A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

テナーがあればアルトのサミットも、フィルウッズが音頭をとると・・・

2014-12-13 | MY FAVORITE ALBUM
Alto Legacy / Alto Summit featuring Phil Wood, Vincent Herring, Antonio Hart

「情報」という言葉がある。元々中国から漢字と共に渡来した言葉では無く日本で作られた言葉だという。明治時代森鴎外が作ったという説が有力であったが、最近ではそれ以前に使われていたという事実も見つかったようだ。
いずれにしても、軍事用語を翻訳する過程で作られたようで、「敵情(状)の報告」もしくは「敵情(状)の報知」という意味で情報という言葉が作られた。英語のInformationの訳として使われ、意味的にも単なるdataと使い分けている。今の時代、情報という言葉は日常的に当たり前に使われるようになったが・・・。

一方で「情」という言葉は、日本語としては深い意味がある。他人に対する思いやり、物に感じて動く心の働き、そして、真心、誠意。どの意味をとっても、日本人の心の原点を表すような言葉だと思う。
とすると「情報」という言葉を「情」けを「報」せると解釈すると、Informationの語源である軍事上の諜報活動による情報という意味より、より大きく深い意味を持つことになる。
日本人にとっては情報とは、この情けを報せるという意味の方がしっくりするように思う。
コミュニケーションの方法が便利になった半面、本当に心の通うコミュニケーションが難しくなっている。
もう一度、「情報」の大事さを見直した方がいいかもしれない。

このアルバムのライナーノーツの中で、フィルウッズのアルトを“情熱のアルト”と書かれている。
熱い、あるいはホットなアルトというのは自分もよく使う言い回しだが、「情熱のアルト」というのはまさに言い得て妙である。ウッズのアルトには音色だけでなく、プレーそのものに熱さを感じる。それは自分の内面をアピールするだけでなく、自分の想いを他のメンバーに訴えかけることも含めて。
ウッズはヨーロピアンリズムマシンのようにワンホーンでやる時も、あるいはジーンクイルのコンビの時も、そしてビッグバンドでリードを吹く時も、いつでもプレーへの想いは熱い。

このアルバム「アルトレガシー」は、先日紹介したベニーゴルソンの「テナーレガシー」の姉妹アルバム。録音されたのは1995年。新しいアルバムをあまり聴かない自分にとっては、最近のアルバムということになるがすでに20年が経っている。
先日ベニーゴルソンが元気に来日したが、このフィルウッズもまだ健在だと思う。歴史の生き証人として、いまでも伝説を語れる2人がまだ健在だということは、単に偶然ということではないかもしれない。

さて、このアルバムは、サミットと謳っているが巨人達を集めた訳ではない。フィルウッズをリーダーに若手の2人のアルトを加えたいわゆるバトル物。ヴィンセントへリングはキャノンボールアダレイに憧れナットアダレーのグループにも参加していた。アントニオハートも同様キャノンボールアダレイやゲイリーバーツの影響を受けたという。
ウッズとは親子ほどの年の差はあるが、お互い熱いアルトで渡り合うには良い人選だ。リズム隊のメンバーも若手を起用している。前作と同様若手を従えて、過去の巨人達が残した名演を再現するという企画だ。

ウッズがリーダーといっても決してウッズが前面に立つのではない。かといってよくあるバトル物でもない。曲によって主役を変え若手を前面に立て、時にはバックのアンサンブルを加え、まさにメンバー全員で揃って取り組んでいる。例えば、自ら名演を残したミシェルルグランのサマーノウズではヴィンセントを前面に立て自分は引き立て役に徹している。
選曲は日本人プロデューサーということもあり、1曲だけはウッズのオリジナルだが他は過去の様々な名演が思い浮かぶしっくりくる選曲だ。

ウッズは自分は好きなプレーヤーだ。これまで紹介したアルバムにも多く参加している。とにかく色々な時代、シーンでリーダーアルバム以外でも出番が多いので、まだ紹介していないアルバム、聴いた事のないアルバムは沢山ある。また少し探してみようと思う。

1. Blue Minor  Sonny Clark  5:38
2. The Summer Knows (Theme from Summer of '42)  
     Alan Bergman / Marilyn Bergman / Michel Legrand  9:43
3 . Minority  Gigi Gryce  6:44
4 . Stars Fell on Alabama  Mitchell Parish / Frank Perkins  6:15
5 . Autumn in New York  Vernon Duke  5:57
6 . All the Things You Are  Oscar Hammerstein II / Jerome Kern  5:24
7 . Song for Sass  Phil Woods  7:16
8 . God Bless the Child  Billie Holiday / Arthur Herzog, Jr.  8:22

Phil Woods (as)
Antonio Hart (as)
Vincent Herring (as)
Anthony Wonsey (p)
Ruben Roggers (b)
Carl Allen (ds)
Engineer : Troy Halderson
Produced by Makoto Kimata

Recorded at Power Station in New York, June 4 & 5, 1995



アルト伝説~アルト・ジャイアンツに捧ぐ
Phil Woods
ビデオアーツ・ミュージック
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