きのうは思ったより早く仕事が片付いたので、「月と六百円」の会に行きました。
第三回目は上田三四二『湧井』です。ふたりの発表者がそれぞれカテゴリーに分けたり、歌以外の書物からの抜粋を紹介してくれたりして、全体が見えてきてよかったです。
とにかく歌の数が多くて(800首くらいある)、一冊を1回読むのがやっとで、好きな歌を3首選ぶのが精いっぱいだったので、やはり、発表者が深いところから読んだり解説してくださったりすると、苦手だなと思っていた歌もよく思えてきました。
病気をしてから、時間の流れ方や風景の見え方が違ってきているというのは明らかで、1年を積み重ねていくということの思いが、去年の今ごろに見た花をまた今年も見ているという歌になっていくようです。(そういう歌が多いのです) 参加者は14人くらいでしたが、選んできた3首が重ならなかったのは歌数の多いせいではなく、どこをどうとっても整っていて、破たんがなく、そこが退屈だとい意見もありましたが、若い人たちが三四二の自然詠を気に入って「こういう歌が作りたい」と発言していたのが印象的でした。
私が選んだ3首は
・録音機まはりつつゐて死期ちかきわが笑ひごゑも巻き収めゆく
・ヘアピース夜の灯のもとにしづまれば妻を思ひ出のごとくおもふよ
・屈したるひと日のこころもぎはなすごとく机より立ちあがりたり
あまり三四二らしくないかもしれませんが(自然詠が1首も入っていない)、ときどき詠われる「人の気配」のある歌に立ち止まりました。 3首目は一番好きな歌で、「もぎはなすごとく」机より立ち上がるという強い意志がぺしゃんこの気持ちをひっぱりあげています。
私も落ち込んだときは強い歌をがんばって作って、そこから「もぎはなす」ように立ち上がりたいと思いました。