A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

このオーケストラのサウンドをライブでまた聴けるとは思わなかった・・・

2014-12-12 | MY FAVORITE ALBUM
北欧組曲 / 三木敏悟 & 高橋達也と東京ユニオン

1. パートⅠ 白夜の哀しみ Midnight Sunrise
2. パートII エドワード・ムンクの肖像 Sketches Of Munch
3. パートIII グレタ・ガルボの伝説 The Legend Of Garbo
4. パートIV アンデルセンの幻想 Andersen Fantasia
5. パートV シベリウスの遺言 Sibelius' Testament
6. パートVI 遊ぶ子供たち Children at Play

高橋達也(leader,ts)
多田春文、安孫子浩、鈴木基治、斎藤智一(tp,flh)
宮崎英次郎、内田清高、岡田光一 (tb)
簾健一 (b-tb)
堀恵二、柳沼寛 (as)
井上誠二 (ts)
石兼武美 (bs)
石田良典 (b)
金山昌宏 (p)
海老沢一博 (ds)
荒谷憲一、直居隆雄 (g)
今村祐司 (per)
ミッキー吉野 (synth)

Producer 藤井武

録音 1977年5月15日、22日 東京エピキュラス・スタジオ

1978年1月、丁度ペッパーアダムスがチャールスミンガスのレコーディングに参加している時、日本ではスイングジャーナルの2月号が発売された。2月号では毎年前年リリースされたアルバムからジャズディスク大賞が選定され発表される。
1977年の金賞はハービーハンコックのVSOPニューポートの追想、銀賞にはグレートジャズトリオのビレッジバンガードのライブ盤。どちらも記憶に残るアルバムだ。
そして、日本ジャズ賞にはこの三木敏悟の北欧組曲が選ばれた。

1970年代後半、突如現れた新進アレンジャー三木敏悟。全盛期の東京ユニオンに加わり斬新なアレンジのビッグバンドサウンドを聴かせてくれた。この「北欧組曲」はアレンジャーとしてのデビュー作、日本とスウェーデンで同時発売され、この三木敏悟の世界は海外にも広く知れ渡った。
受賞が決まった2月号には、このアルバムを出したスリーブラインドマイスレーベルの広告に、受賞記念で国内用に2000枚、海外用に5000枚の追加プレスを行うと記載されていた。如何に誕生した時からグローバルで認知されたかを象徴している。

その後、三木敏悟は自らのインナーギャラクシーオーケストラを編成し、アルバム「海の誘い」を出し、モントルーのステージにも立った。そして、さらに数枚のアルバムを出し、これからという時に解散してしまった。

それから長い月日が経ってすっかり過去のオーケストラかと思っていたら、昨年、この三木敏悟とインナーギャラクシーオーケストラ(IGO)が再編されたというニュースを聞いた。これは行かねばと思いつつ、予定が合わなかったり、スケジュールをチェックしきれなかったり、結局、聴けず仕舞いで一年が経ってしまった。先日、復活一周年記念を兼ねたライブが東京TUCで行われ、やっと聴く事ができた。



当日の会場は満員、評論家の瀬川さんやプロデューサー藤井さんの姿も。そして、席にはその日のプログラムが置かれていた。
ジャズのライブで当日の演目が事前に発表されることはめったにない。せいぜいその日の特集や目玉がアナウンスされれば御の字だ。クラシックのコンサートでは必ずといってほど事前に演目があり、それを知って聴きに行くのだがこの違いは何なんだろう?



プログラムに目を通すと、処女作の「北欧組曲」からの曲もある。そしてまだ聴いた事も無い新しい曲も。曲名の下に、簡単なコメントが書いてある。まるでレコードのライナーノーツのように。
メンバーがステージに上がってオープニング曲Merman’s Danceが始まる。
これは以前のライブの映像↓


リズム隊は若手、ホーンセクションはベテランが多い。トランペットの安孫子氏、トロンボーンの鍵和田氏、サックスの柳沼氏などオリジナルのメンバーもまだ健在だ。最近、あちらこちらのライブの常連、羽毛田さんや、田中さんの姿も。

目新しい点は、女性コーラスの3人組が加わっている事、サックスセクションに尺八が加わっている事だろう。オーケストラ全体のサウンドはこの編成になった影響が大きい。
尺八の音色というのはどうしてもそれだけで「日本」を感じる。そして、女性コーラス3人組は楽演団五束六文というグループで活躍する3人。



演歌もジャジーに歌うグループだが、それがオーケストラ全体に影響し和風の味付けが加わった。創立当時から4ビートには拘らない自由なリズムとアンサンブルが特徴であったが一層磨きがかかり、それを支える若手の元気なリズム隊も頑張っている。

三木敏悟のアレンジは、リズム、ハーモニーが曲の中でも実に多彩に変化する。しかし、どんな曲でもジャズのエッセンスが組み込まれている。それをアピールするようなプレゼンテーションがプログラムに加えられている。
「津軽海峡」のジャズバージョンを聴かせてくれたり、新曲の即興アレンジをステージ上で披露する曲も。「和風」を組み込んだオーケストラは、ステージでのエンターテイメントを組み込みながらさらに進化して多彩なサウンドを聴かせてくれた。復活といっても、昔の懐メロの再演ではなかった。

プログラムに沿って2時間たっぷりのステージがあっと言う間に終わった。曲の合間のMCも実に軽妙でありポイントを押さえている。メンバー紹介を兼ねたソロの配置も実に絶妙だ。

この満足感は、結果的に演奏だけでなくステージ全体が実に上手くプロデュースされ演出されていたということだろう。
第一部の終わりに客席にいたマイクプライスがトランペットで飛び入り参加しクロージングを行った。特に何の紹介も無かったが、お客さんの中でマイクさんを知っている人が何人いたか?これも飛び入り参加だとは思うが、これもうまく演出されていた。
ビッグバンドを単なるライブではなく、ライブショー仕立てして聴かせてくれるのは、若手の向井志門 & The Swingin' Devilsしか聴いた事がなかったが、新生IGOはその世界にもチャレンジしているかもしれない。

三木氏の普段の活動をあまり知らなかったが、山野の審査員を長年務めているそうだ。バンドリーダー&アレンジャーの養成講座も積極的に行っているようだ。作編曲家としてだけでなく、今回プロデューサーとしての素晴らしさを再認識し、単にライブを聴く以上のステージを楽しませてくれた。単に団塊の世代の復活というより、長年築いてきたこれまでの経験をすべてつぎ込んだようなステージには重みと厚みを感じる。同じ世代としては嬉しい限りだ。
来年も積極的に活動すると宣言していたが、また出かけてみたくなるライブであった。
ゴードングッドウィンやマリアシュナイダーに駆けつける若いファンにも一度聴いて貰いたいオーケストラだと思う。


北欧組曲[Blu-spec CD]
三木敏悟&高橋達也と東京ユニオン
THINK! RECORDS
コメント
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