森の中のティータイム

離婚を経験し子供達も独立 
暮らしの小さな発見をノートに。

ひとりと一匹たち 多摩川 河川敷の物語

2014-03-17 | 動物
先日のコメントでみなあんさんが教えてくださった「ETV特集」の番組を観た。
多摩川の河川敷に暮らすホームレスのおじさんと、そこに暮らす猫を撮るカメラマ
ンの小西修さんを、番組が追う。

台風の大雨で、ここで暮らした小西さんの知り合いのホームレスの人と盲目の飼い
猫ミエコが小屋ごと流されて亡くなったというこの場所。「危険」を理由にここで
暮らす彼らを排除するための立札が立てられている。

同じ場所で暮らすホームレスの一人佐藤さんは、16匹の猫と一匹の犬と一緒だ。
人を使って建設の仕事をしていたが、バブル崩壊後仕事を失いその後家族とも別れ
たという。
彼は、番犬として飼っていた犬のモモが段ボールに捨てられた仔猫を次々に連れて
きては自分のお乳で育てるのを見て、みたこともない深い愛情に心打たれたと話す。

          

それでもある日、枝に縄をかけて首を吊ろうとしたことがあるという。
それをモモと、モモが最初に連れてきた猫のウメがズボンを掻いて止めたという。
全編、胸が締め付けれられるエピソードだらけだけど、ここでまた切なくなる。
その後も、何度も停止しながら観た・・。

ある日、佐藤さんと気の合わなかったホームレスの人が別の場所に消え、その
片づけのためにきた人が「こんな暮らしをするくらいなら首を吊った方がまし」と
話しているのを耳にし、いつになく大声で「あんたたちに気持ちが解るか!」と窘
めていた。

家を失いこの暮らしを余儀なくされた人たちは、理由もなく襲撃に遭い命を失うこと
もあれば、重い病気に罹り淋しい生涯を終えることもある。
景観を損なうという理由で小屋の撤去を余儀なくされ、やっと見つけた場所からも追
われるかもしれない。
誰もこの暮らしをしたくてしているわけではない。

佐藤さんは空き缶集めをして生計を立てていたが、猫のご飯もままならないこの暮
らしから抜け出ようと、下水道工事の仕事に就いた。
しかし、このドキュメンタリーの終わりにそれも解雇されたとあった・・。
そんな佐藤さんの、世間から浴びせられる仕打ちへのせめてもの抗議だったと思う。

猫と暮らす河川敷のおじさんたちは本当は普通の心穏やかな人たちだ。
たまたま生活に困り、居場所を失ってしまっただけの。
もしかしたら彼らは競争社会から脱落しただけで、人一倍心優しい人たちだったか
もしれない。そして、誰だってそういう生活と今は隣り合わせなのかもしれない。

食べるのもままならないのに、猫たちと寄り添うように生きる心優しい彼らが
どうか今より良い暮らしに戻れますように・・と願わずにいられない。

それにしても、この場所で暮らす行き場のない猫たちの世話をされる小西さんの奥
様も、なんて素敵な人だろう。このご夫婦のような慈愛に満ちた方々の努力が報わ
れる世の中になりますように。そういう細やかな配慮が行き届いた政治を期待でき
そうもないのが悲しい・・。
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