2019-0816-man3316
万葉短歌3316 まそ鏡3076
まそ鏡 持てれど我れは 験なし
君が徒歩より なづみ行く見れば 〇
3076 万葉短歌3316 ShuG195 2019-0816-man3316
□まそかがみ もてれどわれは ためしなし
きみがかちより なづみゆくみれば
〇=出典未詳。
【編者注】問答(3305-3322、18首)の第12首。女。3314番歌(長歌)への或本反歌。
【訓注】まそ鏡(まそかがみ=清鏡)。我れは(われは=吾者)。徒歩(かち=歩行)。なづみ行く(なづみゆく=名積去)。
2019-0815-man3315
万葉短歌3315 泉川3075
泉川 渡り瀬深み 我が背子が
旅行き衣 ひづちなむかも 〇
3075 万葉短歌3315 ShuG195 2019-0815-man3315
□いづみがは わたりぜふかみ わがせこが
たびゆきごろも ひづちなむかも
〇=出典未詳。
【編者注】問答(3305-3322、18首)の第11首。女。3314番歌(長歌)への反歌。
【訓注】泉川(いづみがは)[京都府の木津川]。我が背子(わがせこ=吾世古)。旅行き衣(たびゆきごろも=旅行衣)。ひづちなむ(蒙沾)[「<ひづち>は四段動詞<ひづつ(びしょぬれになる)>の連用形。」 02-0194(長歌)旦露尓 玉裳者埿打(あさつゆに たまもはひづち)、-0230(長歌)白妙之 衣埿漬而(しろたへの ころもひづちて)、など]。
2019-0814-man3313
万葉短歌3313 川の瀬の3074
川の瀬の 石踏み渡り ぬばたまの
黒馬来る夜は 常にあらぬかも 〇
3074 万葉短歌3313 ShuG190 2019-0814-man3313
□かはのせの いしふみわたり ぬばたまの
くろまくるよは つねにあらぬかも
〇=出典未詳。
【編者注】問答(3305-3322、18首)の第9首。女。3312番歌(長歌)への反歌。左注に、「右四首」。
【訓注】川の瀬(かはのせ=川瀬)。ぬばたまも(野干玉之)。黒馬(くろま)。
【編者注-よばひ】3310(長歌)に「さよばひ(左結婚)」、12(長歌)に「よばひ(夜延)」と、それぞれ第3句に登場する。この長短四首は、万葉集冒頭歌、天皇、妻問婚、求婚との関連で、依拠本に詳述される。なお、既出記事 2018-0808-man2906 参照。
2019-0813-man3311
万葉短歌3311 こもりくの3073
こもりくの 泊瀬小国に 妻しあれば
石は踏めども なほし来にけり 〇
3073 万葉短歌3311 ShuG189 2019-0813-man3311
□こもりくの はつせをくにに つましあれば
いしはふめども なほしきにけり
〇=出典未詳。
【編者注】問答(3305-3322、18首)の第7首。男。3311番歌(長歌)への反歌。
【訓注】こもりくの(隠来乃)。泊瀬小国(はつせをくに)[下記注]。妻しあれば(つましあれば=妻有者)。
【依拠本注-泊瀬】「泊瀬」は大和の一部だが、特別な聖地として、吉野・春日(かすが)・難波とともに、「国」と呼ばれた。
2019-0812-man3308
万葉短歌3308 天地の3072
天地の 神をも我れは 祈りてき
恋といふものは かつてやまずけり 〇
3072 万葉短歌3308 ShuG182 2019-0812-man3308
□あめつちの かみをもわれは いのりてき
こひといふものは かつてやまずけり
〇=出典未詳。
【編者注】問答(3305-3322、18首)の第4首。男。3307番歌(長歌)への反歌。3309 は柿本人麻呂集歌(「3305~08 の参考歌」)、その左注に「右五首」。
【訓注】天地(あめつち)。我れ(われ=吾)。祈り(いのり=祷)。かつて(都)。
*** 万葉集 巻13 問答(3305-3322、18首) 始 ***
3071 2019-0811-man3306
万葉短歌3306 いかにして3071
いかにして 恋やむものぞ 天地の
神を祈れど 我れや思ひ増す 〇
3071 万葉短歌3306 ShuG182 2019-0811-man3306
□いかにして こひやむものぞ あめつちの
かみをいのれど あれやおもひます
〇=出典未詳。
【編者注】問答(もんだふ、3305-3322、18首)の第2首。男。3305番歌(長歌)への反歌。
【訓注】いかに(何)。神を祈れど(かみをいのれど=神乎祷迹)。我れ(あれ=吾)。
2019-0810-man3304
万葉短歌3304 聞かずして3070
聞かずして 黙もあらましを 何しかも
君が直香を 人の告げける 〇
3070 万葉短歌3304 ShuG177 2019-0810-man3304
□きかずして もだもあらましを なにしかも
きみがただかを ひとのつげける
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3248-3304、57首)の第57首。女。3303番歌(長歌)への反歌。左注に、「右二首」。3299~3303 は長歌。
【訓注】黙も(もだも=黙然)。何しかも(なにしかも=何如文)。君が直香(きみがただか=公之正香)。
*** 万葉集 巻13 相聞(3248-3304、57首) 終 ***
2019-0809-man3298
万葉短歌3298 よしゑやし3069
よしゑやし 死なむよ我妹 生けりとも
かくのみこそ我が 恋ひわたりなめ 〇
3069 万葉短歌3298 ShuG164 2019-0809-man3298
□よしゑやし しなむよわぎも いけりとも
かくのみこそあが こひわたりなめ
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3248-3304、57首)の第51首。男。3297番歌(長歌)への反歌。左注に、「右二首」。
【編者注-火】「なむ」。10-1998過而応分来哉 事毛告火(すぎてくべしや こともつげなむ)。
【原文】13-3298 縦恵八師 二々火四吾妹 生友 各鑿社吾 恋度七目 作者未詳
2019-0808-man3296
万葉短歌3296 父母に3068
父母に 知らせぬ子ゆゑ 三宅道の
夏野の草を なづみ来るかも 〇
3068 万葉短歌3296 ShuG159 2019-0808-man3296
□ちちははに しらせぬこゆゑ みやけぢの
なつののくさを なづみくるかも
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3248-3304、57首)の第49首。男。3295番歌(長歌)への反歌。左注に、「右二首」。
【訓注】父母(ちちはは)[下記注]。三宅道(みやけぢ)[「奈良県磯城(しき)郡三宅町付近」]。なづみ来るかも(なづみくるかも=菜積来鴨)[「夏草に足を取られて女の許に通った段階に立っての表現」]。
【編者注-父母】「ちちはは」訓は、序・題詞・左注を除き、以下のとおり。05-800父母乎(~を)、05-0892(長歌)父母波(~は)、父母尓(~に、2か所)、-0904(長歌)父母毛(~も)、09-1740(長歌)父母尓(~に)、-1804(長歌)父母賀(~が)、13-3296父母尓(~に)、18-4106(長歌))父母乎(~を)、19-4211(長歌)父母尓(~に)20-4236父母我(~が)、-4337父母尓(~に)。「おや」訓は、03-0363(長歌)父母者知友(おやはしるとも)、12-3077(長歌)父母者知等毛(おやはしるとも)の2か所。
【編者注-母父・父母】この長歌では、母-父の順に詠われているのに対し、反歌では父-母の語順である。この点に関し、依拠本は論及する。
【編者注-母父】「おもちち」訓は、03-0443(長歌)母父尓(~に)、13-3336(長歌)母父尓(~に)、-3337母父毛(~も)、-3340母父裳(~も)。「あもしし」訓は、20-4376阿母志々尓(あもししに。母父に)、-4378阿母志々可(あもししが)。
2019-0807-man3294
万葉短歌3294 み雪降る3067
み雪降る 吉野の岳に 居る雲の
外に見し子に 恋ひわたるかも 〇
3067 万葉短歌3294 ShuG154 2019-0807-man3294
□みゆきふる よしののたけに ゐるくもの
よそにみしこに こひわたるかも
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3248-3304、57首)の第47首。男。3293番歌(長歌)への反歌。左注に、「右二首」。
【訓注】み雪(みゆき=三雪)。吉野の岳(よしののたけ=吉野之高)[「御金の岳(みかねのたけ)。奈良県吉野郡吉野町吉野山東南の、金峰山(きんぷせん)、金の御岳(かねのみたけ、858m)」(講談社『万葉集事典』]。
2019-0806-man3292
万葉短歌3292 うつせみの3066
うつせみの 命を長く ありこそと
留まれる我れは 斎ひて待たむ 〇
3066 万葉短歌3292 ShuG149 2019-0806-man3292
□うつせみの いのちをながく ありこそと
とまれるわれは いはひてまたむ
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3248-3304、57首)の第45首。女。3291番歌(長歌)への反歌。左注に、「右二首」。
【原文】13-3292 打蝉之 命乎長 有社等 留吾者 五十羽旱将待 作者未詳
2019-0805-man3290
万葉短歌3290 いにしへの3065
いにしへの 神の時より 逢ひけらし
今の心も 常忘らえず 〇
3065 万葉短歌3290 ShuG147 2019-0805-man3290
□いにしへの かみのときより あひけらし
いまのこころも つねわすらえず
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3248-3304、57首)の第43首。女。3289番歌(長歌)への反歌。左注に、「右二首」。
【訓注】神の時(かみのとき=神乃時)。逢ひけらし(あひけらし=会計良思)。
2019-0804-man3287
万葉短歌3287 天地の3064
天地の 神を祈りて 我が恋ふる
君にかならず 逢はずあらめやも 〇
3064 万葉短歌3287 ShuG141 2019-0804-man3287
□あめつちの かみをいのりて あがこふる
きみにかならず あはずあらめやも
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3248-3304、57首)の第40首。女。3286番歌(長歌)への反歌。
【訓注】天地の(あめつちの=乾坤乃)。祈りて(いのりて=祷而)。我が恋ふる(あがこふる=吾恋)。君にかならず(きみにかならず=公以必)。
2019-0803-man3285
万葉短歌3285 たらちねの3063
たらちねの 母にも言はず つつめりし
心はよしゑ 君がまにまに 〇
3063 万葉短歌3285 ShuG141 2019-0803-man3285
□たらちねの ははにもいはず つつめりし
こころはよしゑ きみがまにまに
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3248-3304、57首)の第38首。女。3284番歌(長歌)への反歌。
【訓注】たらちねの(足千根乃)。つつめりし(褁有之)[02-0160取而褁而(とりてつつみて)、03-0306褁而妹之(つつみていもが)、など]。よしゑ(縦)。君がまにまに(きみがまにまに=公之随意)。
2019-0802-man3283
万葉短歌3283 今さらに3062
今さらに 恋ふとも君に 逢はめやも
寝る夜をおちず 夢に見えこそ 〇
3062 万葉短歌3283 ShuG136 2019-0802-man3283
□いまさらに こふともきみに あはめやも
ぬるよをおちず いめにみえこそ
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3248-3304、57首)の第36首。女。3280・81番歌(長歌)への第二反歌。左注に、「右四首」。
【訓注】今さらに(いまさらに=今更)。寝る夜をおちず 夢に見えこそ(ぬるよをおちず いめにみえこそ=眠夜乎不落 夢所見欲)[「・・欠かすことなく」。12-2842一夜不落 夢見与(ひとよもおちず いめにみえこそ)、-3120全夜毛不落 夢所見欲(ひとよもおちず いめにみえこそ)]。