熊澤良尊の将棋駒三昧

生涯2冊目の本「駒と歩む」。ペンクラブ大賞受賞。
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駒の漆文字について

2019-12-12 06:48:07 | 文章

12月12日(木)、曇り。
寒波襲来の予報。暖かな日差しは今日で終わりとか。漆の調子にも影響が及ぶかもしれません。

昨日、漆の駒文字についてコメントでお尋ねがありました。
駒は作り手にとって、3つの要素、①素材、②文字、③仕上げ、が良し悪しの決め手となりますので、それぞれに最善を尽くすことになります。

この内、①の素材は、模様などが希少で高価な素材ということではなく、一組ごとにツゲ駒の色合いと年輪などの模様がよく揃っていることを言い、これが基本です。そのうえで、好みとか、硬さなど使用しての手触りや耐久性が求められることになります。
②の文字は、好み使う人の好みはいろいろでしょうが、基本は見やすく分かりやすいことです。その上で求められるのが文字の美しさなのですが、その美しさは、レタリングされたいわゆる看板文字ではなく、日本古来の筆文字の美しさであります。
③の仕上げは、①ツゲの素材の良さを最大限引き出し、②の文字の美しさを最大限発揮させるための「技」であり、その良し悪しが駒のすべてを決することになります。

今回は、②の文字についてのお尋ねですので、そのことについて述べることにします。

駒の文字は、見やすくわかりやすいことが基本といいました。以前、テレビ将棋で高段者が「金と間違えて、銀を裏向けに打って、即負け」になったことがあります。これなどは、表の金も一文字で、銀の裏とよく似ていた駒だったことにあります。これは昔、大山名人が、不鮮明なテレビ画面でもよくわかるように、大きな文字の一文字に工夫したのです。ですから、これは、テレビ将棋に特化した駒であり、決して良い駒とは言えないと思います。

話を戻しまして、駒の文字は、駒の顔でもあり、駒の品格を大きく左右する要素であります。
時々、駒を作り始めた方から「良い駒を作るにはどうすればよいか」と尋ねられることがあります。その時に申し上げているのは「書の勉強が大切」だということが多いです。
「書の勉強」とは、まず、書に対する鑑賞眼を養うことだと思います。最初から良い文字が書けるわけではないので、文字を見極める力。これが大切だと思います。最近の書道展には、文字か絵画かの見分けがつかないものが、書として堂々と出ていることが多いです。私が思うには、書すなわち文字は、見る人に率直に読んでもらえるものでなくてはならないと考えています。ちょっと話が脱線しましたが、書(文字)は、見る人にその意味が伝わる。これが基本であり、欠かせないことだと思うのです。
特に駒文字の場合は、このことが大切で、しかも美しさが求められるわけです。

 

 


 

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