Birds & Ballads / Art Pepper, Johnny Griffin, Joe Farrell, Joe Henderson, Harold Land, John John Klemmer
最近昔のスイングジャーナルを時々眺めることにしている。ネット万能時代になって気になったものは何でも瞬時に調べられる反面、得られる情報は断片的。何かじっくり調べたり、俯瞰する時は本や雑誌がやはりいいようだ。特に雑誌は、その時点でホットな話題が編集されている。その時代を思い返すには良いきっかけになる。最近時間感覚が無くなってきているが、これは単に歳をとっただけでなく時間軸で物事を整理する習慣が無くなっているせいかもしれない。人間の生活で時間軸での整理というのは不可欠かもしれない。
先日、1980年11月号を見ていたら、その号の特集はその年の9月に亡くなったビルエバンスの記事が中心。エバンスは70年代までの人だったというのを改めて再認識。
そして、レコード評のページへ。
スイングジャーナルには同誌選定のゴールドディスクなるものがあって、その紹介が毎月レコード評の最初に載っていた。新譜だけでなく旧録音でもお勧めディスクを推進盤として紹介し、シンボルマークを作ってレコード会社などとも連携していた。このゴールドディスクは、手探りで聴いていた時には良く参考にした推薦盤だった。
今思えばこれはかなりのPR効果。これで売れたアルバムも多かったと思う。最近のネットの世界でも「リコメンド」というのはセールスプロモーションの手法で大きな要素だが、個人のお勧めよりもそれなりに権威のある本であり人のお勧めというのは重みがあり、マスコミュニケーションでのレコメンドが効果的な時代であった。意図的にヒット作を作れたという事になる。
その号のゴールドディスクがこのアルバム”Birds & Ballads”であった。
最近、CDの再発物で2枚のLPアルバムをカップリングしたものを時々見掛ける。確かにメディアの収録時間が増えたのでボーナストラック同様この2枚組はお得感はあるのだが、何でこの2枚が一枚に、という違和感を感ずる時もある。自分の世代だと、「アルバム単位」というのはジャケットのデザインを含めて作品として何か拘りがあるもかもしれない。作る側のプロデューサーも当然それを意識して制作していたので。
このアルバムは、オリジナルは別々に発売された2枚のアルバムを2枚組の一枚にしたもの。まさに今の時代のCD化のカップリングと同じようなものだ。しかし、2枚組にしてゴールドディスクとしたのは当時でもそれなりに一緒にした意味があったからだ。
ほぼ同じメンバーが、同じ時期に2枚のアルバムを作った。一枚がパーカーとモンクの曲を演奏した物。そしてもう一枚がバラード曲を集めたもの。同じ時期に録音されたものを2枚に振り分けたものだが、最初に企画があったのか、結果的にこのように分かれたのかは分からない。
このセッションで共通している事は、60年代初めから活躍しているベテランと、70年から台頭してきた若手のサックスプレーヤーの共演だということ。それも良くある皆揃ってのジャムセッションやアンサンブルを売りにしている訳ではない。一曲毎にソロプレーヤーを選び、一人で自分のスタイルを思う存分発揮した構成になっている。
バックは、ベースは2人で分担するものの、ピアノとドラムは同じメンバーで変らず。よくあるバラバラのセッションを集めたコンピレーションという訳でもない。よくある「のど自慢」ではないが、サックス自慢のプレーヤーを一人ずつ舞台に乗せて腕前を競うコンテストのようなものだ。
もう一つの特徴がテナー奏者に交じって、一人アートペッパーがアルトで参加している点だ。パーカートリビュートであればアルトプレーヤーだけを集めてもよいのだが、テナーばかりを集めている中でアートペッパーの役割は?
カムバック後の積極的に活躍していた時期なので、流石にパーカーのヤードバートスーツも、バラードのオーバーザレインボーも素晴らしい演奏。まさにゲストの先生役のような感じがしないでもないが。
このアルバムが目に留まり久しぶりに聴き直したのも、その中にジョーヘンダーソンの名前があったからだ。アルバム自体は各人各様のパーカートリビュート&バラード集だが、こうやってスタンダード曲を並べてきくとそのスタイルの違いが余計に鮮明になる。
ベテラン代表は、60年代の始め一躍有名になったジョニーグリフィンとジョーヘンダーソン、そして少し毛色が変るがハロルドランドの3人、若手はジョーファレルとジョンクレーマーの2人。それぞれスタイルが全く違うし、規定課題をどうこなすかがまさに聴き較べのポイントとなる。
ジョーファレルは70年代にはチックコリアのリターンツーフォーエバーの印象が強いが、久々のストレートなプレーだ。そういえば、このジョーファレルもサドメルのメンバーであった。創設時から出入りはあるが結構長く在籍した割には印象が薄かった。
肝心のジョーヘンダーソンはリラクシンアットカマリロではピアノレスのトリオで。他のメンバー(あるいはこの企画)の影響を受けたのか、バラードのグッドモーニングハートエイクも、どちらも聴きごたえのある演奏だ。
このアルバムの録音は'78年。ジョーヘンダーソンの復活は80年以降となんとなく思っていたが、実はこのアルバムが復活のきっかけになったのではないかと思う。
ちなみに、このスイングジャーナル11月号には海外ジャズミュージシャンの人気投票結果も出ている。アルトサックス部門はアートペッパーがダントツの一位。当時の日本での人気の程を窺い知ることができる。そして、テナーサックス部門の一位はソニーロリンズ、グリフィンが6位にアップ、ジョーファレルとジョンクレーマーもランキングには顔をだしているが、ジョーヘンダーソンは20位にも入っていない。当時は日本のファンからは忘れられた存在であったようだ。その意味では、このアルバムでの演奏が復活に向けての狼煙であったのではないか?
1. Billie’s Bounce (Griffin)
2. Round Midnight (Klemmer)
3. Confirmation (Farrell)
4. Yardbird Suite (Pepper)
5. Relaxin’ at Camarillo (Henderson)
6. Bloomdido (Land)
7. Over The Rainbow (Pepper)
8. God Bless The Chile (Klemmer)
9. Smoke Gets In Your Eyes (Griffin)
10. Good Morning Heartache (Henderson)
Art Pepper (as)
Johnny Griffin (ts)
Joe Henderson (ts)
Joe Farrell (ts)
John Klemmer (ts)
Harold Land (ts)
Stanley Cowell (p)
Cecil Mcbee (b)
John Heard (b)
Roy Haynes (ds)
Produced by Ed Michel
Engineer : Baker Bigsby
Recorded on Fantasy Studios, Berkeley, CA, December 1,2,4,5, 1978
最近昔のスイングジャーナルを時々眺めることにしている。ネット万能時代になって気になったものは何でも瞬時に調べられる反面、得られる情報は断片的。何かじっくり調べたり、俯瞰する時は本や雑誌がやはりいいようだ。特に雑誌は、その時点でホットな話題が編集されている。その時代を思い返すには良いきっかけになる。最近時間感覚が無くなってきているが、これは単に歳をとっただけでなく時間軸で物事を整理する習慣が無くなっているせいかもしれない。人間の生活で時間軸での整理というのは不可欠かもしれない。
先日、1980年11月号を見ていたら、その号の特集はその年の9月に亡くなったビルエバンスの記事が中心。エバンスは70年代までの人だったというのを改めて再認識。
そして、レコード評のページへ。
スイングジャーナルには同誌選定のゴールドディスクなるものがあって、その紹介が毎月レコード評の最初に載っていた。新譜だけでなく旧録音でもお勧めディスクを推進盤として紹介し、シンボルマークを作ってレコード会社などとも連携していた。このゴールドディスクは、手探りで聴いていた時には良く参考にした推薦盤だった。
今思えばこれはかなりのPR効果。これで売れたアルバムも多かったと思う。最近のネットの世界でも「リコメンド」というのはセールスプロモーションの手法で大きな要素だが、個人のお勧めよりもそれなりに権威のある本であり人のお勧めというのは重みがあり、マスコミュニケーションでのレコメンドが効果的な時代であった。意図的にヒット作を作れたという事になる。
その号のゴールドディスクがこのアルバム”Birds & Ballads”であった。
最近、CDの再発物で2枚のLPアルバムをカップリングしたものを時々見掛ける。確かにメディアの収録時間が増えたのでボーナストラック同様この2枚組はお得感はあるのだが、何でこの2枚が一枚に、という違和感を感ずる時もある。自分の世代だと、「アルバム単位」というのはジャケットのデザインを含めて作品として何か拘りがあるもかもしれない。作る側のプロデューサーも当然それを意識して制作していたので。
このアルバムは、オリジナルは別々に発売された2枚のアルバムを2枚組の一枚にしたもの。まさに今の時代のCD化のカップリングと同じようなものだ。しかし、2枚組にしてゴールドディスクとしたのは当時でもそれなりに一緒にした意味があったからだ。
ほぼ同じメンバーが、同じ時期に2枚のアルバムを作った。一枚がパーカーとモンクの曲を演奏した物。そしてもう一枚がバラード曲を集めたもの。同じ時期に録音されたものを2枚に振り分けたものだが、最初に企画があったのか、結果的にこのように分かれたのかは分からない。
このセッションで共通している事は、60年代初めから活躍しているベテランと、70年から台頭してきた若手のサックスプレーヤーの共演だということ。それも良くある皆揃ってのジャムセッションやアンサンブルを売りにしている訳ではない。一曲毎にソロプレーヤーを選び、一人で自分のスタイルを思う存分発揮した構成になっている。
バックは、ベースは2人で分担するものの、ピアノとドラムは同じメンバーで変らず。よくあるバラバラのセッションを集めたコンピレーションという訳でもない。よくある「のど自慢」ではないが、サックス自慢のプレーヤーを一人ずつ舞台に乗せて腕前を競うコンテストのようなものだ。
もう一つの特徴がテナー奏者に交じって、一人アートペッパーがアルトで参加している点だ。パーカートリビュートであればアルトプレーヤーだけを集めてもよいのだが、テナーばかりを集めている中でアートペッパーの役割は?
カムバック後の積極的に活躍していた時期なので、流石にパーカーのヤードバートスーツも、バラードのオーバーザレインボーも素晴らしい演奏。まさにゲストの先生役のような感じがしないでもないが。
このアルバムが目に留まり久しぶりに聴き直したのも、その中にジョーヘンダーソンの名前があったからだ。アルバム自体は各人各様のパーカートリビュート&バラード集だが、こうやってスタンダード曲を並べてきくとそのスタイルの違いが余計に鮮明になる。
ベテラン代表は、60年代の始め一躍有名になったジョニーグリフィンとジョーヘンダーソン、そして少し毛色が変るがハロルドランドの3人、若手はジョーファレルとジョンクレーマーの2人。それぞれスタイルが全く違うし、規定課題をどうこなすかがまさに聴き較べのポイントとなる。
ジョーファレルは70年代にはチックコリアのリターンツーフォーエバーの印象が強いが、久々のストレートなプレーだ。そういえば、このジョーファレルもサドメルのメンバーであった。創設時から出入りはあるが結構長く在籍した割には印象が薄かった。
肝心のジョーヘンダーソンはリラクシンアットカマリロではピアノレスのトリオで。他のメンバー(あるいはこの企画)の影響を受けたのか、バラードのグッドモーニングハートエイクも、どちらも聴きごたえのある演奏だ。
このアルバムの録音は'78年。ジョーヘンダーソンの復活は80年以降となんとなく思っていたが、実はこのアルバムが復活のきっかけになったのではないかと思う。
ちなみに、このスイングジャーナル11月号には海外ジャズミュージシャンの人気投票結果も出ている。アルトサックス部門はアートペッパーがダントツの一位。当時の日本での人気の程を窺い知ることができる。そして、テナーサックス部門の一位はソニーロリンズ、グリフィンが6位にアップ、ジョーファレルとジョンクレーマーもランキングには顔をだしているが、ジョーヘンダーソンは20位にも入っていない。当時は日本のファンからは忘れられた存在であったようだ。その意味では、このアルバムでの演奏が復活に向けての狼煙であったのではないか?
1. Billie’s Bounce (Griffin)
2. Round Midnight (Klemmer)
3. Confirmation (Farrell)
4. Yardbird Suite (Pepper)
5. Relaxin’ at Camarillo (Henderson)
6. Bloomdido (Land)
7. Over The Rainbow (Pepper)
8. God Bless The Chile (Klemmer)
9. Smoke Gets In Your Eyes (Griffin)
10. Good Morning Heartache (Henderson)
Art Pepper (as)
Johnny Griffin (ts)
Joe Henderson (ts)
Joe Farrell (ts)
John Klemmer (ts)
Harold Land (ts)
Stanley Cowell (p)
Cecil Mcbee (b)
John Heard (b)
Roy Haynes (ds)
Produced by Ed Michel
Engineer : Baker Bigsby
Recorded on Fantasy Studios, Berkeley, CA, December 1,2,4,5, 1978