鴨河原図鐔 細野惣左衛門政守
鴨河原図鐔 細野惣左衛門政守
静嘉堂所蔵の『四条河原図屏風』のような、江戸時代前期の京都の河川敷に見られる風景が描かれた鐔。作者は京都金工、細野惣左衛門政守(まさもり)。先に紹介した長義の三条大橋辺りの風景図と重なり合う、江戸時代の風俗を知る上でも貴重な作品。
表の右上は四条大橋であろう。扇子を手に欄干にもたれながら河原の様子を眺めている人物が描かれている。川辺では田楽らしきものを焼いている店があり、床几に腰をかけた客はそれを眺めているのであろうか、料理が運ばれてくるのを待ちわびているようにも感じられる。
川中にまで張り出した床几に描かれているのは、横座りの客と酌をする遊女で、床下を流れる水がいかにも涼しげであり、川遊びとも言える風情が漂っている。
川瀬を渉っているのは天秤棒を担いだ、恐らく立ち食いの物売りで、如何なる食べ物であろうか、立ち食いの歴史を見る思いがする。左上には射的に興じる男と、その矢女が描かれており、灯がともされているところをみると、夕刻の風景か、夕涼みの一景色といったところである。
裏面もこれに連なる風景。上部には万歳の掛け合いの様子が示されており、立ち止まってこれを見る通りすがりの人物の表情にも笑みが窺いとれる。右下は茶屋であろうか床几に座る男と寝そべる男。両腕を広げて身を動かし何やら説明する姿が、活きいきと描き出されている。
隣りの床几には、料理を運んで来た女を招く様子が描かれているが、網笠を被る者がおり、また、外には編笠が掛けられている様子もあり、如何なる職の人物であろうか、この点にも興味が広がる。
地金は朧銀地(おぼろぎんじ)で、毛彫に金銀赤銅素銅の平象嵌(ひらぞうがん)。この手法は後に長常などが完成させてゆくのである。
鴨河原図鐔 細野惣左衛門政守
静嘉堂所蔵の『四条河原図屏風』のような、江戸時代前期の京都の河川敷に見られる風景が描かれた鐔。作者は京都金工、細野惣左衛門政守(まさもり)。先に紹介した長義の三条大橋辺りの風景図と重なり合う、江戸時代の風俗を知る上でも貴重な作品。
表の右上は四条大橋であろう。扇子を手に欄干にもたれながら河原の様子を眺めている人物が描かれている。川辺では田楽らしきものを焼いている店があり、床几に腰をかけた客はそれを眺めているのであろうか、料理が運ばれてくるのを待ちわびているようにも感じられる。
川中にまで張り出した床几に描かれているのは、横座りの客と酌をする遊女で、床下を流れる水がいかにも涼しげであり、川遊びとも言える風情が漂っている。
川瀬を渉っているのは天秤棒を担いだ、恐らく立ち食いの物売りで、如何なる食べ物であろうか、立ち食いの歴史を見る思いがする。左上には射的に興じる男と、その矢女が描かれており、灯がともされているところをみると、夕刻の風景か、夕涼みの一景色といったところである。
裏面もこれに連なる風景。上部には万歳の掛け合いの様子が示されており、立ち止まってこれを見る通りすがりの人物の表情にも笑みが窺いとれる。右下は茶屋であろうか床几に座る男と寝そべる男。両腕を広げて身を動かし何やら説明する姿が、活きいきと描き出されている。
隣りの床几には、料理を運んで来た女を招く様子が描かれているが、網笠を被る者がおり、また、外には編笠が掛けられている様子もあり、如何なる職の人物であろうか、この点にも興味が広がる。
地金は朧銀地(おぼろぎんじ)で、毛彫に金銀赤銅素銅の平象嵌(ひらぞうがん)。この手法は後に長常などが完成させてゆくのである。