鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

猿猴図鍔 古正阿弥 Koshoami Tsuba

2014-08-02 | 鍔の歴史
猿猴図鍔 古正阿弥


猿猴図鍔 古正阿弥

 古正阿弥の特徴のある鍔。鉄地肉彫で表し、猿の顔のみ素銅地象嵌としている。正阿弥派には後に広く隆盛する布目象嵌の手法が採られている例が多いのだが、このような作もある。水に映った月を取ろうとする猿猴。櫃穴を三日月に仕立てており、頗る良い図柄であり、鉄味も力強い。顔の部分の処理は素銅地の象嵌。塑像を嵌め込み、周囲の鉄地を寄せている様子が良く分る。
正阿弥派の作は、この流派が全国に広がり後に多くの鍔を遺したため流れとして整理がつかなくなったことと、図柄や作風の幅が広いため、無銘の作品を安易に正阿弥派と極めてしまったことにより、評価が低くなっている。ところが本作のように金山や尾張などにも負けない地鉄で、意匠も面白いものがあり、楽しめる要素が充満している鍔も多いのである。低く評価されているという点では、安価にて良質の地鉄が楽しめるのだから、有益でもある。値段が高くならない程度に古正阿弥派の評価が上がることを願っている。古正阿弥の美点を見出してほしい。75.5ミリ。