タイのバンコクにバッポンという名前の歓楽街がある。
シーロム通りとスリウォン通りという大通りに挟まれた横丁(タイではソイと呼ぶ)で、近くには日本人向けのバーやクラブが密集することで有名なタニヤがあり、夜になれば主に日本人観光客や白人観光客などで賑わう。
大阪で言うと阪急東通商店街と船場のビジネス街が一体になったような場所だ。
毎夜、このバッポンにはナイトバザールが出現する。
夕方五時頃になると無数の露店が姿を現し、著作権法違反のDVDやCD,偽物ブランド品のバッグや財布、時計などが店頭に並ぶ。
価格は一見安い。
もちろんそれは「本物」と比べての話で、ここにあるのは偽物が多いので安いのは当然だ。
Tシャツや普通の商品も多く売られていて観光客には買いやすい場所ではある。
そして、この無数に並ぶ屋台の両側では裸の女の子がダンスをしているゴーゴーバーが盛んに客引きを演じているのだ。
ここバッポンやタニヤで、売り子や客引きたちが客に対して投げ掛けてくる共通の言葉がある。
「安いよ、見るだけタダ」
「ちょっと、社長、ここきて、ちょっとだけ、見るだけタダ」
と、相手が日本人だと目星を付けると日本語で話しかけてくるのだ。
私はいつも買う気のないまま屋台を冷やかして歩くだけなので、とても楽しいし、変なものを掴まされて悔しいおもいもしない。
もし本当にここで売られているTシャツや雑貨が欲しければ、バスや船で三十分か一時間ほど走り、郊外の「市場」で買うと、半分以下の価格で手に入れることができるのだ。
今回の北海道旅行で最後に、観光客相手に朝早くから店を開けている市場を訪れた。
ここは新鮮な北海道の海産物を安価で買うことができるという謳い文句で観光客を集めているのだ。
私もここで、安い価格の毛ガニやタラバガニ、帆立貝やウニなどを買うことができれば、是非土産に買って帰ろうと考えていた。
そこで夜も明けきらぬ早朝にホテルを出て、市場に向かった。
市場の店頭では生け簀に入れられた生きたカニや茹でて赤くなったカニが他の海産物と一緒に並べられていた。
売り子のオバサン、オジサン、オニイサンたちは声を大きく張り上げて客を呼んでいる。
なかなかいい雰囲気だ。
ある商店の前を通りがかった時、店のオヤジが私に声を掛けてきた。
「オニイサン。どっからきたの?」
「え、ん、大阪から」
「へ~え、大阪から。遠くからきてくれたんだね。」
「遠くでもないけどね」
「ねえ、見て行かない。安くするからさ。『見るだけタダ。ちょっと来てよ』」
私は北の雪国で、南国タイのマーケットと同じ台詞を聞くことになるとは夢にも思わなかった。
五千キロも離れた二つの市場。それぞれの売り子の台詞が完全に同じなので可笑しくなって、私は笑ってしまったのだ。
笑ったのが「OK」の意味だと受取ったのかオヤジは私を店に引き込み、カニについての講義を始めた。
そして価格はやはりバッポンと同じで安くなかった。
「見るだけタダ」
という言葉は世界共通。「観光用マーケット」のエスペラント語なのかもしれない。
シーロム通りとスリウォン通りという大通りに挟まれた横丁(タイではソイと呼ぶ)で、近くには日本人向けのバーやクラブが密集することで有名なタニヤがあり、夜になれば主に日本人観光客や白人観光客などで賑わう。
大阪で言うと阪急東通商店街と船場のビジネス街が一体になったような場所だ。
毎夜、このバッポンにはナイトバザールが出現する。
夕方五時頃になると無数の露店が姿を現し、著作権法違反のDVDやCD,偽物ブランド品のバッグや財布、時計などが店頭に並ぶ。
価格は一見安い。
もちろんそれは「本物」と比べての話で、ここにあるのは偽物が多いので安いのは当然だ。
Tシャツや普通の商品も多く売られていて観光客には買いやすい場所ではある。
そして、この無数に並ぶ屋台の両側では裸の女の子がダンスをしているゴーゴーバーが盛んに客引きを演じているのだ。
ここバッポンやタニヤで、売り子や客引きたちが客に対して投げ掛けてくる共通の言葉がある。
「安いよ、見るだけタダ」
「ちょっと、社長、ここきて、ちょっとだけ、見るだけタダ」
と、相手が日本人だと目星を付けると日本語で話しかけてくるのだ。
私はいつも買う気のないまま屋台を冷やかして歩くだけなので、とても楽しいし、変なものを掴まされて悔しいおもいもしない。
もし本当にここで売られているTシャツや雑貨が欲しければ、バスや船で三十分か一時間ほど走り、郊外の「市場」で買うと、半分以下の価格で手に入れることができるのだ。
今回の北海道旅行で最後に、観光客相手に朝早くから店を開けている市場を訪れた。
ここは新鮮な北海道の海産物を安価で買うことができるという謳い文句で観光客を集めているのだ。
私もここで、安い価格の毛ガニやタラバガニ、帆立貝やウニなどを買うことができれば、是非土産に買って帰ろうと考えていた。
そこで夜も明けきらぬ早朝にホテルを出て、市場に向かった。
市場の店頭では生け簀に入れられた生きたカニや茹でて赤くなったカニが他の海産物と一緒に並べられていた。
売り子のオバサン、オジサン、オニイサンたちは声を大きく張り上げて客を呼んでいる。
なかなかいい雰囲気だ。
ある商店の前を通りがかった時、店のオヤジが私に声を掛けてきた。
「オニイサン。どっからきたの?」
「え、ん、大阪から」
「へ~え、大阪から。遠くからきてくれたんだね。」
「遠くでもないけどね」
「ねえ、見て行かない。安くするからさ。『見るだけタダ。ちょっと来てよ』」
私は北の雪国で、南国タイのマーケットと同じ台詞を聞くことになるとは夢にも思わなかった。
五千キロも離れた二つの市場。それぞれの売り子の台詞が完全に同じなので可笑しくなって、私は笑ってしまったのだ。
笑ったのが「OK」の意味だと受取ったのかオヤジは私を店に引き込み、カニについての講義を始めた。
そして価格はやはりバッポンと同じで安くなかった。
「見るだけタダ」
という言葉は世界共通。「観光用マーケット」のエスペラント語なのかもしれない。
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