鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

秋草に虫図鐔 光仲

2010-02-27 | 
秋草に虫図鐔 光仲

 
秋草に虫図鐔 銘 美濃住光仲

 耳を金覆輪に仕上げ、魚子を打ち施して装飾性を高めた、江戸時代中頃の美濃彫様式の鐔の例。作者は、在銘作品が比較的多く遺されている光仲(みつなか)である。古典的な美濃彫様式である深彫を基本とし、図柄構成も古典的。虫の描写や配置などに江戸時代中頃の様子が窺え、色使いにも江戸時代の特色が窺いとれよう。大輪の菊の花、桔梗の花、撫子の花などを観察してほしい。
 さて、お気づきになられた方もあろうと思う。筆者自身もこの写真試料を探している際に気づいたのだが、前回紹介した秋草花車図鐔と比較鑑賞されたい。秋草花車図鐔では植物の種類は少ないのだが、萩の花と葉、菊の花などの構成、彫口、鏨使いが極めて似ているのである。同一作者とは断定できなくとも、極めて近い存在であったと推測されよう。