自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

人々が希望を持って生きることに、科学と経済学はいかに貢献できるか

2016-06-01 18:14:24 | 自然と人為

 敗戦を境に価値観が大きく変わった日本、高木仁三郎さんはより確かなものを求め、科学者を目指すようになりました。人間の顔を持った科学を求めて闘った62年の生涯でした。
人々が希望を持って生きることに、科学はいかに貢献できるか
そのことを抜きに、人間の顔を持った科学を語ることはできない。


高木仁三郎(NHK あの人に会いたい)

「(原子力を)我々の制御するようなもににして、平和目的とか、民事(民政)目的に使えたらどれだけ世の中が発展するだろうと、ちょうどアイゼンハワーの平和のための原子力「アトムズ・フォー・ピース」という演説がその頃ですから、時代的思想としては、その中に私自身もはいっていたということはあると思います。」

当時、夢のエネルギーと言われていた原子力、その開発の最前線「日本原子力事業」に入社 し、放射性物資の研究に携わりました。

「小さな原子炉ですけど縁まで行って、バケツで直接原子炉の炉水をくんできて計るわけです。考えてみれば、かなり乱暴な話で原子炉の上に行って、自分で こうやって水をくんでいて落ちたらどうなんだというようなことが、放射能を怖がっているみたいな人間はバカみたいに思えてくるんです。典型的な専門家になって行く。」

「計ってみると、炉水の中に放射能が、いろんな放射能が非常に多いんです。『なんでこんなに出てくるのかな』というふうにそれをレポートにまとめて原子力関係の学会で発表するという機会がいろいろあるんですけどそれをわりと積極的に推し進めようとすると、妙にやっぱり会社の中で嫌がられる。会社はこれからアメリカの原子炉を導入して、日本で商売を始めようという会社ですから、汚染なんていう方向のことが、いろいろ会社の中で見えてきては困ると。」


 「これは実際に原発が生み出す放射能の環境で働いている労働者たちの被ばくの状況なんですけど、発電所の社員の被ばくはたったのこれだけで、95パーセントは下請け、孫請け ひ孫請け、そういう悲惨な現実、被ばくの押し付け、そういう下に原発は運転されている。」

専門分野に閉じこもらず、現代社会に向き合う科学者を目指しました。

「40年ぐらい科学者をやってきて、今どう思うかというと確かに知識は増えたんです。しかしそれと同時に、そのまわりに未知の世界それもどうやら真っ白な未知の世界でなくて、暗黒を含めたような未知の世界が、もっと大きな未知の世界が広がっている。ということも同時に分かってきたんです。高木学校というものをやりたいというのはこっち側をやる。ちゃんとやる人たちを、つくりたいんです。そうでないと本当に人類の未来は奪われてしまうんじゃないか。」

人々が希望を持って生きることに、経済学はいかに貢献できるか
そのことを抜きに、人間の顔を持った経済学を語ることはできない。

「現実は経済学者にとって『ある特殊なケース』にすぎない」とした宇沢弘文も人間の顔を持った偉大な学者であった。しかし人類にとって偉大な学者が、その時代を支配する人々には尊敬されないことが多い。
 現場で起こっていることよりも経済学の理論を重視した専門家は、「富裕層中心に富を得て、それが次第に低所得者層にも拡がっていく」という「トリクルダウン」を基本にした「アベノミクス」という政策を支持している。これは明らかな格差拡大政策であるが、このことを政府の御用学者が明言したNHKの番組「グローバルディベートWISDOM」(2014年1月25日)があることは、地方をどう創生するのか~アベノミクスと日本経済の未来①で紹介した。

 これまで規模拡大によるコストダウンは農業を衰退させてきた。さらに、これに国際競争力のある農業の産業化で「地方創生」を目指すのであろうが、農業は産業ではなく生活である。日本の地方は資源に恵まれているが、政府の考え方と高齢化と少子化により里山を荒らしている。農業は「コストゼロ」を目標とし、生産(農協)と消費(生協)を地域でつないで、「地方再生」を目指すべきだと考える。




アベノミクスと賃金

司会A「まずはダボス会議に出席している浜田さんに伺いたい。安倍首相はダボス会議で日本経済の復活をアピールしたわけですが、海外の受け止めはどうですか?」

浜田1「私も会場にいましたが、皆の言うことでは大変に力のこもった講演であった。特に第3の矢、構造改革に対して日本政府の決意がちゃんとあるんだよということを示されたということで、海外のメディアからも非常に高い評価を得られていると思います。ついその総理の施政方針演説等では、お役所の人の書いた文書というか非常に固苦しい形の講演が多いんですが、この場合は聴衆の心に迫る講演であったということです。」 アベノミクスと賃金 動画(1分3秒~2分5秒)

司会B「ちなみに浜田さんはこれまでのアベノミクスの成果をどう見ていらっしゃいますか。」

浜田2「これは半ば冗談でもありますが、金融政策は当然効くことである訳ですが、それが思った以上に効いている。そういう意味でA+であろう。財政政策は財政を使うということは財政長期収支にマイナスにも効くから、まあ、AではなくてB。そして問題は第3の矢になりますけれども、これは政府のできることは今限られていて、一番なすべきことは規制改革である。しかし、規制があるので喜んでいるのはどちらかと言えば官僚である。そういうお役人に自分が利益を得ているようなことを止めさせることは、侍に鎧を脱げと言うことでなかなか厳しいということで私はEとつける。そうするとA,B,Eとなってアベノミクスがまた戻ってくるというのが私の評価です。」 アベノミクスと賃金 動画(2分48秒~4分05秒)



司会A「(藻谷さんの考えは、賃上げは大切だが、現場はそうはなっていない。また、国債発行して景気対策をするより、)財政再建、規律(医療・社会福祉システム)をしっかりすることが先で、(安心社会になれば)消費が回復するということですね。浜田さんはこの藻谷さんの考えをどう思われるのでしょうか。」

浜田3「よく現実は違うんだ。学者の考えていることは空論だと強く言われるが、逆に言うと経済学200年以上の歴史を全く無視して自分の考え方を述べておられる、という点で、経済は分かっているかもしれないが、経済学を分からないでしゃべっておられると思うぐらいおかしい。 アベノミクスと財政問題 動画(4分1秒~4分28秒)


「"富や成功"への欲望、”資本”は自由自在に移動する、”消費”が資本主義のエンジンだ。私たちはいつからこんな世界を生きているのだろう?」と問いかけるNHK番組「欲望の資本主義~ルールが変わる時~で、シカゴ大学時代(1965年頃)に故宇沢弘文先生が恩師であったスティグリッツは「貧困層から富裕層へと富みは吸い上げられ、富裕層は貧困層に比べお金を使わない。これが全体の需要を押し下げ成長にブレーキをかケている。」 欲望の資本主義~ルールが変わる時(1) (4分52秒~5分5秒) と指摘している。「アベノミクス」が日本経済を停滞させているのではないか。
 「スティグリッツ教授は消費税問題には触れず、『(アベノミクスの間違いを認めて)アベノミクスを停止し、経済政策を180度転換することによって、次のG7サミットで主導権を取るべきである』と安倍首相と官邸の側近たちに強く進言したのです。」 ブログ「伊勢志摩サミットが、一足飛びに安倍政権に晩秋をもたらす」より引用






欲望の資本主義~ルールが変わる時(2)(動画)

 現在の日本の政治経済は目先の経済成長を求めすぎ、地域の自然と生活を大切にする安定した経済を見失っている。それは経済学の父とされるアダムスミスの「自己的な利益の追求が経済を発達させる」という『国富論』を資本主義の成長ルールと考え、その前提にあった「人は他者によって生かされる」という『道徳感情論』を無視しているからだと思う。

 人間は幼児期が長いことで人間となりえた。文明の発達により地域のコミュニティと子供の世界が壊れて行くことは、人間を益々文明の家畜化として行くことだろう。日本の高度成長期前の貧しいが幸せであった時代を知っている世代としては、将来の家畜化された人間社会は想像したくない。我々の子供時代から成人するまでの経験を次世代にも残したいと思うのは単なるノスタルジアに過ぎないのであろうか。

参考:
【アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界】レポート
[書評]アダム・スミス 『道徳感情論』と『国富論』の世界(堂目卓生)

初稿 2016.6.1 追加更新 2016.6.4




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