鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

氷室使い図小柄 加納夏雄

2009-11-19 | 小柄
氷室使い図小柄 加納夏雄                  


  
氷室使い図小柄 於東都神田川辺作夏雄
 今の季節に合わないが、夏雄の技法を知る上で興味深い作品、初夏の風俗、あるいは風物詩としても知られる氷室の使い図小柄を紹介する。
 今でこそ冷蔵庫で簡単に氷が手に入るのだが、その昔には夏に氷を利用するために、真冬に切り出した氷の塊を洞穴などで保存していた。それが氷室である。氷室の記事は日本書紀にあり、奈良時代にはすでに、真夏に大量の氷を用いていたらしいということが分かる遺物が発見されている。
 桃山時代以降には加賀前田家から信長や秀吉、また江戸時代には徳川家に氷が献上されていたという。
 このような、氷を利用することを古くは神事としており、氷を運ぶ者を氷室の使いと称していた。
 氷室の使いを題に得たこの小柄は、表は赤銅石目地に高彫、金銀の色絵。裏は金地に片切彫赤銅素銅朧銀の平象嵌。裏面は鞘に当って擦れるために平面とせざるを
得ず、多くの小柄は単に鑢が施してあるのみだが、この小柄では、表に用いても良いほどの確かな構成と精巧な彫刻で描き表わし、表裏を連続させている。