A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

テナーの魅力はアンサンブルやソロのバトルだけではない・・

2014-11-02 | MY FAVORITE ALBUM
Tenor Legacy / Benny Golson Tenor Summit

昔ジャズ喫茶通いをして、ラジオでジャズ番組を漁るように聴いていた時は、特に聴きたくないアルバムも自然と耳に入ってきた。スイングジャーナルを眺めながらどんなアルバムが出ているかも知ることができた。
少ない小遣いをやり繰りして買ったアルバムは自分として厳選したものだけ。それなりの思い出と思い入れがあったものばかりだ。有名アルバムもあるが、多くは拘りのマイナーな物が多かった。

社会人になり懐具合も良くなり自由にアルバムを買えるようになると、反対に調べもせず衝動買でアルバムを買う事も増えた。ネットが無い時代だったので、バーゲンでのジャケ買だ。その結果は、愛聴盤になったものもあるが、思惑が外れて一回聴いたきりのアルバムもある。最近棚卸をしている中で、それらの中に新たな発見をすることもあるので捨てないで良かったと思う事もある昨今である。

レコード棚を改めて眺めると別に好きで集めた訳ではないのだが、枚数が多いミュージシャンが何人かいる。結果的には好みのミュージシャンだということになるが、その中の一人にベニーゴルソンがいる。

サックスのプレーだけでなく、ゴルソンの曲が好だしアレンジ物にも興味があるので自然に増えたのかもしれない。そしてゴルソンというのは自らが主役になるより誰か主役の脇役に居ることが多いのに気が付いた。結果的にゴルソンが入っていたということが、枚数が増えたことになる。

ディジーガレスピーがオーケストラを解散させた時、一緒にプレーしていた18歳のリーモーガンをアートブレーキーに紹介したのはゴルソンであった。紹介するだけでなく、メッセンジャーズではモーガンと一緒にプレーし、自ら提供したブルースマーチやアロングケイムベティーといった曲もヒットさせた。ゴルソンの名曲アイリメンバークリフォードを最初に吹かせたのもリーモーガンであった。サイドワインダーをヒットさせる前、モーガンを一流に仕立てたのはゴルソンであったといってもいいだろう。
人と人との出会いを作り、自分もそれに参加し、皆で一緒にいいものを作る。チームプレーにおいて理想的なリーダーシップを発揮するミュージシャンだと思う。

ゴルソンが昨年来日した時に、ステージ上で昔話を延々語っていたが、穏和な語り口と遥か昔のクリフォードブラウンとの思い出話を昨日の事のように語る様はまさに、生きている「伝説の人」であった。

このゴルソンが音頭取りをしたテナーバトルのアルバムがある。

アルバムのタイトルが「テナー伝説」。
4人のテナー奏者が集まって、伝説のテナープレーヤーに捧げたアルバムだがメンバーの人選が実にユニークだ。同年代の有名プレーヤーを集めるような企画はすぐにでも思いつくが、実際に集まった4人はユニークな組み合わせとなった。

ベテラン代表でエリントンオーケストラ出身のハロルドアシュビー、これも渋い人選だ。
若手、中堅代表がブランフォードマルサリスとジエイムスカーター。カーターはまだ30歳になったばかり、デビュー間もない頃であった。96年の録音だが、この時ゴルソンはすでに67歳。親子どころか孫に近い世代のとの共演であった。

先日のアーニーワッツのアルバムが徹底的にバトル物であったのに対して、ここでは曲毎に適材適所。基本的にゴルソンは全曲に登場するホスト役だが、一人で吹ききっている曲もあれば、相手を変えながら2人、3人で吹き分けている曲もある。プレーヤー間でのバトルではなく、どの曲も現役が束になって過去の巨匠の名演に対してバトルを挑んでいるという構成だ。

曲はテナーの巨匠達の名演で有名な曲が続く。レスターリープスインがレスターヤング、ボディアンドソウルがホーキンス、セントトーマスがロリンズ、ゲッツの持ち曲はイマネマと新旧取り混ぜての名曲集だ。
ゴルソン自らに捧げたウィスパーノッツもある。ここでは、ジェイムスカーターとの共演だが、カーターにメロディーラインを任せて自らは引き立て役になっている。



ライナーノーツにゴルソン自身のコメントが載っている。
「昔は、ベテランが若手にレコーディングのチャンスを与えた。今の時代は若手が自らその機会を掴みとる時代になった。しかし、ベテラン達が若手の刺激を受けプレーをするのは自分達にとっても嬉しいものだ。」

長老になっても奢ることなく、若手を思いやっている気持ちが良く出ている。それに応えて若手も長老を敬いつつ、迎合することなく自分達を自己主張している。もちろん演奏自体も若手が入った事によって、単に懐メロセッションにならずに緊張感が生まれている良いセッションだと思う。

今の時代、日本の社会においても必要な事はこのような事だと思う。歳をとってもゴルソンのような心遣いと、気働きができるようになりたいものだ。

1. Lester Leaps In  (for Lester Young)
2. Body And Soul  (for Coleman Hawkins)
3. St. Thomas  (for Sonny Rollins)
4. Cry Me A River  (for Dexter Gordon)
5. My Favorite Things  (for John Coltrane)
6. Whisper Not  (for Benny Golson)
7. The Girl From Ipanema  (for Stan Getz)
8. My Old Flame  (for Zoot Sims)
9. Lover Come Back To Me  (for Ben Webster)
10. In Memory Of  (for Don Byas)

Benny Golson (ts)
Branford Marsalis (ts)
James Carter (ts)
Harold Ashby (ts)
Geoffrey Keezer (p)
Dwayne Burno (b)
Joe Farnsworth (ds)

All arranged by Benny Golson
Produced by Makoto Kimata
Recording Engineer : Katsu Naito
Recorded at Sound on Sound in New York City, on January 29 & 30, 1996, New York.


テナー伝説~テナー・ジャイアンツに捧ぐ
Benny Golson
ビデオアーツ・ミュージック

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 想定外の大ヒットはその後の... | トップ | あれだけとるのに苦労したグ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。