伝統的な日本の木版画の特徴の一つは摺りの技にあると思う。それは浮世絵を描く絵師の原画を忠実に木版画で表現する摺師の技を引き継ぐ、現代の巧みな職人技を実際に観ることで実感できる。
旭川博物館の企画で、現代の摺師である三田村 努(みたむら つとむ)さんの技を披露してくれた。
多色摺りでは、同じ位置に紙を置くため、どの版にも同じ印を彫り残す「見当」に紙を合わせて慎重に作業する三田村さん。
力強くランダムにバレンで摺こむ姿は職人そのもの。若干の解説を加えながら1時間半連続の摺りを披露してくれた。
書籍での文章表現では要領がつかめないので、実演でつかめることがことが多いので有り難いことだ。
摺りの実演を見るのは初めてではなく、見よう見まねで日本の伝統を引き継ぎたいとの思いから何とか摺りの技法を試みているが、満足な摺りは出来ないままなので、せっかくの好機に知識も技法ももっと質問したかった。
残念なことに、より効果的な実演のための運営の不手際が気になった。
一般に総称としての浮世絵というのは浮世絵木版画のことで、肉筆の浮世絵を木版画にして世に広めたわけで、せっかくの機会だから、博物館企画する側はもっと勉強して「浮世絵」を理解しておいてほしかった。
始まる時刻の設定はあったが、終わりの時間設定がなく、質問途中に打ち切られたにもかかわらず、他の質問を幾つも受け付けてしまう進行のまずさと不手際は、納得できなかった。
職人の摺り師は話す職人では無いのに、大きな声で解説することを要求するのは無理で無茶なことでだ。
質問を拒否された理由は不明であり、他に幾つもの質問があったので、不快感が残った。