鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

許由巣父図鐔 奈良 Tsuba

2011-09-09 | 鍔の歴史
許由巣父図鐔 (鐔の歴史)


許由巣父図鐔 無銘奈良

 金家の流れを汲む作例とは言い難いが、金家を意識していることは明白。確かに図柄や構成は随分雰囲気が違っているも、鉄地高彫象嵌の風合いは金家と同じように古画の趣を求めた結果と言えよう。
 金家の場合は巣父だけであったが、ここでは、自らが皇帝に推薦されたということを聞いた耳が汚らわしいとして耳を洗った許由、その下流の水が汚らわしいとして牛に与えなかったという巣父の関係性を示している。いずれも清廉さを重んじて山中に生きた隠者であり、武家が採るべき道の一つと捉えられたものであろう、装剣具には間々みられる図である。
鉄地高彫に金銀赤銅の象嵌、正阿弥系の布目象嵌などを多用している手法で、金家のような共鉄象嵌はない。絵画表現、高彫の手法、微妙な彫口などの進歩の様子も、作位は別として金家と比較して鑑賞されたい。78ミリ。