風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

はじまりは一本の木だった

2014年12月05日 | 「詩集2014」

すっかり裸木になった
あの木のてっぺんにいるのは誰だろう
ぼくの知らないぼくかもしれない

忘れていたのかもしれない
すっかり忘れていたぼくなのかもしれない
あそこにはたぶん
きのうの風が吹いている

ぼくは手を振った
だがそいつは
じっと空をみつめている
空には何もない

木は
何をつかもうとして枝を伸ばすのか

はじまりは
小さな一本の木だった
小さな手で植えられたシイの木だった
そしてぼくは
木だった