ほよほよさんぽみちNEW

いつでも君のこと好きだったよ

反対側をみせてくれる友人

2016-07-15 22:31:39 | 日記

 私の古い友人Aさんは物静かな人です。

 

 感情的にならず、どちらかというといつも聞き役で、かといってじっと集中して話を聞いているふうでもなく、かなり低い位置からふわっと浮き上がるように反論を始めます。

 

 このあいだも、私がしばらく話すのきいたあと、

 

 Aさん「でもねぇ、まっすぐがいつもいいってわけじゃないのよ、水たまりが閉じるのをだまって待つ、ということも必要なときもあるんじゃない?」

 

 それで、はたと気がついたりします。 もしかして、私は乾きかけた水たまりにまたホースで水を注いでいたんじゃないのか、ということに。

 

 会社のこと、親のこと、私が気になっていることをつぎつぎに話しているあいだ、彼女は眼鏡を拭いてみたり、窓から差す光に手をかざしてネイルを確かめたり、桃を剥いたりします。 それは私の話がつまらないというふうではなく。 ときどき天井を見たりしながら少し考えたり笑ったりしたあと、

 

 「ねえ、ちょっとこれきれいでしょう?」 といって、細い小さな万華鏡を覗かせてくれるのです。 

 

 わぁ、きれいだねぇと喜んで覗いていると、ちいさな折り畳み式の台をどこかから持って来て、「これに載ったら、反対側が見えるよ」 と反対側の風景をみることを勧めます。 万華鏡から折り畳み式の台への転換があまりにも自然なので、私はそれじゃあちょっと載ってみようか、という気になって恐る恐る見たくなかった風景を目にすることになるのでした。

 

 反対側の風景はそれはそれで成立していて、いままで見えていなかったものがつぎつぎにはっきりとした輪郭をもって現れます。 どれだけ自分に想像する力が欠けていたかということが明確になって、新しい眼鏡をかけたような気がしました。 そして台をおりたとき、

 

 「桃、食べよう」 と、きれいな器にいれて桃を出してくれました。

 

 そして、『ぶたぶたくんのおかいもの』のぶたぶたくんとかあこちゃんのように、「ばあい」と言って別れたあと、心のなかがさっぱりとして、お話や歌を作ろう、という気持ちになるのでした。

 

 

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ハンカチ

2016-07-15 00:07:41 | 日記

 いまさらですが、最近の就職というのはこんなに難しいものなんだなと、息子を見ていて思うこのごろです。

 

 エントリーシートを何枚も書いて、履歴書が必要なところには郵送し、何回も写真を撮りに行き、説明会に出向き、集団面接を経て、個人面接までいって、メール1本でお断りされ。 という繰り返しを何度かやっていると、しんどいだろうなぁとそばで見ていて思うのですが、本人は面接会場や説明会へ行ったついでに電車の模型のお店へ行ったりして、夜は模型を作ったりしています。

 

 「10月には決まってるやろ」 という、なんの根拠もない自信を持っているところが図太いというのか、呑気というのか、ゆとり教育の結果なのかわかりませんが、親としては微妙です。

 

 面接の日に夜遅くなったりすると、思い詰めて帰りの電車に飛び込んだりしていないかとか、心配するのですが、夫は

 

 「あれほど飛び込むとダイヤが乱れるから、って電車のことを気にしてるくらいやからそういう心配はないやろう」と言います。 まぁそうだけど。

 

 そして、夜中に帰ってきて面接の帰りに買い物へ行って、オケへ寄って先輩の家で飲んでいた、という報告をされると、なんだ、連絡くらいしてよ、と思うのですが、まぁいちいち親に行動を連絡するのも面倒だというのもわかります。

 

 成人したあとに親ができることって、なんにもないんだなぁとつくづく思います。

 

 「ハンカチ、忘れないようにね」といって朝にハンカチを手渡すことくらいです。

 

 帰って来るまで心配だし、終電を乗り過ごして新田辺まで迎えに行ったりするのかなと思うと、寝ないで待っていたりするのですが。 そして、自力で夜中に帰ってきたところで小言を言おうとしたら、

 「ああ、ハンカチ役だったわ、きょうは汗いっぱいかいたし」

 

 と、先手を取られると、がみがみいう気も失せて、 「そうでしょ。あしたもちゃんと持っていきや、おやすみ」 となってしまうのです。 

 

 そして、お昼休みにライフにいくとついつい新しいハンカチを買ってしまいます。

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