自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

一人一人の「自由」と「助け合う社会」に責任を持つ国が必要

2016-04-23 20:20:37 | 自然と人為

 『人民の記憶がね、私にとっては国民の記憶より重大なんだ。』 アメリカとの戦争が始まり、日本の国を見捨てることができなかった鶴見俊輔は負けると知りながらアメリカから帰国し、国民として戦争に参加した。幸運にも人を殺せという命令は彼には下らななかったが、そのたまたまの幸運で人を殺さなくて済んだ戦争の記憶が、その後の彼の生き方に原点を与えた。国民として戦争に参加させられたが、国から独立した人民として戦争を憎んだ記憶を大切にしたのだと思う。

 ここまで明確に「人民」という言葉を、我々は普通には使えない。しかし、「国民主権」とは思いながら「国民」という言葉には、「国家主権」という意味も含まれ、主権が国民ではなく国家にあるような気にさせられ、それを煽るバカな政治家が今も多い。

<知の巨人たち>第2回 ひとびとの哲学を見つめて~鶴見俊輔と「思想の科学」
 <知の巨人たち> 第2回 鶴見俊輔と「思想の科学」(動画)前編 後編
                          
 敗戦の意味を考える~人民の記憶、貝殻の人間(戦争推進への協力)(動画)
 『日本で戦争に巻き込まれない理性を保っている人がいる。戦争に反対する立場をもっているということで精一杯、丸山眞男、武谷三男、渡部慧、アメリカでの付き合いのあった都留重人、武田清子、それに姉の鶴見和子と私の7人、それが「思想の科学」のオリジンだね。』
                          
 転向 自分の芯になるものは何か 普通の人が哲学者になる(動画)
 『転向の事実を明らかに認め、その道筋を明らかに認めるとき、転向体験はわれらにとっての生きた遺産となる。』
                          
 安保闘争 人民の記憶が動いた 声なき声(動画)
 『大東亜戦争の時の大臣(岸信介)がもう一遍でてきて、総理大臣になって強硬採決をやった時、人民の記憶が一部活性化して百万人の抗議デモが起こった。人民の記憶が動いたんだ。』
                          
 右翼の殺人 中央公論社:「思想の科学」天皇制特集号の廃棄 べ平連(動画)
 『小田実のビラ「八百屋さんも花屋さんも」という普通の人間にある自分も殺されたくないし、人を殺したくもない。』から「声なき声の会」の延長線上に「べ平連」を立ち上げ。
                          
 ベ平連 脱走兵 法より守るべきこと 保育園をつくる 花岡事件(動画)
 脱走兵を支援する鶴見さんの脳裏には戦時中の重い記憶があった。『捕虜にした民間人を殺せという命令が、隣の部屋の軍属に下った。運が私を助けた。自分に命令が下っていたら、自分がどうしたかっていうのは戦中から戦争が終わってからも自分の問題になっているんだ。』
                          
 花岡事件~事実を残す・絶望と伝言 人々の哲学 「思想の科学」休刊 
 『真理は間違いから逆算される。こういう間違いがある、こういう間違いをした。今もこういう間違いはある。その間違いの道をゆっくり確認すれば、それががある方向を示している。それが真理の方向だ。消極的能力ではあるけど、それが未来だと思いますね。』

 EUで実施されている国家間の交流の自由(シェンゲン圏)の根拠として、人々が国から解放された自由な生活を求めるノマド(遊牧民族=定住しない人々)になる未来をジャック・アタリは予言している。
 参考:BS1スペシャル「ジャック・アタリが語る 混迷ヨーロッパはどうなるのか?」
    「民主主義には長期的視点と移動の自由が不可欠」(動画)
    「定住者とノマド」の長い戦い(動画)
    「ノマドと自己中心的な利他主義」(動画)
    「日本と中国の真の平和を追求し、高齢化社会から抜け出るべきだ」(動画)

 今や、国の枠を外れた自由な生き方が求められている時代だ。ただ、人は一人では生きられない。一人一人の「自由」と共に「助け合う社会」が必要である。「助け合う社会」に責任を持つのが国の仕事だ。「自由」で「便利」な社会になるのはいいが、イクメンどころか核家族化で女性にも子育ての習慣と知識がなくなってきている。子育て、教育、病気や障害、老後の世話は「助け合う」仕事として重要な国の責任だ。国民の命を守るため、熊本震災のような災害時には自衛隊を緊急に総動員して救助するのも国の大きな仕事だ。

 何を考えようが人皆自由ではあるが、政治は皆を代表して国を動かすこと。自分の考えで国民を支配することではない。それは、戦時中に国民という名の人民を戦争に駆り立てたのと同じ精神構造であり、政治構造だ。
 一人一人の「自由」と「助け合う国」に関心も責任も感じない者は政治家を去れ。お金が好きなら商売に励め。相手を倒したいならボクシングをやれ。もっとも商売もスポーツも自己の鍛錬がなければ、名誉ある成功は手に入らないだろうが。危ないことだが2代、3代と続いて政治家が家業となった日本では、「他者への愛」を知らない議員が増えている。 
 
 明後日、(4月25日の)月曜日に揺れが続く熊本地震を「激甚災害指定」に閣議決定するのだそうだ。遅すぎる! アメリカ軍のオスプレイによる救助依頼よりも、災害救助、人命救助のためなら自衛隊を急いで総動員するのは国として当然の責任だ。この時、現場での指揮権は首相でもなく、防衛大臣でもなく、現場に責任を持つ県知事にすべきだ。「安倍首相が被災者より真っ先に「わが軍」自衛隊を激励!」だそうだが、この人、尋常ではない! 震災対応に真剣ではなく、被害者よりも自分の部下を激励するのが先だなんて。
 国民を救うより自己満足が先で、「自民党“震災政治利用”の本音を憲法学者・小林節が暴露!」に示されているように、選挙対策やら何やらで、自分たちに有利に働くようにしか考えない安倍政権の超利己的、ケツの穴が小さくて卑し過ぎる、しかも支配欲丸出しの言動は国民として許せない。

 人間の人間に対する差別や支配や暴力が人類の平和と幸せを奪っている。 「アベノミクス」の目指すトリクルダウン(動画あり)の様に平気で人民を「差別」し、自衛隊を仮想敵国に対する抑止力として「暴力」に使い、国民に戦えという「支配」の発想は、時代の先を見ていない超利己的な言動だ。

 安倍政権の言論に対する支配も恐ろしい。報道の自由度が72位に安倍政権で低下した。日本の表現の自由の状況を調査した、国連人権理事会のデビッド・ケイさんが来日したが、菅官房長官や高市総務大臣に会うことは出来なかった。「NHK会長が国民に不安を与えるな」と指示して地震や原発等の真実を報道しないのも、報道の自由度が民主党政権下の2010年には11位、自民党政権下の2015年に61位、2016年には72位に低下したのも、国民の判断の自由を奪うものであり許せない。

 あまりりにも利己的で支配欲旺盛な今の政権に、国民は何故怒らないのか!? いつまで誤魔化され続けるのか? ここでもう一度“欧州の頭脳”ジャック・アタリが日本に期待している「利他主義」の話を紹介しておきたい。

 『日本人が持つ「利他主義」のイデオロギーが、今後グローバルにおいて大きなリーダーシップになっていくと思う。これは、私が予言した世界秩序の第五段階における「超民主主義」のイデオロギーと同じもの。日本の学者や政治家がもっとそうしたイデオロギーを発信し、日本の社会が利他主義のプロパガンダになってほしいと願っている』

 日本の社会が持っていると期待されている「利他主義」は、一人一人の「自由」を守るだけでなく、「助け合う社会」・国にとっても基本となる資質だ。しかも、動物は基本的には「利己的」(動画)であり、「利他的な人間」となるためには訓練が必要(動画)なことも紹介してきた。
 このブログ「利己的であるから利他的にもなれる~他者尊重のための訓練」で紹介した動物行動学者の故日高敏隆先生の言葉をもう一度引用させていただく。

 『動物はいろんな生き方をしている。例えば、アゲハチョウは紫外線で見ている。人間とは見えている世界が違う。人間の主観だけを客観だと思うことは間違い。人間は自然を支配しているが、自然も反作用で反応する。支配の仕方を考えないといけない。人間がどういう動物か真剣に考える時期ではないか、そうしないといつまでも環境破壊が続くし、戦争も紛争も何時になっても絶えないのではないか。』

初稿 2016.4.23 更新 2016.4.24

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