風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

雨の子ども

2010年04月26日 | 詩集「雨の子ども」
Ham


雨が降っている
雨が降ると私はいそがしい
家の中が子どもでいっぱいになる
まるで空から降ってくるように
子どもがどこからか現れる
つぎからつぎから
家のすきまから入ってくる
窓もドアも閉めてあるのに
すきまはそんなに沢山あったかしら
いつのまにか家の中は子どもだらけになって
私のひざの上にも
腕や手の上にも
肩から首をつたって頭の上まで
そして、とうとう
私のまゆ毛にまでしがみついている
ああ、たすけてくれ
私はもう子どもは嫌いだ


さらにさらに
雨は天井からも降りはじめている
私のまわりは子どもだらけで
もはや傘をさすこともできない


……………


やがて雨があがると
子どもたちはいっせいにいなくなる
私はひとりぼっちになって
することもなく
青空に向かって傘をひらく


(2004)


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