鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

葡萄図鐔 埋忠派 Umetada Tsuba

2010-07-28 | 
葡萄図鐔 埋忠派


葡萄図鐔 無銘埋忠派

 桃山時代の埋忠明壽(うめただみょうじゅ)に代表される、埋忠派の平象嵌(ひらぞうがん)の手法が活かされている作。埋忠明壽は京都の文様文化を装剣金工上に覚醒させた言わば芸術家で、作風は、真鍮、赤銅、素銅などの地金に平象嵌の手法で植物図や事物図を文様化して表現するを得意とし、この時代に急速に高まった本阿弥光悦や俵屋宗達などに通じる琳派の美観を展開した金工である。
 この鐔は、その明壽の流れを汲む埋忠派の、江戸時代中頃の作。素銅あるいは山銅といった渋い色調を呈する地金を用い、表面には微細な石目地を施し、金銀の平象嵌が生えるよう工夫している。この鐔では片切彫と点象嵌を加え、画面に平象嵌では演出できない量感を表わしている。一般に平象嵌は極めて平面的であり、即ち立体感や奥行き感よりもむしろ、平面が生み出す新たな美観を追究したもの。

葡萄図鐔 無銘埋忠派