A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ブルーノートの売却騒ぎの中で作られたアルバムであったが・・・

2014-11-14 | PEPPER ADAMS
Boss Horn / Blue Mitchell


秋の旅行シーズン、久々に遠出をして晩秋の山陰路へ。大山から松江、出雲、そして世界遺産石見銀山へ。丁度紅葉シーズンという事で人出は多いということであったが、都会暮らしの常識からすると混雑には程遠いレベル。紅葉、温泉、グルメとのんびりした旅を楽しめた。

石見銀山ではガイドについてゆっくり回ったが、この山奥に最盛期は20万人が住む町があったとは今の街の姿からは信じられない。坑道へ向かう散策路もただ歩くだけだと単なる森林浴になってしまう。鬱蒼と続く杉林から、かっては川沿に軒を連ねた昔の街の姿をイメージするには、ここではガイド付きの山歩きがお勧めかもしれない。そして、今人口が400人足らずになったこの街を支える企業、中村ブレイス。地方創成のヒントはこのような企業かもしれない。

さて、サドメルのメンバーとしてジョーウィリアムのアルバム録音に参加したペッパーアダムスは、その年1966年の11月はもっぱらサドジョーンズと一緒に行動していた。サドメルオーケストラはその年のニューポートにも出演し、アルバムが出たこともあり確実に人気が上昇、本拠地のヴィレッジバンガードでは11月1日からは定例の月曜日以外にも一週間続けて出演する別途プログラムが組まれた。そして、月末から12月に掛けては久々にサドジョーンズとのクインテットで同じヴァンガードのステージに立っていた。

このように忙しく過ごしていた11月であったが、その合間を縫って17日に再びデュークピアソンからレコーディングの誘いがあった。今度は、トランペットのブルーミッチェルのリーダーアルバム。バックは前回のスタンレータレンタイン同様、デュークピアソンがアレンジを担当した大型のコンボ。今回もアダムスをはじめとして第一線のソリストが揃っていたが、彼らにバックアンサンブルを担当させる贅沢なセッションであった。

サイドワインダーがバカ売れした後、2匹目のどじょうを狙ったブルーノートのアルバムの作り方の話を知ると、一曲目のイメージは大体想像がつく。このアルバムも御多分に漏れずロック調のブルース”Millie”で始まる。

ブルーミッチェルのリーダーアルバムというと、自分自身はあまり多くは聴いていない。何でも器用にこなすようで色々なセッションに参加しているが、生涯を通してみるとあまり大きくスタイルを変えないメインストリーマーだったように思う。
スタジオワークを中心にやっていた時はR&Bなどもやっていたが、70年代の後半にはコンコルドのアルバムにも登場、ハロルドランドとのコンビの演奏の他、サイドメンやビッグバンドの一員としても良く顔を出していた。Concordでのプレーはハードバップの再演でメインストリーマーの本領発揮であった。

規定課題のような曲で始まるこのアルバムも、2曲目に入るとラテンタッチのカーニバルのバックに似合いそうな曲、そしてスタンダードのアイシュッドケアをミディアムテンポで。ミッチェルがメロディーを綺麗に吹き始めるとバックのアンサンブルはピアソンのビッグバンドのような軽快なサウンドでオーソドックスなアレンジを聴かせてくれる。サドメルでアダムスと椅子を並べていたジェリーダジオンのソロも聴き所だ。

もう一曲、ソウルフルな8ビートの曲に続いて、このアルバムのもう一つの目玉はチックコリアが2曲参加していること。コリアのオリジナルのTone’s For Joan’s Bones。ジェリーダジオンのフルートのイントロに続き、ミッチェルのトランぺット、そしてコリアのソロへと続く。コリア自身はロマンチックなサウンドになることを望まなかったというが、ピアソンのアレンジを含めコリアらしい雰囲気が前面に漂う。ピアソンはこの曲が気に入ったのか、後に自己のビッグバンドでも演奏している。
次は一転アップテンポになるが、これもコリア色が強い。ペッパーアダムスはこの曲の最後でソロで登場するが、ファンキー色が薄いこのようなモーダルな曲でもこの当時からさりげなくこなしている。



アルバム一枚を聴き終えると、良くいえばバラエティーに富んでいるし、悪く言うとまとまりのないルバムだ。ブルーミッチェルが起用に何でもこなしているが、デュークピアソンは何となく社命でやっていることと、自分のやりたいことが混在している。そしてコリアのような新しい息吹を吹き込まれるとまた新たなイメージが沸くといった感じだ。アルフレッドライオンがまだ健在であった混迷期のブルーノートを象徴するようなアルバムだ。

アダムスにとっては一サイドメンに徹しての参加であった。そして12月もサドジョーンズと行動を共にした後、暮れには久々にトロントへ出掛けて1967年の新年を迎えることになる。

1. Millie        Duke Pearson 6:15
2. O Mama Enit      Blue Mitchell 5:34
3. I Should Care     Sammy Cahn/ Axel Stordarl/Paul Weston 7:31
4. Rigor Mortez Dave   Dave Burns 6:21
5. Tones For Joan's Bones Chick Corea 6:37
6. Straight Up And Down  Chick Corea 6:36

Blue Mitchell (tp)
Julian Priester (tb)
Jerry Dodgion (as, fl)
Junior Cook (ts)
Pepper Adams (bs)
Cedar Walton (p -1/4)
Chick Corea (p -5,6)
Gene Taylor (b)
Mickey Roker (ds)
Duke Pearson (arr)

Produced by Alfred Lion
Recorded at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, November 17, 1966

Boss Horn
Blue Mitchell
Blue Note Records
コメント (2)
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