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夢七雑録

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当たり屋

2010-02-01 21:54:54 | ショートショート

 脱サラというより落サラで、屋台を引っ張ることになったが、何とか生き延びていけそうなのは、この商売が性に合っていたからかも知れない。屋号も「あたり屋」と付け、少々凝った麺を出したら結構人気が出て、まぁ、食べていくだけなら十分な金を稼げるようになった。昔から籤運の良い方ではなかったから、こんな具合に調子良くいく処をみるとツキが変わったのかも知れない。そんな事を考えながら路地から表通りに出た途端、乗用車に引っかけられた。お陰で屋台はメチャメチャ。こっちも軽傷を負った。その代わり、相当な示談金が入った。してみると、やっぱり今回もついているらしい。この程度の怪我で済むのなら、当たり屋商売も悪くはないなと思った。

 怪我か直ったので競艇に行ってみた。ひょっとしてツキがあるかと思い、派手に賭けてみたが見事に外れ。こんな筈ではないと思い、翌日も競艇に出かけた。ところが本日は都合によりレースは休みだと言う。面白くないので、競艇場の水に飛び込んでボチャボチャやっていたら、こんな日に練習している選手がいる。慌てて逃げたが間に合わずに衝突。前回よりは少々重い怪我で入院と相成った。どちらかと言えばこっちが悪いのだが、それでも示談金がたんまり入ったので、暫くは遊んで暮らすことになった。

 自転車レースでは大負けに負けた。頭に来てしこたま酔っぱらい、プラットホームをふらふら歩いていたら、突然足をすくわれた。気が付いたら病院のベットの中。聞いたところでは、電車から棒のようなものが突き出ていたらしい。1ヶ月の入院だったが見舞金も少なからず手に入ったので、暫くは遊んで暮らすことにした。

 退院を待ちかね、競馬に行ってみた。むろん大穴狙いである。ところが、全て外れで、すっからかん。屋台で一杯やりたい気分だったが、その金も無い。おまけに電車賃も無い。まぁ何とかなるさと歩き出した。いつのまにか雨になっていた。見上げると空がやけに明るい。赤い火の玉が落ちてきたのだ。ひょっとして、人工衛星の落下?ぶつかれば、しこたま補償金が貰えるな。そのうち、火の玉はどんどん大きくなってきた。あっ!どどぅん!

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