風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

彼岸花

2010年04月22日 | 詩集「カクテル」
Higannbana


追うように
追われるように
獣たちが駆け抜けていった
土手の草むら
ことし祖母は
言葉をいっぱい失ったので
体も半分になってしまったと言う


秋になって
いちめんの草が染まった
赤い血の色をして


花を摘もうとしたが
半分になってしまったひとの
右手は冷たくて
左手は熱く
ふたつの手にふたつの季節があるようだ


季節をこえてゆく速さを
追いかけてみても
冬じたくする
獣たちの足には追いつくことができない


風のさきでは
獣たちもきっと
花のように燃えているだろう


(2005)



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