鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

秋草に兎図目貫 古美濃

2010-01-26 | 目貫
菊花図縁 古金工・秋草に兎図目貫 古美濃



① 菊花図縁 古金工


② 秋草に兎図目貫 古美濃

 もう一つ、時代の上がる無名金工の作品を紹介する。Photo①は室町時代後期あるいは戦国時代と推測される菊花図縁で、造り込みは、古金工や古美濃の目貫で紹介したような薄手の打ち出し高彫として、表面に鏨を加えて文様を際立たせているが、図柄は美濃様式の極端な高彫と深彫を組み合わせたものではなく、古金工に分類されるような薄肉の仕立て。打ち出した鏨の痕跡が分かるように撮影したので、裏行も確認してほしい。言うなれば目貫の裏面を見るような風合い。
 Photo②は古美濃極めの秋草に兎図目貫。山銅(やまがね)地をふっくらと肉高く打ち出し、表からは打ち込みを鋭く立体的な文様とし、主題の際を打ち貫いて文様を際立たせている。表面に施されている金の色絵は、使用により擦れて剥がれ、切り込んだ鏨の中に残る状態だが、むしろこの風合いが好まれ、江戸時代には江戸埋忠(えどうめただ)派などの金工が、色絵作品の表面を擦って古風な味わいとする擦り剥がし(すりへがし)の技法を用いたほどである。