人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

本間ひろむ著「日本のヴァイオリニスト ~ 弦楽器奏者の現在・過去・未来」を読む ~ イタリアの名器の起源、スズキ・メソード、タングルウッドの奇跡など / 新日本フィル「4月度定期演奏会」振り替え

2024年03月02日 00時30分29秒 | 日記

2日(土)。新日本フィルについては、来シーズンから「クラシックへの扉シリーズ」に加えて「サントリーホール・シリーズ」の定期会員になりましたが、第1回目の4月19日(金)19時からのコンサートが東京シティ・フィルの定期演奏会と重なってしまったので、新日本フィルの方を翌日の20日(土)14時からの「トリフォニー・シリーズ」公演に振り替えました 20日は18時から東京交響楽団の定期演奏会があるのでハシゴになります そこで、東響を21日(日)の川崎定期演奏会に振り替えようと思ったのですが、その日は同じ時間帯にトリフォニーホール(小)でDSCH弦楽四重奏団のショスタコーヴィチ公演があるので振り替えることが出来ないことが分かりました 腰痛悪化の回避のためにはハシゴは避けたいところですが、仕方ありません

 

     

    

ということで、わが家に来てから今日で3335日目を迎え、ロシアのプーチン大統領は29日、内政や外交の基本方針を示す上下両院に対する年次教書演説で、「ロシアの戦略核戦力は臨戦態勢にある」と、ウクライナを軍事支援する米欧を牽制し、「ウクライナのナチスを根絶し、特別軍事作戦の任務を達成する」と宣言し、従来通りの主張を繰り返した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ナチスってプーチンのことだろうが! 被害者はロシアじゃなくてウクライナだぞ‼

 

         

 

昨日の夕食は、隔週金曜日のローテにより「鶏の唐揚げ」にしました 唐揚げはいつものように外カリカリ内ジューシーに仕上がり、とても美味しかったです

 

     

 

         

 

本間ひろむ著「日本のヴァイオリニスト ~ 弦楽器奏者の現在・過去・未来」(光文社新書)を読み終わりました 本間ひろむは1962年東京都生まれ。批評家。大阪芸術大学芸術学部文芸学科中退。著書に「ユダヤ人とクラシック音楽」「アルゲリッチとポリーニ」「日本のピアニスト」「ピアニストの名盤」ほか多数

 

     

 

著者は「まえがき」の中で次のように書いています

「ピアノはその美しいキーを指で叩くだけできれいな音が出る しかし、ヴァイオリンはそうはいかない 初心者が弾くとギーコギーコと雑音にしか聞こえない ヴァイオリンはギターのようにフレットがあるわけではないので、音程をキープするためには正確な位置を指で押さえる必要がある その草木も生えていない石ころだらけの場所からスタートして、美しい音を出し、音程をキープし、豊かな音楽を創り出すまでどれだけの時間がかかるのだろう ピアニストにはベートーヴェンやモーツアルト、ショパンなど18世紀 ~19世紀の大作曲家たちの楽曲があり、それらをいかに弾くかがピアニストに与えられたテーマである    ヴァイオリニストはどうか?ー18世紀に製作されたイタリアン・オールド、そうストラディヴァリウスやグァルネリ・デル・ジェスをいかに演奏するかがテーマなのである     こんな歴史的な名器を手に入れた弦楽奏者が日本にも大勢いる 本書は、草木も生えていない石ころだらけの場所からスタートして、誰にも撃たれることもなく、大きな音楽家になったヴァイオリニスト、ヴィオリスト、チェリストの物語だ

本書は次の各章から構成されています

まえがき

序 章「日本のヴァイオリン王・鈴木政吉」

第1章「2人のアウトサイダー・・・幸田延と鈴木鎮一」

第2章「小野アンナ門下の天才少女たち」

第3章「スズキ・メソードと弦の桐朋」

第4章「ソ連を選ぶか、アメリカへ飛ぶか」

第5章「ストラディヴァリウスか、グァルネリ・デル・ジェスか」

第6章「就職先はオーケストラ・・・弦楽器奏者たちの選択」

第7章「クラシックの枠を超えて・・・新世代の弦楽器奏者たち」

付 録(日本のヴァイオリニスト・ディスコグラフィ30)

あとがき

著者は「序章」でヴァイオリンの名器の歴史について解説しています

「16世紀後半には既にヴァイオリンは完成をみていた。現存する最古のヴァイオリンはアンドレア・アマティ(1505年、クレモナ生まれ)が1560年頃に製作した ex"Kurtz" で、ニューヨークのメトロポリタン美術館が所有している アンドレアの2人の息子、アントニオとジローラモもヴァイオリン職人で、ジローラモの息子ニコロ・アマティ(1596年、クレモナ生まれ)こそアマティの名を後世に伝える名器を製作したヴァイオリン職人である そのアマティの弟子にはアントニオ・ストラディヴァリ(1644年、クレモナ生まれ)とアンドレア・グァルネリ(1626年、クレモナ生まれ)がいた。このアントニオこそ世に名高い『ストラディヴァリウス』の主な製作者である 一方、アンドレア・グァルネリの孫バルトロメオ・ジュゼッペ・グァルネリ(1698年、クレモナ生まれ)は、のちに『グァルネリ・デル・ジェス』と呼ばれる名器の製作者である 彼の製作したヴァイオリンの胴内のラヴェルにキリストを示す『ベルナルディーノの徴』のロゴマークがあるため、特に『グァルネリ・デル・ジェス』(イエスのグァルネリという意味)と呼ばれる 二コロ・パガニーニの愛器はグァルネリ・デル・ジェス(1743年頃製「イル・カノーネ」)である

著者は第3章「スズキ・メソードと弦の桐朋」では、日本独特の音楽教育法について概要次のように書いています

「日本のヴァイオリン王と呼ばれる鈴木政吉の息子・鎮一は江藤俊哉のレッスンを行うなかで、日本人が母国語の日本語を流暢に話すように、音楽も同じように耳から音楽を教えることで上達することに気が付き、母国語による早期教育の必要性を提唱した 1946年に『全国幼児教育同志会』を立ち上げ、1948年には『才能教育研究会』と改称し、1950年に『公益社団法人  才能教育研究会』としての認可を受けた これが「才能教育運動」(スズキ・メソード)のスタートとなる スズキ・メソードの出身者には大谷康子、石川静、竹澤恭子、渡辺玲子、葉加瀬太郎、辻彩奈、宮田大(チェロ)らがいる。また、海外にも普及し、アン・アキコ・マイヤース、サラ・チャン、ヒラリー・ハーン(!)などもスズキ・メソードの出身者である

著者は第5章「ストラディヴァリウスか、グァルネリ・デル・ジェスか」の中で、五嶋みどりの「タングルウッドの奇跡」のエピソードを紹介しています 概要は以下の通りです

「1986年8月27日にボストン郊外のタングルウッド音楽祭で演奏されたバーンスタイン指揮ボストン交響楽団による『独奏ヴァイオリン、弦楽、ハープと打楽器のためのセレナード』の第5楽章に入った時、ソリストの五嶋みどりのヴァイオリンのE線が切れた 五嶋はコンマスのマルコム・ロウの楽器ストラディヴァリウスを受け取り演奏を続け、ロウは副コンマスのマックス・ホバートのグァダニーニを受け取り演奏を続けた しばらくすると、今度は五嶋の手にしたストラディヴァリウスのE線が切れた 五嶋は慌てることなくコンマスが弾いていたグァダニーニを受け取り演奏を続けた 無事に演奏を終えると、バーンスタインは彼女をハグして賞賛し、観客はスタンディング・オヴェ―ションを送った 五嶋は4分の3スケールの一回り小さなヴァイオリンを弾いていたが、コンマスから手渡されたのは慣れていないフルサイズの、しかも顎当ての付いていないストラディヴァリウスとグァダニーニだったのだ 翌日のニューヨーク・タイムスは『14歳の少女、タングルウッドを3つのヴァイオリンで席巻』という見出しの記事を載せた のちに『タングルウッドの奇跡』としてアメリカの教科書にも掲載された

この時の演奏はYouTubeにも上がっているので、誰でも観ることが出来ますが、何回観ても感動します

同じ章の中で、著者は名器を有望なヴァイオリニストに貸与する「音楽財団」について解説を加えています

「2023年10月現在における楽器の貸与先は次の通り

〇日本音楽財団=外村理紗(2001年生まれ)にストラディヴァリウス『ヨアヒム』を、MINAMI(1998年生まれ)にストラディヴァリウス『ブース』を、金川真弓(1994年生まれ)にストラディヴァリ『ウィルヘルミ』を、吉本梨乃(2003年生まれ)にストラディヴァリウス『ムンツ』を、竹内鴻史郎(2005年生まれ)にグァルネリ・デル・ジェス『ムンツ』を貸与している いずれも将来性のある若手中心となっている   これらの名器は、彼らに貸し出される前に、次のような錚々たるアーティストによって演奏されていました

五嶋龍、原田幸一郎、安永徹、堀米ゆず子、神尾真由子、樫本大進、川久保賜紀、木嶋真優、前田妃奈、南紫音、三浦文彰、大谷康子、佐藤俊介、庄司紗矢香、諏訪内晶子、竹澤恭子、渡辺玲子、山根一仁。

〇サントリー音楽財団=米元響子(1984年生まれ)にストラディヴァリウスを、田原綾子(1994年生まれ)にパオロ・アントニオ・テストーレ(ヴィオラ)を貸与している

〇ITOH財団=渡邊紗蘭(2005年生まれ)にグァダニーニ『トリノ』を、中野りな(2004年生まれ)にストラディヴァリウス『クレモナ』を、河井勇人(2002年生まれ)にストラディヴァリウス『ライアル』を、北川千紗(1997年生まれ)にピエトロ・グァルネリを貸与している

〇NPO法人イエロー・エンジェル(カレーハウスCoCo壱番屋の創業者・宗次徳二が設立)=三浦文彰にストラディヴァリウス『ヴィオッティ』を、神尾真由子にストラディヴァリウス『ルビノフ』を、チェリストの宮田大に貸与していた『マッテオ・コフリラー』を現在は新倉瞳に貸与している

〇株式会社クリスコ=梶本大進にグァルネリ・デル・ジェス『ド・べリオ』を、三浦文彰にグァルネリ・デル・ジェス『カストン』を貸与している

ストラディヴァリウスやグァルネリ・デル・ジェスのような希少な名器は億単位の値段がするので、個人で購入するのはとても不可能です そのため音楽財団などの法人が貸し出すことになるわけです

著者は第6章「就職先はオーケストラ・・・弦楽器奏者たちの選択」の中でピリオド楽器について解説しています

「バッハ・コレギウム・ジャパンなどで使用されているバロック・ヴァイオリンは、指板が短く、ネックが太く、基本的に顎当てや肩当てがない(ボディを顎で支えていないのでヴィブラートをかけられない)。そしてガット弦を使用し、ボウ(弓)にアジャスターがない。アジャスターがないと弓毛の長さが調節できない それゆえ、モダン楽器に慣れた演奏者は少なからずストレスを感じるという バロック・チェロはというと、一番大きな違いはエンドピンがないこと。これがないので、両足でボディを挟むようにして支えるのだ やはりガット弦を使用し、ボウにアジャスターはない

文中の「ガット弦」は羊の腸をよじって真っすぐにした弦です。モダン楽器とバロック楽器では随分違うものですね

著者は第7章「クラシックの枠を超えて・・・新世代の弦楽器奏者たち」の中で、第2のMIDORI(五嶋みどり)と期待を寄せているのは2011年生まれのHIMARI(吉村妃鞠)です 前澤友作所有のストラディヴァリウス『ハンマ』を日本ヴァイオリンを通じて貸与され、レオニード・コーガン国際ヴァイオリンコンクール、アルトゥール・グリュミオー国際ヴァイオリンコンクールをはじめ数々の国際ヴァイオリンコンクールで第1位を獲得しています 昨年10月時点で12歳 通っていた慶應義塾幼稚舎(小学校)を一時退学して、カーティス音楽院に通っています 私も2回ほど演奏を聴きましたが、身体は小学生でも演奏は大人顔負けの素晴らしい芸術性がありました

本書はヴァイオリンの歴史から現在地、そして将来を見通した書籍として、クラシック音楽全般に興味のある方にお薦めします

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