とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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沈まぬ太陽 アフリカ編

2006年03月12日 17時54分43秒 | 書評
昨年、羽田からのスカイマークエアラインズを予約したら日本航空とのコードシェア便で、搭乗する機材がJALだったので、ビビったことがある。
「え、JALですか.......」
と落胆していると、スカイマークエアラインズのチェックインカウンターのお姉さんも慣れてらっしゃるのかニコッと笑って「ハイ」とだけ答えた。

かように今飛行機に乗る時に日本航空だと「ドキッ」とするような状況が続いている。
昨年の連続トラブルに続き、今年は社内でクーデターが起こったのだから乗らないに越したことはないエアラインだと言えるだろう。

この危険な航空会社の体質を知るのに良い書籍はないものかと探していたら、ありました。
山崎豊子著「沈まぬ太陽」。

「白い巨塔」や「大地の子」の著者として知られる山崎豊子が他の作品と同じように緻密な取材(この人も新聞記者出身の作家)で集めた真実をもとに、架空の航空会社「国民航空NAL」を舞台にその会社の特殊な体質を見事に描いた大作だ。

「国民航空」
日本のフラッグエアライナーとして描かれているこの国民航空は、もちろん日本航空をモデルにした架空会社だ。
今のところ、前半の「アフリカ編 上下」を読み終わったところだが、この国民航空の半官半民という体質が、完全民営化となった今日もこの会社(国民航空=日本航空)の体質に色濃くしみ込んでおり、昨今のトラブルや人事的事件に繋がっているのではないかと思われるのだ。

一般に官が主導する事業は信頼がおけると思いがちだが、とんでもない。
政治家や官僚が事業に関与すると財政面はメチャクチャになり、そのうえ責任所在もはっきりしなくなり、人事面でも衝突が発生する。
それが建築事業やサービス関連事業であれば人命が失われるということも少ないだろうが、こと航空事業となるとそうはいかなくなる。
その人事政策の異常さ、数々の利権を伴う国からの経営介入。
総ての面に於て、民間では考えられない事柄が展開されている。

考えてみれば国鉄も国営時代は多額の債務を抱え、経営者である官はその負債に対してまったく責任を取らなかった。
今も巨額の借金は宙に浮いている。
昨年のJR西日本が起こした事故は、国鉄時代に作られた企業文化の名残が生み出した悲劇だったという側面も見られるようだ。
もう一例を挙げると阪神大震災を口実に、黒字経営だった阪神高速道路公団は官が経営に入り込んできたその年から赤字に転落。
未だに再起はできていない。

アフリカ編を読み終わり、次は御巣鷹山編。

物語がどう展開していくのか、目が離せない。

~「沈まぬ太陽 アフリカ編」山崎豊子著 新潮文庫~


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