とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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ミャンマー・レポート2007(7)

2007年08月26日 13時47分37秒 | ミャンマー旅行記・集
写真:ヤンゴン中心部「サクラタワー」の最上階から撮影

一カ月ほどブランクができてしまいましたがミャンマーレポートの続きです。
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一昨日(8/23)、ミャンマーの前首都ヤンゴンで小規模のデモ行進があったことを各メディアはそこそこの大きさで報道した。
スーチー女史率いるNLDのメンバーも参加した今回のデモ行進は軍事政権に対する民主化要求のデモではなく物価高騰を何とかしろというデモだった。

実際ミャンマーの物価上昇はかなりのもので、このGWに訪れた時、バス代などは私が初めてこの国を訪れた2003年と比較すると倍になっていたのだ。
倍といっても日本人の私にはドトールコーヒー一杯分より遥かに安いのだが、平均所得が日本人の20~100分の1程度のミャンマーの人々にとってはただ事ではない。

物価の上昇は昨年公務員の給与が引き上げられたのがきっかけとなって始まった。

「公務員の月給は6ドルなんです」

初めてミャンマーを訪れた時にガイドさんの説明にビックリしたのを今も思い出す。
生活に必要な米や豆類などは現物支給されるし官舎も提供されるということなので、6ドルでもやっていけないことはない。
ことはないが、やはり現金収入が乏しいので現金収入を考える。それが悪しき賄賂や恐喝に繋がってしまうのだ。
空港などで時々目に低級役人による理不尽な外国人旅行客やそのガイドさんたちへの現金要求がそれなのだ。

そんな低給与の公務員の給料が月額12ドルかなんかに引き上げられた。

「首都をネピドー(旧名ピンマナ)に移したからなんです。あんなところに行きたいって思う人なんかいませんよ。」

というのは昨年末の話。
公務員の不平を逸らすための昇給で物価も吊られて上昇するのもわからないこともない。
食品が上がり、衣類が上がり、そして折からの石油価格の世界的な上昇にともなって燃料費が高騰した。

ヤンゴン市内を運行するバス会社は多数あり、その車両の多くが日本からの中古車であることは度々このブログで紹介している。
例えばヤンゴン国際空港の空港内のバスも日本の中古。
車内には「つぎとまります」の表示も「降車ボタン」も「広告」もそのまま残されており、何も知らない日本人旅行客がここへやって来ると、まず最初に驚く場所にもなっている。
もちろん市内は当然、地方へ行っても日本の中古バスが普通に走っていて、ヤンゴン市内には「南海バス」「銀バス」「京都市営交通」「神戸市営交通」「東急バス」などのが縦横無尽に走り回っている。
遺跡の街、バガンへ行った時には「志摩スペイン村へ」の看板を付けた元近鉄バスが走っていたので「なんじゃこりゃ?」と思ったことを昨日のことのように記憶している。

鉄道は環状線が走っているだけ。
地下鉄もモノレールもないヤンゴン市内の一番の足がこのバスなのだが、このバスの燃料は配給制。
一日に配給される燃料の量は政府によって定められている。
当然のことながらそんな配給燃料ですべてを賄えるわけが無く、とどのつまりは営業をするためにバス会社は「闇燃料」に走ることになる。
闇燃料は路上や町外れで販売されていて、18リットル缶や三角形のポリ製オイル漏斗で現金取引。
使う通貨はチャットも使うがドルも使う。
外国人客たる私ができることと言えば、その闇燃料取引の場所にいても、見て見ぬふりをしてあげること。
公定燃料が値上げされると、それ以上に闇燃料が値上げされるのは当然の成り行きだ。

燃料値上げが物価高に繋がり市民の生活を圧迫する。
結局、最近は政府との打開点を探し始めているというスーチー女史率いるNLDも身近な「経済問題」を放置しておくことはできなかった、というのが今回のデモになったのだろう。

ところで、燃料費高騰に苦しむミャンマーだが、ここが豊富な天然資源に恵まれた国であることを私たち日本人はあまり知らない。
知らない証拠がいつものその脳天気さに現れている。
「ミャンマーの人権問題は米英と歩調を合わせなければ」
なんてのがその代表的な意見だ。
ホントは人権なんかどうでも良いというのが米英の本音なのに、日本人はバカ(正直)なので気付かない。

この国の地底には石油、鉄鋼、ウラン、銅などの希少金属、ルビー、サファイアといった宝石類が掘り出されるのを今か今かと待っている。
数種類の鉱物を除きほとんどの天然資源を本来であれば自国内ですべて賄える国、それがミャンマー。
その金になる天然資源がことごとく未開発となれば利に聡くて腹黒い米英が放っておくはずはない。
これら二つの国がその利権を手に入れるためなら戦争も厭わないことはイラク戦争を見てもイスラエル擁護の体質を見てもよく分る。
ここミャンマーでもスーチー女史を利用しての人権問題は「民衆を煽り立て、あわよくば軍事政権を倒して親英親米の政権を作ろうよ」というのが真相だ。

インド洋の東の端アンダマン海。そのマレー半島沿いに延びるミャンマー南部の島々の地下に巨大な油田が眠ると言われている。
数年前にはドイツの企業が調査団を滞在させていた。
余談だがここは1987年に北朝鮮工作員が仕掛けた爆弾が炸裂して大韓航空機が墜落した場所でもある。
で、ドイツならば良いのかどうかは知らないが、日本政府がミャンマーへ投資することを快く思わない米中はアムネスティだとか国連だとかを駆使して、日本の対緬支援を妨害しているというのが国際政治のパワーバランスだ。
なんせ日本は歴史的にも親緬だし、ミャンマーは世界三大親日国の一つ。
そんな二つが意気投合したらますます東南アジアでの日本の影響が強くなって「好ましくない」と言いたいところなのだろう。

この米英の資源獲得戦略に最近登場したのが、ご存知無法国家の中国で、こっちは米英に遠慮することなくミャンマーに経済援助に軍事援助。
道路を作り、首都を移させ、国境を越えてどんどん中国製品を買わせる。
目的は昔の援蒋ルートの経済動脈化と資源の乏しい自国のエネルギー源確保。
あわよくばミャンマーの国土もちょこっといただければベストかな、と言いたい所か。

ということで、米英という敵に加えて中国という腹黒い友好(に見えるだけの)国が物価高騰の背後にいることをマスメディアは同時に報道すべきだろう。

なお、ミャンマーでのデモ行進は違法だが、今回拘束されたのは数人で、よくよく考えてみるとNLDも公に活動している。
これを中国の北京で法輪功あたりがデモ行進したらどうなるか。
考えてみると、なかなか面白いと思うのは私だけか。


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