鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

周遊図鐔 金家 Kaneie Tsuba

2011-09-05 | 鍔の歴史
周遊図鐔 (鍔の歴史)


周遊図鐔 山城國伏見住金家

 水辺の景色は絵になる。表裏とも、山陰に塔の見え隠れする風景を背景としている。主題は川下り、あるいは湖水に舟遊びする人物。鉄地を拳形の変り形に造り込み、耳を打返鋤残耳に仕上げ、地には鎚の痕跡を鮮明に残し、高彫象嵌を駆使しているところは良くみられる手である。人物の顔はわずか3ミリ程度だが、金家の人物描写にままみられる少し頬のこけた引き締まった顔つきなど表情もわかる。山の様子は、これまで見た作品に比較して少し険しい。
 独釣図、舟下り図、水辺の風物も絵になるようで、波に突き出した岩、芦原、干網、蛇籠もままみられる。高彫に毛彫、波は毛彫や鋤彫もあり、下草や芦などには象嵌を加えた例もある。その微妙な彫際に漂う情感を楽しみたい。80.5ミリ。