富岡製糸場世界遺産伝道師協会 世界遺産情報

「富岡製糸場と絹産業遺産群」は日本で初めての近代産業遺産として2014年6月25日付でユネスコ世界遺産に登録されました。

現地研修会「下仁田町・南牧村の絹遺産を訪ねる」

2016年08月25日 22時11分25秒 | 世界遺産伝道師協会

現地研修会「下仁田町・南牧村の絹遺産を訪ねる」

 

7月26日(火)8時40分、20名の伝道師が富岡市生涯学習センターの駐車場から4台の車に分乗、出発しました。今回の講師は、3年前にもお世話になった西毛の地理・歴史に明るい市川肇伝道師です。

今年はまだ梅雨が明けず、出発して間もなく雨が降りだす中を荒船風穴に向かいます。

現在は、直接車で荒船風穴脇の駐車場まで行くことは禁止されているので、下仁田駅前から予約しておいた5台のタクシーに分乗して風穴を目指します。

国道254号線から左にそれて県道に入り、山道を約3.5㎞登って行くと戸数5戸の屋敷集落が現れ、間もなく荒船風穴の駐車場です。

 風穴に向かう小路もすっかり整備され、歩きやすくなっています。常駐の解説員の案内で、まず番舎跡付近から風穴全体を見渡してから1号風穴の脇の高台に上ります。小雨に煙る3連の風穴を眺めながら解説を受けます。

6年前、2号風穴上方の岩陰から縄文土器が発見され話題になりましたが、縄文人もここが世界遺産になろうとは夢にも思わなかったでしょう。

 

約35分の滞在後、タクシーで春秋館を目指します。まず西方300mの高所から遠望して、位置と全体像をつかんでから春秋館に向かいます。事務所や付帯施設が現存していますが、標識や案内板もないので、初めて訪れる人には見つけにくいことでしょう。

個人の所有で公開していないので、敷地外から外観の見学だけです。訪れる度に建物が劣化していることを実感するので、何らかの手が打たれることを切望します。

タクシーで下仁田駅前に戻り、会員の車に乗り換えて下仁田町青倉地区に向かいます。富岡製糸場の建設資材の一つ、漆喰の主材料となった石灰は、この青倉及び沢違いの栗山地区で採掘・焼成が行われたという記録があります。道の右手に石灰が露頭し、白い岩肌を見せている山を背にして市川伝道師の解説がありました。

南牧村役場近くの店の広間で昼食を摂り、順に自己紹介をしました。ユーモア交じりの発言に笑い声も起こり、参加者同士が一層親しくなった気がします。

昼食後、旧尾沢小学校を活用した南牧村民族資料館に行きました。村民が提供してくれた約4,000点にのぼる生活用具等を大変興味深く見学しました。その中に329点の「ぐんま絹遺産(南牧の養蚕・操糸・機織用具)」が含まれていて勉強になります。

次の見学は星尾風穴です。産卵台紙の収容能力は10万枚で、荒船風穴の110万枚に比べると規模はかなり小さく風穴は一つです。しかし、荒船風穴よりも一足早く明治38年1月に合資会社組織で営業を始めています。雨の中ですが、風穴正面に立つと冷気を感じることができました。

続いて風穴から150mの距離にある諏訪神社にお参りしました。長野県の諏訪大社と同じく6年ごとに御柱祭を行っている神社です。

300年続く51回目の神事がこの4月に行われ、その際のスギの御柱が境内中央に立っていました。

 

次に、仲庭地区の斜面に残る約20軒の養蚕農家群の間の起伏に富んだ道を歩きます。いずれも木造・切妻屋根・2階建でかつては重要伝統的建造物群保存地区の候補にもなった素晴らしい景観です。今は養蚕を行っている農家はなく、空き家になった農家が増えているそうです。

少し下った所にある一部4階建のかつての養蚕農家Iさん宅を訪問します。2・3階で蚕を飼い、4階で上蔟を行いました。昭和40年代までの養蚕の盛んな頃の話や、その後繭・こんにゃく・木材の売値が下落して、若い人は外へ出て行く時代になってしまったこと等、現実の厳しさがひしひしと伝わってきます。日本一の限界集落となったこの村の対策は、県民全体が考えなくてはならない問題なのではと感じました。

南牧村からの帰途、南牧川の浸食でできた長さ100mに渡る「蝉の渓谷」で10分ほど車を止め、その景観に見入りました。「県の天然記念物及び名勝」に指定されています。紅葉の秋の美しさが想像できます。

続いて「道の駅オアシスなんもく」で小休止後、降り続く雨の中「道の駅しもにた」に到着。屋根のある回廊で簡単な解散式を行い、各車は集合場所の富岡市生涯学習センターに向かいました。雨のため比較的気温も低く、熱中症の心配もなく動きやすかったことは幸いでした。

 最後に、南牧村役場の石井係長、旧養蚕農家のIさん、終日各所で興味深く分りやすい解説をしてくださった市川肇伝道師に感謝いたします。

        (Y.I記)

 

 

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