A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

気楽な演奏もいいが、たまにはじっくり取り組まないと演奏できない物もいい・・・

2013-11-15 | PEPPER ADAMS
The Thelonious Monk Orchestra at Town Hall


50年代のペッパーアダムスを追いかけてきたが、チェットベイカーと’58年末セッション終えて1959年に入る。いよいよ50年代も最後の年だ。

ジャズ界も大きな変化を迎えようとしていた年だ。
その時代背景を知っていた方が何かを思い起こすためには役立つかもしれないと、その年に何があったかを改めて目を通してみた。きっかけがあると、たまに思い出したようにやることだ。

この年は、今の天皇陛下が美智子妃殿下と結婚した年、話題になった。64年の東京オリンピックも決まった。民放テレビ局も日テレに続き、フジテレビ、日本教育テレビ(今のANB)が次々と本放送を開始した。
自分は小学校の4年、少年サンデー、少年マガジンの創刊が最大のエポックメイキングな出来事であった。テレビでは、少年ジェット、七色仮面、ローハイド、ヤン坊マー坊の天気予報が始まる。いよいよテレビ時代の始まりだった。
第一回のレコード大賞は水原弘の「黒い花びら」。海外ではプラターズの「煙が目にしみる」が流行ったのをよく覚えている。伊勢湾台風が襲来したのもこの年。
ジャズ界のみならず世の中全体が変革を始めた年だった。

さて、アダムスは年が明けると、ベイカーとそのままクラブ主演へ。ピアノはエバンスではなくドンフリードマンだった。その流れで19日には“CHET”の残りの録音を行った。2人の相性がいいのも付き合いが長いだけでなく、ライブを経ての録音だったからもしれない。
そして、この年初めのもう一つの大きなイベントは、2月28日のセロニアスモンクのタウンホールコンサートだった。1月からすでにリハーサルは始まっており、メンバー達はモンクとホールオーバートーンのアレンジに取り組み始めていた。

編成は10人、通常のビッグバンドよりは小振り、チューバやフレンチホルンを加えた編成はギルエバンスなどと相通じるところがある。
作品はすべてモンクの作品。このような編成の特徴としてはソロやコンボでは表現しきれないものをオーケストラに託すといった感じが強くなる。いみじくもエリントンが「自分の楽器は、自分のオーケストラだ」と言っているのと同じ意味だ。極みは、モンクのかって残したアドリブパートをオーケストラで再現した“Little Roote Tootie”。アンサンブルにモンクがバックをつけ、ソロパートはアダムスが一番バッターだ。続くバードも絶好調だ。最後のアンサンブルも秀逸。

普段ベイシーなどのビッグバンド物を聴きなれていると、アンサンブルワークの心地よさに満足しているが、このような演奏を聴くと演奏者のプレーの個性をアンサンブルに展開させようとしているのがジワジワと伝わってくる。よく、アレンジャーは誰にソロをとらせるかを意識してアレンジをするというが、この場合は、誰を自分の分身にさせるかということだからより真剣になる。

自分自身、モンクやミンガスはその個性に魅力を感じてはいたが少し遠い存在であり、あまり体系立てて聴いたこともなかった。
改めて聴いてみるとモンクワールドをオーケストラに展開した素晴らしさを再認識した。ソロやコンボでは何か言葉足らずで物足りなかったものが、いきなり饒舌に語りだしたような感じだ。今来日中のミシェルカミロのビッグバンドもそうかもしれないが、アンサンブルはソロの延長にあり、そのサンサンブルの間のソロは作編曲者でもあるリーダーの意を組んだ物でなくてはならなくなる。ちょっと集まってリハをやっていきなり本番というアレンジとは一線を画するものになるし、それに加わるメンバーも厳選されてくるということだ。演奏を繰り返すことでオーケストラの一体感が増してくる。
演奏者はそんなサウンドをイメージしているのかもしれない。今、ブルーノートで公演中のミシェルカミロのバンドもニューヨークのブルーノートで公演をしてからの来日。どうりで初日からノリが半端ではなかった。
色々なセッションに参加しているアダムスだが、色々と奇人変人といわれたモンクの良き理解者の一人でもあったことが分かる。

このタウンホールコンサートはモンクの音楽生活の中では有名なイベントだし、今ではそれなりに評価もされているようだが、開催された時の当時の新聞の評価はどれも酷評に近った。アダムスの手記によると、お蔭で4月以降予定されていた3週間で8都市を廻る予定のツアーはキャンセルされ、バンドメンバーは2カ月の仕事を失ったそうだ。所詮評論家とはその程度のものなのだろう。

何事もそうだが、天才肌の仕事はその時は評価されなくて、晩年になってから再評価されるということだ。この時の録音には未発表物(Blue Monkなど)がまだあるようだが、ぜひ聴いてみたいものだ。

1. Thelonious
2. Friday The 13th
3. Monk's Mood
4. Little Rootie Tootie
5. Off Minor
6. Crepuscule With Nellie
7. Thelonious (complete version)
8. Little Rootie Tootie (encore)

Donald Byrd (tp)
Eddie Bert (tb)
Bob Northern (French horn)
Jay McAllister (tuba)
Phil Woods (as)
Charlie Rouse (ts)
Pepper Adams (bs)
Thelonious Monk (p)
Sam Jones (b)
Art Taylor (ds)

Recorded live at "Town Hall", NYC, on February 28, 1959



セロニアス・モンク・オーケストラ・アット・タウン・ホール+2(紙ジャケット仕様)
クリエーター情報なし
ビクターエンタテインメント
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