暇つぶし日記

思いつくままに記してみよう

水周り改修工事始まる (5) タイルの間違い

2009年05月05日 05時06分48秒 | 日常
職人達のほぼ一週間の休みのあと今朝はいつものように8時前からタイル職人がトイレのタイルを仕上げるべく狭い空間に大きな体を押し込んでゴソゴソやっていた。 すると家人が突然私をキッチンに呼び、おかしいのよ、トイレも浴室も壁に貼る白いタイルがショールームで選んだクリーム色のかかったものじゃないと今日の職人が言うので良く見てみたら白すぎて、ショールームであのとき見比べてこれじゃない方を選んだのにこれどうなってるのかしらね、トイレの壁に白タイルを貼ってしまってそのタイルの目地の色も角に形を整えるために定規のように貼り付ける樹脂の色も注文した色に合わせているから、そうするとこのタイルだけが白すぎておかしい、とケースがいうのよ、注文書、契約書を見てもはっきりしないし、トイレの方はこれでも別に構わないけれど、風呂場はこの真っ白な色じゃ冬場はちょっと寒々し過ぎるのでクリーム色の入ったものをあのとき選んだのだから、これは何かの間違いなのよ、だからこれから業者のショールームに出かけてどうなってるのか交渉してきてくれない、私はこれから仕事にでかけなきゃいけないからこれはあなたの仕事よ、と私の寝耳に水のようなことをいう。

家人は芸大出で造形を専門とするけれど塗料、材料に関しても専門的な教育を受けていて我々素人とは違ってこういうことには専門的な知識がある上自分の好み、配色、デザインなどに至ってはかなり厳しい。 私の眠気眼には大分前に選んだときに見た二枚の同じく微かに違う白いタイルをつき合わされれば白の中でも微かな違いで寒暖の差があるということは分かるもののごみごみした家の中で今それ一つだけ電球の下でそれを見てもはっきりわからず、職人と家人が明らかに違うという白と微かにクリームがかかった樹脂の差も外光の下でもよっぽど厳しく見ないと私の目でははっきり選んだものとは違うとはいえないようなのだ。

それではここにいる職人が業者に電話を入れて事情を聞けばいいものを職人もその水周り専門業者の会社と契約をして請負で来ているからこういうときは施主が直接交渉するのが筋でそうすると物事もはっきりするからとこのタイルを一枚、パッケージの型番やいろいろな符号が書かれたダンボールの欠片を渡されて何ページもある契約書と一緒に掴んで車で事業所まで走った。 これで後の作業がつかえてしまう。

いやな気分がした。 大体が見積書、契約書に記載のこまごました記号、品番などが沢山リストにしてあるなかで家人に任せて放っておいた自分の眼にはほとんど区別もなく細かな符号がたくさんついているこれと我々が注文したものを色チャートもなくそのコードが何かもはっきり確定できるものがないのにどうして違うといって交渉できるのか。 極端な話、向こうにこれが貴方達が選んだものです、ここここに記載があってちゃんとサインも頂いているので、、、、、といわれたらひとたまりもない。 既に貼り付けられたタイルをいまから剥がしてやり直しとなると時間とコストに響いて双方にとっていいことは何もない。 だからここは階下のトイレの壁はそのままとして白タイルの表面積が多い、今はまだ貼られておらず前の瓦礫のままの上階浴場の分のタイルの取替え、を納得させる線で話すことだと中途半端に腹を括ってショールームのドアを開けた。

事情を話すと私が持っていったタイル、注文書とダンボールの符号をを一瞥して、ああ、これは納入業者の間違いです、そちらが注文なさったのはこの純白ではなく「壊れた白」と呼んでいる白に微かに高脂肪のクリームが混ざったような色合いで念のためむこうのサンプルでお見せしましょう、と前に見たコーナーのところにつれていかれ手元のタイルと本来は家のごみごみした廊下につみあげられているはずの物を比べるとたしかに微かに温かみのあるものだ。 その男はすぐ厚いファイルをくって電話で納入業者に間違いを正し、自分達の家の注文、つまりこの会社の注文が間違っていなかったことを相手方に確認して明日の午後までには本来の注文品が届くように手配した。 この間5分。

あっけなく手配が済んだには多少の事情があるのだという。 こういうことはたまにあって訂正してもちゃんとした品物が届くには早くて2、3日、普通は一週間、ちょっと遅れると3,4週間だったのがこの金融危機以来徐々に注文が減り在庫が動かずこういう手配をするとすぐ反応があるそうで、つまり仕事がない、ということなのだそうだ。 この広いショールームにしても客はだれもいない。 だからこの3ヶ月ほどでうちに来ているような、この業者が抱えている職人の数は去年のいまごろなら80人ぐらいだったのがいまでは30人ちょっとまでに減っているとのこと、だから、お宅で働いている職人はどれも腕のいい連中ばかりですよ、とこの前ケースに聞いたことをこの男は繰り返した。 

この間、こちらには侘びの一言もないのは当然のこと、こちらもそれを期待はしていない。 理屈は、納入業者がこの業者に謝罪すべきことで、細かい杓子定規のようなことをいえばこの業者がこれによってこうむる職人にたいする数日分の労賃支払い損をカバーすべく納入業者に契約不履行の訴訟を起こしても不思議でもないのだ。 我が家のタイルのような蚤の耳糞よりも小さいビジネスでは取り替えればそれで済んでこちらにはどうということもないのだがこの会社としてはこの金融危機のあおりをまともに蒙った不況の中、細かいとはいえまだ労賃に重なる損を蒙っているのだ。

一瞥だけで品番を割り出し、すぐさま分厚いファイルをくり、顧客に確認のため実際に品物のところまで連れて行き違いを説明し取って返って電話にむかい仕入れ元に連絡して相手方の失点を自分の得点にする余裕の対応をみせる男の手際よさ、なれたプロの仕事に感心していると、そういうことですのでと男はこっちににっこり笑って出口のドアに向かいホテルのドアマンよろしく私を送り出し人気のない広いショールームに戻りいくつものカタログ、書類ファイルで一日を過ごすのだった。

家に戻るとトイレの壁をほぼ済ませた男のほかに上階の浴室を担当する別のタイル職人が来ておりその男は、タイルが違っているそうで今日は貼り付け作業が始められないから準備の仕事だけして明日タイルが着くとして明日の午後から始めると言い3時前に帰って行った。 これでまた二日は遅れる。 初めは3週間でできるといっていたものが既にその3週間も過ぎこの分では4週間も超えて5週間に突入するのではないかとの危惧も湧いてくるが、もうここまで来たのだから半年かかっても私はどうということはない。 けれど家人のやきもきの程度はそばで見ていても熱気の上昇加減が半端ではなくなってきているのがわかるし、それにこの何週間か家のようすが変わってしまい様子が分からずあちこちウロウロと歩き回って居心地の悪そうな飼い猫にも伝染しないよう願って私は屋根裏の自室に引き篭る。