2022.11 東京 奥多摩・数馬峡を歩く
全国旅行割を利用し、紅葉を見ながらハイキングしようと奥多摩に出かけた。多摩川上流の奥多摩湖、御嶽山・御嶽神社・御岳渓谷、鳩の巣渓谷は2020年11月、2021年10月、2021年12月に歩いていて記憶に新しい(いずれもHP「東京を歩く」に記載)。
圏央道青梅ICを下りて、多摩川、JR青梅線に沿った国道411号線=青梅街道を西に走る。JR青梅線御嶽駅を少し過ぎた左に石垣を積んだぎん鈴という旅館?があり、そば処の幟と音威子府そばと書かれた看板があったので入った。多摩川がはるか下を流れる畳敷きの部屋に通されて品書きを読むと、音威子府そばは終売していて、牡丹そばが案内されていた。どちらも北海道産のそば粉で、幻のそばと呼ばれるそうだ。野菜天麩羅付きの牡丹そばを食べた。そばの色は黒く、艶があり、コシもあった。
次々と客が入れ替わっていたからよく知られた店のようだ。
国道411号線=青梅街道をさらに西に走りJR青梅線終点・奥多摩駅に寄った。駅前広場右の観光案内所、国道411号線に面したビジターセンターの情報によると、多摩川、多摩川に合流する日原川沿いに氷川遊歩道が整備されていて、紅葉も見ごろだそうだ。
案内図を見ながら、三本杉を目印に小径を下る(写真)。根元から3本に別れてまっすぐ伸びた杉で、高さはおよそ43mあり、奥氷川神社の神木とした崇められている。神社に一礼する。
小径を下り、日原川に架かる吊橋の氷川小橋を渡る(写真)。枝が吊橋に伸びだしてきて、眺めはいい。紅葉は盛りだが、紅葉が少なく、緑が旺盛すぎる。
このあたりは大きな岩が川に迫り出していて、峡谷をなしている。大雨のときは激流になり、巨岩をうがったようだ。吊橋を渡り、コンクリート造アーチ橋である氷川大橋を見上げる(写真)。紅葉の色合いはいいが、緑の勢いが旺盛で、紅葉が寂しい。氷川沿いの散策を切り上げ、車に戻る。
国道411号線をさらに西に走り、奥多摩湖に向かう。1938年、東京都民の飲料水を確保しようと多摩川を堰き止め貯水池をつくる工事が始まった。完成まで20年かかり、1957年、小河内ダムが完成した。人造湖の正式名称は小河内貯水池だが、奥多摩湖と愛称されている。2020年11月、2021年12月に奥多摩湖を訪ね、水と緑のふれあい館を見学し、見はらしの丘遊歩道を歩いている(HP「2020.11+2021.12奥多摩湖=小河内貯水池を歩く」参照)。
水と緑のふれあい館の奥の山は日射しを受けて赤茶色に染まっている(写真)。だいたい15:00、山の日暮れは早い。
さっそく見はらしの丘遊歩道を歩く。登り口の奥多摩湖口は標高が530m、見晴らしのいい八方岩展望台は標高が600m、標高差は70mできつくはない。
登り始めてすぐに、真っ盛りの紅葉、奥多摩湖、色づいた山並みの広々とした眺めに足を止める(写真)。見はらしの丘案内板には春の桜、秋の紅葉の見どころが記されている。夏は新緑のハイキングも楽しめる。水資源の学習にもなる。なにより広々とした眺めがいい。
見はらしの丘遊歩道はいくつかのコースがあるので、前回とは違ったコースを選び、35分ほど歩いて八方岩展望台に着いた。満々と水を湛えた奥多摩湖を眺める。
下りも別のコースを選ぶ。紅葉の絨毯を歩きながら、深まった秋の紅葉を見上げる(写真)。 落ち葉はやがて腐葉土となり、その栄養分が木を育て、木の根が伸びて土を固め、水を蓄え、地中にしみこんだ水が奥多摩湖に集まり、都民の水需要を支える。おおざっぱだが、当たらずとも遠からず、であろう。
およそ60分で登り口に戻った。
国道411号線を下り、多摩川に面した石神温泉の宿に向かう。温泉はアルカリ性単純硫黄泉で、微かに硫黄の臭いがする。アルカリ性は肌に良さそうだし、硫黄泉も皮膚に効き目がありそうだ。
温泉で体をほぐしたあと、奥多摩産紅鱒、青梅産豚バラ角煮、青梅産ロース塩麹漬け、ヤマメ塩焼きなど地元の食材を多用した料理に、地元の純米吟醸喜正とおうめワインをいただいた。
すっかり満足したところに、丸十五目御飯が出た。丸十は薩摩藩主島津家の家紋にちなみサツマイモを意味し、サツマイモ炊き込み御飯だった。香りにつられ、口に入れるとサツマイモの甘みが広がる。食べ過ぎに注意しながら食事を終える。旅の宿では日ごろ食べない料理を味わえるのがいい。視覚、味覚、嗅覚の刺激になる。
宿のあたりで多摩川は凹字形に流れている。朝、河原まで下りた。対岸に巨岩が立ちはだかっている(写真)。よほど岩盤が固いようで、激流はこの巨岩で押し戻され、凹字形に流れを変えたようだ。河原は岩場に石がごろごろして歩きにくい。
散策を切り上げ、2021年10月に歩いた鳩の巣渓谷上流(HP「2021.10白丸ダム・鳩の巣渓谷を歩く」参照)の数馬峡に向かった。
JR青梅線白丸駅を過ぎて、数馬峡橋に近い国道411号線に面した駐車場に車を止める。白丸・数馬峡橋周辺遊歩道案内図を確認し、多摩川に架かった数馬峡橋を渡る。多摩川は深い谷底を流れていて、両側の急斜面の秋らしい色どりが水面にも映っている(写真)。
ちなみに峡谷、渓谷は似たような地形だが、峡谷は谷が深く川幅が狭くて川縁を歩くことが出来ない地形、渓谷は深い谷でも川幅が広く川縁を歩くことが出来る地形と区別されている。数馬峡橋から見る限り、斜面ぎりぎりまで川が流れているようだ。
数馬峡橋を渡り、右に折れる。正面に瓦屋根の冠木門が立ち、奥多摩ハンバーグ・アースガーデンと書かれていた。そういえば、駐車場近くにも大きな看板が出ていた。多摩川を見下ろしながらハンバーグをいただくのも良さそうで、ランチが楽しみになる。
冠木門手前の数馬峡橋・1km・白丸ダムの案内に従って、階段を下る(左写真)。階段の先に遊歩道が伸びている(右写真)。遊歩道は斜面の中腹に設けられていて、多摩川はずーと下を流れている。遊歩道はしっかり踏み固められ、起伏もゆるやかで歩きやすい。フィトンチッドをたっぷり吸収しながら歩く。
勾配は緩やかだが水面が近づいてきた。対岸の急斜面には秋の色がモコッ、モコッと常緑樹の緑の合間あいまを彩っていて、その色合いが水面に映り、素晴らしい風景をつくっている(左写真)。
歩き始めて25分を過ぎたころ、白丸ダムが見えた(右写真)。穏やかな多摩川と思って眺めていた水面は白丸調整池=白丸湖だった。2021年10月は白丸ダムの魚道を見学後、下流の鳩の巣渓谷までのあいだを往復した(HP「2021.10白丸ダム・鳩の巣渓谷」参照)。
1年前を思い出しながら、白丸ダムの堤頂を渡ったら、新たに再生可能エネルギーPR館が建っていた。豊かな奥多摩の水資源を利用した水力発電=再生可能エネルギーがジオラマなどで紹介されていた。
館の趣旨が違うのだろうが、多摩川を遡上する魚のために遠大な魚道を設けたことも紹介して欲しいね(HP「2021.10白丸ダム・鳩の巣渓谷」参照)。
お役所仕事は縦割りであっても、自然の営みには縦割りも横割りもないのだから。そんなことを思いながら、遠大な魚道を見下ろす(写真)。
白丸ダムから下流の鳩の巣渓谷に向かう遊歩道は斜面崩落?のため通行禁止になっていたので、遊歩道を戻る。およそ30分、往復60分で、奥多摩ハンバーグ・アースガーデンの冠木門前に着いた(写真)。
行列が出来ていた。よほど知られた店のようだ。昼時である。しばらく並び、窓際の席で奥多摩を眺めながら六白黒豚ハンバーグをいただいた。
国道411号線を下り、JR青梅線御嶽駅近くに建つ玉堂美術館に寄った(写真)。
川合玉堂(1893-1957)は自然の描写が巧みな日本画の巨匠として知られ、晩年の10余年を御岳で過ごしたことから、1961年に近代和風建築の巨匠である吉田五十八(1894-1974)の設計でここに玉堂美術館が建てられた。吉田五十八の設計に川合玉堂の絵で心持ちが静かになる。1泊2日奥多摩の旅で心身が爽快になった。 (2023.8)
全国旅行割を利用し、紅葉を見ながらハイキングしようと奥多摩に出かけた。多摩川上流の奥多摩湖、御嶽山・御嶽神社・御岳渓谷、鳩の巣渓谷は2020年11月、2021年10月、2021年12月に歩いていて記憶に新しい(いずれもHP「東京を歩く」に記載)。
圏央道青梅ICを下りて、多摩川、JR青梅線に沿った国道411号線=青梅街道を西に走る。JR青梅線御嶽駅を少し過ぎた左に石垣を積んだぎん鈴という旅館?があり、そば処の幟と音威子府そばと書かれた看板があったので入った。多摩川がはるか下を流れる畳敷きの部屋に通されて品書きを読むと、音威子府そばは終売していて、牡丹そばが案内されていた。どちらも北海道産のそば粉で、幻のそばと呼ばれるそうだ。野菜天麩羅付きの牡丹そばを食べた。そばの色は黒く、艶があり、コシもあった。
次々と客が入れ替わっていたからよく知られた店のようだ。
国道411号線=青梅街道をさらに西に走りJR青梅線終点・奥多摩駅に寄った。駅前広場右の観光案内所、国道411号線に面したビジターセンターの情報によると、多摩川、多摩川に合流する日原川沿いに氷川遊歩道が整備されていて、紅葉も見ごろだそうだ。
案内図を見ながら、三本杉を目印に小径を下る(写真)。根元から3本に別れてまっすぐ伸びた杉で、高さはおよそ43mあり、奥氷川神社の神木とした崇められている。神社に一礼する。
小径を下り、日原川に架かる吊橋の氷川小橋を渡る(写真)。枝が吊橋に伸びだしてきて、眺めはいい。紅葉は盛りだが、紅葉が少なく、緑が旺盛すぎる。
このあたりは大きな岩が川に迫り出していて、峡谷をなしている。大雨のときは激流になり、巨岩をうがったようだ。吊橋を渡り、コンクリート造アーチ橋である氷川大橋を見上げる(写真)。紅葉の色合いはいいが、緑の勢いが旺盛で、紅葉が寂しい。氷川沿いの散策を切り上げ、車に戻る。
国道411号線をさらに西に走り、奥多摩湖に向かう。1938年、東京都民の飲料水を確保しようと多摩川を堰き止め貯水池をつくる工事が始まった。完成まで20年かかり、1957年、小河内ダムが完成した。人造湖の正式名称は小河内貯水池だが、奥多摩湖と愛称されている。2020年11月、2021年12月に奥多摩湖を訪ね、水と緑のふれあい館を見学し、見はらしの丘遊歩道を歩いている(HP「2020.11+2021.12奥多摩湖=小河内貯水池を歩く」参照)。
水と緑のふれあい館の奥の山は日射しを受けて赤茶色に染まっている(写真)。だいたい15:00、山の日暮れは早い。
さっそく見はらしの丘遊歩道を歩く。登り口の奥多摩湖口は標高が530m、見晴らしのいい八方岩展望台は標高が600m、標高差は70mできつくはない。
登り始めてすぐに、真っ盛りの紅葉、奥多摩湖、色づいた山並みの広々とした眺めに足を止める(写真)。見はらしの丘案内板には春の桜、秋の紅葉の見どころが記されている。夏は新緑のハイキングも楽しめる。水資源の学習にもなる。なにより広々とした眺めがいい。
見はらしの丘遊歩道はいくつかのコースがあるので、前回とは違ったコースを選び、35分ほど歩いて八方岩展望台に着いた。満々と水を湛えた奥多摩湖を眺める。
下りも別のコースを選ぶ。紅葉の絨毯を歩きながら、深まった秋の紅葉を見上げる(写真)。 落ち葉はやがて腐葉土となり、その栄養分が木を育て、木の根が伸びて土を固め、水を蓄え、地中にしみこんだ水が奥多摩湖に集まり、都民の水需要を支える。おおざっぱだが、当たらずとも遠からず、であろう。
およそ60分で登り口に戻った。
国道411号線を下り、多摩川に面した石神温泉の宿に向かう。温泉はアルカリ性単純硫黄泉で、微かに硫黄の臭いがする。アルカリ性は肌に良さそうだし、硫黄泉も皮膚に効き目がありそうだ。
温泉で体をほぐしたあと、奥多摩産紅鱒、青梅産豚バラ角煮、青梅産ロース塩麹漬け、ヤマメ塩焼きなど地元の食材を多用した料理に、地元の純米吟醸喜正とおうめワインをいただいた。
すっかり満足したところに、丸十五目御飯が出た。丸十は薩摩藩主島津家の家紋にちなみサツマイモを意味し、サツマイモ炊き込み御飯だった。香りにつられ、口に入れるとサツマイモの甘みが広がる。食べ過ぎに注意しながら食事を終える。旅の宿では日ごろ食べない料理を味わえるのがいい。視覚、味覚、嗅覚の刺激になる。
宿のあたりで多摩川は凹字形に流れている。朝、河原まで下りた。対岸に巨岩が立ちはだかっている(写真)。よほど岩盤が固いようで、激流はこの巨岩で押し戻され、凹字形に流れを変えたようだ。河原は岩場に石がごろごろして歩きにくい。
散策を切り上げ、2021年10月に歩いた鳩の巣渓谷上流(HP「2021.10白丸ダム・鳩の巣渓谷を歩く」参照)の数馬峡に向かった。
JR青梅線白丸駅を過ぎて、数馬峡橋に近い国道411号線に面した駐車場に車を止める。白丸・数馬峡橋周辺遊歩道案内図を確認し、多摩川に架かった数馬峡橋を渡る。多摩川は深い谷底を流れていて、両側の急斜面の秋らしい色どりが水面にも映っている(写真)。
ちなみに峡谷、渓谷は似たような地形だが、峡谷は谷が深く川幅が狭くて川縁を歩くことが出来ない地形、渓谷は深い谷でも川幅が広く川縁を歩くことが出来る地形と区別されている。数馬峡橋から見る限り、斜面ぎりぎりまで川が流れているようだ。
数馬峡橋を渡り、右に折れる。正面に瓦屋根の冠木門が立ち、奥多摩ハンバーグ・アースガーデンと書かれていた。そういえば、駐車場近くにも大きな看板が出ていた。多摩川を見下ろしながらハンバーグをいただくのも良さそうで、ランチが楽しみになる。
冠木門手前の数馬峡橋・1km・白丸ダムの案内に従って、階段を下る(左写真)。階段の先に遊歩道が伸びている(右写真)。遊歩道は斜面の中腹に設けられていて、多摩川はずーと下を流れている。遊歩道はしっかり踏み固められ、起伏もゆるやかで歩きやすい。フィトンチッドをたっぷり吸収しながら歩く。
勾配は緩やかだが水面が近づいてきた。対岸の急斜面には秋の色がモコッ、モコッと常緑樹の緑の合間あいまを彩っていて、その色合いが水面に映り、素晴らしい風景をつくっている(左写真)。
歩き始めて25分を過ぎたころ、白丸ダムが見えた(右写真)。穏やかな多摩川と思って眺めていた水面は白丸調整池=白丸湖だった。2021年10月は白丸ダムの魚道を見学後、下流の鳩の巣渓谷までのあいだを往復した(HP「2021.10白丸ダム・鳩の巣渓谷」参照)。
1年前を思い出しながら、白丸ダムの堤頂を渡ったら、新たに再生可能エネルギーPR館が建っていた。豊かな奥多摩の水資源を利用した水力発電=再生可能エネルギーがジオラマなどで紹介されていた。
館の趣旨が違うのだろうが、多摩川を遡上する魚のために遠大な魚道を設けたことも紹介して欲しいね(HP「2021.10白丸ダム・鳩の巣渓谷」参照)。
お役所仕事は縦割りであっても、自然の営みには縦割りも横割りもないのだから。そんなことを思いながら、遠大な魚道を見下ろす(写真)。
白丸ダムから下流の鳩の巣渓谷に向かう遊歩道は斜面崩落?のため通行禁止になっていたので、遊歩道を戻る。およそ30分、往復60分で、奥多摩ハンバーグ・アースガーデンの冠木門前に着いた(写真)。
行列が出来ていた。よほど知られた店のようだ。昼時である。しばらく並び、窓際の席で奥多摩を眺めながら六白黒豚ハンバーグをいただいた。
国道411号線を下り、JR青梅線御嶽駅近くに建つ玉堂美術館に寄った(写真)。
川合玉堂(1893-1957)は自然の描写が巧みな日本画の巨匠として知られ、晩年の10余年を御岳で過ごしたことから、1961年に近代和風建築の巨匠である吉田五十八(1894-1974)の設計でここに玉堂美術館が建てられた。吉田五十八の設計に川合玉堂の絵で心持ちが静かになる。1泊2日奥多摩の旅で心身が爽快になった。 (2023.8)