チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

お薦めの1冊:『アレクサンドリアのクレメンス ストロマテイス(綴織)Ⅰ』/『同Ⅱ』

2018年12月31日 18時25分55秒 | 紹介
『アレクサンドリアのクレメンス ストロマテイス(綴織)Ⅰ』/『同Ⅱ』

(キリスト教教父著作集4/I-II、秋山学訳、教文館、2018年1月/5月、各8300円+税)



新約聖書を構成する27の文書は、紀元1世紀半ばから2世紀半ばにかけて書かれましたが、とくに1世紀終わりから2世紀に書かれた新約後期文書を学ぶ上では、ほぼ同時期に書かれた、いわゆる使徒教父文書や、古代教父の文書を併せて参照することが欠かせません。今回翻訳された、アレクサンドリアのクレメンス『ストロマテイス(綴織)』は、そんなわけで、新約聖書をよりていねいに読んでいく際にも大きな助けとなる重要な文書です。その翻訳と詳しい解説が出たことは、古代キリスト教史を学ぶ人はもちろん、新約聖書を学ぶ人(そして語る人)にとっても吉報と言えるでしょう。

アレクサンドリアのクレメンスは、オリゲネスと並んで「アレクサンドリア学派」を代表する教父です(†215年)。エジプトは、新約聖書には言及されていませんが(使徒言行録はもっぱら、小アジアからローマへと至る「北回り」のキリスト教伝播を描いています)、キリスト教がかなり早くから根づき、発展した場所でした。クレメンス自身は、アテナイの生まれですが、キリスト教徒になった後に、学問を志してアレクサンドリアに居を定め、キリスト教思想の発展に大きく寄与した人物としてよく知られています。

訳者解説(445頁以下)に記されているように、クレメンスは、ギリシア哲学者や詩人の著作から様々に引用しつつ、ギリシア文化の中にすでにキリスト教の真理が輝いていたのだということを論証しようとしています。ロゴス=キリストという考えを中心とするキリスト教信仰の正しさを示し、ギリシア人をキリスト教へと導こうとするクレメンスの姿勢は、キリスト教の宣教を考える上で重要な示唆を与えてくれるはずです(クレメンスは、ブッダにも言及していることでも知られています。第1巻15.71.6)。

 
全8巻から成る本書は、邦訳では上下2冊に分けて出版されました。各巻8300円なので、少々値は張りますが、宣教の意味は何なのか、クレメンスを読みながらじっくりと考えてみたいと思います。
(「広島聖文舎便り」2018年8月号掲載)

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