鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

三疋獅子図目貫 後藤光乗 Kojo-Goto Menuki

2012-06-06 | 鍔の歴史
三疋獅子図目貫  (鍔の歴史)


三疋獅子図目貫 無銘後藤光乗

 群れる獅子も迫力がある。獅子の数が増えれば、それぞれの身体の大きさが小さくなるのは当然だが、このように群れた様子は魅力だ。獅子の顔付きなどは特に厳しく、このような点からも初代に継ぐ作者であるとの評価がされたものと思われる。特に小振りに引き締まった構図の中から滲み出る凄みが見どころ。括れた下腹部、その胴体の表面、強く張った四肢、それらの筋肉の動きまで伝わってくるように感じられる。

剣巻龍図目貫 後藤光乗 Kojo-Goto Menuki

2012-06-05 | 鍔の歴史
剣巻龍図目貫 (鍔の歴史)


剣巻龍図目貫 無銘後藤光乗

 不動明王と龍の対決を描いたのが剣巻龍、あるいは倶利迦羅と呼ばれるこの図。剣が不動明王の化身体で、これを呑み込まんとする龍、即ち悪の象徴。刀身彫刻でも最も多いのがこの図。小柄は長手の図柄として、剣を呑みこむために大きく口を開いた場面が描かれるのだが、目貫の場合には、幾重にも剣を巻き締める姿が採られる。いずれも迫力に満ち満ちている。

龍虎図小柄 後藤光乗 Kojo-Goto Kozuka

2012-06-04 | 鍔の歴史
龍虎図小柄 (鐔の歴史)



龍虎図小柄 銘 紋光乗光孝(花押)

 光乗の製作した古作の紋を取り、新たな赤銅魚子地に据えた、金無垢地の迫力ある作。龍の首の辺りには、代の上がる龍に間々見られる宝珠が描かれている。顔、角、手足などの一部に三角鏨による点描が施されている。切りつけるような鏨の使い方が後藤の特徴だが、この鏨も後藤の作に間々見られるもの。虎の体の文様は赤銅平象嵌。

獏図目貫 後藤光乗 Kojo-Goto Menuki

2012-06-02 | 鍔の歴史
獏図目貫 (鍔の歴史)



獏図目貫 無銘後藤光乗

 霊獣の一、獏を題に得た作。赤銅地容彫金色絵。金地と赤銅地の芋継表現になる作品と色合いの違いを比較されたい。一般的な金工作品は赤銅地容彫、あるいは高彫に金銀の色絵が多い。だが、色絵とは言え現代の鍍金のような極薄の金の皮膜ではなく、薄い金の板を溶着させ、その表面を仕上げる手法であり、鍍金に比較して金の層はかなり厚い。時に表面観察では色絵も象嵌もうっとりも芋継も判らない場合がある。
四代光乗は享禄二(1529)年に生まれ、元和六(1620)年に92歳で没している。活躍期はまさに桃山文化の最中。奇抜な具足を身に着け、豪壮で華麗な陣羽織という風体の武士が用いた拵もまた華やか。その金具もまた金を効果的に用いた華やかな作風であった。

牛馬図目貫 後藤光乗 Kojo-Goto Menuki

2012-06-01 | 鍔の歴史
牛馬図目貫 (鍔の歴史)



牛馬図目貫 無銘後藤光乗

 これも金と赤銅の芋継による手法。図柄としては二疋牛や二疋馬など阿吽の相を示した図が間々見られるが、牛に馬の取り合わせは面白い。馬の躍動的な構成に対して、一般的に牛はどっしりとして何ものにも動じない姿として描かれることが多いのだが、この目貫では牛も大きく首を曲げ、背を動かし天を睨んでいるようで、強い動感が生み出されている。