー、サー・フィリップが到着する。彼はイソベルに、キンクリーグ伯爵との縁談が決まったと知らせ、護衛役として故郷まで同行するという。こうして騎士と魔法の力を持つ乙女の旅がはじまった。だが、婚約者の元へ無事に令嬢を届ける使命をにないながらも、フィリップはイソベルにひかれていく。そして、イソベルにはどうしても見えてしまう過去や未来があった。

■感想 ☆☆☆☆
表紙の感じから受ける印象では、期待しないほうがよさそう・・・でも軽く読めるかなー?という感じだったのですが、あまり期待していなかったからなのか、びっくりするぐらい楽しめました。ロマンスあり、冒険あり、謎解きあり、秘密あり、魔法あり、の極上のエンターテイメント!最後まで息つく暇もなく読み終えました。ロマンスの割合が多すぎず少なすぎず、ですごく読みやすかったなー。ヒロインは三人姉妹の長女。というわけで、全三部作のようです。ぜひとも読み通したい!

113.風の竪琴弾き/マキリップ
■ストーリ
イムリスの戦は拡大を続け、アン、ヘルン、アイシグ、オスターランド、そしてモルゴンの故郷ヘドでさえものみこもうとしていた。なぜ自分は命を狙われるのか、偉大なる者はどこにいってしまったのか、変身術者とはいったい何者なのか。答えを求めて、モルゴンはレーデルルとともに、生き残った魔法使いがいるランゴルドへ向かう。

■感想 ☆☆☆*
読みながら、作者のイマジネーションの壮大さに圧倒されました。三部作の最終作。第2作目まで読み終えて、この話にどう決着をつけるつもりなんだろう。話の終わりがまったく見えないっ!とやきもきしていましたが、話の終わりが私ごときに見えるはずもなかったわ・・・。広がり行く壮大な世界観に「そう来ましたかー!!」と引きずり込まれました。「物語の世界」に入り込む楽しさを味わいました。

114.まばたきを交わすとき/エロイザ・ジェームズ
■ストーリ
19世紀初頭のイングランド郊外。ホルブルック公爵レイフのもとに、亡き父と愛人のあいだに生まれた異母弟ゲイブが現れる。彼は屋敷の中の私設劇場で芝居を上演させてほしいと頼みに来たのだ。これまで存在すら知らなかった弟の突然の訪問におどろくレイフだったが、ゲイブの人柄に親しみを感じて上演を快諾。後見しているイモジェンを巻き込んで、芝居の準備がはじまった。愛する人を亡くしたあと失意の日々を過ごしていたイモジェンは、洗練された紳士のゲイブに胸の高鳴りをおぼえる一方で、荒んだ暮らしを送るレイフのことが気がかりでならない。そこにかつての恋敵や舞台女優がやってきて、なにやらひと波瀾の気配。

■感想 ☆☆
エセックス四人姉妹の三女の話。
・・・残念ながら、三女の恋模様についていくことができませんでした。なんかなー。「情熱的」と「ワガママ」は決してイコールではないと思うのです。イモジェンは若干、「ワガママ」が過ぎるかな、と思いました。イモジェンが誰かを好きだと思う気持ちにも共感がしにくかったかな。

115.時間を巻き戻せ!/ナンシー・エチメンディ
■ストーリ
ギブはある日、森で出会った不思議な老人に、失敗を取り消すことができるという機械「パワー・オブ・アン」を手渡された。なぜぼくに?そもそも、この機械は本物なの?
その夜、親友と移動遊園地に行ったギブは、連れて行くよう両親に言われた妹のロキシーの世話にほとほと手を焼いていた。ところが、ロキシーはトラックにひかれ、意識不明の重体に!「パワー・オブ・アン」を使えば、ロキシーの事故をくいとめることはできるか?

■感想 ☆☆☆
児童書です。あっという間に読み終えてしまいます。けれど、「児童書」と聞いてイメージするような「よかった!よかった!」のハッピーエンドではないところが素敵な作品でした。何かを得るためには、その「何か」が大事であればあるほど、犠牲を強いられるのかもしれない、その犠牲を払ってでも、手に入れたい、どうにかしたいと思えるものにしか「奇跡」は起きないんだろうな、と、そういうふうに思える作品でした。

116.華麗なる探偵たち/赤川次郎
■ストーリ
鈴本芳子は、父親の莫大な遺産相続をめぐり、睡眠薬を飲まされ精神病院九号棟に強制的に入れられてしまう。そこで出会ったシャーロック・ホームズ、ダルタニアン、エドモン・ダンテスを自称する変わった仲間たち。芳子は彼らの協力を得て気ままな探偵業を開始する。

■感想 ☆☆☆
久しぶりに赤川さんを読みたくなって借りた作品。この第9号棟シリーズは大好きでした。今も大好きです。疲れているとき、文字を読めないかも・・・という気分になったとき、いつでも戻るのは赤川作品なのです。

117.ザ万歩計/万城目学
■感想 ☆☆☆
森見氏の「美女と竹林」と異なり、正真正銘の随筆集です。そう!こういうのを随筆集って言うのよー!と思いました。森見氏の「随筆」も大好きなんだけどね。というか、いかにも「森見氏」らしくって、「これはこれで、ある意味随筆だな」という気がしないでもないですが。対して、いつもは森見氏と文章も文体もテイストもとても似ている万城目氏が今回は独自路線の(というか、随筆としては実に当たり前の)まっとうな路線。軽い文体の合間合間に余韻の残る文章が混ざっていて、この人の感性って素敵だな、と思いました。

118.君が僕を見つけた日(上)(下)/オードリー・ニッフェネガー
■ストーリ
愛する人は未来からやってきた。やがてくる別れを知っていた。初めての出会いはクレア6歳、ヘンリー36歳。未来から来たヘンリーが、突然クレアの前に姿を現わしたのだ。以来、彼がたびたび時空を超えてやってくるのをクレアは心待ちにするようになる。だが、18歳になったころ、彼はぱったりと姿を見せなくなり・・・。

■感想 ☆☆☆*
タイムトラベル能力を「超能力」ではなく「障害」と捉え、SFではなく、恋愛小説として描いて見せた作品。その描写に、登場人物たちの心情に、非常に説得力がありました。

120.三匹のおっさん
■ストーリ
定年退職後、近所のゲーセンに再就職した剣道の達人キヨ。柔道家で居酒屋「酔いどれ鯨」の元亭主シゲ。機械をいじらせたら無敵の頭脳派、工場経営者ノリ。孫と娘の高校生コンビも手伝って、詐欺に痴漢に動物虐待・・・身近な悪を成敗するおっさん三匹。

■感想 ☆☆☆☆☆
ぜひぜひぜひっ!!ドラマ化をオネガイシマスっ!!と切望しています。熱烈に。
私の中ではキャスティングも完璧にできあがってます。見たいなー、ドラマ。
最初から最後まですっきり爽快で気持ちよい作品でした。ドラマ化したら絶対に好評だと思うんだけどな。

2011年10月の読書

2011年12月29日 14時00分30秒 | 読書歴
ふと気が付くと・・・って、しっかり気付いていましたが。
休みを大いに楽しみにしていましたが。
2011年もあと数日に迫る頃に、今更ながらの読書記録。
10月の読書のことなんてすっかり忘れてるわけで
すごいな、私の記憶力!と改めて感心しました。
というわけで、いつも以上のざっくり一言メモです。
自分のためだけの記録です。

101.ヒロシマ 歩き出した日/那須正幹
■ストーリ
昭和24年、市橋靖子は、母マサとともに広島でお好み焼の店を始めた。夫は、1歳になったばかりの和子を原爆の瓦礫のなかで助けて亡くなった。靖子は小さな駄菓子屋を実家で開き、工務店の大工で生活している父の庄助の助けを得て暮らしをたてていたが、庄助の突然の死や、家の立ち退き問題などから、当時あまり知られていなかった新しいお好み焼の店を始める。
原爆で多くの肉親、友、隣人、財産を失った人々が、あの日から立ち上がり、力強く歩む日々。

102.ヒロシマ 様々な予感/那須正幹
■ストーリ
昭和39年、高校を卒業した和子は、どうしても広島から離れたくて、東京のレストランに就職した。真面目に働く和子はオーナーやオーナーの娘、気難しい料理長からも信頼され、新しい経験に興奮する毎日を送っていた。悲願のオリンピック開催を控え、急速に変わり行く東京。そんな中、一人暮らしの和子は、心に灯をともすような人物に会い、とまどいながらもひかれていく。しかし、母、靖子を原爆による白血病で亡くした和子は、母の生まれ変わりに新しい命を宿し、母が遺したお好み焼店「いちはし」を継ぐためにヒロシへ戻るのだった。

103.ヒロシマ めぐりくる夏/那須正幹
■ストーリ
昭和52年、和子は中学生となったひとり娘志乃と祖母マサと、靖子が遺したお好み焼いちはしを守って暮らしていたが、ある日、娘の志乃が紹介してくれた新しい友だちの苗字に忘れかけていた過去を思い出す。一方、広島の復興とともに「いちはし」もリニューアルし、テレビや雑誌などで紹介されるようになる。戦後の復興とともに生きた三世代の女性たち。

■感想 ☆☆☆☆☆
児童書なので、あっという間に読めますが、その世界観にどっぷりと浸り、しばらく戻れませんでした。読みながら涙が止まらなくなり、読み終えた後もしばらくは何も手につかなかったな。
昭和20年代のあのときを日本で過ごした人たちの、「その後」のがむしゃらな生活に、そしてがんばってがんばってがむしゃらに生きた末に手にしたささやかな幸せと、いつしか失った大切な何かの存在に、心が大きくゆさぶられました。

104.るきさん/高野文子
■ストーリ
この世のいかなるしがらみにもとらわれず、自由気ままに飄々として生きる「るきさん」と、まっとうに会社生活をがんばり、バブルの世の中をおおいに楽しむるきさんの友達「えっちゃん」。彼女たちの日常記録。

■感想 ☆☆☆☆
軽い読み物が読みたいぞー、と久々に本棚から取り出した本。漫画です。「この漫画の主人公を見てたら、のりぞうを思い出したよ。」と高校時代の友人に言われて初めて手に取った、私にとっての大切な漫画です。
私はるきさんみたいにひょうひょうと軽く生きることはできないけれど、いつでもこうありたい、と願っています。るきさんみたいに物にも人にも、何にも執着せずに生きられたらいいな、と思っています。

105.ミタカくんと私/銀色夏生
■ストーリ
一見とっつきにくいけど、顔がいいから女の子にモテる。幼稚園から一緒だったという理由で、いろいろな人にミタカくんのことを聞かれる私の家に、ミタカは日常的にいついている。うちはママと中学生のミサオの3人で、パパは家出中。だからいつも4人でごはんを食べたり、テレビを見たり、日々は平和に過ぎていく。

106.ひょうたんから空/銀色夏生
■ストーリ
人間くさくてノーテンキなミタカは、あいかわらず家族の一員のようにいつもいる。3月、南向きのぬれ縁に何か植えようか、と相談していると、家出中のパパが帰ってきた。そこで、みんなでひょうたんを作った。何かを愛する時、愛するものがある時、愛していいものがある時、人はやさしくなる。

■ストーリ ☆☆☆*
ただただ何も考えずに文章を楽しみたいな、と手に取った作品。久々に読み返しました。日常があったかくて優しい。居心地のよい空間を作り上げているミタカとナミコがすごく羨ましくなりました。燃えるような恋にはちっとも憧れないけれど、「ふと気が付くと一緒にいたふたり」という関係はすごくすごく憧れるな。羨ましいな。

107.ピンクのバレエシューズ/L・ヒル
■ストーリ
イレーヌは、バレリーナになることを夢見てレッスンに励む少女。ところが、両親が亡くなったために、住みなれた街パリと別れていなかに住むおじさん一家のもとにあずけられます。それでも夢をあきらめず、たったひとりでレッスンを続けていると・・・。

108.バレリーナの小さな恋/L・ヒル
■ストーリ
憧れのパリ・オペラ座のバレエ学校に入学したイレーヌ。サン・クルーの丘にあるクレパンさんの家に、オペラ座の先輩ステラ、画家ジョナサンと下宿しています。ライバルたちがひしめくなか、異例の早さでバレエ団の正団員となったイレーヌですが、そこにはいろんな競争も待っていて・・・。

■感想 ☆☆☆☆☆
これまた久々に読み返した本。小学校高学年向けの児童書です。大好きで年に1、2回は読み返している気がします。ただひたすらにバレエに打ち込むイレーヌに憧れます。そして、その努力が着実に実を結んでいく様子に励まされるのかもしれません。読み終えた後に清清しい気持ちで、私もがんばろう、と思える本。

109.オドの魔法学校/マキリップ
■ストーリ
孤独な青年ブレンダンのもとに、オドと名のる女巨人が訪れた。魔法学校の庭師になってほしいというオドの求めに応じたブレンダンだったが、慣れない都の生活になかなかなじめない。一方、王と顧問官たちは、歓楽街で興行する魔術師の噂に神経をとがらせていた。件の魔術師はただの興行師か。それとも本物の魔法使いなのか。

■感想 ☆☆*
マキリップさんのおかげで、久しく遠ざかっていた海外小説と仲良くお付き合いできるようになりました。日本の小説だけで手一杯だったけれど、そういえば海外の小説も面白いものがたくさんあったよね。いつのまに遠ざかってしまっていたのやら。
今回のこのお話もマキリップ色たっぷり、幻想的な雰囲気たっぷりのお話です。「魔法使い」を探して町を駆け巡り、「魔法」を求めてぶつかり合う多くの登場人物たち。マキリップだけあって、ありふれた冒険譚ではないし、「よかった、よかった」という感じでも終わりません。だから好きなのかな。
というより私は「魔法」という小道具だけで、わくわくしてしまう傾向にある気がします。

110.ニッポンの「農力」/日本経済新聞社
■内容
自由化こそ、成長の起爆剤。隠れた真の実力を明らかにする。自分で販路を作って海外で稼ぐ、化粧品ブランドと協力して商品開発、安売り厳禁の市場で品質を磨く・・・など、飽くなき向上心で邁進する農家の姿を描き、日本の農業の可能性を探る。

■感想 ☆☆☆☆
サブタイトルは「強い現場が育む豊かな未来」。このサブタイトルどおりの実例をまとめた本です。読んでいると、やはり農業は大変な状況にあるんだな、という思いと、それでも「明日」を信じてがんばり続ける現場の方々の努力に励まされます。「強い現場」が政治を主導できたらいいのに、と願わずにはいられません。

2011年9月の読書

2011年10月17日 21時44分43秒 | 読書歴
ノンフィクション多めです。
ノンフィクションになると、途端に読むスピードががくんと落ちます。
頭を使う作業がとことん苦手なのです。

92.TPP亡国論/中野剛志
■内容
TPP(環太平洋経済連携協定)の実態とは。問題点とは。
TPP参加によって、自由貿易で輸出が増える可能性もあるが、デフレの深刻化を招き、雇用の悪化など日本経済の根幹を揺るがしかねない危険性もある。いち早くTPP反対論を展開してきた経済思想家がロジカルに国益を考え、真に戦略的な経済外交を提唱する。

■感想 ☆☆☆
なぜか仕事で「農業」について、調べたりまとめたりする機会に恵まれたため、TPP関連書籍も数冊、読むことができました。読めば読むほど、知れば知るほど、政策というのは難しいものだな、という想いを深めています。どの政策にも「狙い」や「目的」があって、いいほうに転ぶ可能性もあれば、悪い結果を招くこともありうる。当たり前のことながら「未知数」を前に、政策を決めていかねばならない政治家という仕事はやはりとてつもなく大変な職業だな、と思いました。ホントいつも外野で好き勝手なことばかり言って申し訳ない。
この書籍では「TPPの短所」「TPPによって引き起こされる可能性もある危機」が非常に分かりやすく論じられていました。

93.図解ディベート入門~1時間で分かる図解シリーズ/松本道弘
□内容
ディベートを知れば、ぶれない自分の意見が伝えられる。論争・商談・会議で周りの空気に流されなくなる。ディベート入門書の決定版。

□感想 ☆☆☆☆
ひょんなことからディベート研修を企画することになりました。とりあえず、大急ぎで入門書を読みましたが、この入門書は非常にコンパクトに読みやすい形でディベートの特徴をまとめられていて、とてつもなく分かりやすかったです。
ただ、ディベートの概念や特徴を「知る」ことはできたとしても、ディベートを身につけたり、使いこなせたりするようになるわけもなく。まして、ぶれずに自分の意見を伝えられるようにもなりません。ぶれずに自分の意見を伝えられるようになるためには、まず、自分自身が「どう考えて、この意見を支持するのか」「どういった想いで、意見を提案しているのか」自分の意見(考え)をはっきりと把握する必要があります。
・・・使いこなせる気がまったくしません。間違いなく苦手だわ。
ということまでは、この本を読んでしっかり理解できました。お勧めの入門書です。

94.走ることについて語るときに僕の語ること/村上春樹
□内容
1982年秋、『羊をめぐる冒険』を書き上げ、小説家として手ごたえを感じた頃に村上春樹は走り始めた。以来、走ることと書くこと、それらは、村上春樹にあって分かつことのできない事項となっている。アテネでの初めてのフルマラソン、年中行事となったボストン・マラソン、サロマ湖100キロ・マラソン、トライアスロン。走ることについて語りつつ、小説家としてのありようや創作の秘密、そして「僕という人間について正直に」初めて正面から綴った作品。

□感想 ☆☆☆☆☆
走らない、走れない、走ることがまったく好きではない私にとって、走れる人、走ることが好きな人は尊敬の対象です。この作品を読んで「走ること」への憧れは、ますます強くなりました。とはいえ、私が走り始めることは、まず間違いなくありません。人には向き不向きがあり、私は走ることはおろか、努力することすらできない人間なのです。
でも、だからこそ、「走ること」について、その魅力について、押し付けがましくなく、真摯に饒舌に語る村上さんの文章はとても興味深く、先へ先へ読み進めました。自分の足で地面の感覚を確かめながら、「走ること」と「書くこと」の泥臭いきつさと向き合いながら前へ進む村上さんの姿に、清清しい感銘を受けました。

95.幽霊の2/3/ヘレン・マクロイ
□ストーリ
出版社社長の邸宅で開かれたパーティーにて、余興のゲーム「幽霊の2/3」の最中に人気作家エイモス・コットルが毒物を飲んで絶命してしまう。招待客の一人、精神科医のベイジル・ウィリング博士が、関係者から事情を聞いてまわると、次々に意外な事実が明らかになる。作家を取りまく錯綜した人間関係にひそむ謎と毒殺事件の真相は?

□感想 ☆☆☆☆*
復刊リクエスト第1位の本作品。「面白い作品なんですよ!ぜひ復刊して欲しいっ」という評判と作品名のみ、随分前から知っていましたが、かなり長らくの間、翻訳作品から遠ざかっていたため、あまり興味を示していませんでした。本当に久しぶりに新たな外国作品と出会った気がします。出会えてよかった!評判どおり、いえ、評判以上におもしろい作品でした。翻訳作品特有のまだるっこしい感覚とは無縁です。登場人物たちの複雑な人間関係にあっという間に引き込まれます。犯人は一体、誰なのか。誰も彼もが怪しく見える中での真相。探偵小説の面白さってこういうのだったよね!と久々の感覚を楽しみました。久々にエラリー・クイーンや黒後家蜘蛛の会の皆さんたちと再会したくなりました。

96.嘆きのテディベア事件/ジョン・J・ラム
□ストーリ
わたしはブラッドリー・ライオン。元殺人課の刑事だ。テディベア作家の妻と田舎町で暮らしている。今日は妻の晴れ舞台「テディベア・フェスティバル」の日。貴重な「嘆きのテディベア」もオークションに出るらしい。ところが、出発直前に私はわが家の敷地で死体を発見してしまった。私は殺人と判断したが、保安官はなぜか死体を見る前から事故と断定。なんでだ?!

□感想 ☆☆☆*
「幽霊の2/3」があまりにも面白かったので、調子に乗って、外国の推理小説をもう1冊借りてきました。こちらも面白かったです。なんでもこの作品、「テディベア大好き元刑事と愛妻のおしどり探偵シリーズ開幕」の作品だそうで、ふたりとはこれでお別れではなく、再会できそうな予感大。刑事というと、一匹狼で孤独に事件を追いかけるイメージが大きいのですが、この作品では、奥さん大好きな元刑事さんが奥さんや奥さんのお義父様、奥さんのお友達を信頼し、みんなで相談し、協力しあって、事件の真相を追いかけます。ひとりよがりで行動しない主人公が好感度大。2作目も読みたいなー。

97.キケン/有川浩
□ストーリ
成南電気工科大学機械制御研究部。略称「機研」。彼らの巻き起こす、およそ人間の所行とは思えない数々の事件から、周りの学生たち(含 教授たち)は畏怖と慄きをもって、キケン(=危険)と呼び、恐れられていた。これは、彼らの伝説的黄金時代を描いた物語である。

□感想 ☆☆☆☆☆
理系男子バンザイ!と思いました。くだらないことに一生懸命、全精力を傾ける彼らの実にくだらない(でも、清清しく楽しそうな、きらきら輝いている)学生時代をまぶしく思いながら読み進めました。徹頭徹尾、くだらない!でも、とてつもなく楽しそう!こんな男子、いるよねー!と思わず興奮しながら、高校時代を懐かしく思い返しながら読みふけりました。男子たちだけで楽しそうに盛り上がっている彼らがとっても羨ましい。女子の友情は女子の友情で男前だし、それはそれで、かっこよくて素敵なんだけど、男子特有の「友情」と呼ぶには照れ臭いような、関係性のはっきりしない腐れ縁的な友情もかわいらしくて素敵だなー、と思いました。なんてったって、主役の「お店の子」!かわいすぎるよ。反則だよ。特に学祭のエピソードは秀逸。学祭って学生のためのお祭りなんだよね、とあの楽しさを反芻しました。終盤10ページほどの展開(クライマックス)は思わずぐっと胸が熱くなります。

98.見つめあうたび/エロイザ・ジェームズ
□ストーリ
19世紀初頭のロンドン。四人姉妹の次女、アナベルは晴れて社交界にデビューした。スコットランドの貴族の娘であるにもかかわらず、浪費家の父のせいで貧しい生活を強いられてきたアナベルは、必ず裕福なイングランド人と結婚してみせると意気込んでいた。ところが、ひょんな事件からアナベルは、とても裕福とは思えないアードモア伯爵との結婚を決意せざるを得なくなり、彼の故郷、スコットランドへ旅立つ。待ち受ける貧困生活に涙するアナベルだったが、旅をするうち、いつしか伯爵に心惹かれ、本当の自分に気づいていく。

□感想 ☆☆☆
秋だよー!久々に甘々の恋愛小説が読みたいよー!と思って手に取ったライムブックス。おそらくハーレクィンロマンスと同系統の作品だと思われます。出版社が異なるだけ??今までなんとなく面映くて手に取れなかった作品群ですが、カバーがおとなしめだったため、思い切って借りてみました。
すごい!徹底的に!最初から最後まで!オンナノコの夢と希望でいっぱいです。妄想力高めの女子だったら楽しめること間違いなし。勿論、私は楽しみました。・・・でも、その一方で女性を対象にしていると思われるこの小説のあまりのアダルトっぷりに少し、いえ、かなり驚きました。いろんな意味ですごすぎる。あまりにすごすぎて、バスの中では読めませんでした。隣近所の方々に覗き込まれたら(私はよく周囲の方がどんな本を読んでいるか気になって、さりげなく覗き込みます。)私、恥ずかしすぎて立ち直れない・・・。そんな本です。とりあえず四人姉妹がヒロインのこのシリーズ。すべて読み通すつもりです。

99.女優 岡田茉莉子/岡田茉莉子
□内容
父は夭逝した美男俳優・岡田時彦。名付け親は谷崎潤一郎。デビューは成瀬巳喜男作品。その後も小津安二郎、木下恵介ら巨匠に愛され、出演100本記念作品『秋津温泉』以後は、夫・吉田喜重作品の女神として輝きつづける女優、岡田茉莉子。戦後日本映画史を力強く生きぬいたひとりの女性の終わりなき物語。映画にささげたこれまでの人生を自らの筆で回顧する。

□感想 ☆☆☆
日本映画史として、非常に興味深く面白い作品でした。昭和の名作をまとめて見返したい、小津作品を制覇したい、そんな気持ちに駆られました。また、映画黄金期を生きた映画人たちの映画にかける情熱や作品への誇りが強く伝わってくる作品でした。昭和初期の「芸能界」は、本当に「特別な人たち」が集まっている別世界だったのだ、ということをしみじみと感じました。彼らの静かな情熱や気品に背筋が正されます。
ただ・・・「自伝」というところがひっかかるかな。よくも悪くも自意識過剰で、全体的に「自分」が溢れすぎています。「自伝」とはいえ、自分に陶酔しすぎているというか。このくらい自我が確立している人だからこそ、長年、芸能界という場所で第一線にい続けることができたんだろうな、と思いました。
100.日本経済こうすれば復興する/竹中平蔵
□内容
この史上最大の試練で、いま日本は何をすべきか。危機の本質を正しく認識すれば、必ず道は開ける。日本復活を妨害する30の「大ウソ」を見抜き、経済再生のための道筋を明らかにする。

□感想 ☆*
最近の新書というものをまったく読んだことがなかったため、大事だと作者が協調したいところを太字で強調したり、目次を読んだだけで内容がかなり予測できてしまったりする本書のつくりに押し付けがましさを感じて怒っていたら、それだけで疲れ果ててしまいました。友人に「馬鹿にされてる気がするんだよー。」と訴えたところ、「最近の新書はそういうつくりなんだよ。」と穏やかに諭されました。
そんなわけで「なんか苦手・・・」という先入観ありきで読み進めた本です。マイナスの先入観で読み進めましたが、内容自体は非常に分かりやすい言葉を選び、理解しやすい説明でした。今まで賛成しかねる・・と思っていた政策の「本来の狙い」も知ることができ、多様な視点で物事を見ることの重要性を改めて感じました。
ただね、小泉政権時代の自分たちの政策がいかに正しかったか、いかに先を見据えていたか、という説明にページを割きすぎているんじゃないかな、と思いました。また現在の民主党政権への批判ばかりで、そのあたりも疲れました。できれば、批判ではなく、現在の民主党政権の「ここは評価できるのにね。ここはみんなで協力できればいいよね。」というようなことも冷静、かつ客観的な視点を持って論じてくれれば、こんなに疲れなかったんじゃないかなー、と思うのです。そういうふうに政治家さんたちがお互いのよいところを認め合えるような姿勢を見せてくれたら、すごくすごく嬉しいのにな。

2011年8月の読書

2011年09月24日 22時54分40秒 | 読書歴
久々に本をたくさん読みました。
いろんな人から借りた本がたまりにたまっていて追いつくのに必死です。
でも、「この本、面白いよ!」と貸してくださる方々のおかげで
いろんなジャンルの本に出会え、充実した読書生活を送れた1ヶ月でした。
しかしながら、9月24日現在、未だに借りている本に
私の読書ペースが追いついていません。
現在借りている本は漫画を含めて13冊。10月末までに追いつくぞ!

77.星を帯びし者/マキリップ
■ストーリ
ヘドの若き領主モルゴンは幽霊との謎かけ試合に勝って、大国アンで王冠を手に入れた。だがアンの王女と結婚すべく偉大なる者の竪琴弾きと共に船出するや、船は難破しモルゴンは海に投げ出される。モルゴンの額にある三つの星。はるか昔、すでに彼の出現を予期していたかのように造られた、三つの星をはめ込んだ竪琴。執拗に彼の命を狙う不気味な変身術者たち。数多の謎の答えをもとめ、星を帯びし者モルゴンは偉大なる者のもとへ。「イルスの竪琴」三部作第一弾。

78.海と炎の娘 /マキリップ
■ストーリ
ヘドの領主にして星を帯びし者モルゴンが、偉大なる者に会うためにエーレンスター山に向かったまま消息を絶って一年、領国支配権が弟に移ったという知らせが入る。モルゴンを殺したのは誰か? 偉大なる者はどうして何もしてくれなかったのか?モルゴンに同道していた竪琴弾きはどこにいったのか?モルゴンの許嫁レーデルルは全ての答えを求めて偉大なる者のもとへ旅立つ。シリーズ第二弾。

■感想 ☆☆☆*
三部作のうち二作品、つまり三分の二を読み終えたというのに、謎はまったく解明しません。この壮大な話がどうまとまるのか。いたるところに置いてきている「謎」はすべて解明されるのか。何より、主人公モルゴンとレーデルルは穏やかな「ふたりの生活」を始めることができるのか。早く続きが読みたい!・・・のに、まったくこのシリーズの最終作にたどり着けません。お借りして手元にあるっていうのに!9月は少しピッチをあげて本を読みます。

79.ああ言えばこう食う/阿川佐和子・壇ふみ
■感想 ☆☆☆☆☆
食欲のダンフミと愛欲のアガワによる交友録。この作品も何度、読み返したか分からないくらい、疲れたときに必ず手にとっています。文字を見るのも億劫だな、とかなんか気分が沈んでいるな、元気になりたいな、というときにふたりの文章を読むと、身体の内側から元気になる気がします。この作品を読んでいると、華やかな世界で生きているはずの阿川さんと壇さんがまるで古くからのお友達のように身近に感じられます。彼女たちの気負わない姿、気負っては大きな失敗をしてしまい、なぜかどたばたとしてしまう毎日の話を聞いていると、「あ。私だけじゃないんだな。みんな落ち込んだり舞い上がったりしながら毎日を乗り越えてるんだな。」と思えます。

80.夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦

■感想 ☆☆☆☆☆
この3カ月で3回読み返しました。どれだけはまってるのやら・・・。読み終えるたびに、また冒頭に戻り、再度始めから読み返す。こんな作業を三度も続けています。わー!好きだー!
よくよく考えて、私はこの作品の主人公のひとり「先輩」の「石橋をたたいて割ってもまだ渡るかどうか考える」ぐらい慎重な恋愛に対するスタンスや、「外堀を埋めて埋めて、
もはや平地になっている」のに本丸に突入できない臆病っぷりが好きなんだろうな、という結論に落ち着きました。ひとりで右往左往しているのに少しずつ距離が縮まっていく先輩と乙女の距離感は「ご都合主義」だなと思いますが、元来がご都合主義大好き派。「ファンタジー」的展開も含めて、そういった現実感の乏しいところが微笑ましくて、大好きです。

81.ストーリーガール/モンゴメリ
82.黄金の道~ストーリーガール2~/モンゴメリ

■ストーリ
父の仕事の関係で、トロントからプリンス・エドワード島にやってきたベバリーとフェリックスの兄弟。キング農場で個性豊かないとこたちと一緒に暮らすことになった彼らが出会ったすらりと背の高い大人びた少女。虹のような声音でお話を語る不思議な魅力のストーリー・ガールと過ごした多感な10代の日々を、夢のように美しい島の四季と重ね合わせて描く、もうひとつの『赤毛のアン』。

■感想 ☆☆☆
10年ぐらい前(もっと前?)にNHKで放送されていた「アボンリーへの道」という海外ドラマの原作です。ヒロインのセーラがとてもかわいらしい、という理由と「あのモンゴメリ!」というネームバリューだけで見始めましたが、子どもたちの毎日が微笑ましく、でもモンゴメリらしい毒や皮肉も盛り沢山の作品でのめりこんで楽しんでいました。・・・ということをこの作品を読んで思い出しました。「そういえば!夕方に放送されてた!!」と思い出した瞬間に興奮しました。面白かったのに、あれっきり再放送もなく・・・。やはり赤毛のアンほどには定着しなかったんだろうな。
「子ども」の時代の長い長い1日、日が落ちるまで遊んでいたあの頃の記憶をしっかりと留めているモンゴメリのストーリーテラーとしての魅力が遺憾なく発揮されている作品です。だからこそ、ラストで子どもたちが迎える「大人への入り口」の向こうに待ち受けている寂しさが迫ってきます。

83.霧笛荘夜話/浅田次郎
■ストーリ
とある港町、運河のほとりの古アパート「霧笛荘」。誰もが始めは不幸に追い立てられ、行き場を失ってこのアパートにたどり着く。しかし、霧笛荘での暮らしの中で、住人たちはそれぞれに人生の真実に気づき始める。

■感想 ☆☆*
普段は短編より断然長編派ですが、浅田さんに限っては、長編よりも短編のほうが好きです。この作品は、連作短編集。古いアパート「霧笛荘」に住む人たちの成功とは無縁で、幸せとも縁遠い人たち、でも彼らの人生は決して「不幸せ」ばかりではない。たくさん泣いた人たちの、でも人としてのぬくもりを忘れないまっとうな生き様に胸が熱くなりました。

84.月島慕情/浅田次郎
■ストーリ
「泣かせる作家」浅田次郎の短編集。物心の付いた頃から遊郭にいるミノに身請け話が舞い込み、束の間の幸せを手に入れるが・・・「月島慕情」。20年前に別れたかつて夫の骨を拾って欲しいという連絡を受けた初江が出会ったのは・・・「供物」。自衛隊駐屯地で当直が聞いた師団長の鰻にまつわる過去を描く「雪鰻」。学生運動の影響でアルバイトに明け暮れる悟とその隣人との出会いと別れを描く「インセクト」。かつての恋人の息子と過ごす事になったお通夜での一晩を描く「冬の星座」。温泉街でマッサージ師をしている時枝と一夜の客を描く「めぐりあい」。第二の職業に就いたお抱え運転手が知った雇い人の馬主と下町の靴磨きとの戦後。(「シューシャインボーイ」)

■感想 ☆☆☆*
「泣かせる」作品はあざとさを感じさせるものが多いために、苦手ですが、浅田さんの作品はその「あざとさ」をまったく感じさせず、心地よく読めました。心地よく、というにはあまりに胸が痛い作品ばかりでした。特に心に残ったのは「月島慕情」と「シューシャインボーイ」。誰かが誰かを思いやる優しさがあるからこそ生じるすれ違いに胸がぎゅっと締め付けられました。そして「雪鰻」。私たちはあの戦争を忘れてはいけない。改めてそう思いました。

85.バイバイブラックバード/伊坂幸太郎
■ストーリ
「理不尽なお別れはやり切れません。でも、それでも無理やり笑って、バイバイと言うような、そういうお話を書いてみました」(作者談)太宰治の未完にして絶筆となった「グッド・バイ」から想像を膨らませて創ったまったく新しい物語。

■感想 ☆☆☆*
誰にでも優しくて、その優しさが男としてどうしようもない。どうしようもなく情けないけれど、なんとなく愛しい。そんな主人公が借金のかたにとんでもなくひどい罰をうけることになり、5股かけてきた女性たちひとりひとりに別れを告げに行く話。
主人公は本当にどうしようもなく情けない。「好きだな」と思った女性と付き合っていたら、いつのまにか5人と付き合っていただけ、という状況からして情けない。でも、彼女たち全員をみなそれぞれに好きだと思っていて、大切にしている。だから「突然自分がいなくなったことを悲しまないようにちゃんと別れを告げたい」と5人の女性たちひとりひとりに律儀に挨拶をしてまわる。彼女たちと誠実に向き合う。彼はとことん優しくてあったかい。愛しくて憎めない。
彼は絶望的な状況に巻き込まれる。その経緯も、これから後のことも一切、描かれていない。描かれているのは絶望のすぐ傍にある希望。どんなに絶望的な状況でも、目の前にいる人に対して誠実に生きていたら、小さな小さな希望の光は見える。その希望の光が絶望を晴らしてくれるわけではないけれど、でも、真っ暗闇だけではないはず。そう思った。

86.たまごボーロのように/華恵
■内容
大人の世界に踏み出そうとしている18歳の毎日。「小学生日記」から6年。12歳だった少女の世界は、少しずつ「学校」から離れて、自分の世界を見いだしていく。

■感想 ☆☆☆
「小学生日記」は知っていて興味をひかれていたものの、彼女の文章を読むのはこの作品が初めてでした。心のどこかで「芸能人」や「小学校6年生」という付加価値がもの珍しがられての評価だったんじゃないのかな、と失礼なことを思っていました。本当に本当にごめんなさい。静謐で落ち着きある文章はまったく年齢を感じさせず、美しさすら覚えました。18歳という思春期ならではの生真面目さ、気の強さが感じられる文章と彼女の感受性に12歳の彼女や20歳の彼女と再会したい、そう思いました。

87.つくも神さん、お茶ください/畠中恵
■内容
日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞時の挨拶や、愛する本や映画、音楽のこと。修業時代の苦労話に中国爆食ツアー、創作秘話やあっと驚く意外な趣味の話。そして、書き下ろしの随筆まで。ベストセラー作家の日常。

■感想 ☆☆*
うーん。私は畠中さんの「しゃばけ」シリーズが大好きなんだな、と思いました。「しゃばけ」シリーズのキャラクターたちに愛情を抱いているけれど、畠中さんの文章は苦手なのかもしれない、と「しゃばけ」シリーズ以外の作品や今回のエッセイを読んで思いました。何が苦手なんだろう、どこが苦手なんだろう。そこがよくつかめていません。

88.村上堂はいほー/村上春樹
■内容
せっかちで気が短い。占いには興味がない。最近の映画の邦題はよくないと思う。ときどき無性にビーフ・ステーキが食べたくなる。双子の恋人が欲しい。フィッツジェラルドとチャンドラーとカポーティが好き。この中で三つ以上思い当たる方は、誰でも村上ワールドの仲間です。はいほー!と軽やかに生きるあなたに贈る、村上春樹のエッセンス。

■感想 ☆☆☆*
村上さんがやっぱり好きです。彼の小説も好きだけれど、エッセイはより一層好き。たまに矢も盾もたまらず読み返したくなります。今回、久々に手にとってやっぱり好きだな、と思いました。

89.働かないアリに意義がある/長谷川英拓
■内容
女王バチのために黙々と働く働きバチや、列を成して大きな荷物を運ぶアリたちに共感を覚えた経験はあるだろうか。しかし、実際に観察すると、アリもハチもその7割は悠々自適で暮らしており、約1割は一生働かないことがわかってきた。また、働かないアリがいるからこそ、組織が存続していけるというのである。アリやハチなどの集団社会の研究から動物行動学と進化生物学の最新知見を紹介しながら、人間が思わず身につまされてしまうエピソードを中心に最新生物学を紹介する。

■感想 ☆☆☆
久々の新書。顧問に「読みやすいから読んでみるといいよ。面白かったよ。」とお奨めいただいて手に取りました。本当に面白く興味深い内容で、珍しくあっという間に読み終えることができました。生物学の研究結果とその結果に対する見識、および推察を分かりやすい言葉で読みやすくまとめてくれています。
学問は「役に立つこと」「利益につながること」を学んだり研究したりするものではなく、利益など関係なく、「気になること」「知的好奇心が刺激を受けること」を追求し、調べていくことなのだということを思いました。利益など考えずに物事を調べたり考えたりする人が世の中には必要だし、その結果、分かった結果も推察も決して「無駄」ではないし、やはり世の中には「必要なこと」なんだな、と思いました。

90.女のしくじり/ゴマブッ子
91.お気は確か?/ゴマブッ子
■内容
大人気の辛口ブログ「あの女」のゲイブロガー・ゴマブッ子の恋愛相談。「愛が重い女」「飽きられてる女」「漂流する女」「余命数カ月の女」「肉食的に前のめる女」「初めてフラれた女」「告白したい女」ほか「前のめり」している女たちの恋愛相談45件。

■感想 ☆☆☆
大人気のブログ「あの女」が書籍化された本なんだそうです。まったく知りませんでしたが、友人から「ぜひ読んで!絶対に役に立つから!!」とお奨めされて借りました。おもしろかったー!歯に衣着せぬ内容を言われたい放題言われているのに、不愉快な気持ちにならないどころか、読んでいて痛快な気持ちになる本でした。なんでサバサバとばっさり言い切っているのに、人を不愉快な気持ちにさせないんだろう、と不思議に思いながら読みふけり、ぜひこの話術を手に入れたい、と切望しました。・・・読んで役立たせようと思う箇所とか目標とする立ち位置が間違っている気がしないでもありませんが。

2011年7月の読書

2011年09月09日 08時31分43秒 | 読書歴
社内研修で本の紹介をしました。
紹介後、同僚から「いつ本を読んでいるんですか?」という質問を受けました。
私の読書時間は通勤時間と人との待ち合わせの時間、そしてトイレの時間のみです。
部屋で優雅に本を読むことなんてまったくありません。
(家で過ごす時間はたいてい、ドラマを見てるし・・・。)

ちなみに通勤時間も朝は確実に寝てしまうため、実質、本を読むのは夕方のみ。
隣の部署の本部長からは
「のりぞうくんって、あれでしょ?
 朝、バスの中で本を持って寝てる子だよね?」
という確認のされ方をしました。・・・恥ずかしすぎる。

68.いけちゃんとぼく/西原絵里子

■ストーリ
ある日、ぼくはいけちゃんに出会った。いけちゃんはいつもぼくのことを見てくれて、ぼくが落ち込んでるとなぐさめてくれる。そんないけちゃんがぼくは大好き。不思議な生き物・いけちゃんと少年の心の交流。

■感想 ☆☆☆☆*
部門で本の紹介をすることになったため、色々読み返した中の一冊。読み返して危うく泣きそうになりました。ずっと「男の子」だった人のための本じゃないかなー、と思っていましたが、元「男の子」からは「あの本は女性目線の本だよ。」とご指摘受けました。そうだったのかー。
西原さんの他の本はまったく読んだことありませんが、この本はとても好きです。

69.消え失せた密画/ケストナー
■ストーリ
デンマークの都コペンハーゲンで時価六十万クローネの高価な密画が巧妙な盗難にかかった。好人物の肉屋の親方キュルツが、ふとしたことから大犯罪の渦中にまきこまれ、猪突猛進の大活躍がはじまった。

■感想 ☆☆☆☆
教会トモダチさんからお借りしたケストナー三部作の中の第一作です。今までは「子供のために書かれた児童小説」しか読んだことがありませんでしたが、この三部作は大人のためのユーモア小説です。読み終えて、さすがケストナーだな、と思いました。彼の人間に対する暖かな目線、まっすぐな世界観がとても好きです。
肉屋の親方キュルツさんは、「ミステリ」や「犯罪」とは無関係な猪突猛進型の主人公。策略にはことごとくはまり、だまされてもだまされても関わった人を信じてまただまされる。そんな愛すべきキャラクターが消えた密画を追ってどたばたと走り回ります。謎めいた正体が分からない登場人物やら、油断ならないギャング団やらが次々と出てきますが、結果的に登場人物はみんな「いい人」でした。勿論、密画を盗んだギャング団は「悪党」の集団。けれど、カーチェイスによる打ち合いの際も親分が声高に「人は狙うな」と指示をする愛すべきキャラクターで、読み終えた後、にっこりできました。

70.雪の中の三人男/ケストナー
■ストーリ
貧乏人に変装しておしのび旅行を始めた百万長者の枢密顧問官。ところがとんでもない誤解が生じてドンチャン騒ぎが続発。貧乏人に変装した百万長者と百万長者に間違われた失業青年をめぐって、グランドホテルの従業員とお客の織りなす人生模様。ケストナーの魔法の鏡に映った、赤ん坊のような雪の中の三人男を描く会心の諷刺ユーモア編。

■感想 ☆☆☆☆☆
ケストナー三部作の中の第二作目。三部作の中で、私はこの作品が一番好きでした。子どもの心を失わない大人たちが、ちょっとしたいたずらをきっかけに出会い、思いがけず一生ものの友情を手に入れます。大人になってから友情を手に入れるのは、とても難しい。そう思っているけれど、実は意外と簡単なのかもしれない。変に気負わず、気構えず、自分を取り繕わず、小難しいことを考えずに人と接することができれば、大人だからこその固い友情が結べるのかも。そう思えました。枢機卿とその執事、雇う人と雇われている人の立場を超えた友情がとても好きでした。

71.一杯の珈琲から/ケストナー
■ストーリ
音楽の都ザルツブルクでひと夏を過ごそうと国境の近くのドイツ側の町に宿をとったゲオルク。為替管理の制約ゆえにオーストリア側で一文無しの生活を強いられる。そんなある日、コーヒー代も払えず困った彼は、居あわせた美女コンスタンツェに助けを求めた。

■感想 ☆☆☆*
教会トモダチさんからお借りしたケストナー三部作の第三作目。三部作の中でも特に憎めない登場人物たちばかりのとにかく牧歌的な作品でした。一杯の珈琲から恋が始まることもあれば、いつもと違う日常、つまり冒険が始まることもある。人生のどの地点で何が待ち受けているのかわかんないよ。だから楽しいんだよね。そんなふうに思える作品でした。いつも、私は作品を読む前にあとがきに目を通してしまうことが多いのですが、今回は三作品すべて読み終えた後に「訳者あとがき」を読み、これらの作品の時代背景を知って、ケストナーの精神力を尊敬しました。いついかなるときも明るさを忘れない人、自分を、自分の信念を見失わない人だったからこそ、ケストナーの作品は時代を超えてオトナにも子どもにも愛されるんだろうな、と思いました。

72.夜のミッキーマウス/谷川俊太郎
■感想 ☆☆☆
久々に手に取った詩集。谷川さんの選ぶ言葉、言葉の使い方が好きです。数編、とてつもなくなまめかしく色気のある作品があり、どぎまぎしました。

73.償い/矢口敦子
■ストーリ
36歳の医師・日高は子供の病死と妻の自殺で絶望し、ホームレスになった。流れ着いた郊外の街で、社会的弱者を狙った連続殺人事件が起き、日高はある刑事の依頼で「探偵」となる。やがて彼は、かつて自分が命を救った15歳の少年が犯人ではないかと疑い始めるが・・・。彼もまた、大きな絶望を抱えて生きていた。再会した二人の魂は救われるのか?

■感想 ☆☆*
三冊目の矢口作品。三冊の中でもっとも読みやすい作品ではありました。とは言え、いつものように作品世界に入り込むことはできませんでした。未だにこの作家さんについて「好き嫌い」の判定ができていません。

74.モモちゃんとアカネちゃん/松谷みよ子
75.あかねちゃんと涙の海/松谷みよ子

■感想 ☆☆☆☆☆
部門で本の紹介をすることになったため、久々にシリーズ作品の中から特に気に入っている2冊を読み返しました。本を紹介することがとてつもなく苦手なため、どの本を取り上げようか、ぐだぐだぐだぐだぐだぐだと迷い続けましたが、結局、「今までに読み返した回数の多い作品」という条件で、この2冊と「1年1組先生あのね」の3冊に決定しました。大体、「好きな作品」は多すぎて、到底、一冊選べないんだもの。って結局、一冊には絞り込めていませんが。そして、部門で紹介する割に、どの作品も仕事に役立つ要素は皆無です。でも、いいの。好きなんだもん。
当初は「紹介するため」にこの2冊だけを読み返していたものの、途中からは矢も盾もたまらず、シリーズ6冊を読み返したくなり、結局、6冊をざっとつまみ読み。未だにモモちゃんとアカネちゃんは私の大切なお友達です。タッタちゃんとタアタちゃんも、猫のプーも大好きなお友達、ずっと一緒にいて過ごしたいと願っている仲間です。「アカネちゃんと涙の海」はもう何度も読み返しているのに、読み返すたびに、心がぎゅっと痛くなります。

76.1年1組先生あのね/鹿島和夫 編

■感想 ☆☆☆☆☆
部門で本の紹介をすることになったため、久々に読み返した作品のひとつです。子供たちの素直な視点が時にユーモラスな文章となり、時に深淵な文章となって、私たちの目の前に現れます。この本から4編の詩を紹介し、更に「ネット上でも簡単にに見つけられるのでぜひ読んでみてください!」とこの作品の中に掲載されている長編詩「僕だけおいていかれたんや」をお勧めしました。
私にはこんな素直な文章はかけないし、こんなふうに飾らない自己表現もまずできません。1年生のこの時期だったからこそ書けた文章だったんじゃないかな。どの子の作品もとても好きです。そして、それ以上に挿入されている写真が大好きです。ページをめくるたびに今よりずっとのんびりしていた「あの頃の学校生活」が賑やかに、とても懐かしく飛び込んできます。

2011年6月の読書

2011年08月11日 20時55分52秒 | 読書歴
気が付けば8月です。
というわけで、自分用のメモ。私の記憶自体、既にあやふやな作品も・・・。
やはり記録に残すって大切だな。

60.ライラックの花の下/オルコット
■ストーリ
愛犬・サンチョと共に、サーカスから逃げてきた少年ベンの放浪生活は、
ライラックの花の下で終った。バブとベティーの姉妹に発見されたベンは
二人の娘の母親で愛情深いモス夫人と、屋敷の持ち主で、これからここに
住むことになった若き女主人シリアに暖かく迎え入れてくれたのだ。
死んだと噂される行方不明の父親にいつかは会えるかも知れないという
一縷の望みにすがりながら、ベンは自然や動物、モス夫人の二人の娘たちに
囲まれて、次第に志のある少年へと成長してゆく。

■感想 ☆☆
サーカスから、父を探すために逃げ出した少年と、彼のよき仲間となる
少年少女たちの楽しい日々。
オルコットの作品は大好きで、何度も読み返しています。
ただ、この作品だけは食指が動かず、数年(と言わず)積ん読状態でした。
満を持して読み始めましたが、私の直感も捨てたものではなく、やはり苦手でした。
その一番の要因は主要登場人物が「女の子」じゃなく「男の子」だからだと
思っています。男の子中心に話が動いているため、普段、私が「家庭小説」を
読むときに楽しみにしている洋服や食べ物に関する記述がほとんどないのです。
そこが少し物足りないな、と思ってしまいました。

61.母~オモニ~/姜 尚中
■ストーリ
お前とふたりだけの話ばしたかったとたい。遺品の中から見つかったテープは、
文字の書けなかった母から息子への遺言だった。社会全体が貧しく、家族間の
体温が熱かったあの時代の感触が濃密に甦る。
「在日」の運命を生き抜いた親子二代の物語。

■感想 ☆☆☆
教会員の方から、「若い人に読んでほしいの」と渡された本。
在日として生きてきた日々の苦労が読みやすい文章で書かれています。
私は、なぜか行く学校がことごとく「被差別」や「在日」、「平和学習」に
力を入れていたため、かえってトラウマのように「知りたくない」と
こういった本を避ける傾向にありましたが、やはり避けて通っていてはいけないな、
と思いました。ようやくそう思えるようになりました。
わずか60年前の日本のことを、
理不尽な境遇にあってがむしゃらにがんばった人たちのことを
あの戦争で多くのものを失った人たちのことを
忘れてはいけないし、知識として知るのではなく、
その方々の「体験」を聞いて心に刻みつけておかなければならないと思いました。

62.ロマンス小説の七日間/三浦しおん
■ストーリ
あかりは海外ロマンス小説の翻訳を生業とする28歳の独身女性。
ボーイフレンドの神名と半同棲中だ。中世騎士と女領主の恋物語を依頼され、
歯も浮きまくる翻訳に奮闘しているところへ、会社を突然辞めた神名が帰宅する。
不可解な彼の言動に困惑するあかりは、思わず自分のささくれ立つ気持ちを
小説の主人公たちにぶつけてしまう。原作を離れ、どんどん創作されるストーリ。
現実は小説に、小説は現実に、二つの物語は互いに影響を及ぼし、
やがてとんでもない展開に!

■感想 ☆☆☆*
あー。なんか底抜けに楽しい話が読みたい。
何も考えずに読める本と親しみたい!と思って手にした一冊。
思う存分、エンターテイメントの世界にのめりこみました。
ただ純粋に「楽しい!」だけの本も世の中には必要なんだよ!と思いました。
読み終えた後、ひっじょーにハーレクィンロマンスを読みたくなりましたが、
未だに図書館で借りる勇気がありません。
いや、別に恥ずかしがる必要もないんだけどね。

63.そこにいる人/矢口敦子
■ストーリ
大学生の直子には、生後半年で肝臓に欠陥があると診断され、長い闘病生活を
送っている姉がいる。姉を気遣い続けて生きてきた直子はある日、
大学のコンパで谷村という男と出会うが・・・。

■感想 ☆☆
初めて手に取った作家さん。とても読みやすい文体でしたが、結末は衝撃的でした。
あ・・・そういう終わり方なんだ・・・・と思いました。
あと数ページで終わり、というときに、
「このお話、一体、どう決着つけるつもりなんだろう?」と疑問には思ったのです。
まさかこんなにも情け容赦なく、いきなり結末に結び付けられるとは。
これが現実なのかもしれない。けれど、おそらく、この作品を読み返すことは
ない気がします。あまりに辛すぎる話でした。

64.人形になる/矢口敦子
■ストーリ
夏生は人工呼吸器なしでは生きられない。
ある日、彼女の隣のベッドに瑞江という女性が入院してきた。
それまでベッドに縛り付けられているだけだった人生の可能性を瑞江は拡げてくれた。
しかし、夏生は彼女の恋人、双一郎に恋をしてしまい・・・。

■感想 ☆☆
2冊目の矢口作品。「そこにいる人」は、肝臓移植が必要な女性を中心に
話が展開されていましたが、今作品は動くこともかなわないほどの
身体障害を持っている女性が主人公です。哀しく後味の悪い愛の話でした。
私にとって、「恋愛」は比重が軽いものなので、
彼らが「恋愛」に対して傾けている情念や情熱に共感できませんでした。
改めて「恋愛」に翻弄される人生は嫌だな、と思ったり、
でも、恋愛に翻弄されることもなくひとりで生きていく人生よりは、
恋愛に翻弄される人生のほうが豊かなのかな、と思ったり、
色々と考えさせられました。

65.孤宿の人(上)(下)/宮部みゆき
■ストーリ
讃岐国、丸海藩。この地に幕府の罪人、加賀殿が流されてきた。
以来、加賀殿の所業をなぞるかのように毒死や怪異が頻発。
そして、加賀殿幽閉屋敷に下女として住み込むことになった少女ほう。
無垢な少女と、悪霊と恐れられた男の魂の触れ合いを描く。

■感想 ☆☆☆☆*
雷が今よりずっと恐れられていた江戸時代。
立て続けに起きた雷害に右往左往する民衆の姿を見て、
「原発問題」で何を信じればいいのか分からないまま、
情報に振り回されている今の私のようだと思いました。
武士に町役人、住職に火消し係、村医者に、農民や漁民、
もっと力のない女子供たち。それぞれがそれぞれの立場で懸命に
よりよい明日を迎えようとがんばっているのに、
自然災害は容赦なく襲いかかります。次々に亡くなっていく人々。
そして、そのような危機的状況下でもうごめく政治的策略や人間の情欲。
人間の力ではどうすることもできないこと、
人間の力の範疇にないものがこの世の中にはある。
そして、人間の力の及ばないはずのことが
人間の欲望によって、更に被害を大きくすることもある。
大事なのは、どんなときも落ち着いて自分を見失わないこと。
入ってくる情報に惑わされないこと、
中途半端な知識で知ったかぶりをしないこと。
知識や知恵を身につけることの大切さを改めて思いました。
某サイトでは著者、宮部さんからのメッセージが紹介されていました。
「悲しいお話なのですが、
 悲しいだけではない作品にしたいと思って書き上げました。」
このメッセージどおりの作品です。

67.夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦
■ストーリ
私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、
百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。
我ながらあからさまに怪しいのである。
そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。
「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど
繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「奇遇ですねえ!」
「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」の運命は??
二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々。

■感想 ☆☆☆☆*
図書館で見つけて「妹に読ませてあげねば!」と借りてきた本。
のはずでしたが、私も手に取り、再読しました。
再読と言うよりは、再々読。もう5回は読み返しています。
「内容はないよ。考えずに、ただ楽しんでね。」と妹には伝えました。
悪口じゃありません。全力で褒めています。大好きな作品ですから。
でも、内容を伝えようと試みるのがとても難しい作品なのです。
登場人物たちがみな生きていくのに必要ないことを
全力でがんばっている姿勢とか、ものすごく真面目に生きているのに
がんばる方向性を180度間違えている様子が大好き。
パンツ総番長、文化祭事務局長を愛してやみません。

2011年5月の読書

2011年06月11日 17時18分12秒 | 読書歴
中盤、赤川さんと辻村さんで一息つきましたが、
それ以外は、普段あまり手に取らない外国作品や
新しい作家さんの作品に積極的に手を伸ばせた一ヶ月でした。
ところで来月、部会の中で「お奨めの本」を紹介するコーナーを
受け持つことになりました。
・・・老若男女問わず、一般的にみんあが楽しめる本というものを
紹介できる自信がまったくありません。
うーん。何を紹介すればいいのか、まったくわからん!

49.夏至の森/パトリシア・A・マキリップ
■ストーリ
七年ぶりに故郷に帰ったシルヴィアを待っていたのは、鬱蒼とした森に抱かれた
リン屋敷と、曾曾曾祖母の手記。森には美しくも怖ろしい女王とその眷属が棲み、
祖母が主宰する村の女たちのギルドが、屋敷を彼らから護っているのだという。
シルヴィアがあわてて都会に戻ろうとしたとき、従弟が消えて取り替えっ子が現れた。

■感想 ☆☆☆☆
おそらく翻訳の影響だと思うが、前半の日本語はかなり読みにくい。
そのため、作品世界に入っていくのに時間を要したが、中盤以降は
現代社会と重なるようにして存在している「異世界」をすぐ傍に感じながら
読み終えることができた。
現代を舞台にしているものの、前社会的な閉じた「村」の中で生きる
狭い世界で生きる女たちは、自分たちの世界を守るために、異世界を
排除し続ける。その手法が女ならではのお裁縫で、ファンタジーとか
冒険譚とは程遠い非常に地味なもの。けれど、お裁縫で異世界の出入り口を
封じ込めるという考え方になんとなく「ありえそう」だと納得できた。
異世界がごくごく身近にあることをこういった細かな設定で見せていたように思う。
中盤まではどこまでも閉塞的で窮屈な話の流れ。それがクライマックスを迎え、
どんどん壮大な話の展開になっていく。その世界の広がりに、
この世界の大きさ、深さ、多様性を改めて実感した。
社会は、地球は、多種多様の民族、生物が共存して生きていくべきところ
なのだということを改めて考えさせられたし、
そこに大きな希望を見出せる作品だった。

50.スロウハイツの神様(下)/辻村深月
■ストーリ
ある快晴の日、人気作家チヨダ・コーキの小説のせいで、人が死んだ。
猟奇的なファンによる小説を模倣した大量殺人。この事件を境に筆を折った
チヨダ・コーキだったが、ある新聞記事をきっかけに見事復活を遂げる。
闇の底にいた彼を救ったもの、それは『コーキの天使』と名付けられた
少女からの128通にも及ぶ手紙だった。事件から十年。売れっ子脚本家
赤羽環とその友人たちとの幸せな共同生活をスタートさせたコーキ。
しかしその共同生活は、思わぬ方向へゆっくりと変化し始める。

■感想 ☆☆☆☆☆
またもや辻村さんのこの作品を手に取りました。落ち込んでいるとき
元気がないときに必ず手に取りたくなる作品。人と人との関係に大きな
希望を見出せます。そして、どんなに人との関係に疲れたとしても
やっぱり私たちは人と関わって生きていかなきゃいけないし、私には
誰かの支えが必要なんだというそんな当たり前のことを素直に
思うことができるようになります。
「まあ、なんていうか。あらゆる物語のテーマは結局愛だよね。」

51.恋占い/赤川次郎
52.森がわたしを呼んでいる/赤川次郎
53.死と乙女/赤川次郎

■感想 ☆☆☆
どれも赤川さんらしい軽妙な文体で青春真っ盛りの女子高生たちが
明るくまっすぐに前を向いている作品だった。とても読みやすい。
そして、とても軽やか。
折に触れ、私が赤川作品に会いたくなるのは、このどこまでも
まっすぐな作品世界故、だろう。ひねりがない、深みがない、と
揶揄されることの多い赤川作品だけれど、悲しみや悩みを
軽い文体にあえて閉じ込めて、軽く見せているのだと思う。
いつだってスタンダードに大切なこと、当たり前のような、
けれど普段は実感したり行動し続けたりすることが難しいことを
赤川さんは気張らずに穏やかな声で「大事なんだよ。」と
言い続けてくれているのだと思う。
たとえば、今を大切に気を抜かずに生きる、とか
自分の大切な人のために行動する、とか
どんなときもルールを守って生きる、とか
悩んでいても人前では笑ってみせる、とか。
そういったことをきちんとできる素直なヒロインたちに元気をもらいました。

54.魍魎の匣/京極夏彦
■ストーリ
匣の中には綺麗な娘がぴったりと入ってゐた。箱を祀る奇妙な霊能者。
箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物―箱を巡る虚妄が
美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。探偵の榎木津、文士の関口、
刑事の木場らいつもの面々がみな事件に関わり、京極堂の元へ集う。
果たして憑物は落とせるのか。

■感想 ☆☆☆*
ようやくようやくようやく再読し終えました。この作品をトイレで
手に取ったのが運のつきというか。トイレ時間で読み返す作品じゃ
なかったかもねー、と途中でしみじみと思いました。
けれど、何度読み消してもこの幻想的な世界観は見事。描写も詳細で
彼らの姿が、そして彼らの活躍が鮮やかに脳内で蘇りました。

55.青い城/モンゴメリ
■ストーリ
貧しい家庭でさびしい日々を送る内気な独身女、ヴァランシーに、
以前受診していた医者から手紙が届く。そこには彼女の心臓が危機的状況で
余命は1年だと書かれていた。悔いのない人生を送ろうと決意した彼女が
とったとんでもない行動とは?

■感想 ☆☆☆☆☆
もう!もう!もうもう!!
すべての夢見る乙女たちにぜひ見ていただきたい作品でした!
中盤から結末までの話の展開は容易に予測できてしまうし、
その予測どおりに話は進み、なんらどんでん返しなどない状態ですが、
それがまったく不満ではありません。むしろ嬉しくてたまらない。
かつて乙女だった人のほうが読み終えて幸せな結末に浸れるのでは
ないかと思います。

56.冷たい校舎の時は止まる/辻村深月
■ストーリ
ある雪の日、学校に閉じ込められた男女8人の高校生。どうしても開かない
玄関の扉、そして他には誰も登校してこない時が止まった校舎。
不可解な現象の謎を追ううちに彼らは2ヵ月前に起きた学園祭での自殺事件を
思い出す。しかし8人は死んだ級友の名前と顔をどうしても思い出せない。
死んだのは誰なのか。

■感想 ☆☆☆☆
古本屋で再会を果たせたため、めでたく購入。
大好きな辻村さんのデビュー作品です。
年を重ね、どんどん視線がひねたものになっている私は、
久々にこの作品を読んで、登場人物への視点が甘いな、という感想を
抱きました。甘い。けれど、その甘さが不愉快なものではなく、
できればこうありたい、と私が願ってやまない甘さで
その生真面目さと人への向き合い方に改めて心を打たれました。

57.もつれた蜘蛛の巣/モンゴメリ
■ストーリ
ダーク家とペンハロウ家に伝わる由緒ある水差し。
みんな喉から手が出るほど欲しがるこの家宝を相続するのは一体誰なのか。
老ベッキーおばがいまわの際に遺した突拍子もない遺言のせいで
一族の面々は、かつてない大騒動を繰り広げることに。一族きっての美女
ゲイの愛の行方は?長年秘密にされていたジョスリンの別居の真相は?
やがて水差しの魔力が一同をとんでもない事件へと導く。

■感想 ☆☆☆
登場人物がこれでもか、これでもか、と出てくる作品。
おそらく主要登場人物が総勢18名ほど。到底、覚えられないし、
扱いが雑な人もたくさんいる。海外モノが苦手な私には、
登場人物の名前と特徴を覚えるのが難しい手ごわい作品だった。
途中、何度か挫折しそうにもなった。けれど、それでも読み続けると
ストーリーテラーとしてのモンゴメリの底力を感じさせてくれる。
登場人物みんながそれぞれの居心地の良い結末を自力で手に入れていく
なんとも素敵な作品だった。
この作品、おそらくドラマで見たほうが分かりやすいんじゃないかな。
「大草原の小さな家」みたいな海外ドラマにしてもらえたらいいのにな。

58.骨音-池袋ウェストゲートパーク3-/石田衣良
■ストーリ
世界で一番速い音と続発するホームレス襲撃事件の関係は?
また、池袋ゲリラレイヴで大放出された最凶ドラッグ「スネークバイト」の
謎を追うマコトに新たな恋が現れて・・・。連作短編集。

■感想 ☆☆☆
表題作「骨音」は「池袋ウエストゲートパークSP」としてスペシャル
ドラマ化されていたのを今も鮮明に覚えています。面白かったな。
そして、とてもえぐかったな。原作はドラマほどのコメディテイストは
なく、より一層、えぐみを増した作品。
そのほかに地域通貨と暴力団の癒着を描いた作品やドラッグとパーティに
ついて論じている作品など。どれも私には縁遠いまるで他の国の出来事の
ような事件ばかり。けれど、どれもが紛れもなく「今の日本」の出来事で
新聞の社会面を彩る事件の数々で、日本の広さ、多様さを感じた。

59.汝の名/明野照葉
■ストーリ
若き会社社長の麻生陶子は美人でスタイルが良く、仕事もできる誰もが
憧れる存在。しかし、その美貌とは裏腹に「完璧な人生」を手に入れるためには、
恋も仕事も計算し尽くす女だ。そんな陶子には、彼女を崇拝し奴隷の如く仕える
妹の久恵がいた。しかし、ある日から、二人の関係が狂い始め、驚愕の真実が
明らかになっていく。

■感想 ☆☆
気の強い打算だらけの女性がとても好きです。確信犯的に計算できる
強い女性、けれどその強さは自分のコンプレックスから生まれたもので
本来はとても弱い女性を見かけると、どこまでも応援したくなります。
ヒロインはそんな女性。徹底的に嫌な奴なんだけど、だからこそ、
どこかで肩の力を抜いて楽になって欲しい、幸せになって欲しい、と
祈るような気持ちで読み進めました。が、最後の最後まで女同士の
嫌な確執が続く作品でした。中盤からは若干、気持ちが悪くなりました。
女性同士の確執は確かにあると思う。けれど、こういった感じの確執は
実は少ないんじゃないかな、最近の女性はむしろ堂々とさばさばと
生きていると思うんだけどな、とヒロイン2名の前近代的な確執に
違和感を抱きました。

2011年4月の読書

2011年05月14日 15時40分48秒 | 読書歴
今年はこのペースで読書と向き合うことになりそうです。
他にもちょこちょこ流し読みしている仕事関係の本があるものの
流し読みの上に部分読みで、「読んだ本」としてあげられません。
つまるところ、私は純粋に「読書」が好き、というわけではないんだろうな、
と思いました。「活字中毒なんです!」と言える人、
どのジャンルももれなく楽しめる人に心底憧れます。

33.触れもせで-向田邦子との20年/久世光彦
34.夢あたたかき-向田邦子との20年/久世光彦

■感想 ☆☆☆☆*
 久世さんにとって、向田さんは永遠に触れられない大切な人だったんだろうな
 と思いました。「恋愛感情ではない」と何度も書いているけれど、やっぱり
 どこかに恋愛感情のようなものが混じっていたのではないかと思います。
 それぐらい、彼女を思う気持ちが伝わってくる文章の数々でした。

35.誰よりも美しい妻/井上荒野
■ストーリ
 ヴァイオリニストの夫、夫の先妻と若い愛人。息子とその恋人。
 誰よりも美しい妻を中心に愛の輪舞が始まる。

■感想 ☆☆*
 誰よりも美しい妻を誇りに思いながら、次々に若い恋人を作る夫。
 恋を求めずには生きられない夫に次々と訪れる新しい恋をすべて
 把握している妻は、そんな夫をただひたすらに見守り続けます。
 恋愛と結婚は違うし、愛情と情も違う。でも、どちらにせよ、
 つながりたい誰かがいたり、関わりたいと思う大切な誰かがいるから、
 人は孤独を感じるんだろうな、と思いました。

36.池袋ウェストゲートパーク/石田衣良
37.少年計数器 -ウェストゲートパークⅡ-/石田衣良
■ストーリ
 池袋で八百屋を営みながら、退屈しのぎになんでも屋のようなことを
 しているマコト。今夜も池袋はトラブルがいっぱい。刺す少年に
 消えた少女、潰し合うギャング団。少年たちは事件解決を求めて
 池袋を駆け抜ける。

■感想 ☆☆☆☆
 テンポのよい文章で、楽しませてくれるザ・エンターテイメント!な
 作品。メリハリの利いた文章とノリのよさを重視した会話、作りこまれた
 キャラクターと世界観で徹頭徹尾楽しませてくれます。
 それにしてもクドカンはすごい!ドラマを見てこの作品を読むと、
 あのドラマがいかに原作のテイストをかきけすことなく、話が
 再構築されているかがよく分かります。そして、原作のテイストが
 かき消されていないのに、見事にクドカンテイストにもなっていて
 そのバランスのよい話の作り方に感動しました。
 いまや、この作品はあのキャスティング以外に考えられないもの。
 また見たいなー。再放送熱烈希望。

38.ぜつぼう/本谷有希子
■ストーリ
 俺はぜつぼうしているが故に俺なのだ。
 ぜつぼう、から人間は立ち直れるのか?売れなくなった芸人の絶望の
 人生。希望よりも絶望することの方が生きる力に溢れているという
 人間の性を描く。

■感想 ☆☆☆
 文章はとても読みやすいのに、文章が読みやすいからこそ、文章の
 ざらざらした質感が特徴的な作品。読んでいる最中も、読み終えた
 後もひたすらに眉間に皺を寄せていました。主人公に共感はできません。
 それなのに、分かってしまう部分もある自分にやるせなさを感じました。
 おそらく自己顕示欲が強く、自意識過剰な人ほど、この主人公の
 気持ちの移り変わりが分かってしまうんではないかと思います。
 立ち止まることにエネルギーを費やすことで生きる実感を得る。
 そういうことってあるのかもしれない、とも思いました。
 ラストのかすかなかすかな希望が、本当にかすかなのに、
 かすかだからこそ、「それでも希望はある」と感じさせてくれる
 力強い作品でした。

39.クレヨン王国月のたまご(1)(2)(3)/福永令三
■ストーリ
 小学6年生のまゆみは、私立受験に落ちたショックで自暴自棄に
 なっていたところを見知らぬ青年三郎に助けられます。彼の運転する
 トラックでいつのまにかクレヨン王国に入ってしまったまゆみ。
 彼女はそこで、三郎、ブタのストンストン、ニワトリのアラエッサと
 ともに、「月のたまご」を救出する旅に出ることになります。
 それは、危険がいっぱいの愛と冒険の旅だったのです。

■感想 ☆☆☆☆*
 大好きなクレヨン王国を久々に読み返しました。月のたまご第1巻は
 大好きだったけれど、第2巻からは当時の私にとっては話が難しく、
 途中で放棄していました。今回、久々に読み返して、第2巻、第3巻の
 話の面白さ、描かれている人間の業の深さ、哲学的な話の展開に
 驚きました。最後まで読み通したいなぁ。月のたまごは全8巻。
 その後に4冊続編が続いて全12冊で完結だそうです。買っちゃおうかな。

42.砂漠/伊坂幸太郎
■ストーリ
 「大学の一年間なんてあっという間だ」。入学、一人暮らし、新しい友人、
 麻雀、合コン。普通のキャンパスライフを楽しむ5人の大学生は
 社会という「砂漠」に巣立つ前の「オアシス」で、超能力に遭遇したり
 不穏な犯罪者に翻弄されたり、恋をしたりしながら、あっという間に
 過ぎゆく日々を送っていく。パワーみなぎる青春小説。

■感想 ☆☆☆☆
 物語の核となるものは通り魔強盗と空き巣事件。2つの事件が登場人物
 5人の日常に少しずつ影響を与え、大学生活の四季を彩る。
 それぞれの季節に起こるちょっとした事件とその結末。そして迎える
 旅立ちのとき。読み終えた後、胸にこみ上げてくるものがあった。
 それにしても、キャラクターの造詣が見事。特に中心人物、西嶋は
 初読の際に、なんて自分勝手で自己流で都合よくポジティブなんだろう、
 と少しイライラしながら見守っていましたが、今回、読み返してようやく
 彼の魅力に気付くことができました。その場その場で意見が変わっても
 ぶれることなく「自分の気持ち」を優先させるその姿勢が彼の言葉に
 説得力を与えていた。
 「目の前の危機を救えばいいじゃないですか。
  今、目の前で泣いている人を救えない人間がね、
  明日、世界を救えるわけがないんですよ。」

43.アイスクリン強し/畠中恵
■ストーリ
 ビスキット、チヨコレイト、アイスクリン、シユウクリーム、スイートポテト。
 南蛮菓子から西洋菓子へと呼び名が変わり、新たな品々が数多登場。
 そんなスイーツ文明開化の東京で、孤児として生まれ育った真次郎は、
 念願の西洋菓子屋・風琴屋を開いた。そこには甘い菓子目当てに元幕臣の
 若い警官達が訪れ、それに伴い厄介ごとも次々と現れて・・・。

■感想 ☆☆☆
 作者お得意のキャラモノ作品。世界観が作りこまれています。
 さくさくと読み終えて読後感は爽やか。ただ少し軽すぎて物足りなさを
 感じることも。楽しく読める1冊であることに間違いありません。
 続編「若様組参る!」もある模様。こちらも読みたいなー。

44.ブルータワー/石田衣良
■ストーリ
 悪性の脳腫瘍で、死を宣告された男が200年後の世界に意識だけ
 タイムスリップした。地表は殺人ウイルスが蔓延し、人々は高さ2キロ
 メートルの塔に閉じこめられ、完璧な階層社会を形成している未来へ。
 平凡なひとりの男が世界を崩壊から救う物語。

■感想 ☆☆☆
 9月11日の自爆テロを見た著者が「書いておきたい」と思った物語。
 戦い、いがみ合うことでは「明日」も「希望」も望めないという
 著者の想いが伝わってくる作品でした。

45.イキルキス/舞城王太郎
■ストーリ
 物語には生をもたらすキスと、死を招くキスがある。青春、恋愛、
 セックス、暴力、家族。みんなカナグリ生きている。

■感想 ☆☆☆
 これでこそ舞城さん!と思わず喝采したくなるようなハチャメチャな
 でもリズム感があるおかげで読み続けると癖になる文章。
 とんでもない話の構成と発想力。そして、何より人間に対する希望。
 誰かが誰かを思う気持ちが与えてくれる希望の大きさをまったく
 素直でない描写でじんわり温かく描いてくれていました。
 読みこなすのに力がいるけれど、やっぱり癖になる。
 そう思える大好きな作家さんです。

46.阪急電車/有川浩
■ストーリ
 恋の始まり、別れの兆し、そして途中下車。関西のローカル線を
 舞台に繰り広げられる、片道わずか15分の胸キュン物語。
 人と人が交差する物語。

■感想 ☆☆☆☆☆
 1冊の薄い文庫本に16の短編。1編1編は、読みやすい文章という
 こともあって、あっという間に読み終えられます。けれど、各編が
 リンクし合い、ある話の主人公が他の話でチョイ役で再登場したり
 ふたたびヒロインとして再登場したり、と連携しているためか、
 短編集にありがちな物足りなさをまったく感じさせません。
 人生には出会いがあって、別れがあって、電車の中という限られた
 空間で出会っても、お互いの人生にちょっとずつ影響を与え合って。
 誰もが自分の人生の主人公で、そして誰もが誰かの人生の脇役なのだ
 ということをしみじみと味あわせてくれる温かい作品でした。
 そして、登場人物がみなまっすぐ背筋を正して生きている清清しい
 作品でもありました。
 
47.冬の薔薇/パトリシア・A・マキリップ
■ストーリ
 ロイズは人には見えないものを視る目を持つ風変わりな少女。
 ある日、彼女は森の泉のほとりで、ひとりの若者が光の中から歩み出て
 くるのを見た。若者の名はコルベット。呪われていると噂され、廃墟に
 なっているリン屋敷の跡取りだという。

■感想 ☆☆☆*
 スコットランドの民間伝承「タム=リン伝説」を題材にした作品。
 同じく「タム=リン伝説」を題材にしたダイアナ・ウィン・ジョーンズの
 「九年目の魔法」を私が大好きだと知った教会員の方が貸してください
 ました。同じ伝説がテーマとなっていて、話の筋はやはりどこか同じもの
 を感じさせてくれますが、作者や作風が異なるため、(当たり前では
 ありますが)まったく異なる作品。同じ伝説をテーマにしてここまで
 異なる物語を作り上げられるのか、と作家さんの発想力に敬服しました。
 ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品はファンタジーでもどこか
 かわいらしさとコメディを持ち合わせた作品ですが、マキリップの
 この作品はどこまでも幻想的で美しく、どこかモネの絵を思い出させる
 雰囲気でした。物語の始めでは幼く恋とは縁遠い「少女」だった
 ヒロインが長い長い冬を越えて、ラストで一気に美しく花開くその
 瞬間が美しく圧倒的な作品でした。 

2011年3月の読書

2011年04月08日 00時11分34秒 | 読書歴
3月も依然として少なめ。小説に入り込むことができませんでした。
3月下旬は家にいる間中、「ちはやふる」を何度も何度も読み返していました。
現在、12巻まで刊行されている百人一首を題材とした少女マンガです。
これがね、面白いのなんのって。1巻から12巻までひたすらに
5回は読み返しました。基本的に好きなものは繰り返し楽しみ尽くす
粘着質な性質なのです。それにしても・・・。
4月はもう少し本と触れ合いたいかな。

21.精霊の守人/上橋菜穂子
■感想 ☆☆☆☆
 「30歳の女用心棒バルサを主人公に、人の世界と精霊の世界を描いた
 ファンタジー」だそうです。前評判通り、非常に作りこまれた世界観で
 あっという間に引き込まれました。まだまだ続きがあるみたいで楽しみ。
 ・・・図書館ではシリーズものって「順番どおりに出会う」ことが
 難しいんですけどね。がんばるぞ!

22.火村英生に捧げる犯罪/有栖川有栖
■感想 ☆☆
 犯罪社会学者・火村英生と、ワトソン役の作家・有栖川有栖が登場する
 シリーズ。短編集です。というわけで、そもそも短編が苦手な私は
 ちょっぴり物足りなさを感じました。ただ、このふたりにひっさびさに
 会えたのはとっても嬉しかったかな。懐かしい気持ちになりました。

23.いわずにおれない/まど・みちお
■感想 ☆☆☆☆
 童謡「ぞうさん」でおなじみの詩人、まどさんのエッセイ集。
 100歳という年齢を感じさせない柔軟な感受性が言葉の端々から
 伝わってきました。ひらがなのあたたかみ、言葉の持つ力、人柄が
 にじみ出る言葉の使い方、そういったものにしみじみと思いを馳せました。

24.文藝別冊「萩尾望都」少女マンガ界の偉大なる母
■感想 ☆☆☆*
 今も現役で活躍している漫画家、萩尾望都さんのムック本。
 本人インタビューはもとより、家族へのインタビュー、作家との
 対談集、作品一覧など読み応えたっぷりでした。読んでいるうちに
 萩尾先生の漫画がとてつもなく読みたくなりました。
 「残酷な神が支配する」をもう一度、読みたいなー。でも、あれを
 読むにはもう少し元気が必要かなー。

25.きみはポラリス/三浦しをん
■感想 ☆☆*
 つくづく短編集が苦手なんだなー、と読みながら実感しました。
 おそらく作品への入り込み方がスロースターターなのだろう、と。
 そして「恋愛小説」が少し苦手なのかもな、と思いました。
 自分のことなのに自分の好みが未だによく掴めていません。

26.窓際OLの親と上司は選べない/斉藤由香
27.窓際OL人事考課でガケっぷち/斉藤由香
■感想 ☆☆☆☆
 北杜夫センセの娘さんによるごくごく普通のOLの日常生活を
 描いたエッセイ集。・・・なのかな。会社生活について書かれて
 いますが「ごくごく普通の日常」ではない気がします。
 サントリーという会社の懐の深さ、広さを実感するなー。
 そして、どんなときもマカ大好き、会社大好きな斎藤さんを
 心から尊敬します。

28.星間商事株式会社社史編纂室/三浦 しをん
■感想 ☆☆☆*
 おもしろかった!!何も考えず、わははと楽しめる内容の
 作品でした。読んでて元気が出てきたなー。
 妄想バンザイ!オタクさんの経済力と底力バンザイ!と思いました。

29.8人のいとこ/オルコット
30.ローズの愛情/オルコット
■感想 ☆☆☆☆☆
 久々に読み返したくなって手に取った家庭小説。
 「古きよき時代」の子女たちが正しく明るく優しくまっすぐに
 成長していく姿が描かれています。女性観や家庭観に時代を
 感じるものの、私の中ではまさに原点。小中高時代に出会った小説の
 影響力って大きいな、と思いました。

31.城山三郎が娘に語った戦争/井上紀子
■感想 ☆☆*
 娘さんによる城山三郎さんの回想録。娘だからこそ、の視点が
 私の知っている(「こんな人」と思っていた)「作家 城山三郎」と
 同じでもあり、異なってもいて。「家族の視点」が非常に興味深く
 面白かったです。とは言え、文字が少なすぎるようにも感じました。

32.アナタとわたしは違う人/酒井順子
■感想 ☆☆☆
 ベストセラー「負け犬の遠吠え」を書いた酒井さんのエッセイを
 初めて手に取りました。かなり前の作品(おそらく10年以上前)
 だけあって、「時代」を感じさせる記述がちらほら。
 それでも楽しく読めました。女性による女性の悪口って
 なんでこんなに面白いんだろ。