人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立オペラ、ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を観る ~ トーマス・ヨハネス・マイヤー、ギド・イェンティンス、アドリアン・エレート、林正子とラストの演出にブラボー

2021年11月19日 01時28分16秒 | 日記

19日(金)。わが家に来てから今日で2505日目を迎え、新日本フィルによると11月27日、29日の定期演奏会に出演予定の指揮者シャルル・デュトワが新型コロナウイルスに感染したことから来日できなくなり、代わりに井上道義が指揮することになった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     デュトワはワクチン2回接種したらしい  チケット購入者にとって副反応より痛い

 

         

 

昨日午後4時から、新国立劇場「オペラパレス」でワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のプルミエ(初日)公演を聴きました 出演は、ハンス・ザックス=トーマス・ヨハネス・マイヤー、ファイト・ポーグナー=ギド・イェンティンス、クンツ・フォーゲルゲザング=村上公太、コンラート・ナハティガル=与那城敬、ジクストゥス・ベックメッサー=アドリアン・エレート、フリッツ・コートナー=青山貴、バルタザール・ツォルン=秋谷直之、ウルリヒ・アイスリンガー=鈴木准、アウグスティン・モーザー=菅野敦、ヘルマン・オルテル=大沼徹、ハンス・シュヴァルツ=長谷川顕、ハンス・フォルツ=妻屋秀和、ヴァルター・フォン・シュトルツィング=シュテファン・フィンケ(トミスラフ・ムツェックの代演)、ダーヴィット=伊藤達人、エーファ=林正子、マグダレーネ=山下牧子、夜警=志村文彦。合唱=新国立劇場合唱団、二期会合唱団、管弦楽=東京都交響楽団、指揮=大野和士、演出=イェンス=ダニエル・ヘルツォークです

私が新国立オペラで「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を観るのは2005年9月に次いで2度目です

 

     

 

「ニュルンベルクのマイスタージンガー」はリヒャルト・ワーグナー(1813-1883)が1862年から67年にかけて作曲、1968年にミュンヘンで初演された楽劇です 実在の靴屋の親方であるマイスタージンガーのハンス・ザックス(1494-1576)をテーマに扱い、彼の新しい民衆的芸術の理念がワルターによって実現されるという内容です

騎士ヴァルターは金細工の親方ポーグナーの娘エーファに一目ぼれする ヴァルターは、エーファが翌日の歌合戦で勝利者の花嫁になることを知り、自分も参加しようとするが、歌合戦の資格試験に落第してしまう しかし、靴屋の親方ハンス・ザックスだけは彼の歌の自由な精神と才能を認める やもめのザックスも密かにエーファに想いを寄せていたが、若い二人のために身を引く決心をする ザックスの教えによって、ヴァルターはライバルのベックメッサーを退け見事歌合戦で優勝する 一同はザックスを讃える

 

     

 

新国立オペラの場合、オーケストラ・ピットに入るのは通常 東京フィルと東京交響楽団で、都響が入るのは珍しいのではないかと思います 大野和士氏が新国立劇場のオペラ音楽監督であるとともに都響の音楽監督も務めている関係で指揮を執ることになったと思われます 会場は初日公演ということもあってか かなり埋まっています

大野和士の指揮で前奏曲の演奏に入りますが、限られた人数にしては迫力のある分厚い管弦楽が聴けました    これは期待できそうだ、と思いました

このオペラは登場人物が多いうえ、語るような歌唱が休むことなく延々と続くので、はっきり言って疲れるのですが、全体を引き締めていたのはハンス・ザックスを歌ったトーマス・ヨハネス・マイヤーです    ドイツ生まれのバリトンですが、新国立オペラでは「さまよえるオランダ人」のタイトルロールなどを歌いました    今回も優れた歌唱力に加え、圧倒的な存在感で本公演を支配しました

ベックメッサーを歌ったアドリアン・エレートはウィーン生まれのバリトンですが、「ドンジョバンニ」タイトルロール他を歌っており日本の聴衆にはお馴染みです    今回も”悪役”に挑戦しましたが、演技力・歌唱力ともに申し分ありませんでした

ヴァルターを歌ったシュテファン・フィンケはドイツ出身のテノールですが、無理のない歌唱で高音が良く伸びました

ポーグナーを歌ったギド・イェンティンスはドイツ出身のバスですが、親方らしい演技と歌唱で聴衆を魅了しました

エーファを歌った林正子は東京藝大大学院を経てジュネーヴ音楽院ソリスト・ディプロマ取得のソプラノですが、新国立オペラでは「魔笛」パミーナ他を歌っています 今回も美しく伸びのある歌声で存在感を示しました

今回 若手で頑張ったのはダーヴィットを歌った伊藤達人です     新国立劇場オペラ研修所第14期修了生ですが、研修生の頃から聴いている者にとっては嬉しいものです

新国立劇場合唱団と二期会合唱団は期待通りの素晴らしいコーラスを聴かせてくれました     特筆に値するのは大野和士指揮東京都交響楽団の演奏です。ワーグナーらしい勇壮な音楽づくりが強く印象に残りました

 

     

 

演出面では、最後のシーンが強烈に印象に残りました 第3幕の歌合戦シーンでは参加する親方達の大きなポートレートが並べて飾られるのですが、ヴァルターが優勝して彼を描いたポートレートが渡されると、「マイスタージンガー」の称号を受けないと言ってポートレートを破いてしまいます これに対しハンス・ザックスが「マイスタージンガー」の芸術の価値を説いてヴァルターをいさめると、彼は納得します 再び新しいヴァルターのポートレートが授けられますが、隣にいたエーファが複雑な表情をしています。私は彼女を見て「ああ、こうなれば面白いのになぁ」と期待していると、彼女はその通りのことをやってくれました それを見たハンス・ザックスが大笑いして幕が下ります

満場の拍手の中、1階左サイドやや後方席から「ブーイング👎」が出ましたが、保守層の気持ちは分からないでもないです しかし、ワーグナーはドイツの伝統を守ろうという高い意識の一方で、既成概念にはとらわれずに革新的な音楽を開拓してきた点に焦点を合わせれば、ヴァルターやエーファがやったことの方が正しいと言えるのではないか、と思います 2回の30分休憩を挟んで6時間になろうとしているオペラのラストを迎えた時点でこの演出を見て、眠気が覚める思いがしました この演出がなかったら「なが~いオペラだったなあ  せめて半分くらいの長さにしてくれないかなあ」で終わっていたかもしれません 繰り返されるカーテンコールが終わり、席を立ったのは22時10分を過ぎていました

 

     

コメント
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