『絹遺産研究会リポート』 第8号
平成28年8月9日(火)午後1時30分より3時30分までの2時間、県庁舎10階の101会議室において、気温35度C以上の猛暑の中6名の参加により8月例会を開催しました。
今回の発表者はM田睦副会長で、「上州座繰器の歴史と伝播」と題して約1時間半パワーポイントを利用してのお話です。
『群馬県蚕糸業沿革調査』(明治35年)、『群馬県蚕糸業史』(昭和30年)、『信濃蚕糸業史』、『信濃蚕業沿革史料』(明治23年)、『在来技術改良の支えた近代化』(平成16年、松浦利隆著)、『郷土の文化財4』(岡谷蚕糸博物館発行)などの文献を丹念に読み込まれたレジメを用意していただきました。
同時に現地調査した碑文や糸繰器の写真を写しながら、「上州座繰器の歴史」については、製糸の始まり、「座繰り」の名称、奥州座繰器の呼称、上州座繰器の発生時期および松浦氏の上州座繰器発生時期の見直し説、上州座繰器周辺機器の改良、などを説明した後、上州座繰器の創始者として高橋邦吉(前橋市)、松島倉吉(前橋市)、高橋鷲次(安中市)などを、絵馬や石碑などの資料により紹介していただきました。
続いて「座繰り製糸の伝播」については、信州上田地方、信州岡谷地方、庄内地方、豊橋地方、宮城県、東京都などへの伝播の状況をそれぞれのエピソードを交えながら解説していただきました。最後に引き続き座繰り製糸器の研究を続けていきたいと結ばれ発表は終了しました。
フリートークの時間では、大昔の糸繰りは繭を口に含み唾液で溶かしながら糸を挽いていたという話になり、古代の人たちは繭を食い破って、蛹を食べていたのではないか、唾液でぬれた繭から糸が取れることを知り、口に含みながら糸繰を開始したのではないか。蛹を食べることが先で、糸をとることを後に気が付いたのではないかとの議論で盛り上がり例会は終了しました。
(N.T記)