とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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自費出版の罠

2006年05月30日 22時58分34秒 | 社会
地下鉄に乗っていると、某出版社の自費出版の広告がやたらと目につく。

「原稿募集」
で始まるこの広告のコピーには、原稿を送りさえすれば即作家デビューが飾れるような文言が並ぶ。

「文学賞に応募して優秀作品は賞金ゲットで出版できる」
「世間に自分の著作を発表できるチャンス」
「原稿をその出版社に送ると必ず読んで感想を送ってくれる」

などということがこと誠しやかに書かれているのだ。

ただ面白いのは広告の中には「自費出版」という文字が絶対に書かれていないことだ。

実際に応募してみると必ず「共同出版しませんか」というセールスともアドバイスとも受取れるダイレクトメールが貼付され、その感想とやらが送られてくるのだ。

先々月、自費出版大手の碧天社(東京神田)が倒産。
金を支払ったのに出版してもらえない被害者が数多く出て、初めて自費出版ビジネスのカラクリがマスコミを通じて公にされた。

かくいう私も自費出版でもやってみようと、倒産した出版社を含めて複数の出版社に原稿を送ったことがある。
で、出てくる金額が驚くなかれ、どれもこれも似たり寄ったり。
しかも「共同出版」を薦めてくる文面までそっくりで、「自費出版」とはまったく謳われていなかった。
謳われていなかった、というよりも「『共同出版』は『自費出版』ではありません」と断言する始末。
なんでも共同出版とは製作費や印刷費を著者が負担し、宣伝費や流通費を出版社が負担する制度だということだったが、疑わしかった。
私の場合、A5版サイズ250ページ、発行部数1000部で著者の負担金額は150万円だった。

150万円といえば、私の愛車ホンダシビック・フェリオと似たり寄ったりの価格である。
大衆車といえど自動車が買えるぐらいの金額を著者が負担しなければならないシステムには大きな疑問を感じた。

ちなみに自費出版を営業の主軸とする出版社の書籍を書店で見かけることはほとんどない。
出版社が書店と契約して設置している専用コーナーに見られるだけだ。
これも読者(書店の客)ではなく、各社の顧客である著者に対するポーズなのかも知れない。

実際、自分で印刷データを作成し(今どきPCやMACで簡単に作れる)印刷所に持ち込めば、印刷代と用紙代だけで済んでしまうので、かかっても予算は30~40万円もあれば出来てしまう。
ISBNコードが欲しければ5万円ほどの追加になるだけ。そして毎年、維持費を払うだけ。
あと流通されるかどうかは本人の努力と取り次ぎ会社の考え方次第。

で、これが共同出版だと残りの約100万円はどうなるのかというと、出版社の懐に納まるというわけだ。

無名の素人作品を読んでくれるような酔狂な一般人はあまりいない。
多額の現金をかけて他人に頼んで出版してもらうくらいなら、ホームページかブログを自分で作って世界中に公開すれば、ほとんどタダで済む。
それでも「物」で残したい人は、ゼロックスの上質紙にコピーしてキンコーズで製本してもらうのが手っ取り早い。

「原稿募集」の広告は素人作家を「自費出版ビジネス」に誘い込むトラップと考えながら読んで見ると、なかなか味のあるものだ。


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2 コメント

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Unknown (さいころ)
2006-06-10 05:53:53
自費出版の出版社の倒産について調べていたところ偶然たどりつきました。



150万も請求されるんですね…。それで本屋に置かれることもないなんてひどいですね。



自費出版の中で大手出版社が取り上げもしないテーマを扱ったとても良い作品などあったりするととても感動しますが…。



難しいですね。
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おっしゃるとおり (監督@管理人)
2006-06-10 21:36:58
さいころさん、いらっしゃいませ。



おっしゃるとおり、自費出版の書物には良いものが少なくないと思います。

大学の先生方の著作などはほとんど自費出版ではないでしょうか。

その中から名著も生まれてくるわけです。

でも商業ベースの出版はなかなか難しいようで、そういう出版社の事情もわかります。

でも「自費出版」を「共同出版」「共催出版」と言葉を変えて、さも「あなたはの本は『売れるかも知れませんよ』」と言うやりかたは。、いかがかと思うのであります。



ま、大学教授は自費出版でも「このテキストを買わなかったら、単位はあげないよ~」という言い回しで、研究室の限定販売とし、無理やり買わすことができますが、一般人はそうもいきませんからね。

関係ない話ですが。

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