鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

秋草図目貫 古美濃

2010-01-22 | 目貫
秋草図目貫 古美濃・古金工




① 秋草図目貫 古美濃




② 秋草図目貫 古美濃




③ 丁子図目貫 古金工




④ 秋草図目貫 美濃



⑤ 鹿図目貫 無銘大月


 作品には必ず裏側がある。柄に巻き込まれた目貫の裏側を確認することはできないが、柄から外されて作品そのものが鑑賞の対象とされているものでは、目貫の裏側も重要な鑑賞ポイントとなる。
 Photo①②は古美濃、Photo③は古金工、Photo④は美濃と極められている作例である。比較するため、Photo⑤として、秋草図ではないが江戸時代後期の大月派の鹿図目貫を例示する。古美濃あるいは古金工と極められた目貫の端や抜け穴部分の切り口を確認すると、極めて薄く仕立てられていることが分かる。また、際端(目貫の端の立ち上がり部分)は、いずれも内側に圧し返したように仕立てられ、外部からの確認ではふっくらと量感あるように感じられる。その違いは、④の江戸前期の美濃極めの目貫や⑤の江戸後期の大月派の目貫を比較すると良く理解できる。特に大月派の目貫は肉厚く仕立てられている。これが、時代の上がる目貫と鎌倉時代や南北朝時代の鎧に装着されている飾金具が似ている点である。この技法は、裏面から打ち出して表面に量感を持たせ、表面の所々に打ち込みを加えて立体感のある図柄を作り出し、抜け穴も表から打ち抜くように仕上げている。裏側に残されている鎚の痕跡や抜け穴の切り口も鑑賞したい。