A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

高いレベルの閾値を守り続けるということは・・・

2013-11-11 | CONCORD
High Standards / Jackie & Roy

毎日生活していると色々な刺激を受ける。
ところが刺激を受け続けているといつの間にかそれに慣れてしまい、新たな刺激を受けるにはその数倍の刺激が必要になってくる。それは単純に正比例するのではなく対数になる。

飽食の時代といわれているが、人間は本来腹7分目が満たされれば食は足りていたのだろう。それがいつの間にか満腹まで食べないと満足できなくなり、ご馳走が食べきれないほどテーブルの上に無いと不満を感じ、食品が店の棚にも溢れていないと心地よさを感じない時代になってしまった。
量だけではなく「ちょっと味が濃いのが好き」がいつのまにか激辛しか食べなくなり、本来の繊細な味覚を味わう感覚を失っていく。
今話題の食品偽装表示も根本は同様。此のくらいであればという軽い気持ちでスタートしたものが、業界揃って嘘がまかり通るのを誰も不思議に思わなくなるように。慣れというのは恐ろしい。

この「ヴェーバー・フェヒナーの法則」は世の中の何にでもあてはまるのではないだろうか。
ある状態の変化が起こる点を閾値という。「しきいち」と当たり前に使っていたが、本当は「しきち」が正しい読み方のようだ。間違いも皆で使えば正しくなるということかも。
何事においても満足を得る閾値があるが、慣れてくると満足するバーが自然に高くなっていく。「初めての経験」というのは色々な意味で感動・感激をするものだが、その感動を再び得るのは難しいように。

ジャズを聴く時も同じで、ライブであってもレコードであっても、初めて聴いた時に「これは凄い」と感じる時がある。当然ジャズの右も左も分からずに聴き始めた時は何度も経験したものだ。その感動をまた得たいがために探求の旅が始まる。そして、自分の好きなミュージシャン、曲、レーベルなどが決まっていった。

好きなものばかりを聴いていると、その中からまた新たな感激を得るのはなかなか難しくなる。自然と閾値が上がっているのだろう。ミュージシャンよっては新たな領域にチャレンジしたり、新たなメンバーとプレーをしたり、ミュージシャン自身も新たな世界の挑戦に身を置く。これが新たな刺激になることも・・・。

一方で、頑なまでに自分のスタイルを守り通すミュージシャンもいる。
ボーカルのデュエットで有名なジャッキー&ロイ。このグループも時代の変遷とともに色々なチャレンジをした。テレビショーを持ったり、ラスベガスのショーに出たり、コマーシャルを多く手がけたり。しかし、デビュー当時のチャーリーベンチュラ時代から晩年まで基本は何も変わらない。もちろん、おしどり夫婦の2人はメンバーチェンジもなかった。

初めて2人の演奏を聴いた時に、そのフレーズ、スキャット、ハーモニーにジャズ魂を感じた。確かVerveのLove sickだったと思う。その後新旧のアルバムを何枚も聴いたが彼らの魅力はいつの時代も同じだ。新たな刺激を受ける閾値が高いからといって決して魅力が無いわけではない。

その彼らがコンコルドに来て3枚目のアルバム。素材としてスタンダード曲を選び、いつものアプローチで。奇をてらった企画、目新しさは無い。しかし、正面から閾値を超えることにチャレンジする心意気を感じるアルバムだ。

蛇足ながら、アナログディスクの上空をHigh Standards垂れ幕を引く飛行機が飛ぶデザインにはすごく意味がある。CD盤のジャケットデザインではその意味は通じない。

1. I Got Rhythm         George Gershwin / Ira Gershwin 2:16
2. Stardust         Hoagy Carmichael / Mitchell Parish 3:59
3. Loving You          Judy Holliday / Gerry Mulligan 2:26
4. I Watch You Sleep  Richard Rodney Bennett / Joel E. Siegel 4:16
5. Too Marvelous for Words  Johnny Mercer / Richard A. Whiting 2:43
6. Am I Blue Harry             Akst / Grant Clarke 2:35
7. Bidin' My Time        George Gershwin / Ira Gershwin 3:29
8. Joy Spring                  Clifford Brown 3:50
9. Nobody's Heart         Lorenz Hart / Richard Rodgers 3:30
10. Mine George             Gershwin / Ira Gershwin 2:14


Jackie Cain (vol)
Roy Kral (vol,p)
Paul Johnson (vib)
Dean Johnson (b)
Jeff Brillinger (ds)

Produced by Frank Dorritie
Engineer : Phil Edwards

Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California, February 1982

Originally released on Concord CJ-186

High Standards
クリエーター情報なし
Concord Records
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