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のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

やまなし/宮沢賢治

2010年10月27日 23時40分53秒 | 読書歴
教会のちびっこが宿題で朗読をしていました。
朗読していたのは、宮沢賢治さんの「やまなし」

私も小学校六年生のとき、国語の教科書で出会いました。
懐かしい!
あの頃は、この作品の魅力がまったく分からなかったのですが
そのあまりのわけわからなさゆえに、強烈な印象を残していて
友人たちとの話題にもっともよくあがる作品です。

久々に作品に触れて
まったくわけがわからない!と思っていたにも関わらず
今、読み返しても、心に残っている「作品世界の雰囲気」から
印象がほとんど変わらないこと、
作品の持つ幻想的な世界観が今も鮮明に残っていること、
そして、私には珍しく、
かなり正確に文章を記憶していることに驚きました。

・・・もっとも、かなり鮮明に覚えている(ような気がする)のは
折に触れ、友人たちとの話題に「やまなし」が出てくるからで
そのたびに
「あれでしょ?『くらむぼんがわらったよ。』っていうやつでしょ?」
「『くらむぼんは死んだよ』とか言うっちゃんねー。」
「『くらむぼんは殺された』んじゃなかったっけ?」
「なんかゆらゆらしとったよね。海の底で。」
などと、みんなで思い出し合うからなのですが。
そんなことを思い返しながら
こんなにもみんなで語り合う機会があったということは
それだけ言葉に力がある作品ということなんだろうな、
と思ったのでした。

それにしても。なぜか、いつの間にか。
この作品の持つ印象派のような雰囲気、幻想的な雰囲気を
好きだわ、と思っている自分にびっくりしました。
小説や詩って、「出会うとき」があるんだな、と再確認。

あの頃は、あんなにも「わけわからん」くて
腹立たしさすら覚えていたのに。
そして今、読み返してもやはりもやもやしたものは残るのに。

9月の読書

2010年09月30日 23時25分21秒 | 読書歴
今月はちょうど10冊。少なめです。
なにせ大型連休をいただいて通勤時間が激減したので。
私の読書生活の9割を通勤時間が支えてくれています。

121.しゃばけ/畠中恵
■ストーリ
江戸有数の薬種問屋の一粒種・一太郎は、めっぽう体が弱く、外出も
ままならない。ところが目を盗んで出かけた夜に人殺しを目撃。以来、
猟奇的殺人事件が続き、一太郎は家族同様の妖怪と解決に乗り出す。
若だんなの周囲は、なぜか犬神、白沢、鳴家など妖怪だらけなのだ。
その矢先、犯人の刃が一太郎を襲う。

■感想 ☆☆☆☆
人気があるらしい、盛り上がっているらしいという噂のみ耳にしていた
このシリーズ。ずっと読みたかったのですが、やはりシリーズものは
1作目から読みたいなー、とずっと待っておりました。ようやく遭遇。
うん。こりゃ人気があるのも分かるわ。
情景が鮮やか。登場人物(人物?)が活き活きと動き回っていて
とても魅力的。なおかつ明快なストーリー。面白い!
2作目以降も探さなきゃ。

122.ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。/辻村深月
■ストーリ
「30歳」という岐路の年齢に立つ幼馴染の二人の女性。
都会でフリーライターとして活躍しながら幸せな結婚生活をも
手に入れたみずほと、地元企業で契約社員として勤め、両親と暮らす
未婚のOLチエミ。少しずつ離れていった互いの人生が重なることは
もうないと思っていた。あの「殺人事件」が起こるまでは。
何かに突き動かされるように、警察の手を逃れ、今なお失踪を続ける
チエミと、彼女の居所をつきとめようと奔走するみずほ。
行方を追う中、不可解な事件とその真相が明らかなる。

■感想 ☆☆☆*
様々な選択肢が与えられるようになった現代の女性。自由に未来を
決めることができなかったかつての女性たちから見ると夢のように
自由に自分勝手に楽しく生きていると思う。
けれども、その一方で多くの選択肢を与えられているからこその
息苦しさもあるな、と思う。なおかつ、多くの選択肢が与えられて
いるように見えて、まだまだ女性は多くの制約、目に見えない
何かに縛られているな、とも思う。
この作品では、それらがほんの少しデフォルメされて描かれて
いる。でも、地方都市になればなるほど、「現実」として
存在する問題なのだとも思う。結局のところ、幸せって何なんだろう
と考えさせられる作品だった。

123.宵山万華鏡/森見登美彦
■ストーリ
祇園祭前夜。妖しの世界と現実とが入り乱れる京の町で、次々と起こる
不思議な出来事。登場人物たちが交錯し、全てが繋がっていく連作短編集。

■感想 ☆☆☆*
ぐるぐる作品世界を巡っていくと、そこかしこで登場人物たちが繋がり
その繋がりが少しずつ、作品世界を変えていきます。
さっきの作品で出ていたあの人がこちらの作品ではこんなところに!
なるほど!さっきの作品のあの人は、あのときこんなことをしていたのね!
少し視点を変えることで繰り広げられる新たな景色が面白い。
まさに万華鏡の世界です。
また一編一編の彩りもテイストも異なるため、作品ごとに見える世界が
大きく異なります。そこもまた万華鏡。少し妖しく幻想的なお話あり、
力いっぱい馬鹿らしい話あり、作者お得意の単純明快、妄想大好物の
ヘタレ学生たちの活躍あり、ホラーテイストの話あり、と飽きません。

124.蒲生亭事件/宮部みゆき
■ストーリ
予備校受験のために上京した受験生、孝史は、2月26日未明、ホテル
火災に見舞われ、時間旅行の能力を持つ男に救助された。しかし行き着いた
場所はなんと昭和11年。雪降りしきる帝都、東京では、今まさに二・二六
事件が起きようとしていた。

■感想 ☆☆☆☆*
読み応えのある作品。「タイムトラベル」というSF的要素を取り入れて
いるが、「ありえない」のではなく、「あるかもしれない」「そうかも
しれない」という説得力に満ちた作品となっている。
「この世界で生きること」「今、与えられた世界で自分に正直に
まっすぐに生きること」それらがどれだけ難しいことなのか、そして
どれだけ幸せなことなのかをかみ締めた。

125.かみつく二人/清水ミチコ・三谷幸喜
■内容
すべらない英語ジョークから、もんじゃの焼き方、猫の探し方まで。
「一寸法師」好きの脚本家と、「スッポン」好きのタレントの
笑えるだけでなく役に立つ抱腹絶倒会話のバトル。ラジオ番組の
単行本化第三弾。

■感想 ☆☆☆☆
おふたりとも大好きですから。なんでこういうラジオ番組って
福岡では流れないんだろ・・・。ぜひ生で聞いてみたい番組。
面白いだろうなぁ・・・。
ふたりの声が聞こえてくるような作品です。何も考えずに
ただただ楽しめる作品。

126.黄昏/糸井重里・南伸坊
■内容
南伸坊と糸井重里が、鎌倉、日光あたりを小旅行。
旅のおともは、めくるめく会話、雑談、冗談、比喩。
人生の話からタコの話、嫁の話から天狗の話までヒマをつぶすために
交わされた巧みな言葉たちはちょっとした芸として老若男女に歓迎される。
ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」でじわじわ大反響を読んだ読み物が、
語りおろしをたっぷり収録して書籍化。たっぷりの写真と一緒にどうぞ。

■感想 ☆☆☆*
帯には小学生作家として活躍していた華恵さんからのコメントつき。
このコメントが私の感想とそのまんま重なりました。

おじさん二人の会話は 笑いと発見がてんこもり
ともだちと ふらっと出かけておもしろいことを延々としゃべってる
こんな大人がいたら ついてっちゃうよ

どの写真もどの会話もおじさんふたりがホントに楽しそう。
あぁ。人生はかくあるべしだなぁと微笑ましくなります。

127.塩の街/有川浩
■ストーリ
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を
崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女。
男の名は秋庭、少女の名は真奈。静かに暮らす二人の前をさまざまな人々が
行き過ぎる。あるときは穏やかに、あるときは烈しく、あるときは浅ましく。
それを見送りながら、二人の中で何かが変わり始めていた

■感想 ☆☆☆☆*
有川さんにすっかりはまってしまい、次から次へと借りています。
この作品は恋愛と事件のバランスが私の中でベストでした。
このぐらいのほんのり感がとても好きです。ほんのりと言っても
おさえどころはしっかり抑えているあたりが有川さん。
読み終えて幸せな気持ちになりました。

128.白河夜船/吉本ばなな
■ストーリ
友達を亡くし、日常に疲れてしまった私の心が体験した小さな波。
心を覆った闇と閉ざされ停止した時間からの恢復を希求した「夜」の三部作。

■感想 ☆☆☆☆
友人から久々に「吉本ばなな」という名前を聞き、急に読みたくなって
取り出した作品。私は文章と文章の間の空白から何かを読み取る力が
決定的に欠けているため、短編小説がとても苦手なのですが、唯一の例外が
吉本作品。彼女の作品を流れる独特の時間とリズム、そして美しすぎる
言葉の数々が大好きです。この作品集の中でも人が持っている潜在的な
孤独や悲しみについて、数々の美しい言葉で語られています。

129.氷菓/米澤穂信
■ストーリ
いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集を
ないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた33年前
の真実。何事にも積極的には関わろうとしない「省エネ」少年、折木奉太郎は
なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と
解き明かしていく。

■感想 ☆☆☆
これまた久々の再読。面白いです。
初読時はこの面白さにちゃんと気付けてなかったような。

130.オー・デュポンの祈り/伊坂幸太郎
■ストーリ
コンビニ強盗に失敗し、逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。
江戸以来、外界から遮断されている「荻島」には、妙な人間ばかりが住んで
いた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を
操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。

■感想 ☆☆☆☆☆
これまた久々の再読。そして今月最大の掘り出し物でした。
この作品、こんなに面白かったんだー、ということを今更ながらに知りました。
これだからたまの再読はやめられないのです。本には出会うべきときが
あるんだろうなー、と思うのです。それにしても面白かった。
詩と沈黙、そして花を愛する島の処刑人、桜の生き様にしびれました。
これだけシンプルに生きられたらどんなにかっこいいだろう。

祝婚歌/川崎洋

2010年09月19日 09時33分10秒 | 読書歴
結婚式のスピーチで恩師が川崎洋さんの「祝婚歌」を紹介されていました。
「祝婚歌」というタイトルの詩は、吉野弘さんも言葉を紡がれていて
私はどちらかというとそちらのほうが好みだったのですが
久しぶりに聴いた川崎さんバージョンも、
披露宴会場という舞台装置と相まって非常に感動的でした。
爽やかな言葉の数々、行間の合間にたっぷりとある余韻、
そして未来への期待高まる詩の終わりが
「祝婚歌」というタイトルとぴったりマッチ。


見えてくる
くっきりとした水平線

見えてくる
それはまだとてもぎこちない仕草だけど
あさぐろい手と 少しふるえている白い手との交叉

見えてくる
新芽のすかしの入った赤ん坊

たくさんのものが
今日から見えはじめる

今日は
その一番最初の日 初めの日

8月の読書

2010年09月04日 11時29分22秒 | 読書歴
夏休み!ということで、ひとり文庫フェア絶賛開催中でした。
文庫本はやっぱり軽い!通勤のお供はハードカバーより
文庫本のほうが100倍ぐらい楽チンです。(・・・今更?)
そして、「戦争」を振り返る読書もほんの少し頑張りました。

104.ミーナの行進/小川洋子
■ストーリ
 美しくてか弱くて本を愛したミーナ。あなたとの思い出は損なわれることが
 ない。懐かしい時代に育まれた、二人の少女と家族の物語。

■感想 ☆☆☆☆
 穏やかで懐かしい「あの頃」を丹念に描いた物語。穏やかではあるけれど
 物語全体を覆うのは喪失への不安。家族全員が揃った写真を折に触れ
 眺めては呟く主人公の姿が印象的。
 「全員揃っている。大丈夫。誰も欠けてない。」
 写真の中にしか存在しない「誰も欠けていない」家族。全員の笑顔と心が
 恒久的にひとつの家庭におさまることも、みんなが永遠に幸せに一緒に
 過ごすことも、どちらも難しい。けれど、その不安を穏やかな文章で
 描いてみせたこの物語は、なんだかとても愛しかった。

105.クレヨン王国七つの森/福永令三
■ストーリ
 晶太郎・雄三郎・まりよら自然観察クラブの7人は、それぞれ宿題の
 をかかえて、伊豆の天城で夏期合宿をした。先生から出された宿題は
 「苦手な曜日の苦手な原因を克服し、好きな曜日に変えること」。
 合宿の「きもだめしオリエンテーリング」で7つの森に踏み込んだ彼らは
 そこでクレヨン王国の住人と出会い・・・。

■感想 ☆☆☆☆*
 人間とすべての生き物の共存を主張する「クレヨン王国」シリーズ
 初期の作品です。クレヨン王国を全面に押し出してはおらず、人間の
 住む世界のすぐ隣にあるクレヨン王国の住民との束の間のふれあいを
 暖かく描いています。
 人間もクレヨン王国の住民もみな抱えるものは同じ。苦手なものが
 あったり、コンプレックスを抱えていたり、人との関係に悩んでいたり。
 そっと寄り添いあって、お互いが抱える問題を共有し、新たな一歩を
 踏み出す彼らの姿は、私たちにできる「ちょっとの一歩」が明日に
 とって大きな力を持っているのではないかと思わせてくれます。
 
106.スプートニクの恋人/村上春樹
■ストーリ
 22歳の春、すみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ
 突き進む竜巻のような激しい恋だった。恋に落ちた相手はすみれより17歳
 年上で結婚していた。更につけ加えるなら、女性だった。

■感想 ☆☆☆
 人が人を想う気持ちのやるせなさと、どんなに誰かを想って、その誰かに
 受け入れられたとしても消えることのない孤独があること。人は死ぬまで
 ひとりで、誰かと寄り添って生きたとしても「ひとりで生きていく」こと
 そこに変わりはないのだということ。読み終えたときに、そういった思いに
 駆られた。ハッピーエンド。それなのに、やるせない気持ちに襲われた。
 作品より。
 「どうしてみんなこれほどまで孤独にならなくてはならないのだろう。
  僕はそう思った。どうしてそんなに孤独になる必要があるのだ。
  これだけ多くの人々がこの世界に生きていて、それぞれに他者の中に
  何かを求めあっていて、なのになぜ我々は孤絶しなくてはならないのだ。
  何のために?この惑星は人々の寂寥を滋養として回転を続けているのか。」

107.図書館戦争/有川浩
108.図書館内乱/有川浩
109.図書館機器/有川浩
110.図書館革命/有川浩
■ストーリ
 時は西暦2019年。公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる
 「メディア良化法」(実質上の検閲の合法化)が施行された日本。
 強権的かつ超法規的にメディア良化法を運用する「メディア良化委員会」
 とその実行組織「良化特務機関」の言論弾圧に唯一対抗できる存在が
 図書館だった。かくして図書館は表現の自由を守るために武装し、
 「図書隊」を組織し、良化特務機関との永きに渡る抗争に突入することに
 なる。

■感想 ☆☆☆☆☆
 ひっじょーに面白かったです!
 上記のあらすじだけ読むと、非常に堅苦しく、つらい戦いが待ち受けている
 話のように見えますが、このストーリーを縦糸に、主人公たちの恋愛模様が
 ふんだんに描かれていて、堅苦しさは微塵たりともありません。
 どちらかというと、横糸のほうが目立つ場面が多く、息も絶え絶えに
 きゃーきゃー言いながら読み終えました。ラブコメバンザイ!
 しかし、この架空の世界。あながち「ありえない」とは言い切れない。
 そんな恐ろしさも読みながら感じました。

111.グダグダの種/阿川佐和子
■感想 ☆☆☆
 疲れたときの阿川さん。私にとっての清涼剤です。
 いつも朗らかで元気な阿川さんは私にとって憧れのセンパイです。

112.陰日向に咲く/劇団ひとり
■ストーリ
 陽の当たらないところで実直に生きている「人生の落ちこぼれ」たち6人。
 彼らが社会復帰するまでの道のりを描いた連作短編集。

■感想 ☆☆☆
 お笑い芸人、劇団ひとりさんのベストセラー作品。
 なにせ読書は図書館便り。ベストセラー作品とは縁遠いため、ようやく
 ようやく手に取りました。「ベストセラー」とか「作者の名前」とか
 いろんなものが邪魔をしてフラットな状態では読めませんでしたが、
 それでも面白いな、と感じました。ひとりひとりに優しい視線が配られ、
 彼らの小さな「一歩」が丁寧に描かれています。

113.レヴォリューションNo.3/金城一紀
■ストーリ
 君たち、世界を変えてみたくないか?
 オチコボレ高校に通う「僕」たちは、三年生を迎えた今年、とある作戦に
 頭を悩ませていた。厳重な監視のうえ強面のヤツらまでもががっちり
 ガードするお嬢様女子高の文化祭への突入が、その課題だ。
 ゾンビーズシリーズ第1弾。

■感想 ☆☆☆☆
 躍動感あふれる主人公たちの活躍が心地よい。
 彼らは馬鹿なこと、意味のないことに、精一杯の力を傾ける。生きている
 ことを心から楽しむ。生きていることを実感するために。
 そんな彼らの姿に胸を熱くしながら、読み進めた。

114.でいごの花の下に/池永陽
■ストーリ
 プロのカメラマンだった男は姿を消した。死をほのめかすメモと、
 使いきりカメラを残して。フリーライターの燿子は、恋人の故郷である
 沖縄へ向かう。どこまでも青い空と海、太陽と風に包まれて愛した男を追い、
 その過去を知った彼女は・・・。戦後60年、沖縄の傷が癒えることはない。

■感想 ☆☆☆
 沖縄戦の残酷さ、沖縄戦が沖縄の人たちに与えた物理的、精神的苦痛を
 改めて思いました。九州在住の私にとって、沖縄は「九州・沖縄」という
 身近な存在ですが、きっと、沖縄の人たちにとって「沖縄は沖縄」であり
 九州も本州も、「沖縄以外」なんだろうな、と思いました。
 そう思われても仕方がないと思いました。戦後60年。けれど、沖縄の
 人たちは戦後も色々なものを背負わされている。そういったことにも向き
 合っている作品でした。
 本文より
 「人は人を殺すのです。いえ、殺せるのです。条件さえ重なれば。
  私はそれは運だと思います。たまたま殺人を犯さない人間がいたとしたら
  それは運です。殺さないのではなく、殺さなければいけない状況に
  陥らなかっただけだと思います。」

115.戦争童話集/野坂昭如
■ストーリ
 焼跡にはじまる青春の喪失と解放の記憶。戦後を放浪しつづける著者が、
 戦争の悲惨な極限に生まれた非現実の愛とその終わりを「8月15日」に
 集約して描く鎮魂の童話集。

■感想 ☆☆☆☆
 平易な文章で描かれた童話集ですが、子供向けではありません。
 読み進めながら、何度も途中で挫折しそうになりました。日本の戦争が
 終わりを迎えた8月15日。けれど、8月15日も、その翌日も
 その翌々日も、日本にはまだまだ悲しみが渦巻いていたんだな、と
 今更ながらに思いました。戦争が終わりを迎えたのは8月15日。
 けれど、戦争が本当に終わったのはいつなんだろう。

116.お艶殺し/谷崎潤一郎
■ストーリ
 駿河屋の一人娘お艶と奉公人新助は雪の夜駈落ちした。幸せを求めた
 道行きだったはずのふたり。しかし、気ままな新生活を愉しむ女と
 破滅への意識の中で悪を重ねてゆく男。
 「殺人とはこれほど楽な仕事か」。

■感想 ☆☆☆
 読み終えた後、大きな大きな孤独に包まれる一冊。お艶が求めたものは
 一体、なんだったのだろう。なにがどうなったら、新助はお艶と幸せに
 暮らせたのだろう。ふたりが踏み誤った一歩がよく分からなくて、
 だからこそ、私は自分の人生のあやふやさに気付かされて、大きな孤独と
 不安とそら恐ろしさに襲われた。
 併催されている「金色の死」では、文学とは何か、芸術とは何かが
 探求されており、こちらからも生きていくこと、芸術と真摯に向き合うこと
 の計り知れない孤独を実感する。三島作品を思い出させる作品。

117.町長選挙/奥田英朗
■ストーリ
 離島に赴任した精神科医の伊良部。そこは、島を二分して争われる町長
 選挙の真っ最中だった。いつもは暴走してばかりのトンデモ精神科医、
 伊良部もその騒動に巻き込まれてしまい・・・。

■感想 ☆☆*
 傍若無人の伊良部は健在。
 「物事、人が死ななきゃ、成功なのだ。」と言い放つ伊良部はとても
 迷惑な人間だけれど、その言葉には確かに、と思わされるものもある。
 人間関係に疲れている人、ストレスで意が痛い人には、ぜひ伊良部先生
 に会ってほしい。伊良部先生の真似は到底できないけれど、伊良部先生を
 ほんの少し見習って、肩の力を思いっきり抜いてほしい。

118.海の底/有川浩
■ストーリ
 横須賀に巨大甲殻類来襲。食われる市民を救助するため機動隊が横須賀を
 駆ける。孤立した潜水艦『きりしお』に逃げ込んだ少年少女の運命は?!
 警察は、自衛隊は、機動隊は。
 海の底から来た『奴ら』から、横須賀を守れるのか。プロ集団たちの物語。

■感想 ☆☆☆☆
 面白い!でも、気持ち悪い!
 とにかく描写がグロテスクで、何度も何度も「無理無理無理!!!」と
 顔を背けそうになりながら、前半は流し読みをしました。
 けれど、中盤以降は、それぞれの場所で、自分たちの組織の名誉をかけて
 そして、組織の本当の存在意義を思って、損得勘定や組織間の駆け引き
 なしに動くプロたちの活躍ぶりに興奮。とにかくかっこいい方々が
 たくさんたくさん出てきます。

119.ひとり夢見る/赤川次郎
■ストーリ
 女子高生・浅倉ひとみの母、しのぶは元女優。これまで女手ひとつで、
 ひとみを育ててくれた。だが、母にパトロンがいると聞かされたひとみは
 ショックを受け、夜の町に飛び出してしまう。泣き疲れて、眠りに落ちた
 ひとみがふと目を覚ますと、そこは18年前の映画撮影所だった。
 母と共演することになったひとみは、父親が誰なのか探るが・・・。

■感想 ☆☆*
 疲れたときの赤川作品。ステレオタイプの悪い人しか出てこないため、
 安心して物語を楽しめます。母と娘の絆が爽やかに描かれていました。

120.幸福な家族/武者小路実篤
■ストーリ
 馬鈴薯や玉葱や南瓜に美を見いだして、あくことなく野菜の絵を描く
 老いたドイツ語教師・佐田とその妻、聡明で個性的な息子、娘と
 その恋人たちが、人類の意志としての幸福を愛し、幸福を極めようとする
 どこまでも素朴な善意を基調として構成された小説。

■感想 ☆☆☆
 物語の多くは主人公たちの会話で構成されている。ユーモアの感覚は
 時代によって異なるため、きっと当時は「ユーモアあふれる当意即妙」
 の会話だったと思われる彼らの会話も、今読むと、ユーモアとはほど
 遠い。けれど、その会話の端々から、彼らの明るさ、思いやりが伝わって
 きて、希望に満ちた明日を信じることができる。
 どこか作り事めいたうそ臭さを感じてしまうかもしれないけれど、
 このゆったりとしたテンポで繰り広げられる家族間の会話は
 今の時代に必要な穏やかさなのではないかと思った。

本好きへの100の質問2010(2)

2010年08月22日 23時01分36秒 | 読書歴
◆051. お気に入りの出版社と、その理由を教えてください。

創元社。
 お気に入りの作家さんとの出会いを多く提供してくれているから。
 北村薫さんとも宮部みゆきさんとも加納朋子さんとも
 そして、米澤さんや坂木さんとの出会いも、この出版社さんが
 橋渡しをしてくださいました。

文庫の装丁が好きなのは角川さん。
ラインナップが好きなのは新潮社さん。

◆052. それでは苦手な出版社は?その理由を教えてください。

特にありません。
昨年は、X文庫やティーンズハートは立ち読みしにくくて
苦手といっていましたが、最近はむしろ読み返したい。
ティーンズハートとか。きっと恥ずかしいだろうなー。
あの頃の自分とかも思い出して。
でも、そこが素敵っぽい。講談社さんでしたよね。

◆053. この本で読書感想文を書いた、という記憶に残っている本はありますか?
 あれば、そのタイトルは?

一冊も覚えてません。なんでだろ?
読書感想文の宿題ってあったっけ?と誰かに確認したい。

◆054. 装丁が気に入っている本を教えてください。

今更ですが、星の王子様のかわいらしさに、最近、めろめろです。
文庫の「きらきらひかる」も好き。
そして、吉屋信子先生の本すべて。
読んだことはありませんが、あの装丁はとってもとっても大好きです。

◆055. あなたは漫画が好きですか?

大好きです。少女漫画は特に好きです。
「ちはやふる」は文系女子に特にお勧めです。
でも、男性陣にもお勧め。絵は少女マンガ!なので
とっつきにくいかもしれませんが、内容はスポコンです。
そして、青春ものです。リーダー論も入ってます。
胸が熱くなります。

◆056. お気にいりの漫画家ベスト5と、好きな作品について教えてください。

>あだち充「タッチ」
 永遠の名作です。これはたぶん一生動かないと思う。

>深見じゅん「ぽっかぽっか」「むうぶ」
 元気になります。優しい気持ちになります。
 絵や文字もあたたかくて大好き。

>小花美穂「こどものおもちゃ」
 勇気がもらえます。この漫画で使われている言い回しが大好きで
 未だに「ちんとんしゃんとん」(ちんぷんかんぷん)とか
 使ってしまいます。(痛いなー・・・。)

>矢沢あい「天使なんかじゃない」
 学生時代にタイムスリップできます。
 この漫画のラストで主人公たちに贈られる送辞
 「幸せの三原則」は名言です。

>末次由紀「エデンの花」
 復帰できて本当に嬉しいです。新作を読める喜びをかみ締めています。
 ていうか、復帰してすぐに「ちはやふる」で漫画大賞だなんて。
 かっこよすぎ。

◆057. サイン本を持っていますか?(タイトルと作家名は?)

一昨年から増えていません。
平野啓一郎さん「月蝕」
 友人が並んでくださいました。ありがとー。

あ、映画「タカダワタル的」のサイン入り脚本も持ってます。
このドキュメンタリー映画はとにかく傑作です。

・・・実は「月触」未だに読み終えてません。ハズカシー。

◆058. 持っているのを自慢したい。そんな本はありますか?

・・・今年も、特にありません。

◆059. 東・西・南・北、漢字を選んで、浮かんだ本のタイトルを
    書いてください(実在する書名に限ります)。

東:東京奇譚(村上春樹)
西:きいろいゾウ(西加奈子)
南:タッチ(あだち充)
北:寂しい王様(北杜夫)

・・・えっと、まんまです。想像力が乏しくてスミマセン。

◆060. 短編小説集を買ったら、全部読みますか?
    それとも、その中から気に入った作品しか読みませんか?

全部読みます。
でも、相も変わらず、短編は苦手です。

◆061. 憧れのキャラクターを教えてください。

有川浩「図書館戦争」より 柴崎麻子
 とにかくかっこいい!美人で頭が良くて、人を信用しなくて
 すぱっと人を切る冷徹さを持っているのに、情にもろい。
 私の中ではパーフェクトです。
 人を食ったようなふてぶてしさを持ち合わせているところも大好き。

一条ゆかり「プライド」より ヒロイン 志緒たん
 美人で才能があってプライドを持って自分の夢に向かって
 突き進める人。気が強い。でも、かわいらしい。品があって
 華がある。そういった「持って生まれたもの」に甘えず
 いつも一生懸命なカッコイイ女性です。

◆062. 印象的な女性キャラクターを教えてください。

上に同じ。
本を読んでいても、ついつい女性キャラクターに
目が留まります。
 
◆063. 印象的な男性キャラクターを教えてください。

有川浩「図書館戦争」より 堂上篤
 こういう殿方をツンデレというのでしょうか。
 ちょっとデレが強すぎて、私はヒジョーにどぎまぎしましたが
 (現実世界で出会ったら、正気を保っていられるとは思えません)
 でも、ちょっと好きかも。

有川浩「図書館戦争」より 小牧さん
 こういう人当たりよいくせに、決して人に心を許していない感じの
 殿方大好きです。

◆064. 先生といえば?

なんやかんやいっても「3年B組金八先生」かな、と。
・・・本に関係ないし。ドラマだし。

本だと・・・。「クレヨン王国7つの森」に出てくる
自然観察クラブの先生は、穏やかで暖かく、子どもを
変に子ども扱いにもオトナ扱いにもしないところが好きです。

◆065. 探偵といえば?

やはりホームズ!
「赤毛連盟」とか久々に読み返したいです。

◆066. ベストカップル、ベストコンビといえば?

あだち充「タッチ」より
 朝倉南と上杉達也。
 永遠のベストカップル。

ベストコンビは 上杉達也と上杉和也 か
        上杉達也と孝太郎  で迷うところです。

タッチは何回読み返しても名作です。

◆067. 本に登場する場所で、行ってみたいと思うのは?

佐藤さとる「コロボックル」シリーズより
    コロボックルの家。

「メアリー・ポピンズ」シリーズより
    真夜中の動物園、笑うと浮いてしまう家

C・S・ルイス「ナルニア国物語」シリーズより
    ナルニア

◆068. 子供の出てくる作品といえば?

「メアリー・ポピンズ」シリーズ
松谷みよこ「モモちゃんとアカネちゃん」シリーズ

羅川真里茂「赤ちゃんと僕」
 この漫画もとってもお勧め。小学六年生なのに健気に生きる
 拓哉くんがかわいくてかわいくて。
 
◆069. 動物の出てくる作品といえば?

昨年は、C・S・ルイス「ナルニア国物語」シリーズ
 アスラン(ライオン)・・・と言うと怒られるかも。

松谷みよこ「モモちゃんとあかねちゃん」シリーズ
 黒猫のプー!

◆070. これまで出会った中で、もっとも感情移入できたキャラクターは?

北村薫「円紫師匠と私」シリーズより 私
  恋に疎いところとか、拘りが強いところとか、行動するより
  前に妙に小難しく考えてしまうところとか。

◆071. 本の登場人物になれるとしたら、誰(何)になりたいですか?

たくさんいますが。
矢沢あい「天使なんかじゃない」ヒロイン 翠。
あんな生徒会に入ってみたい。

◆072. 夢中になった作家、現在進行形で夢中な作家の名前を教えてください。

小学校時代:赤川次郎さん
      色んなシリーズを読み漁りました。国内の推理小説を
      読み始めたきっかけのような方です。

中学校時代:宮部みゆきさん
      「レベル7」で分厚さに愕然としたものの、寝る間を
      惜しんで読みました。
      吉本ばななさん
      この頃は新作が出る度に読んでました。

高校時代 :北村薫さん
      出会ったことに感謝。未だに夢中です。
      灰谷健次郎さん
      色々な意見がありますが、この方の作品にも未だに夢中です。

大学時代 :芥川龍之介さん
      いわゆる「文学作品」と向き合うようになったのは
      この辺りからです。
      京極夏彦さん
      京極堂シリーズの分厚さと文系ミステリの薀蓄に鳥肌が立ちました。
      森博嗣さん
      京極堂と正反対の理系ミステリ。理系の方々の会話は
      自分と全く違うからこそ、面白く読みました。

ここ最近 :伊坂幸太郎さん
      新作が文庫になったら、思わず購入します。
      北村薫さん
      ここ数年、ずっとナンバー1です。
      辻村深月さん
      全作品コンプリートを目指しています。
      有川浩さん
      久々にはまりました。
      
◆073. 1日だけ作家になれるとしたら、誰になりますか。

特にいません。
作家になるんだったら、「自分のままで」なってみたいです。

◆074. 編集者になるとしたら、どの作家の担当になりたいですか?

昨年は、北村薫さんを挙げました。
今年は、ぜひ携帯小説の作家さんと会って話してみたいです。
語り合いたいです。

◆075. 好きな作家に原稿を依頼するとしたら、どんな作品を
   希望しますか。作家名とジャンルを教えてください。

美内せんせー!「ガラスの仮面」最終巻をぜひぜひ、お願いします。
とにかく待ち望んでいます!
   
◆076.「あの作家に、これだけは言いたい」……ひとことどうぞ!

特には・・・・。

◆077. 紙幣の肖像、私ならこの文豪を選ぶ!

井上ひさし先生
 またひとりあちらへ旅立たれました。寂しいです。

◆078. 文章と作家のイメージが違っていた、そんなことはありますか? 

おそらく多いと思いますが、私は有川浩さんを男性だと思っていました。
なんでそんな勘違いを・・・。

◆079. あなたにとって、詩人といえば。

山ノ口獏さん
 生き方そのものが詩人です。かっこいい。

谷川俊太郎さん
 言わずと知れた詩人。選ぶ言葉がどれも好きです。

井上ひさしさん
 実は詩作も多い方。ユーモアあふれる、心に響く言葉の選び方が
 とても素敵です。


◆080. 家族・・・。この単語から連想した本のタイトルを
    書いてください(実在する書名に限ります)。

柳美里さんの作品。「命」でしたっけ?
ふと思い出しました。

◆081. 本を捨てることに抵抗がありますか?

あります。捨てません。

◆082. これだけは許せない、そういう本の扱い方はありますか?

ありません。人のことをとやかく言えません。

◆083.“活字離れ”について、どう思いますか?

活字離れ?本当に?
私の友人の多くは、読書大好きさんです。

でも、最近はケータイ小説はブームを過ぎたようで
そういった意味では活字離れが進んだのかも。

◆084. 本を読まない人のことを、どう思いますか?

好みは人それぞれですから。
というか、私は自分の経験値の少なさを本で補っている
かわいそうな感じの人なので、自分の人生をきちんと生きて
自分の経験値を増やしている人のほうがすごいと思います。

◆085. とりあえず、本を持っていないと落ち着かない。
    そんな癖がありますか?

はい。鞄の中に本が入っていないと落ち着きません。
主な読書時間はほぼ移動時間や待ち合わせなどのスキマ時間のみなので特に。

◆086. 世界中で、本の出版が禁止されたら、どうしますか?

寂しいと思います。
そんな世界は絶対に来て欲しくない。
「図書館戦争」を読んでより一層、その想いが強くなりました。

◆087. 青空文庫を利用したことがありますか?

ありません。面倒臭がりやなので。
たぶんこれからもないと思う。本はやはり「紙がいい!」
という方が対象のようです。

◆088. 電子図書館についてどう思いますか?

特にお世話になったことがないので、なんとも・・・。

◆089. 将来的に、本という存在は無くなると思いますか?

これだけ愛好者がいる以上、なくならないと思います。
でも出版社は減るかも。

◆090. 本が無くても生きていけると思いますか?

はい。生きていけます。他にも好きなものはたくさんあるので。
でもさびしい。

◆091. この人の薦める本なら読んでみたい、そう思う有名人を教えてください。

ぽこりん、のび子さんのお勧めはいつも参考にさせていただいています。
いつも本当にありがとうです。

◆092. 映像化してほしい本はありますか?

特にありません。本は本のまま、楽しむのが一番だと思います。
最近は何でも、映画化にされすぎ。

◆093. テレビ化・映画化で成功したと思う作品を教えてください。

小説ではありませんが「カバチタレ」「難波金融道」
映画「春の雪」も三島作品の耽美さ、優雅さに迫っていたと思います。

◆094. 本の中に再現したいと思う(実際に再現した)場面はありますか?

どうやっても、人間の想像力に映像は追いつかないと思うのです。

◆095. あなたにはどうしても読みたい本があります。
    その本は既に絶版・品切。さあ、どうしますか?

潔くあきらめます。面倒臭がりやなので・・・。

◆096. 本という存在に対して、文句はありますか?

本に対しては、特に。

◆097. 心に残っている言葉・名台詞は?(原典も明記してください)

新約聖書
 「いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。
  すべてのことについて感謝しなさい。」

天使なんかじゃない
  自分を信じること
  他人を愛すること
  明日を夢見ること

  先輩方が教えてくださった幸せの三原則を私たちは決して忘れません。
    
◆098. あなたにとって、本とおなじくらい蠱惑的なものは何ですか。

食べること。
他の世界に行くこと。(ドラマ・映画・舞台)

◆099. 出版業界にひとことどうぞ。

いつもありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。

◆100. つまるところ、あなたにとって本とは。

大好き。
この一言に尽きます。

本好きへの100の質問2010(1)

2010年08月22日 21時46分56秒 | 読書歴
夏恒例の「文庫本」フェアの季節がやってきました。
今年も開始当初にブックレットをお持ち帰り。
毎年毎年、各出版社のラインナップを確認しては
「これ、面白そうー。」とか「これ、読んだー!」などと
チェックを入れていくことがワタクシの夏の楽しみです。

・・・売上に貢献できてなくてごめんなさい。
本屋さんも本も文庫本も大好きだけど、
大好きだけにコレクター体質のワタクシは、
購入した本を手放せないため、本棚に空きスペースがあまりなく
それゆえになかなか本を購入できません。
というわけで、今年もワタクシの夏は文庫本の夏 in 図書館フェア。
そして「本好きへの100の質問」の夏です。
まずは50問。

◆001. 本が好きな理由を教えてください。

自分では体験できないいろんな人生を味わえるから。
なかなか味わえない感情も味わえるから。
普段、関わらない世界のことを知ることができるから。

◆002. 記憶に残っているなかで、最も幼い頃に読んだ本は?

「鉄腕アトム」「シンデレラ」。
どちらも絵本です。
どうやら鉄腕アトムは暗唱できていたようです。
絵本のことは覚えていますが、暗唱したことはまったく覚えていません。

◆003. はじめて自分のお小遣いで買った本を教えてください。
    また、その本を今でも持っていますか?

小学校3年生から6年までは、毎月のお小遣いが「1冊の本」でした。
団龍彦さんの「こちら幽霊探偵局」シリーズ、
笹川ひろしさんの「ハレー探偵長」シリーズを購入してもらいました。
久々に読み返したいなー。

◆004. 購読している雑誌はありますか?

創刊して1年の「GINGER」は創刊時から購読しています。
綺麗なオンナの人大好き!
ただ、掲載されている洋服はあまりに高くてまったく手が出ません。

◆005. 贔屓にしているWEBマガジンはありますか?

ありません。 WEBマガジンって・・・なに?

◆006. 書籍関連のHPの、どんなところに注目しますか(書評や感想文等々)。

書評とか映画の感想が書かれているページは大好きです。
自分が好きな本の感想などはついつい探してしまうかも。

◆007. 最近読んだ本のタイトルを教えてください。

ここ数日、「図書館戦争」シリーズ(有川浩さん)を楽しんでいます。
ようやく3巻半ばまで来ました。
そして自分に「恋愛小説」耐性があまりないことに気付きました。
思わず(本当に思わず!)3回ほど「きゃー!!」と声に出して叫び、
わたわたとしました。これは。通勤時間には読めないかもしれない。
でも続きが気になる!!と逡巡しています。

◆008. ベストセラーは読む方ですか?

図書館でお目にかかれないので、あまり読みません。
数年前のベストセラーはたまに読みます。
1週間前、ようやく劇団ひとりさんの「陰日向に咲く」を読めました。

◆009. 御贔屓は、どんなジャンルですか?

ミステリー、ファンタジー、時代小説、児童小説。ヤング・アダルト。
疲れたとき、本読むのきついなー、というときは
三谷さん、阿川さんのエッセイを楽しんでいます。
ものすごーく癒されます。

◆010. あなたは活字中毒ですか?
   (それはどんな症状としてあらわれていますか)

活字中毒ではありません。たまに、本を読めなくなります。

◆011. 月に何冊くらい読みますか?

上記の理由により、幅がありますが、今年は毎月平均15冊前後。
あ。漫画はカウントしていません。漫画大好き!!
自宅に所有している漫画は
飽きることなく定期的に読み返しています。

◆012. あなたは本の奥付をちゃんとチェックしますか?
    するとしたら、その理由は?

未だにしていません。

◆013. 文庫本の値段として「高い」と感じるのは幾らからですか?

以前は500円を超えると高いと感じていました。
今は、1000円越えると躊躇します。
でも好きな作家さんはなぜか長編大好きな方々なので
油断するとすぐに超えます。
おかげで、500円台の薄い文庫本にあまり縁がありません。

◆014. 本は書店で買いますか、それとも図書館で借りますか。その理由は?

図書館活用派。幼稚園時代から図書館を活用していました。
図書館で開拓した好きな作家さんの好きな作品を
何度も読み返すために購入します。

◆015. あなたは「たくさん本を買うけど積ん読派」
    それとも「買った本はみんな目を通す派」のどちらでしょう?

最近、積ん読本が減りました。
一層キャンペーンが着実に進んでいます。

◆016. 行き場に困ったとき、とりあえず書店に入ってしまう。
    そんなことはありますか?

しょっちゅうです。
待ち合わせまでの時間はたいてい、本屋にいます。

◆017. 馴染みの書店・図書館に、なにかひとこと。

本屋さん大好きです。
これからもよろしくお願いします。

◆018. あなたは蔵書をどれくらい持っていますか。

おそらく700冊ぐらい?なのかな?

◆019. 自分の本棚について、簡単に説明してください。
   (“小説が多く実用書が少ない”等々)。

8割方、文庫本です。残りの2割はハードカバーと漫画。

◆020. 本棚は整理整頓されていますか。

文庫本ばかりなので、一見、整理されているようには見えます。

◆021. 既に持っている本を、誤って買ってしまったことはありますか?
    その本のタイトルは。

あります。 柴田よしきさんの「少女たちがいた街」。
結婚した妹に譲ろうと思ったのですが、義弟君が持っていました。残念無念。
義弟君の本棚を見ると「おお!」とテンションがあがります。

◆022. 気に入った本は、自分の手元に置かないと気が済まない?

勿論です。でも、お金とスペースが追いつきません。
とりあえず、「ガラスの仮面」が完結したら必ずそろえます。

◆023. 本に関することで、悩んでいることは?

「ガラスの仮面」が終わりません。
そろそろ完結編が読みたいですよー。
紫の薔薇の人との幸せな結末を見たいです。

◆024. 速読派と熟読派、あなたはどちらに該当しますか。

好きな本は執拗に読み返します。

◆025. 本を読んでいて分からない言葉があったとき、意味を調べますか?

ネットのおかげで、気軽に調べられるようになったので。
でも、その割りにちゃんと調べてないかも。

◆026. 本を読む場所で、お気に入りなのは?

最近はもっぱら通勤時。
特に冬場。
あったかいバスや電車の座席でぬくぬくと本を読む時間は大好きです。
読みながらうとうとするひとときがとても気持ちよいです。

◆027. あなたは今、めったに読むことのない分厚い本を前にしています。
    ところでこの本「すごくおもしろい」という、いつもは信頼
    できる情報を得たはずなのに、最初の部分がやたらにつまらない。
    そんなときどうしますか?

挫折してしまうと思います。
「やり遂げる」とか「根気」という言葉と無縁です。

◆028. 本を読むときに、同時になにかすることはありますか?
   (例:お茶を飲む、おやつを食べる、音楽をかける)

人を待っていたり、移動のためにバスに乗っていたり。
基本的に「なにかしているとき」にしか読んでません。

・・・一昨日からものすごーーーーーーく久々に部屋で本を読んでいます。
それぐらい先が気になってます。「図書館戦争」。
早く読み終えたいよー。でもって読み返したいよー。

◆029. 読みかけの本にはさむ栞は、何を使っていますか?

昨年、妹がプレゼントしてくれた文庫本カバーについていた栞。
とてもおしゃれです。オンナ度があがったような錯覚に陥ります。

◆030. ブックフェアのグッズを新たに誕生させることになりました。
    あなたが「これなら欲しい」と思うグッズを考えてください。

素敵なイラストの入った図書カード。

◆031. 無人島1冊だけ本を持っていけるとしたら、何を選びますか。

考えれば考えるほど1冊は選べません。

◆032. 今、最も欲しい本のタイトルをどうぞ。

一昨年からずっと言い続けている「ぐうたら王とちょこまか王女」
違う名前で再販されていますが、このタイトルのものが欲しいのです。

◆033. 生涯の1冊、そんな存在の本はありますか? その本のタイトルは。

今年もありません。1冊を選ぶことはできません。
今までに読んだすべての本が今の私に影響していると思う。

◆034. 何度も読み返してしまうような本はありますか? その本のタイトルは。

持っている本は、定期的に部分的に色々と読み返してます。
その中でも特に再読率が高いのは
北村薫さん「スキップ」「秋の花」
オルコット「昔気質の一少女」「小公子」
モンゴメリ「赤毛のアン」「アンの青春」「アンの愛情」
伊坂幸太郎さん「チルドレン」
辻村深月さん「凍りのくじら」「スロウハイツ」

◆035. おきにいりの作家ベスト5と、理由をお願いします。

>北村薫さん
文章がとにかくあたたかいです。
読むたびに「品がある文章とはこういう文章だろうな」と思います。
文章から伺える人柄も併せてとにかく好き。

>伊坂幸太郎さん
たたみかけるような語り口とカタルシスを覚える伏線の張り方
そして結末の回収の仕方が大好きです。

>森見登美彦さん
リズム感ある語調と「娯楽」を追及した作風が好きです。
作品ごとの登場人物がリンクしているところとか
すべての作品に対して愛情が感じられて大好きです。

>辻村深月さん
作品を読んでいると、登場人物ひとりひとりに寄せている
作者さんの愛情が伝わってくる気がします。

◆036. 好きなシリーズ物はありますか?

松谷みよ子「モモちゃんとアカネちゃん」シリーズ。
C・S・ルイス「ナルニア国物語」シリーズ。
北村薫「円紫師匠と私」シリーズ「時の三部作」
伊坂幸太郎「陽気なギャング」シリーズ。
有川浩さん「図書館戦争」シリーズ

◆037. 本を選ぶときのポイントを教えてください。

作家、あとがき、帯文句。

◆038. 翻訳小説は、訳者にこだわる方ですか。

ノー。でも、読みにくいな、と感じることはあります。

◆039. 信頼できる書評家は誰ですか?

本の趣味が似ている友人たち。

◆040. 絵本は好きですか?
    好きな方は、好きな絵本のタイトルを教えてください。

好きです。ターシャ・テューダーさんの絵本、大好きです。
「たれぱんだ」も。さいばらさんの絵本は名作です。

◆041. 本は内容を先に読む方ですか、それともあとがきから読む方ですか?

あとがきです。あとがきと解説を先に読みます。
解説で結末に触れられていても無問題!

◆042. 読みたいのに読めない本はありますか? その理由は。

時間が足りなくて読めてない本はたくさん。

◆043. ノンフィクション作品のおすすめを教えてください。

相変わらず、皇室関係の本は大好きです。
美智子様が憧れの女性です。
昔の映画スターなど、雲の上の女性の話は全般的に好き。

◆044. あなたの好きな恋愛小説を教えてください。

「くじらの彼氏」(有川浩さん)
恋愛小説というジャンルは未踏ジャンルだったのですが
これ、楽しく読めました。全体的にとてもかわいらしい。
幸せ気分にひたれます。
「図書館戦争」シリーズは色々とこっぱずかしい部分も多々あり
恋愛小説初心者にはお勧めできません。
とか言いつつ、のめりこんでいるわけですが。

◆045. 泣けてしまった本を教えてください。

北村薫「スキップ」
 何度読んでも、泣けます。
 でも哀しい話ではない。
 熱い想いがこみ上げてきて泣けてきます。
灰谷健次郎「太陽の子」
 子供たちに読んで欲しいです。
 「8月6日」や「8月9日」「8月15日」が
 どんな日だったのか知らない大人たちにも。

「子ども部屋のおばけ」
長男長女に特にお勧め。
柴田よしき「少女達のいた街」も。
大人になる少し前の少女の気持ちが切ない話です。

辻村深月「凍りのくじら」「ぼくのメジャースプーン」
とにかく読んでほしい。
どちらも名作です。

◆046. 読んでいるだけで、アドレナリンが分泌されてくるような本は?

奥田英朗「サウス・バウンド」
佐藤愛子「娘と私」シリーズ。
世間が何じゃ!他人が何じゃ!という気持ちになります。

伊坂幸太郎「陽気なギャング」シリーズ。
これまた世間がなんだー!俺は俺さー!!
という気持ちになります。でもどこかスタイリッシュ。

◆047. もう2度と読みたくない本は、ありますか?

ないと思います。
でも、読む気になれない本はたくさんあります。

◆048. 良くも悪くも「やられた!」と思った本はありますか?

「プライド」の最終回。(一条ゆかりさん)
え?!いつの間に?!いつの間にそこ愛し合っちゃってるの?!
と驚きました。やはり最終回だけ、というのはダメです。
漫画はちゃんと最初から楽しまないと。

ちなみに昨年は「ハチミツとクローバー」でした。
漫画ばかりー。

◆049. 読む前と読後感が違っていた(食わず嫌いだった)本は?

太宰治さん
もっとドロドロに暗い人だと思ってました。
村上春樹さん
もっと小難しい人だと思っていました。
有川浩さん
もっと固い人だと思っていました。
そして作者さんのことを男性だと思っていました。
まさか女性だったとは。・・・作品を読むと納得。
うん。これは女性の作品だと思う。

◆050. 子供にプレゼントしたい本のタイトルを教えてください。

相も変わらず。
モモちゃんとアカネちゃんシリーズ。
しかも人形が表紙を飾っているハードカバーバージョンを。

昨年から大いにはまったのは
「だるまちゃんが」「だるまちゃんと」「だるまちゃんの」の
だるまちゃんシリーズ。何度も読み返しました。
そしていろんな人にプレゼントしました。

7月の読書

2010年08月09日 00時57分08秒 | 読書歴
ふと気が付くと、なんだかハイペースで本を読み進めていました。
あれ?最近は通勤時間の音楽タイムが増えていて、本に集中できて
いないはずなのに。(音楽の歌詞に耳を取られてしまうらしく
本を読みながら音楽が聞けません。)

というよりも、どうやら「読みやすい本」「軽い本」を集中して
読んでしまっているような。下半期は少し重厚な作品にも手を伸ばします。

86.スロウハイツの神様(上)(下)/辻村深月
■ストーリ
 ある快晴の日、人気作家チヨダ・コーキの小説のせいで、人が死んだ。
 猟奇的なファンによる小説を模倣した大量殺人。この事件を境に筆を折った
 チヨダ・コーキだったが、ある新聞記事をきっかけに見事復活を遂げる。
 闇の底にいた彼を救ったもの、それは『コーキの天使』と名付けられた
 少女からの128通にも及ぶ手紙だった。
 事件から十年、売れっ子脚本家・赤羽環と、その友人たちとの幸せな
 共同生活をスタートさせたコーキ。しかしその共同生活は、思わぬ方向へ
 ゆっくりと変化し始める。

■感想 ☆☆☆☆☆
 久々に読書がしたい!と訴える母上に、読みやすくて面白い作品を
 次々と渡しています。これもその中の一冊。渡しておきながら、
 自分もまたもや読み返してしまいました。とにかく大好きです。
 この2年で5~6回は読み返しました。読み返すたびに幸せな気持ちに
 なります。私の中でチヨダ・コーキは、クドカンさんと重なります。

88.真夏の夜の夢/ウィリアム・シェークスピア
■ストーリ
 結婚に関して問題を抱えている2組の貴族の男女。そんな人間たちの恋に
 なぜか妖精の王と女王の喧嘩が影響し、引き起こされるどたばた騒動。
 そんな一夜のどたばたがやんちゃな妖精、パックの活躍によって円満を迎える。

■感想 ☆☆☆☆
 シェークスピアといえば四大悲劇ですが、私は断然、喜劇派です。
 じゃじゃ馬ならしも捨て難いけれど、どれかひとつと言われたら
 やっぱりこの作品。妖精パックがとにかく愛らしい。シェークスピアなんて
 難しそう・・・と思う方には、ぜひぜひ「ガラスの仮面」をお勧めしたい。
 この作品の魅力をあますところなく伝えてくれます。あぁ、「ガラスの仮面」
 バージョンも読み返したくなりました。あれって何巻だったっけ。

89.マダム小林の優雅な生活/小林聡美
90.マダムだもの/小林聡美
■内容
 「かもめ食堂」で一躍有名になった女優の日常エッセイ。

■感想 ☆☆☆
 だんな様とのやりとりがとても面白く、幸せに落ち着いた日々を送って
 いるんだろうなぁ、としみじみ思いました。小林さんから見ただんな様
 (脚本家、三谷幸喜さん)が私の思い描いていた三谷さんそのままで
 やっぱりそういう人でしたかー、と嬉しくなりました。
 
91.むかつく二人/清水ミチコ・三谷幸喜
92.いらつく二人/清水ミチコ・三谷幸喜
■内容
 清水さんと三谷さんでお送りしているラジオ番組から抜粋された
 会話の数々。

■感想 ☆☆☆☆
 「本」となっていますが、読んでいるだけでふたりの声やテンションが
 伝わってきます。お互いに毒舌をつきあっているし、自慢しあっているし
 負けず嫌いを発揮しあっていますが、結局のところ、仲がよいのねぇ
 と思える親密さが心地よい作品。和田誠さんの表紙がぴったり。

93.三谷幸喜のありふれた生活7
94.三谷幸喜のありふれた生活8
■内容
 朝日新聞連載の大人気エッセイ、第7弾と第8弾。

■感想 ☆☆☆☆☆
 時折、小説から遠ざかりたくなるときが訪れます。そんなときの力強い
 味方。なんやかんやと色々、エッセイを読んでいますが、今のところ
 一番好きなのは、三谷さん。・・・か、阿川さんです。そういえば文章
 や取り上げる題材が似ているかも。

95.レインツリーの国/有川浩
■ストーリ
 きっかけは「忘れられない本」。ネット上で共通点を見つけたふたり。
 そこから始まったメールの交換。しかし、かたくなに会うのを拒む彼女には、
 会えない理由があった。

■感想 ☆☆☆☆
 ベタな恋愛小説です。「ロマコメ大好き!」と言い放つ作者だからこそ
 築き上げる甘い甘い世界です。けれど、甘いだけではない。
 健聴者と難聴者。「違うこと」が多いふたりの「違い」や「ズレ」を
 丁寧に説明してくれます。「違う」からといって「面倒」で終わらせず
 「面倒なほうが好きや。面倒な君が好きなんや。」と言って、彼女との
 「違い」に丁寧に向き合ってくれる主人公がとにかく素敵です。

96.漢方小説/中島たい子
■ストーリ
 薬も、癒しも効かないあなたに贈る処方箋。
 みのり31歳、独身。元カレが結婚すると知ったその日から、原因不明の
 体調不良になった。行き着いた先は漢方診療所。悪戦苦闘する女性を
 そこはかとないユーモアで描く。

■感想 ☆☆*
 なんとなく共感を覚えてしまいました。年齢や状況が少し似ている部分が
 あるからなのか、そこで弱ってしまう主人公にも、安易な解決(身近な
 恋愛)にぐらりと来てしまう主人公にも、あぁ、あるかもなぁ。と素直に
 思えました。そこで身近な人に甘えられるというのも幸せなんだろうな。

97.乱暴と待機/本谷有希子
■ストーリ
 復讐相手として憎まれている限り、お兄ちゃんが私から離れていくことはない。
 四年近くもの間、二段ベッドが置かれた六畳間ひとつの古く陰気な借家で
 同居している三十歳間近の「兄」こと英則と、「妹」奈々瀬。
 奈々瀬は上下灰色のスェットにだて眼鏡姿で家に籠もり「あの日」から
 笑顔を見せなくなった英則のために日々「笑い」のネタを考えている。
 保健所で犬の殺処分の仕事をしている英則は一年前、天井板の一角に
 隙間を発見したのをきっかけに、帰宅後、屋根裏に潜り込んでは妹を覗いていた。

■感想 ☆☆☆☆
 登場人物全員が面倒で、できればお近づきになりたくない人種。
 彼らが取る行動や思考回路にはあまり共感できない。しかし、あまり共感
 できないにも関わらず、怒涛の展開の後半、彼らが紡ぐ濃厚な愛の世界に
 泣きそうになった。彼ら自身が十分に面倒な人たちだけれど、そもそも
 「愛」そのものが面倒なのだ、と思ってしまう。共感はできないけれど
 力づくで納得させられてしまった。本谷さんならではの世界観。
 今年10月に映画化される模様。キャスティングを見る限り、主要人物
 4名は見事にはまり役で心躍りました。

98.夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦
■ストーリ
 私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、
 百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。
 我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が
 立っているはずがない。それでも彼女は天真爛漫に「奇遇ですねえ!」
 と微笑む。「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。
 二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々。

■感想 ☆☆☆☆☆
 リズミカルな文章で畳み掛けるように繰り広げられる森見ワールドが
 懐かしくなって再読しました。何度読み返しても好きです。この文章や
 この文体は癖があるけれど、ハマると中毒になります。
 ご都合主義どんとこい!読んでて楽しければいいんだよ!と思える
 本好きな人にお勧め。
 妄想を友達に片思いを成就しようと、外堀を埋め続けるセンパイの姿が
 とにかくほほえましく、恋っていいなぁと思いました。
 
99.強運の持ち主/瀬尾まいこ
■ストーリ
 元OLの売れっ子占い師、ルイーズ吉田は大忙し。 ある日、物事の
 終末が見えるという大学生の武田君が現れ、ルイーズにもおわりの兆候が
 見えると言い出した。連作短編集。

■感想 ☆☆☆
 平易で読みやすい文章や表紙のかわいらしいイラストがほのぼのとした
 印象を与えます。しかし、意外とシニカルな展開で、そのシニカルな
 視点がいかにも女性らしいな、と思いました。女性は占い大好きだけれど
 どこかで占いのうさん臭さをきちんと分かっているんだろうな、
 そのうさんくささもまるごと受け入れた上で、自分への応援アイテムとして
 うまく活用しているんだろうな、と思いました。結局のところ、女性は
 たくましい。その一言に尽きる作品のような気がします。

100.ラブコメ今昔/有川浩
■ストーリ
 乙女だっておっさんだってオタクだって人妻だって、恋がなければ生きて
 いけない。自衛隊を舞台に繰り広げられる恋愛模様を描いたベタ甘ラブに
 耐性のない方お断りの短編集。

■感想 ☆☆☆☆
 「空の中」「海の中」のサイドストーリ、「くじらの彼氏」の続編です。
 「自衛隊」という特殊な世界の中で、特殊な環境だからこその悩み事に
 振り回されつつもまっすぐ懸命に恋をする登場人物たちがとにかく
 かわいらしい。「ラブコメ」という言葉がちょっぴり照れ臭いけれど
 でも、きっと折に触れ読み返したくなるだろうな、と思える作品集。

101.サワコの和/阿川佐和子
■内容
 まったく日本には腹が立つ。なのに歳を重ねるにつれて、じわじわ好きに
 なる。日本の行事やアメリカ滞在を通じて感じた祖国への微妙な「愛」を
 綴るエッセイ。

102.空耳アワワ/阿川佐和子
■内容
 オンナの現実胸に秘め、懲りないアガワが今日も行く。合言葉は
 「ごめんあそばせ」。そんなことだってあんなことだって包み隠さず
 書かれた痛快エッセイ。

■感想 ☆☆☆☆
 定期的に手を伸ばしてしまう阿川さんのエッセイ。読むとくすりと笑えて
 元気が出ます。女性として共感するところもしばしば。嫌味なく
 品よく、さらりと怒ってみせるその姿はぜひ真似したい。彼女の文章に
 触れるたび、こんなふうに年を重ねたいな、と思います。

103.空の中/有川浩
■ストーリ
 200X年、謎の航空機事故が相次ぎ、メーカーの担当者と生き残った
 パイロットは調査のため高空へ飛ぶ。そこで彼らが出逢ったのは・・・。
 一方、遠く離れた四国で「秘密」を拾ってしまった子供たちは・・・。

■感想 ☆☆☆☆*
 「クジラの彼氏」の最後の作品で出会ったヒロインとようやく再会
 できました。なるほど。こういう出会いをして、あの作品に続くのね!
 と心底、嬉しくなった作品。勿論、この作品単体で十分に楽しめます。
 読みやすい文章と荒唐無稽な世界観、けれどそれらを土台で支える
 緻密な設定がこの作品に「リアルさ」を付加しています。
 だからこそ、荒唐無稽ではあるけれど、嘘くさくない。
 なぞの生命体に出会ってしまった人々の葛藤と、行動にちゃんと
 説得力ある意味が書かれていて、それぞれの「これから」を祈るような
 気持ちで読み進めました。とにかく爽快な作品。「海の中」も
 早く読みたい!
 


6月の読書

2010年07月04日 23時00分24秒 | 読書歴
なんだか再会率の高い一ヶ月でした。
「久々に読みたい!」という再読欲求が高かった1ヶ月。
懐かしかったけれど、そして、再読を楽しんだけれど、
やはり初めて読んだときの感性からはどんどん変わって行っているんだ
いつまでも「あの頃」のままではいられないんだということを
肌で実感しました。

66.想い出にならない/堀田あけみ
67.想い出させてあげよう/堀田あけみ

■ストーリ
 いつまでも少年ではいられない。いつまでも少女ではいられない。
 「高校生」という季節の中で、傷つき、傷つけあい、彼らは自分にとっての
 煌きをみつけようとしている。「恋愛」や「友情」に悩みながら、大人への
 階段を昇っていく少年と少女を描く。

■感想 想い出にならない ☆☆☆*/想い出させてあげよう ☆☆*
 大学時代に好んで読んでいた堀田作品と久々に再会したくなってふらりと
 借りた作品。読み返しながら、懐かしさのあまり悶絶していました。
 堀田作品は好んで読んでいたわりには苦手、というか、文章は読みやすい
 けれど、登場人物たちに共感できないことが多かったのですが、この作品は
 登場人物たちも好きだったなー、と懐かしく手に取りました。
 内容は由緒正しい青春もの。文化祭実行委員として出会った少年5名と
 少女3名がグループで仲良くなって友情を育み、恋愛感情を持ち合い
 でも友情との狭間で色々と悩み、傷ついて・・・という青春王道ものです。
 漫画化にも映画化にもドラマ化にだって向いていると思う。
 それぐらい普遍的なテーマの作品。
 自分の高校時代、青春時代も懐かしく思い返しました。

 ただね。群像劇の割りには、登場人物に対する作者の好き嫌いが
 非常に偏っていて、そこに疑問を感じました。読んでいて、
 「あぁ。この子はお気に入りなんだろうな。」とか
 「この子の生き方が理想なんだろうな。」とか、「こういう子は苦手
 なんだろうな。」とか、そういうのが如実に分かります。
 その上、なんとなく忘れ去られているような扱いの子がなきにしも
 あらず。だからぜひ、ドラマ化してほしい。ドラマ化して話を膨らまして
 私のお気に入りのあの子をもっともっと活躍させてほしい。
 そういう衝動にかられました。土曜夜9時とか火曜夜9時のドラマの
 テイストにあっていると思うんだけどなー。

68.すっぴん魂/室井滋
69.すっぴん魂6「ロケ隊はヒィーー」/室井滋

■内容
 たとえメイクはしていても、心の中はいつもスッピン。大笑いの後で
 ホロリと泣ける室井マジック。むかつく日常にムロイを一服!

■感想 ☆☆☆
 久々に手に取った三谷さんのエッセイがとても面白かったので、もう少し
 読みたいなぁ、あ。奥様のエッセイも読みたいわ!といさんで探したの
 ですが、どれも貸し出し中で手に入らず。他のエッセイをつらつら眺めて
 いて見つけました。私の中で小林さん、もたいさん、そして室井さんは
 永遠に「恩田三姉妹」。小林さんのエッセイが手に入らないのであれば
 お姉さんのものを読みましょうか。と手に取りました。
 面白かったです。共感できるところも多かったです。さばさばとした
 飾らない人柄が文章の随所から見えてきました。そして、女優という
 仕事の大変さも切実に迫ってきました。体力勝負、体が資本というのは
 本当なんだな。憧れだけではできない職業なんだな、としみじみ思いました。

 物事の捉え方や視点、自分自身の評価や自分自身の行動の描き方など
 阿川さんに似ているかも・・・と思いました。似ているところが多いけれど、
 どこかが違う。その違いをうまく口では言えないけれど、私自身の
 好みとしては、阿川さんのほうが好きでした。
 
70.レ・ミゼラブル4巻/ユゴー

■感想 ☆☆☆☆
 ようやく4巻!物語がどんどこ動き始めました。面白い!!
 しっかし、この壮大な物語をどうやったらミュージカルにできるんだろう。
 ミュージカルなんて、2時間から2時間半、長くても3時間ぐらいなのに。
 ただ、波乱万丈でドラマチックな展開は間違いなくミュージカル向き。
 早くすべて読み終えたいです。

71.麦ふみクーツェ/いしいしんじ

■ストーリ
 音楽にとりつかれた祖父と、素数にとりつかれた父、とびぬけて大きな
 からだをもつぼくとの慎ましい三人暮らし。ある真夏の夜、ひとりぼっちで
 目覚めたぼくは、とん、たたん、とん、という不思議な音を聞く。
 それが麦ふみクーツェの足音を初めて聞いた晩だった。音楽家をめざす
 少年の身にふりかかる人生のでたらめな悲喜劇。悲しみのなか鳴り響く、
 圧倒的祝福の音楽。

■感想 ☆☆☆☆☆
 いしいしんじらしい平易な文章と国籍を排除したかのような童話的世界観。
 文章がやわらかく優しく、まるでパステルカラーのような印象を与える。
 けれど、そういったやわらかい文章で描かれる物語の筋は暗く、辛く
 悲しいものばかり。これが一体、どういうふうに「圧倒的祝福」に
 たどり着くのだろう、と半信半疑で読み進めました。
 読み進めて、最終章に味わえる喜びの大きさ、クライマックスによって
 与えられた幸福感の大きさにくらくらしました。テイストも味わう感動も
 「博士の愛した数式」に似ているかもしれません。

72.図書館の神様/瀬尾まいこ
■ストーリ
 思い描いていた未来をあきらめて赴任した高校で、文芸部の顧問を
 任された「私」。「垣内君って、どうして文芸部なの?」
 「文学が好きだからです」「まさか!!」清く正しくまっすぐな青春を
 送ってきた「私」には思いがけないことばかりの文学部。
 不思議な出会いから、傷ついた心を回復していく再生の物語。

■感想 ☆☆☆
 文学と向き合う少年に出会い、文章と向き合うことを覚えたヒロイン。
 文学と向き合う時間の中で、少しずつ少しずつ、逃げていたものとも
 正面から対峙するようになります。その静かな過程が、静かなのに
 力強く、力強いうえに優しくて好きでした。

73.ホルモー六景/万城目学

■内容
 このごろ都にはやるもの、恋文、凡ちゃん、二人静。四神見える学舎の、
 威信を賭けます若人ら、負けて雄叫びなるものかと、今日も京にて狂になり、
 励むは御存知、是れ「ホルモー」。負けたら御存知、其れ「ホルモー」。
 このごろ都にはやるもの。元カレ、合コン、古長持。祗園祭の宵山に、
 浴衣で駆けます若人ら、オニと戯れ空騒ぎ、友と戯れ阿呆踊り。
 四神見える王城の地に、今宵も干戈の響きあり。挑むは御存知、
 是れ「ホルモー」。負けたら御存知、其れ「ホルモー」。
 古今東西入り乱れ、神出鬼没の法螺試合、若者たちは恋謳い、魑魅魍魎は
 天翔る。京都の街に咲き誇る、百花繚乱恋模様。都大路に鳴り渡る、
 伝説復古の大号令。変幻自在の第二幕、その名も堂々「ホルモー六景」、
 ここに推参!

■感想 ☆☆☆☆
 「鴨川ホルモー」の続編。続編ではありますが、今作品から読み始めても
 十分に楽しめます。楽しめますが、前作「鴨川ホルモー」から読み始めると
 十二分、どころか、十七分ぐらい楽しめます。前作から張り巡らされた
 伏線が色々なところにびっしりと。それらを見つけるのもまた楽しい。
 前作が「恋愛」をスパイスにした愉快痛快爽快な冒険活劇だったのに
 対して、今作品は「ホルモー」という少し変わった味付けを施した
 「恋愛小説」です。多くの人が幸せになるところを見ることができ、
 大満足で本を閉じることができました。

74.蛙の子は蛙の子・父とムスメの往復書簡/阿川佐和子・阿川弘之

■内容
 当代一の作家阿川弘之。エッセイやインタビューで活躍する阿川佐和子。
 この父娘が、仕事・愛・笑い・旅・友達・恥・老いなど、時代をこえる
 15の主題をめぐってユーモアあふれるやりとりが展開する。

■感想 ☆☆☆☆*
 やはり阿川さんが好きだなぁ・・・としみじみ。彼女のものの考え方も
 勿論、好きですが、それ以上に彼女の「伝え方」が好きなのだと気が
 つきました。押し付けがましくなく、やさしい言葉で誰にでも分かるように
 自分の気持ちや考え、主張をまとめています。「父」「娘」での
 往復書簡だけあって、お互いに気恥ずかしさが大きく、流れる空気感が
 少しぎこちない。そのぎこちなさも新鮮で面白いです。

75.クローバー/島木理生

■ストーリ
 ワガママで思いこみが激しい、女子力全開の華子。双子の弟で、
 やや人生不完全燃焼気味の理科系男子冬冶。新しい恋に邁進せんと動く
 華子にいろんな意味で強力な求愛者、熊野が出現。冬冶も微妙に
 挙動不審な才女、雪村さんの捨て身アタックを受けて・・・。

■感想 ☆☆☆☆
 恋愛小説の形をとりつつも、これはひとりのオトコノコの
 そして、彼を見守るオンナノコタチの成長小説だと思った。
 進路について悩み、決意を二度三度と翻す主人公、冬治。
 そうだな・・・と思った。「恋愛」も「就職」も自分の人生を決定的に
 左右させる大きなもので、それを20歳前後で決めてしまうというのは
 やはりとても怖い。怖いけれど、確実に決断は必要で、その決断に
 伴って、「さようなら」と「こんにちは」が発生する。
 それって切ないけれど、素敵だな、と思った。
 登場人物ひとりひとりがとても魅力的な小説だった。

76.猫になる日まで/新井素子
77.結婚物語(上)(中)(下)/新井素子
    ・眠たい瞳のお嬢さん
    ・正彦君のお引越し
    ・大忙しの二日間
80.新婚物語1、2、3/新井素子
    ・新婚旅行は命がけ
    ・引越し貧乏
    ・傍若無人の冷蔵庫
■感想 猫になる日まで ☆☆☆
    結婚物語    ☆☆☆*
    新婚物語    ☆☆☆

 これまた久々に「そうだ!新井さんに会いたいぞ!」と思い立ち、
 持っていた文庫を引っ張り出しました。高校時代にはまっていた
 新井さんでしたが、大学時代後半には、いつの間にか抜けていて
 たまに読み返す程度。「グリーン・レクイエム」は未だに好きですが
 今回読んだ作品はどれも久々で非常に懐かしい気持ちになりました。
 あの頃、あんなにも読みやすいと思っていた彼女独特の文体は、
 今、読み返すと、なんとも読みにくいというか、少し気恥ずかしい。
 気恥ずかしいのは、今の私の文体が確実に彼女の影響を受けている
 からだと思われます。句読点の使い方など顕著に影響を受けていました。
 それにしてもバブル真っ只中に書かれた「結婚物語」と「新婚物語」。
 この頃はいい時代だったんだなぁということを痛感させられました。
 時代が明るい。そして牧歌的。結婚披露宴についての事情も
 この頃と今とでは激変したんだな、と感じました。あと10年後ぐらいに
 読み返すと、その感覚的なズレが更に大きくなって、もっと面白く
 感じるところが増えるんじゃないかな。

83.星々の船/唯川恵
■ストーリ
 禁断の恋に悩む兄妹。他人の男ばかり好きになる末っ子。
 居場所を探す団塊世代の長兄。そして父は戦争の傷痕を抱いていて。
 愛とは何か、家族とは何かを描いた心震える物語。

■感想 ☆☆☆☆
 ぽこりんからお勧めされたこの作品。2年越しでようやく読めました。
 ありがとう!ぽこりん!食わず嫌いだった作家さんなので、お勧めして
 くれなかったら、一生出会えなかった作品だったと思う。
 出会えてよかったです。でも、少し辛かったです。読み終えてずしんと
 きました。あぁ!だから!ともやもやしました。
 人生でたったひとつの恋に出会ってしまうのは怖い。ずっとその恋に
 捉えられてしまうから。その恋の前には何もかもが色あせてしまう。
 大きな喜びと出会えるけれど、その分、失うものも多く、私はそんな
 激しい心の動きには耐えられない、そう思った。誰かの存在が
 そこまで大きくなってしまうことは私にとって大きな恐怖で、それと
 同時に大きな大きな憧れだと気付かされた。たぶん、私が追い求めて
 いるのは、こういった大きな感情の動きで、だから、ちょっとした
 心の揺れ動きや、少しの「いいな」には鈍感であり続けるのだと思う。

 それにしても。あのなんともいえないラストはすごい。
 私はハッピーエンド至上主義者として、私の中だけのサイドストーリー
 を作り上げました。誰がなんと言おうと、(それが作者であっても)
 この作品には「5年後」とか「10年後」があって、そこでは、
 世間体も禁断の恋も気にしないふたりの姿があるのだと信じたい。

84.クジラの彼/有川浩

■ストーリ
 「沈む」んじゃなくて「潜る」。潜水艦とクジラと同じだから。
 人数あわせのために合コンに呼ばれた聡子。そこで出会った冬原は
 潜水艦乗りだった。いつ出かけてしまうか、いつ帰ってくるのかわからない。
 そんな彼とのレンアイには、いつも大きな海が横たわる。
 自衛隊員たちを巡る恋愛事情を描く連作短編集。

■感想 ☆☆☆☆☆☆
 あとがきに書かれていた作者の言葉を引用しましょう。
 「いい年してラブロマ好きで何が悪い!」
 悪くない!絶対に悪くないはず!私もラブロマ大好きです。
 ハッピーエンド大好きです。幸せな話の連続で、読み終えたと同時に
 思わず2回ほど読み返しました。
 「空の中」「海の中」のサイドストーリーだそうです。
 これは、この2作品も見つけ出さなくては。

85.お縫い子テルミー/栗田有起
■ストーリ
 依頼主の家に住み込み、服を仕立てる「流しのお縫い子」として生きる
 テルミーこと照美。生まれ育った島をあとにして歌舞伎町を目指したのは
 十五歳のとき。彼女はそこで、女装の歌手・シナイちゃんに恋をする。

■感想 ☆☆☆☆☆
 何度読み返しても、テルミーの生き様にしびれます。私もテルミーのように
 自信を持って渡せるような仕事を見つけたい。テルミーのように自分の
 仕事への取り組みを潔く言葉で表して、自信を持って掲げたい。
 とにかくかっこいいオンナノコとの久々の再会にしびれました。
 そして、テルミーのおばあちゃんの家訓のかっこよさ、潔さにも、
 毎回のことながらしびれます。
 「命短し恋せよ乙女」「たわむれに恋はすまじ」は、全国の永遠のオトメ
 永遠の思春期女子たち全員と共有したい。この家訓について語り合いたい。

5月の読書

2010年06月04日 00時16分29秒 | 読書歴
52.ナイン・ストーリーズ/サリンジャー
■ストーリ
 1953年に出版されたサリンジャーの自選短篇集。
 9つの作品が収められている。

■感想 ☆☆☆
 厭世気分が作品中にあふれている短編集。アチラとコチラの
 境界線上で踏みとどまっているような危うい人たちばかりが
 登場し、生きることの孤独をかみ締める。
 おそらく作品の背景にはベトナム戦争があり、
 いくつかの作品の登場人物たちは、戦争で心を病んでいる。
 生きるか死ぬかの経験をした上で感じる圧倒的な孤独。
 それが乾いた文章で、説明なく綴られていて、
 受け止め方も作品自体もすべてを読者に委ねられている。
 読み手にとって「親切」とは到底言えない、
 けれど、だからこそ、心に引っかき傷が残る作品。
 「笑い男」は特に好きでした。この作品は話の流れが
 純粋に面白い。難しいことはよく分からないけれど
 話自体が面白い。そう思える作品でした。
 いつかまた読み返してみたいな。
 そして、受け止める印象がどう変わったのか確かめたい。

53.ありふれた生活2 怒涛の厄年/三谷幸喜
54.ありふれた生活5 有頂天時代/三谷幸喜
55.ありふれた生活8 役者気取り/三谷幸喜

■感想 ☆☆☆☆*
 サリンジャーさんにあまりに翻弄され続けたので
 何も考えずにさらさらと読めて、そしてけらけらと笑えるものが
 読みたいなー、と手に取った作品。
 朝日新聞に毎週金曜日に連載されている三谷さんのエッセイです。
 毎週金曜日に書かれているので、まとめて読むと
 三谷さんの日記みたいになっていて、時の流れをしみじみと
 思いかえしながら読みました。
 三谷さんの面白いところは、引きこもりなのに行動的、
 シャイなのに出たがり、さびしがり屋なのにかまってほしがり、
 と相反する2面性をたくさん持ち続けているところ。
 だから、面白い人なのだと思うのです。奥様とのやりとりは天下一品。
 こういう夫婦、いいなぁ。とあこがれます。
 ちなみに8巻のタイトルは、三谷さんが作品PRのために、
 テレビに出る様子を嫌がっている奥様の言葉。名言だわー。

56.生きているだけで、愛/本谷有希子
■ストーリ
 あんたと別れてもいいけど、
 あたしはさ、あたしと別れられないんだよね、一生。
 母譲りの躁鬱をもてあます寧子と寡黙な津奈木。
 ほとばしる言葉で描かれる恋愛小説。

■感想 ☆☆☆☆
 読むのは2作目ですが、断言。
 本谷さん、好きです。
 彼女の選ぶ言葉も、彼女が描き続ける人物像も、すべてが好き。
 好きだけど、嫌い。好きというにはひりひりと痛すぎる。
 自意識過剰な女性たちを描かせたら右に出るものはいない本谷さん。
 この作品も自分をもてあまし続けるヒロインを執拗に追いかけ続ける。
 愛されたい、愛したい。
 けれど、うまく愛せないし、うまく愛されることもできない。
 好きなのに、どうしていいのか分からない。
 でも、かまってほしい。そんな心の迷宮をぐるぐると描き続ける彼女は、
 「ま。いいや。」ということを知らないんだと思う。
 納得したい。ちゃんと分かってもらいたい。
 そういったスタンスで人と関わって、そのまじめさが
 自分を追い込んで傷ついていく。その痛々しさも
 どこまでも真剣な人との関わり方も、私にはまったくないから、
 私は彼女にあこがれるのだと思う。

57.ふちなしのかがみ/辻村深月
■ストーリ
 おまじないや占い、だれもが知っていた「花子さん」。
 夢中で話した「学校の七不思議」、おそるおそる試した「コックリさん」。
 その向こう側を決して覗いてはいけない。現代の怪談短編集。

■感想 ☆☆☆
 読みながらぞわっとした「踊り場の花子」。
 怪談としても、小説としても面白く、結末まで目が離せない。
 ミステリ要素も持ち、最後の結末がすっきりとしている
 「ふちなしのかがみ」。辻村さんらしいひっかけだが、
 最後に納得して、読み終えることができた。
 よく分からないけれど、どこか怖い。
 不条理な怖さに胸を捕まれた「おとうさん、したいがあるよ」。
 話の肝がよく分からないのに、なぜか怖い。
 少し「世にも奇妙な物語」風。
 そして、幽霊が出てくるものの後味は切ない「八月の天変地異」。
 ラストをしっとりと迎えさせてくれた。

58.波璃の天/北村薫
■ストーリ
 「街の灯」の続編となる連作短編集。
 舞台は昭和8年東京。経済界の一翼を担う良家に生まれた少女、
 花村英子とその家のおかかえ運転手・ベッキーさんこと別宮。
 この二人が時代に翻弄されながら、謎に挑む。

■感想 ☆☆☆☆
 清潔感漂うヒロインたちが時代に翻弄されながらも、
 力強く「今」を見つめ、希望を持って「明日」を迎えようとする
 姿を描いている。ミステリーだが、文学作品。
 美しい文章と、まっすぐな人の思い、時代に臨む姿勢が
 読み手の私にまで背筋を正させる。

59.うつくしい人/西加奈子
■ストーリ
 他人の苛立ちに怯え、細心の注意を払いながら重ねていた日々を
 自らぶちこわした百合。会社を辞め、「ただの旅行」で訪れた
 島のリゾートホテルのバーにいたのは、冴えないがゆえに
 百合を安心させるバーテンダー坂崎と、暇を持て余す金髪の
 ドイツ人、マティアスだった。美しい瀬戸内海の離島、
 そこしかないホテルで不思議に近づく三人の距離。
 地下には、宿泊客が置いていく様々な本が収められた図書室。
 本に挟まっていたという一枚の写真を探すため、
 ある夜、三人は図書室の本をかたっぱしから開き始める。
 会社を逃げ出した女、丁寧な日本語を話す美しい外国人、
 冴えないバーテンダー。非日常な離島のリゾートホテルで出会った
 三人を動かす圧倒的な日常の奇跡。

■感想 ☆☆☆*
 作品自体も好きでしたが、もっとも琴線に触れたのは
 「あとがき」に書かれていた作者の言葉でした。

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  執筆に取り掛かった当時、私は、心の表面張力がぱんぱん、
  無駄な自意識と自己嫌悪にさいなまれ、うっかり傷つく
  中二状態が続いていた面倒な三十路女性で、些細な
  出来事を敏感に受け取り、いや、受け取りすぎ、何かしら
  びくびくしては、酒を食らって泥酔・・・・以下略。
 -------------------

 私だけじゃないんだなー。
 いろんな人が定期的に、こういった状態に陥るんだなー、
 と安心しました。無駄な自意識はしんどい。
 けれど、どうにかしようと思って、どうにかなるものでもなくて、
 その自意識と向き合っていくしかない。
 向き合うしかないけれど、たまには逃げちゃっていいんじゃないかな、
 目をそらしてあげたほうが楽になることもあるんじゃないかな。
 この作品を読んで、なんとなくそう思いました。

60.ビッチマグネット/舞城王太郎
■ストーリ
 なんだか妙に仲のいい、香緒里と友徳姉弟。
 浮気のあげく家出してしまった父・和志とその愛人・花さん。
 そして、友徳のガールフレンドたち。

■感想 ☆☆☆☆
 相変わらずの舞城さん。奔放な文章に心地よく翻弄された。
 そして、悩み続けたヒロインの前向きな決断に元気と勇気をもらった。
 読み終えたとき、「人間っていとしい。」と臆面もなく思えた。
 そういった前へ前へと向かっていく力が、作品全体から伝わってくる。
 だから、私は舞城さんが好きなんだと思う。

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  でも、日常のいろいろってくだならくて退屈だけれども重要なことなのだ。
  きっと人生ってのがそもそもたいしたことないのだ。
  特別なものなんかない。自分からは特殊に見える他人の人生だって、
  実感としては一緒なんだろう。
  代わり映えしなくて億劫でだらだらと長くてぼけっとしていたら
  あっという間で・・・でも意義があって生き甲斐があるものなのだ。
  だからこそ、私は自分のこの見栄えのしない人生を諦めず、
  何か目標を持ったほうがいいと思う。
  結果はどうあれ理想を掲げるべきだし、私は私のために努力もしたい。
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61.かもめ食堂/群よう子
■ストーリ
 言わずもがなの、あのヒット映画「かもめ食堂」の原作。

■感想 ☆☆☆☆☆
 映画とはまったく異なるテイストの作品。けれど、根底に流れるものは
 やはり似ている。読み終えた後、元気になる。爽やかな気持ちになる。
 抜けるような青空を思い浮かべられる。そんな作品。
 日本人のソウルフードはおにぎり。この言葉をかみ締めながら
 疲れたときにかぶりついたおにぎりの味を思い出しながら
 本を読み終えた。
 映画より描写が親切で説明が多く、読みやすい。
 けれど、これらの描写をすべて省略したからこそ、映画は
 あんなにも透明感あふれるものになったのだと思う。
 映画をまた見たくなってしまった。

62.村上春樹全作品 1979-1989(3)
■概要
 以下をおさめた短編集。
 1.中国行きのスロウ・ボート   8.蛍
 2.びんぼうな叔母さんの話    9.納屋を焼く
 3.ニューヨーク炭鉱の悲劇   10.めくらやなぎと眠る女
 4.カンガルー通信       11.踊る小人
 5.午後の最後の芝生      12.三つのドイツ幻想
 6.土の中の彼女の小さな犬   13.雨の日の女
 7.シドニーのグリーン・ストリート

■感想 ☆☆☆☆
 久々の村上作品。世間は「IQ84」で沸いていますが
 私がその作品を手に取るのは、きっと何年も後でしょう。
 でも、いつか読みたい。そう思いました。
 過去の村上作品を読み、「この作品たちの後に続く村上作品を
 片っ端から読みたい。」と思わせてくれる作品群でした。
 特に好きだったのは「カンガルー通信」、「午後の最後の
 芝生の」、「シドニーのグリーン・ストリート」。
 特に「シドニーのグリーン・ストリート」はどこか
 かわいらしくて大好き。情景として心に残るのは「踊る小人」。

63.ふたりのロッテ/ケストナー
■感想 ☆☆☆☆
 子どものための作品。子どもを愛し続けたケストナーの
 愛情がたっぷりと詰まった作品。岩波少年文庫を購入していますが
 挿絵がとてもかわいらしい。いつものケストナー作品の挿絵で
 このイラストを見ただけで、心が穏やかになります。

64.公園のメアリー・ポピンズ/トラヴァース
■感想 ☆☆☆☆*
 久々にメアリー・ポピンズに会いたくなって手に取りました。
 ぶっきらぼうで高飛車で、自分が大好きなメアリー・ポピンズ。
 いつも「不思議」の傍にいて、「不思議」への扉を開けてくれる。
 そんな彼女に再会し、またもやわくわくさせられました。
 他の作品もすべて読み返したい。

65.レ・ミゼラブル2、3/ビクトル・ユゴー
■感想 ☆☆☆
 全7巻の2巻、3巻を読み終えました。
 「カラマーゾフの兄弟」と同時進行で読み始めていましたが
 やはり無理がありました。登場人物が多いカラマーゾフは
 一度、傍におき、とりあえず、こちらに集中。
 要所要所で出てくる時代背景の描写が長くて長くて
 挫折しそうになりますが、そういった描写以外の箇所は
 ストーリーが非常に面白く、楽しみながら読めています。
 物語はまだまだ佳境にもいたってなく、動き始めたばかり。
 これからが面白いところのはず・・・。

4月の読書

2010年05月04日 22時32分40秒 | 読書歴
45.続・足長おじさん/ジーン・ウェブスター

■ストーリ
 あしながおじさんの続編。前作の主人公ジュディは結婚後、孤児院
 「ジョン・グリア・ホーム」の改革権を夫からプレゼントされ、
 実際の改革を行う院長として大学時代の親友サリー・マクブライドを
 指名する。裕福な家庭で何不自由なく育ったサリーは、とまどい、
 悩みながら、持ち前のユーモアと実行力で、変わり者のマックレイ医師や
 大学の同窓生ベッツィや友人たちとともに、ジョン・グリアを模範的な
 孤児院に変えていく。

■感想 ☆☆☆
 大好きな家庭小説です。大好きな家庭小説ですが、「足長おじさん」
 だけは「手紙形式」が読みにくく、読み返したことがありません。
 また、この作品も今回、初めて手に取りました。
 何気なく手に取ったこの作品。気乗りしないまま、読み始めたにも
 関わらず、今回はとても面白く思え、「足長おじさん」自体を
 読み返したい気持ちにさせられました。仕事をすることで、ヒロイン自身が
 成長し、生きる目的や真実の愛を見出していく。王道のストーリー展開では
 ありますが、王道だからこそ、面白い作品です。
 読んでいると、誰かに手紙を書きたくなります。

46.レ・ミゼラブル(1)/ビクトル・ユゴー

■ストーリ
 1815年のある日、司教館をひとりの男が訪れる。
 男の名はジャン・ヴァルジャン。貧困に耐え切れず、たった1本のパンを
 盗んだ罪で19年も服役していた。行く先々で冷遇された彼を司教は
 暖かく迎え入れるが、ジャン・バルジャンは司教が大切にしていた
 銀の食器を盗んで逃げる。しかし、その事実を知っても彼を許す司教に
 感銘を受け、正直な人間として生きていくことを誓う。
 4年後、すっかり立ち直ったジャン・バルジャンだったが・・。

■感想 ☆☆
 全7巻のうちの1巻です。長い。とにかく長い。
 前段、明らかに主役ではないはずの司教についての場面があまりにも長く、
 何度か挫折しそうになりましたが、ようやく本編に入ってきた感のある
 中盤からは面白く読み進めることができました。
 いろんな困難が待ち受ける中、ジャン・バルジャンがどんな一生を
 送ることになるのか。これからが楽しみです。

47.漂流詩人 金子みすず

■内容
 童謡詩人、金子みすずの生涯を追いながら、彼女の作品を収録した作品集。

■感想 ☆☆☆☆
 大好きな詩人、金子みすずさんの作品が美しい写真と共に数多く
 収められており、読み応えのある作品集となっている。
 また、収録されている作品の多くは、金子みすずさん本人の直筆写真と
 共に収められている。彼女の書く字は教科書になるような美しい字では
 ないけれど、読みやすく、丸く暖かく、見ていて心が落ち着く。
 人柄が字にも現われているように感じた。
 収められている作品の多くは有名な作品で一度目や耳にしたことがある
 ものばかりだったが、だからこそ、心に残る作品が多かったように
 感じる。なかでも好きだったのはこの作品。

     蜂はお花のなかに、
     お花はお庭のなかに、

     お庭は土塀のなかに、
     土塀は町のなかに、

     町は日本のなかに、
     日本は世界のなかに、
     世界は神様のなかに。

     そうして、そうして、神様は、

     小ちゃな蜂のなかに。

48.キネマと猫/金子みすず

■内容
 童謡詩人、金子みすずの作品集。

■感想 ☆☆*
 収録されている作品の多くは初めて目にするものばかりで
 楽しく読み進めることができた。声に出して読むと特に
 「七五調」の文体が奏でる言葉やリズムの美しさを
 実感することができます。

49.ICO~霧の城~/宮部みゆき

■ストーリ
 邪悪な力を持つ霧の城は角の生えた子を生贄として求めていた。
 イコはしきたりに従い、霧の城へ。そこで檻に囚われた少女を
 発見し、助け出すが、その手を握ると何故か彼の頭の中に
 様々な幻像が…。不思議な力を持つ少女・ヨルダは何者なのか?
 囚われた理由とは?運命に抗い、謎が渦巻く城からヨルダとともに
 脱出するため、イコは城主と対決する。

■感想 ☆☆*
 ゲームというものとまったく縁のない私ですが、この作品は友人に
 紹介され、一度プレイ場面を見たことがありました。
 たった一度しか見たことがないにも関わらず、キャラクターと音楽の
 美しさと独特な場面運びと静寂な世界が強く心に残っています。
 だからこそ、ノベル化されたこの作品に終始、違和感を抱きながら
 読み進めました。
 このゲームの面白かったところ、魅力的なところは、
 説明を一切配したあの静寂なストーリ展開だと思うのです。
 小説に挿入されている数々のエピソード、それ自体はとても面白く
 補われた説明によって、多くのことが分かります。
 けれど、なぜか違和感を拭い去れないまま、終わりを迎えてしまいました。

50.パレアナの青春/エレナ・ポーター

■ストーリ
 ベルデングスビルの小さな町を「喜びの遊び」で明るくした少女パレアナ。
 彼女はやがて成長し、美しい青春の日々を迎える。
 いつでも喜ぶということは、決して単なるお人好しというわけではなく
 常に強い意志と努力が必要だということを、ポーターは語りかける。

■感想 ☆☆☆
 明るく無邪気だったパレアナもやがて大人になり、恋を知る。
 天真爛漫だった彼女が恋を知ることで、徐々に『喜びの遊び』だけでは
 色々なことを乗り越えられなくなってしまうところに絵空事ではない
 リアルさを感じました。
 後半はロマンスが話の軸に置かれていますが、納得のいく結末で
 読み終えて幸せな気持ちになりました。
 ハウス名作劇場の再放送を心から願います。
 パレアナは主題歌も好きだったんだけどなー。

51.ぶらんこ乗り/いしいしんじ

■ストーリ
 ぶらんこが上手で、指を鳴らすのが得意な男の子。
 声を失い、でも動物と話ができる作り話の天才。
 もういない、わたしの弟。
 天使みたいだった少年が、この世につかまろうと必死でのばしていた
 小さな手。残された古いノートには、痛いほどの真実が記されていた。

■感想 ☆☆☆☆
 大好きな大好きな作品を久々に読み返しました。
 少しまどろっこしさを覚えるふわふわとした暖かい文体に
 懐かしさを覚えつつ、読み進め、読み進めながら、この文体が
 このストーリー展開が好きだったのだ、と思いました。
 ファンタジーテイストの設定は「ありえない」話が詰まっている。
 けれど「ありえない話」で終わらせることのできない説得力も
 持っている。現実から少し離れた世界をふわふわと漂っていた
 姉弟たちが、向き合いたくない現実と向き合い、こちらがわの、
 つまるところ現実の、世界と向き合う場面で終わるこの作品。
 清潔感あふれる物語の運びがやっぱり好きでした。