鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

自在鉤図目貫 古金工 Kokinko Menuki

2014-08-21 | 鍔の歴史
自在鉤図目貫 古金工




自在鉤図目貫 古金工

 秋草に虫を描いた古美濃の目貫を裏側から観察したように、目貫では、柄に巻き込む場合には裏面が見えなくなることから、裏面に残されている工作の痕跡を隠すということがないことから、特に裏の要素の観察を重要視している。もちろん観察できる部分であれば全面が鑑賞の要素である。裏側からの打ち出しの様子とその後の処理の様子など、また、際端の様子、その端部の様子など、ごくごく小さな金具だが鑑賞の要点は多いのである。この目貫は、極端に薄手に打ち出し、中央辺りがふっくらと盛り上がっているように高彫とし、所々に抜け穴を施して図像が線構成によるもののように表現している。時代の上がる作では唐草文図が特徴を示しているように、この目貫も図柄は自在鉤という器物だが構成は唐草文風に曲線を組み合わせたもの。裏面を観察すれば、薄手、際端を絞って図柄がくっきりと立っているかのように表現している様子が良く分る。
 このような作例を鑑賞していると、現代金工が目貫を製作しない理由が良く分る。鏨を切り込む際、ちょっと下ちからの入れ具合で下地が変形してしまう恐れがある。鍔ほどの厚い地金であっても、文の打ち込みにおいては下地の変形を考慮しなければならないのだから、目貫の工作を考えると、恐ろしいほどの技術が想像される。古作をこのように比較的健全な状態で楽しめるのだから、有難いことだと思う。