早朝、錆色の雲が 穏やかになびいている。
引き縄は船の両端の竿で、疑似餌をつけて縄を引く漁法です。
父と乗り込む、「船ぇ、だすでぇ 釣れるとええなぁ」
鰹漁には、水温が重要で港の水温は18℃くらい、
これが黒潮に混ざると22℃、ぐっと高くなる。
昨日までに父は手作りの疑似餌をあれやこれや工夫をこらして拵えていた。
船をだしてから一時間。
黒潮にぶつかり、漁を始める。
「準備しとかへんと・・・」 あわてて疑似餌の段取りをたてる
仕掛けを流して30分、あたりがくる。
「おぉ!おぉ!あれ!」
『こりゃぁ』と引き揚げると、鰹ではなく、色鮮やかな「シイラ」。このあたりではよくとれる。
黒潮に沿って、出羽島の手前、網代岬を西へ漁場を移動して、更に狙う。
父 「何か かかっとるで!」 揚がったのは「宗田鰹」 宗田節になる魚だ。
「宗田ガツオやけんど、鰹ちゃうで」
徳島のここらへんでは「平宗田」のことを「すま」、「丸宗田」のことを「ずぼ」とよぶ。
その日は(ずぼ)が多くとれたが(すま)もそこそこ(しいら)や(ごまさば)も釣れ
私の遊びのために船をだしてくれた父も笑顔だった。
脂ののった平宗田(すま)は、刺身・たたきで最高に旨い。
丸宗田(ずぼ)の血合いは、生食すると体に合わない、と言って食べない人がおります。
血合いが多く、人によっては下痢などをする場合があるのです。
要は、身の真ん中の赤い所これが血合い。
血合いをとれば、刺身でいけますが、でも食べられるところが少しになるんですね。
だからお勧めは、刺身を食べて、あとは血合いたっぷりの煮魚です。
でも、丸宗田を嫌わないでほしいんです。
何より正面から見た顔がつぶらな瞳で可愛いィんだ。
丸宗田の血には、アレルゲンであるヒスタミンが含まれていますよ。
初夏から夏、丸宗田鰹は田舎では茹でて炙ったものに醤油や「ひしお」
と呼ばれる味噌や醤油につけて良く食卓に上りました。
母は丸宗田鰹(ずぼ)をようさん茹でて炙り、干して保存しておき、
削ってだしに使ったりしていましたね。