森の中のティータイム

離婚を経験し子供達も独立 
暮らしの小さな発見をノートに。

真実が明かされるとき

2009-05-26 | マイケル・ジャクソン
これまで、一冊の本を読み終えるのにこれ程の時間を要した
記憶がない。
この本を読むことは自分にとって、リアルタイムで一喜一憂
していたあの日々を思い出しては検証するという、辛い作業
でもあった。


 

この本は、一人のスーパースターにかけられたある容疑により
起こされた裁判の記録であり、また著者である米国の犯罪
ジャーナリストの「懺悔」の書でもある。

この著者そのものが、この馬鹿げた訴えをあたかも正当性
があるかのように捉え、裁判中も明らかに道化としか見え
ない原告側の茶番と呼べる数々の主張を、不本意ながらも
支持する偏向報道の、片棒を担いでいた。
そのことを悔いる気持ちから、改めて取材を重ね資料を読
み解き、この本を書いたという。

これまでもファンは、このスターに関してはメディアが決して
真実を報道しないことを知っていた。
その人を「変人扱いしている限り、メディアは話題に事欠かない
し、高い視聴率を稼げる」からだ。

しかし、今は世界中の情報がネットで瞬時に手に入る。
裁判の詳細は、事細かに傍聴したファンによって日々更新され、
検察側・弁護側双方のやり取り、重要な証言や証拠の全てが
裁判の間毎日、ダイレクトに伝えられていたのだ。

にも拘らず、メディアはどうしたことか、被告とされたスター
に有利な証言は一切伝えず、奇異に映るように切り取られた
証言の部分のみを、一斉に報道していた。

裁判で示された証言や証拠の殆どが、「被告が邪悪どころか
誰もが想像する以上に純真で、思いやりに溢れた人物である」
ことを証明していたにも拘らず、その一面に関しては申し合わ
せたように無視を決め込んだ。

彼がもし実刑判決を受けていたら、「タブロイド業界は大儲けし、
永遠に彼のネタで食べていけただろう」と、想像できるほど
白熱した偏向報道ののち、判決の日を迎えた。



「ファンは感傷的になっていた。
有罪なら、彼は刑務所で死んでしまうかもしれないと。」
好んで特にアメリカの裁判ドキュメンタリーや、裁判映画を
観てきたつもりの自分にも、メディアがこれほどまでに
真実を歪曲するのを、つぶさに目の当たりにしたのは初めて
だった。

しかし、陪審員たちもまた、私たち以上にこれを知ることに
なったのだと思う。裁判は14もの容疑全てで無罪という結果
となった。これに導くまでの全てが、この本には書いてある。

これまでのスター弁護士とは違い、このトーマス・メゼロウと
いう誠実な弁護士は、派手なメディアへの露出もせず、大衆を
煽動するパフォーマンスも不自然な情報リークも一切なしに、
正面から戦い勝利した。



辛い記憶の掘り起こしではあったけれど、まるで映画を観た
ような読後感でもある。
著者の懺悔の思いは充分に果たせただろうと思う。
真実を知らない多くの人に、この本を奨めたい。

※文中「」の中の文言は、本書からの引用を含みます。

(画像は私個人の描いた物)
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