鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

寒山指月図鐔 山城國伏見住金家

2010-01-14 | 
寒山指月図鐔 山城國伏見住金家               


 
寒山指月図鐔 銘 山城國伏見住金家
 過去に、海野勝作の寒山拾得図鐔を紹介したが、同じ題意を探り、月を指し示す寒山の姿のみを捉え、拾得を留守模様とした、桃山時代の名工金家(かねいえ)の鐔。
 鉄地を二ツ木瓜形に造り込み、耳を打ち返して抑揚変化を付け、個性的な高彫と鉄地高彫象嵌、金銀象嵌、特徴的な毛彫の手法を組み合わせた技法。過去に紹介した金家の作品と同様に地面に施された鎚の痕跡が最大の魅力。この地相は、時には気の動きを感じさせ、時には古紙のようにも見え、指先に触れてのみ知ることのできる乾いた質感とは別世界。裏面は、金家の作品に特徴的な、同時代の京都近郊の風景を採ったもの。桂川であろうか、遠く山陰に堂塔がみえ、釣り糸を垂れる漁師の姿が印象的である。